桜才学園での生活   作:猫林13世

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タカトシ無双ですね


調理実習

 朝一で新聞部にエッセイのデータを渡して、とりあえず今回の分は二つとも完成したと言える状況になった。後は畑さんが文字校正をすればほぼ完成だし、手直しが必要かもしれないので、こちらにもデータは残してある。まぁ、恐らく何事もなく発行にこぎ着けるだろうけどね。

 

「はー、何とかなった」

 

「お疲れ様」

 

「スズも、わざわざ手伝いに来てくれてありがとう」

 

 

 特に用事もないのに、我が家に泊まったメンバーは全員俺と同じ時間に登校している。もちろん、コトミは起きてすらいないが……後で電話かけておくか。

 

「それにしてもあの量を二日で完成させるなんて、さすがタカトシよね」

 

「丁度バイトも休みだったし、コトミの相手と家事をみんなが手伝ってくれたからだよ。もしどっちもあったらさすがにまだ終わらないって」

 

 

 バイトは兎も角コトミの相手はかなり疲れるからな……妹だからって甘えすぎてないか、アイツ。

 

「というか、私たちまでお弁当作ってもらっちゃってよかったの?」

 

「ん? 別に構わないよ。どうせ英稜の二人の分は作るつもりだったし、四人分増えてもあまり気にしないって」

 

「四人分はさすがに手間が増えると思うんだけど……」

 

 

 あの後結局五十嵐さんは泊まることになったので、今朝は俺とコトミ、義姉さんとサクラさん、シノ会長とアリアさん、そしてスズとカエデさんの八人分の朝食と弁当の用意をしたのだ。ただまぁ、最近泊まることが多くなってきているので、普段とあまり変わらない時間で八人分を用意出来るようになっているので、スズたちが恐縮してるのを見て逆に申し訳なく思っている。

 

「そういえば今日調理実習があるんじゃなかったっけ?」

 

「朝一で家庭科の授業だったな。まぁ問題ないだろ」

 

「一応エプロンも頭巾もあるしね」

 

 

 てか、男子が真面目にやるのか、そっちが心配だけどな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 運よくタカトシと同じ班になった私は、タカトシの邪魔をしない程度に手伝いながら実習を進めていた。

 

「さすが津田君、全く無駄がない動きだね」

 

「そういうネネは、もう少し頑張りなさいよ」

 

「だって、津田君と比べられたら誰でも料理下手って思われるよ」

 

「俺は別に上手だとは思わないんだけどな……必要だったから覚えただけで、上手くなりたかったわけじゃないし」

 

 

 そういいながらも、タカトシは次々と料理を完成させていく。というか、何処の班よりも早いし、綺麗だし、美味しそうだし……さすが学園きっての主夫ね。

 

「だから主夫じゃないっての」

 

「津田君、卵片手で割れるんだ」

 

「えっ? あぁ、完全に無意識だった」

 

 

 私と会話しながらも綺麗に卵を割って見せたタカトシに、クラスメイト全員が拍手を送った。

 

「その技術、羨ましいわね」

 

「スズだって出来るだろ?」

 

「さすがに喋りながらは出来ないわよ……それなりに集中しないと殻が入っちゃうし」

 

「そうだよね~。お喋りしながらブラを外そうとすると引っ掻いちゃうもんね~」

 

「何故その話題になる?」

 

 

 ネネが余計な事を話し始めたが、タカトシは特に気にすることなく最後の料理を完成させ、私たちの班はぶっちぎりの高評価を得たのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 午前の授業も終わり、スズちゃんとムツミちゃんと一緒にお昼を食べる事にした。といっても、朝一で調理実習だったため、それほどお腹はすいていないんだけどね。

 

「あれ? スズちゃんのお弁当箱、何時もと違うね?」

 

「う、うん……実は生徒会メンバー+風紀委員長でタカトシの家に泊まったから、これタカトシの手作りなんだ」

 

「た、タカトシ君の手作り……ごくり」

 

「ムツミちゃんは何を想像したのかな?」

 

 

 既に自分のお弁当を食べ終えているムツミちゃんが喉を鳴らしたが、恐らく足りなかったという理由だけじゃないんだろうな。

 

「足りないなら購買で何か買ってくれば良いじゃない」

 

「もう買ってきてるけどね」

 

 

 そういいながらムツミちゃんは大福を取り出して口いっぱいに頬張る。お腹いっぱいだけどああいうのを見ると美味しそうだと思うのよね。

 

「調理実習の時も思ったけど、津田君が作る料理って美味しそうだよね」

 

「実際美味しかったでしょ?」

 

「うん。女としてちょっと自信を失くすくらい美味しかったよ」

 

 

 今の時代、女が家事だなんて古い考え方かもしれないけど、だいたいの家庭では女性が家事を仕切っているんだろうし、私ももう少し出来るようになりたいわね……

 

「あれ? 今度はパウンドケーキ?」

 

「うん」

 

 

 いつの間にか大福を食べ終えたムツミちゃんが、今度はパウンドケーキを頬張っていた。さっきのお弁当もかなりの量があったはずなのに、何処に消えていったのかしら……

 

「身体動かす分食べないと体重落ちちゃうんだよね」

 

「女子としては羨ましい悩みね……私は文化部だから運動する機会が無いし……あっ、でもピスト――」

 

「おっとそこまでだ」

 

 

 スズちゃんにカットされてしまい、私はちょっと頬を膨らませてみせた。

 

「今度はアイス……って、アイスはおかしいだろ! 学園抜け出してコンビニ行ってきたな」

 

「ゴメンなさい!」

 

 

 どうやらムツミちゃんは購買ではなくコンビニでお菓子を買ってきたようで、生徒会役員であるスズちゃんに怒られちゃったのでした。




ウチの高校、坂上らないとコンビニなかったな……

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