桜才学園での生活   作:猫林13世

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タカトシの為と言いつつ自分の為……


会長の意地の張り合い

 昨日に引き続きタカ君の家にサクラっちと二人で帰ると、リビングで正座させられているコトミちゃんがいた。

 

「なにしてるの?」

 

「ちょっと自主的に反省中なんです……」

 

「また何かしたんですか?」

 

「この間の小テストで赤点だったので、タカ兄が帰ってくる前から反省しておこうと……」

 

 

 コトミちゃんの横に置かれている答案を覗き込み、これはタカ君じゃなくても怒るだろうと思われる結果だった。普段から少しでも勉強しておけば、このくらいのテストなら満点取れると思うんだけどな……

 

「それで、タカ君はまだ帰ってきてないの?」

 

「今日は買い出しの日ですから、たぶん一回帰ってきてスーパーに出かけたんだと思います」

 

「言ってくれれば私が買いに行ったのに」

 

 

 何のためにお手伝いに来てると思ってるんだろう、タカ君は……まぁタカ君の性格上、人に頼り過ぎるのを嫌ってるんだろうな。

 

「義姉さん、サクラさん、お帰りなさい」

 

「タカ君もお帰り。買い物くらい私とサクラっちのどっちかで行ったのに」

 

「お願いしようとも思ったんですが、さっき台所を覗いて醤油とか油とかのストックが無かったことに気付いたので買っちゃおうと思って。他にもいろいろと買っておいた方が良いものがあったので、さすがに重くなりすぎると思い自分で行ったんです」

 

「タカ君はちゃんと女性の事を考えられてエライね。お義姉ちゃんが頭を撫でてあげましょう」

 

 

 タカ君の頭を撫でながら、私は視線でコトミちゃんの答案を捉えて、この後起こるであろう惨劇を想像して震えた。

 

「それで、コトミは何をしてるんだ?」

 

「っ! あの……申し訳ありませんでした」

 

 

 深々と頭を下げるコトミちゃんに対して、タカ君は蔑むような視線を向けながら答案に目を向けました。

 

「これか……サクラさん」

 

「はい」

 

「今日はこのテストの復習をさせておいてください。あまりにも出来ないようでしたら軽く叩くくらいなら許可しますので」

 

「さすがに叩きませんし、タカトシさんだって叩かないですよね?」

 

「俺が叩いても喜んじゃうんで……」

 

「あぁ、そういう人でしたね……」

 

 

 タカ君とサクラっちが揃って残念な子を見る目をコトミちゃんに向ける。すると深々と頭を下げていたコトミちゃんの身体が、クネクネと動き出した。

 

「バカなことしてないでさっさと勉強しろ。定期試験で赤点取ったら容赦なく小遣い減らすからな」

 

「そ、それだけは勘弁してください!」

 

「お前の為にどれだけの人が手伝ってくれてると思ってるんだ」

 

「感謝してもしきれないと思っています、はい……」

 

 

 トボトボと階段を上がるコトミちゃんにサクラっちが続き、タカ君は盛大にため息を吐いてから私に視線を向けてきました。

 

「すみません、義姉さん。今日もお願いします」

 

「任せて。というか、タカ君の為なら毎日だってお手伝いするからね」

 

 

 私の言葉に、タカ君はもう一度申し訳なさそうに頭を下げてから部屋に戻っていった。さて、今日もタカ君の為に美味しい料理を作らなくっちゃ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシがエッセイの作成に取り組んでいると聞き、私たちはタカトシの家を訪れた。少しでもアイツの手伝いが出来ればと思ったのだが、確かカナがいるんだったな。

 

「はい?」

 

「やぁ、カナ。我々も手伝いに来たぞ」

 

「タカ君から何も聞いてませんが、タカ君に頼まれたんですか?」

 

「いや、自主的に手伝いに来ただけだ」

 

「そうですか。じゃあシノっちは庭の掃除、アリアっちはお風呂、スズポンはサクラっちのお手伝いをお願いします」

 

「何故カナが仕切るんだ?」

 

「私はタカ君に直々に頼まれていますから。シノっちたちはそのお手伝いですよね?」

 

 

 言い返そうとしたが、今の状況でカナに逆らえば追い返される可能性があると考え、我々は素直にカナの言う事を聞くことにした。

 

「森さんの手伝いって、何をすればいいんですか?」

 

「コトミちゃんの成績を立派にするための作業です」

 

「あー……大変そうですね」

 

 

 コトミの成績は我々も知っているので、萩村は既に疲れ切った表情を浮かべながらコトミの部屋に向かった。

 

「お風呂掃除って、結構がっつりやった方が良いのかな?」

 

「タカ君が普段からやっているようですので、浴槽の掃除くらいで大丈夫ですよ」

 

「それなら任せて」

 

 

 アリアが気合いを入れて風呂場に向かう中、私は家に上がることなく庭に周り、落ち葉や雑草の除去に取り掛かった。

 

「シノっちが一番こういう事が得意そうでしたので」

 

「まぁ、スズは容姿相応の力しかないし、アリアはお嬢様だからな」

 

「タカ君も申し訳なさそうにしてましたし、後でお礼を言ってもらえるんじゃないですか?」

 

「アイツも結局畑に甘いからな……」

 

「私たちが圧力をかけましたから」

 

「そういえばエッセイオンリーは英稜の希望だったな」

 

 

 もちろん桜才の中でもそういう声はあったのだが、今回は英稜の後押しもあり新聞部はエッセイオンリーの新聞を発行する事を決めたらしいのだ。だがそれが決まったのはついこの前、作者であるタカトシに伝わったのは昨日だ。

 

「タカ君には申し訳ない事をしてしまいました。だから私とサクラっちが英稜を代表してタカ君のお手伝いをしているのです」

 

「だが、タカトシのエッセイのファンは桜才にも多いからな。桜才を代表して我々も手伝った方が良いだろう」

 

 

 何故かカナと意地を張り合ったが、虚しくなったので私は庭掃除、カナは夕飯の準備に戻ったのだった。




この場に限ればウオミーの方が強いだろうな……ほぼ自分の家みたいな感じですし……

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