桜才学園での生活   作:猫林13世

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雪かきは地味に腕にきますよね……


雪の中の訓練法

 校内の見回りの途中で、私たちは図書室を訪れた。最近図書室でイチャコラするカップルが見受けられるとの報告を受け、見回りのルートに図書室を組み込んだのだ。

 

「風紀委員の管轄じゃないですかね、こういうのは」

 

「まぁ、カップルという事は男子がいるわけだし、五十嵐には無理なんだろ」

 

「風紀委員はカエデさんだけじゃないと思いますけどね」

 

 

 ぐるりと見回っている途中でタカトシが零した疑問に、私も同意したが、生徒会でも見回っておけば、イチャコラする機会は大幅に減るだろうし、本来の用途で訪れている生徒たちにも安心感を与えられるだろう。

 

「ん? コトミがいますね」

 

「珍しい事もあるものだな」

 

 

 図書室とコトミなど、全くイメージが合わないのだが、確かにあそこで勉強しているのはコトミのようだ。

 

「遂に目覚めたのか?」

 

「いや、たぶんダメなパターンでしょうね」

 

 

 必死に勉強しているように見えるが、血縁であるタカトシは何やら悪い予感がしているようで、静かにコトミに近づき、周りに積んである本の一冊を手に取った。

 

「……桃太郎?」

 

「なに? ……こっちはマジック入門に世界の料理?」

 

「いやー。周りに本を積んでおけば秀才っぽく見えると思いまして」

 

「見た目だけ誤魔化しても意味はないぞ。ちなみに、そこ間違えてるからな」

 

「あれ?」

 

 

 冷静にツッコミを入れて、タカトシは生徒会室に戻ろうと提案し、私もその意見に同意した。

 

「おっと、一冊持ってきてしまった」

 

「何の本、それ?」

 

「世界の料理だな……なんとも美味しそうな写真だ」

 

「シノちゃん、涎出てるよ」

 

「おっと、はしたないところを見せたな」

 

 

 思わず涎が出てしまう程美味しそうだったのだ。何時かは食べてみたいものだな。

 

「うーん……」

 

「スズ、涎出てるよ」

 

「寝起きだからね……」

 

 

 まだ覚醒しきっていないのか、タカトシの指摘に眠そうな声で萩村が答えた。

 

「そんなときはコレが良いんじゃないかな?」

 

「すぴ~」

 

「まだ持ってたのかよ……」

 

「さっき見つけて、持って帰ろうと思って洗ったんだよ~」

 

 

 なるほど、ずっと置きっぱなしだったのか……しかし、これを装着するのは随分と久しぶりな気がするな。

 

「すぴ~」

 

「そんな事に感動してなくていいですから、早く本を戻してきてください」

 

「なんて言ってたの?」

 

「久しぶりに装着した気がする、と」

 

 

 さすがタカトシ。この状態でも私が言っている事を理解してくれるから、楽が出来るんだが怒られるんだよな。早いところ外して図書室に本を戻してこよう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 柔道部のマラソンの付き添いを頼まれたんだが、雪が積もってるんだよな……まさかこの状態でマラソンはしないよな?

 

「これじゃあマラソンは無理だね」

 

「残念だな~」

 

 

 柔道部の中里さんと海辺さんが、感情の篭ってないセリフを述べたが、そのセリフを聞いた三葉が意外そうな表情を浮かべている。

 

「何言ってるの? 雪のお陰で足腰が鍛えられるじゃない!」

 

「体育会系過ぎる……」

 

「これ、俺も走るの?」

 

 

 普通のマラソンなら別に問題ないんだが、さすがに雪道を走りたくはないな……

 

「タカトシ君は、そこでタイムを計っててくれればいいよ」

 

「分かった」

 

 

 走っても良かったんだが、三葉の基準では走りたくないしな……てか、柔道部員が恨めしそうな視線を向けてくるんだが、俺は柔道部じゃないぞ。

 

「相変わらず三葉は元気がいいな」

 

「シノ会長。見回りですか?」

 

「いや、雪かきでもしておこうかと思ってな。タカトシは柔道部の手伝いだろ?」

 

「タイム計るだけですから、俺じゃなくても出来ますけどね」

 

「それじゃあ私がやるよ~」

 

 

 何故か会長たちについて来ていたコトミが代わってくれたので、俺は生徒会活動として雪かきをすることになった。

 

「あれ? タカトシ君がここにいるって事は、誰がタイムを計ってるの?」

 

「コトミが代わってくれた……って、三葉はもう終わったのか?」

 

「うん。たかだか校庭二十周くらいすぐだよ! でも、この時期は屋外で活動しにくいから困るんだよね」

 

「それじゃあ、スノーシューに挑戦してみない? ちょうど次の土日で行く予定だから、ムツミちゃんたちも参加すると良いよ」

 

「すのーしゅー?」

 

「雪上ハイキング。雪の山を散策するんだよ」

 

「楽しそうですね」

 

「ちなみに、ガイドは誰が?」

 

「出島さんだよ~」

 

 

 まぁ、普通に考えればあの人だよな……天然ピュアな三葉と出島さんの相性は最悪だからな……俺は不参加の方向で話を進めてもらおう。

 

「楽しそうだな! よし、我々生徒会役員も参加するぞ!」

 

「わー! それじゃあ出島さんには人数が増えるって連絡しておくね」

 

「私も行きたいです!」

 

「もちろんだ、コトミ!」

 

「あっ、でも柔道部のみんなは予定があるって言ってたし、参加出来るの私とトッキーだけだ」

 

「大丈夫、他の子たちは今度ムツミちゃんが案内してあげればいいだけだよ」

 

「それもそうですね! それじゃあ、今度の土曜日、お願いします」

 

 

 えっ、なんだか流れるように予定を組まれたけど、俺参加したくないんだけど……

 

「タカトシ、諦めも肝心よ」

 

「同情するフリして、自分が楽をしたいだけじゃね?」

 

「そんなこと無いわよ」

 

 

 と言いつつも、スズは視線を合わせてはくれなかった……




寒いの嫌だし、自分だったら行きたくないな……

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