桜才学園での生活   作:猫林13世

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アリアさん(中の人)、結婚おめでとー


同じ失敗

 今日も遅刻ギリギリで学校に到着したら、マキとトッキーが呆れ顔で話しかけてきた。

 

「コトミ、今日もギリギリなの?」

 

「少しは兄貴の負担を考えたらどうだ?」

 

「私だって頑張ってるもん! 今日だって頑張って起きようとはしたけど、気がつけば何時もと同じ時間になってただけで……」

 

「それは頑張ってないのと同じだろ」

 

 

 トッキーに厳しい一言を言われ、私は机の上に突っ伏した。やっぱり寝起きダッシュはキツイよ……

 

「ところでコトミ、今日持ち物検査があるみたいだけど、余計なものは持ってきてないよね?」

 

「持ち物検査? タカ兄そんな事言ってなかったけどなぁ」

 

「教えるわけないだろ。そもそもお前は要注意人物だろうし、兄貴だってそんな相手に情報を流すとも思えねぇしな」

 

「聞いてたとしても忘れてる可能性があるんじゃない、コトミの場合は」

 

「そんな事ないよ!」

 

 

 絶対に聞いてないし、タカ兄が身内だからといって贔屓してくれるわけもないしね……

 

「今日は何も入ってないと思うけど……あっ、昨日の漫画入れっぱなしだった……」

 

 

 昨日は家に帰ってからサクラ先輩とお義姉ちゃんに監視されて勉強してたからな……すっかり漫画の事を忘れてたよ。

 

「今度余計なものを持ってきたら指導室に呼び出されるんじゃなかったか?」

 

「てか、津田先輩も呼ばれるんじゃないの、保護者として」

 

「あ、あわ、あわわわわ……」

 

 

 タカ兄は事情を知ってるから許してくれる、なんて甘っちょろい考えは出来ない……そもそも、昨日タカ兄に怒られたばっかりなのだから、許してくれるはずもないのだ。

 

「昼休みに生徒会室に行かなきゃ!」

 

「てか、次の休み時間に津田先輩の教室に行けばいいでしょ」

 

「タカ兄に直接言うのはちょっと……」

 

「どうせ怒られるんだから、さっさと怒られれば良いだろ」

 

 

 トッキーもマキも一緒に来てくれるつもりは無さそうだな……仕方ない、先にタカ兄に怒られておこう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 教室でネネと雑談をしていると、廊下に見覚えのある後輩がうろうろしているのが視界に入った。

 

「ちょっとゴメン」

 

 

 ネネに断りを入れて、私は廊下でうろうろしているコトミに声を掛けた。

 

「なにしてるのよアンタ……」

 

「あっ、スズ先輩……えっと、タカ兄いますか?」

 

「タカトシ? さっき横島先生に呼ばれて次の授業で使う教材を取りに行ったけど」

 

「そ、そうですか……」

 

「何でタカトシを探してたのかしら?」

 

 

 コトミの事だからまた何かやらかしたんでしょうけども、今日の怯え方はいつも以上に思えるのよね……

 

「実はですね――」

 

 

 私はコトミから事情を聞き、思わずため息を吐いてしまった。

 

「そういう事情なら仕方ないわね……生徒会室で預かっておくから、後日取りに来なさい」

 

「良いんですか?」

 

「これ以上タカトシの負担を増やすわけにはいかないでしょ」

 

「面目次第もありませぬ……」

 

 

 本当に反省しているようで、コトミはショボンとした顔で私に漫画を手渡してきた。

 

「今度からは気を付けなさいよ」

 

「はい、申し訳ございませんでした……」

 

 

 トボトボといった足取りで教室に戻っていくコトミを見送って、私は教室に戻ろうと振り返った。

 

「またか、アイツは……」

 

「うわぁ!? た、タカトシ……脅かさないでよ」

 

「普通に背後に立ったつもりだったんだがな……まぁいい。それは俺が預かっておくから、スズは気にしなくていいぞ」

 

「アンタも大変ね」

 

 

 私の言葉に、タカトシは苦笑いを浮かべながら漫画を受け取った。

 

「アイツの事だからやらかすとは思ってたが、まさか本当にやらかすとはな……」

 

「ところでタカトシ、昨日何だか大変そうだったけど、家事とか大丈夫だったの?」

 

「あぁ。義姉さんとサクラさんが手伝いに来てくれたから大丈夫だ。と言っても、家事は義姉さんがやって、サクラさんはコトミの監視の手伝いだけどな」

 

 

 急遽エッセイをもう一本頼まれたとは聞いてたけど、まさかそれを理由に魚見さんと森さんがタカトシの家に泊まってただなんて……

 

「何で泊ってたって知ってるんだ?」

 

「あれ? 声に出してた?」

 

「いや、顔に書いてあった」

 

 

 漫画を自分の鞄にしまいながら指摘してくるタカトシに、私は自分の顔が真っ赤になっているのを感じた。どうしてこいつは人の考えている事が分かる癖に、こういった配慮に欠けるのかしら……

 

「そんなに恥ずかしいか?」

 

「自分が考えていたことを言い当てられて、恥ずかしくないわけないじゃないの!」

 

「そんな怒鳴らなくても……てか、スズたちはこの間新聞部の手伝いで一緒に泊まったじゃないか」

 

「あれは畑さんのお父さんが借りているアパートで、タカトシの家じゃないでしょ!」

 

「だけど、さすがに同じ部屋じゃないし」

 

「なになに、スズちゃんと津田君は同じ部屋で寝泊まりした事があるの?」

 

「ん? 別に二人きりじゃないけど」

 

 

 ネネが興味深げに尋ねてきたが、タカトシは特に気にした様子もなく普通に答えた。

 

「そうなんだ……良かったね、スズちゃん」

 

「わ、私だけじゃないって言ってるだろうが!」

 

「?」

 

 

 ネネが小声で話しかけてきた事に大声を出してネネを追いかけまわす私を、タカトシは不思議そうに眺めていたのだった。




これで生徒会メンバーで独身はタカトシ役の浅沼晋太郎さんだけに……

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