夕食を済ませ、後は寝るだけなのだが、やっぱり俺は離れて寝るか車で寝た方が良いのかも知れないな。
「会長、やっぱり俺は車で寝ますよ」
「そこまでしなくても、私たちは君を信用しているぞ」
「そうだよ~」
「津田さんは信用出来る男性だと思います」
そう言ってもらえて嬉しいのだが……
「でも俺は、何時の間にか俺の隣を陣取っているこの二人を信用出来ません……何か脱いでるし」
「「ギク!」」
「横島先生、そこは私が」
「出島さん? そこは私が寝るからね~」
俺が使う予定の布団の両隣を陣取っていた変態共を簀巻きにして、会長と七条先輩が隣で寝る事になったのだが……
「そもそも、何で俺が真ん中になるんですか? 端っこにすれば問題無いのでは……」
「べ、別に寝ぼけたフリして布団に忍び込もうなんて思って無いからな!」
「そ、そうだよ~! 私は寝てる津田君を襲おうだなんて考えてないからね」
あっ、この二人も簀巻きにした方が安全かもしれないな……結局二人を説得する事は出来ずに、俺が真ん中になる事が決定した……萩村も五十嵐さんも説得を手伝ってくれても良いじゃないか。魚見さんに至っては自分は俺の布団で寝るとか言い出すし……今日はもう疲れてツッコめる状態じゃないんだよ……
私は凄腕新聞部部長、畑ランコ。さっきはあまりの恐怖に引いたが、せっかくのスクープを逃す手は無いわね。
「津田副会長たちの部屋は……あそこね」
望遠レンズ付きのカメラで津田副会長の爛れた生活を激写して記事にすれば、新聞部始まって以来最高の部数が出るでしょうね。
「えっと津田副会長は……あら?」
布団が六組あるのに、ふくらみは五個しか無い。これはもしや誰かが津田副会長と合体を!
「何してるんですかね?」
「ッ!?」
さっきまで何も感じなかったのに、今は背後に人の気配が……私はゆっくりと背後を振り返ろうとしたのだが、あまりの恐怖に身体が動かなかった。
「さっきので諦めてくれたと思ったんですがね。如何やら本当に新聞部を潰したいらしいですね」
「見逃してくれたりは……」
「一度は見逃しましたが、二度目は無いですよ」
「ですよね~……ギャー!」
この後の記憶は、私には無い。次に気がついたのは新聞部で借りている部屋の前の廊下で寝ていたのを新聞部の仲間に起こされた時だったから……首筋に鋭い痛みを感じたのは、恐らく津田副会長にやられたのでしょうね。
夜中に誰かの気配を感じ目を覚ますと、両隣の布団で寝ていたはずの会長と七条先輩が俺の布団に入って寝ていた。漸く寝れたと思ったのに、厄日かよ……
「あの会長? 七条先輩?」
寝ている他の人を起こすのは可哀想だったので、小声で話しかける。
「ん……津田!? 私たちは姉弟だ! 近親○姦はいけないぞ!?」
「でもシノちゃん、津田君が実は血の繋がらない弟だとしたら?」
「……ありだな」
「無しだよ!!」
畑さんに喰らわせたのと同じ攻撃を二人にも喰らわせ、気を失ったのを確認して布団から追い出す。クソッ、やっぱり厄日だな……
結局この後もろくに寝れずに、うとうとし始めたと思ったら外が明るくなってきたのだった。
「仕方ない、散歩でもしてくるか」
寝るのを諦めて布団から出て、俺は着替えを済ませて旅館から外に出る事にした。夏休みだし、一日くらい寝なくても大丈夫だろうしな。
見慣れない天井を見て、私は一瞬自分が何処に居るのかが分からなかった。
「そっか、昨日海に来てそのまま……」
横島先生と出島さんが酔っ払って車が運転出来なくなった為に、近くの旅館で一泊したんだった……津田君と同じ部屋で。
「浴衣は乱れてない、と言う事は津田君に襲われたなんて事は無かったのね」
普段から私を気遣ってくれてる津田君だけど、男は皆狼だって言うし津田君ももしかしたらって事もあるかもだしね。
「あれ? そう言えば津田君が居ない……」
起き上がって全体を見回したが、津田君の寝ていた布団は既に畳まれており、津田君が着ていた浴衣も綺麗に畳まれていた。
「何処行ったのかしら……」
いくら津田君がしっかりしてるとは言え、土地勘の無い場所をうろついて迷子にでもなったら大変よね。
「探しに行かなくちゃ!」
急いで部屋から出ようとして、私は何かに躓いた。
「ムギュ!? ……何事ですか?」
如何やら魚見さんを潰してしまったようで、その圧迫感で魚見さんは目を覚ました。
「ごめんなさい」
「いえ、私は女性もありだと思ってますよ?」
「ヒィッ!?」
「冗談です」
心配した津田君だったが、特に問題無く皆が起きて着替え終わったのを見計らったかのようなタイミングで帰ってきたのだった。
帰りの車でもジャンケンをして、今度は私とカエデちゃんと津田君が横島先生の車に乗る事になった。出島さんが寂しそうな顔をしてたけど、何時も乗ってるから偶には違う車に乗りたかったのよね~。
「いや~面目無い。逆レ○プに成功して祝杯を挙げてたらつい」
「そもそもそんな事してないでくださいよ! 仮にも教師でしょ、貴女!」
「教師である前に一人の女だよ。良い男が居たら食いたくなるだろ?」
「知りませんよ!」
さっきからカエデちゃんがツッコミを入れてるけど、津田君は随分と静かね?
「津田君?」
「……スー……」
如何やら津田君は寝ているようだった。
「津田君は寝てるんですか?」
「疲れちゃったんじゃないかな? 昨日は色々あったから」
「そうですね……」
カエデちゃんが溺れたのもそうだけど、一日中ツッコミを入れてたのも疲れた原因だと思うのよね~。
「あら?」
津田君がゆっくりと私の肩に頭を預けてきた。こうして見ると随分と可愛い顔してるんだと良く分かるわね。普段は凛々しい顔してるから、余計に可愛く感じるのかもしれないけどね。
「もうちょっとずれたらおっぱい枕ね」
「ビクン!」
「津田君?」
「今のはジャーキングと言って、身体に負担の掛かる寝方をしてるとなる現象だよ。決して夢○したわけじゃ……」
「イってねーよ! ……あれ?」
ツッコミと共に目を覚ました津田君は、不思議そうに周りを見渡してそのまままた寝てしまった。その後は私にもカエデちゃんにも寄りかからずに学園に着くまでずっと寝ていたのだけれど、私もカエデちゃんもずっと津田君の寝顔を見ていたのは津田君には秘密ね。
いけそうなら連日投稿します