タカ兄から生徒会室に来るようメールで言われたので、私はとりあえず生徒会室にやってきた。
「しっつれいしまーす! ……おろ?」
勢いよく生徒会室に入ると、何時もなら会長かスズ先輩にノックをしろと怒られるのだけども、今日はその注意が無かった。
「タカ兄、いったい何の用?」
「さっきカエデさんからお前が怒られたと聞いてな。ちょうどいいからお前で試す事になった」
「試す? 何を?」
「スカートの丈をどこまで短くしたら罰を与えるかの話し合いのサンプルだ」
「えっと……つまり私は怒られるの確定って事ですか?」
三十六計逃げるにしかず! 私は回れ右をして生徒会室から逃げ出そうとしたのだけど――
「逃がすと思ったか?」
――どこの世界でも魔王からは逃げられないようだった……
「津田さん。スカートの丈だけではなく、貴女は廊下を走ったり遅刻常習犯だったりと、風紀委員だけではなく生活指導部でも問題になっています」
「そ、そこまで悪い事はしてないと思うんですが……」
「タカトシが最終的に手を貸してくれているからこそ赤点は無いが、本来なら補習になっていて当然の成績だ。問題ありと判断されても仕方ないだろう」
「授業中に居眠りしてるのも報告書に書いてあるよ~?」
「うっ……」
シノ会長、アリア先輩が報告書を見ながらつらつらと私が問題児であることを説明している横で、タカ兄が凄い顔で私の事を睨んでるよぅ……
「とりあえず生活指導部の判断に対する罰は、この話し合いを手伝ってもらう事で終わるから、後は風紀委員の方の罰だけね」
「えぇ! そっちも怒られるんですか!?」
「当然でしょ。貴女、さすがにスカート短すぎです」
スズ先輩の言葉に反応すると、カエデ先輩が当然だと言わんばかりに頷いた。
「何で私ばっかり! スカートが短い生徒はいっぱいいるでしょ!」
「俺が話し合いに参加しなければならないから、身内であるお前が選ばれたんだ。そして、お前もどうせ怒られる運命なんだから、さっさと怒られろ」
タカ兄の容赦のない一言に、私はその場に崩れ落ちたのだった。
現状のコトミのスカート丈でも問題なのだから、ここからどこまで戻せばセーフになるのかを話し合うはずだったのだが、そもそも短くしている時点で問題なのではというタカトシの根本的な疑問で、私たちは今までの話し合いは無駄だったのだと思い知った。
「元の丈以外の生徒は注意し、余りにも丈が短すぎる生徒は風紀委員会で徹底マークします。もちろん、生活指導部にも報告は入れますので、先生方からも注意されるでしょうね」
「つまりコトミは既に教師陣のブラックリストに載っているという事か?」
「そんなものがあるんですか!?」
「いや、私も知らないが……」
そもそもそんなものがあったとして、私たちには縁がないものだからな……たとえあるとしても私は知らない。
「一時期は成績面でも問題があったから、ブラックリストがあれば確実に名前は載っているでしょうね」
「トッキーさんも問題ありだけど、部活動の成績が素晴らしいもんね~」
「そんな……」
宿題を忘れる、テストは赤点のトッキーは仲間だと思っていたのか、コトミは膝から崩れ落ちた。
「ショックを受けているところ悪いが、これからお前に対する罰を実行する」
「やめて、もう私のメンタルはズタボロよ……」
「なにわけわからないことを言ってるんだか……とりあえず、反省文を明日までに提出、次同じことをしたら生活指導部から呼び出されるだろうから、覚悟だけはしておけ」
「それって……」
「下手をすればお母さんたちが呼ばれるかもしれない」
「そ、そんなことになったらお小遣いが……というか、家から追い出される可能性も……」
タカトシたちの両親は日本にいないことが多いのに、そんなことになるのだろうか? てか、保護者呼出で面倒な事になるのはコトミではなくタカトシなのでは……
「と言うわけで津田さん、これ反省文用の原稿用紙です。五枚以上書いてくること。期限は明日の放課後まで。提出先は職員室か風紀委員会本部ですので」
「そんなに書けませんよー……せめて三枚になりませんか?」
「お前は反省する事が多いから、五枚でも少ないだろ。文句があるなら十枚にしてやってもいいが?」
「タカ兄の優しさに感謝します……」
相変わらず力関係がはっきりしてる兄妹だな……てか、前よりも遥かにタカトシが強くなってないか?
「では、今度の集会で今日決めたことを全校生徒に伝える、これでいいですね?」
「はい、問題ありません」
「発表は生徒会からしますか? それとも風紀委員がします?」
「連名でいいのではないでしょうか。風紀委員だけが問題視しているわけではありませんし」
「では、そのように。会長も問題ありませんよね?」
「あぁ。外で見た分には気にしないだろうが、やはり校内で短いスカートは気になるからな」
「それじゃあ、今日はこれでお終いだね~」
アリアが人数分のお茶を淹れてくれたので、私たちはそれで一服する事にした。ちなみに、コトミは反省文を書かなければと、急ぎ家に帰ったようだった。
反省文など書いた事ないな……