桜才学園での生活   作:猫林13世

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真面目なのか、不真面目なのか……


新聞部の課外活動

 校内の見回りをしていると、畑さんが新聞部員になにかを話しているのが聞こえてきた。

 

『では、本日より交代で例の場所を張り込みます。今日は私が』

 

 

 また何かスクープを狙って張り込みをするのかと俺は流したのだが、シノ会長はそうはいかなかった。

 

「畑! 夜間外出は認められないぞ!」

 

「いいえ、外出はしませんよ」

 

「なに? だが、張り込みをすると言っていたじゃないか」

 

「父に頼んでアパートを借りましたから」

 

「今日び部活動ってそこまでするの?」

 

 

 視線で問われた俺たちだったが、誰も部活動をしていないので答えようがなかった。

 

「なんでしたら一緒に来ますか?」

 

「いいのか?」

 

「えぇ。どうせ今日は私一人ですから」

 

 

 畑さんの誘いに、シノ会長とアリア先輩が目を輝かせた。そういえばこの二人、こういう事好きだったんだっけ。

 

「では、住所はここになりますので、各々準備をしてきてください」

 

「では生徒会役員共。各自家に帰って再集合だ!」

 

「それって参加しなきゃいけないんですか?」

 

「せっかくだからな! 部活動の課外活動の見学をさせてもらおう!」

 

 

 どうやら決定らしい……仕方ない。コトミの夕飯だけ用意してアパートに向かうとするか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシがまだ来ていないけど、私たちは畑さんから教えてもらった住所にやってきた。どうやらこの近くにスクープがあるらしいわね……

 

「このアパートの向かいの河川敷にもUMAが現れる、という情報を入手したのです」

 

「UMA?」

 

「河童です」

 

「本当か!?」

 

 

 会長ってこういうの好きそうよね……なんだか一人でテンションが上がってるし。

 

「河童か~。昔よく真似して遊んでたな~」

 

「真似?」

 

 

 河童の真似って何かしら……

 

「河童は水陸両生で、人のお尻に手を突っ込んで尻子玉を抜き取る、という伝説があります」

 

「………」

 

 

 タカトシがいたらツッコミを入れてくれたでしょうけど、生憎まだ来てないのよね……何をしてるのかしら。

 

「ふーん……UMAって世界中に存在してるんだな。実際会ったらちょっと怖いが」

 

「生憎私は非科学的なものは信じないので、まったく怖くありませんね」

 

「ところで畑。このアパート、家賃大変なんじゃないか?」

 

「ところがどっこい、格安物件でして。だから押入れの中にあるお札を剥がしたらダメですよ」

 

「うわぁぁぁぁぁ!」

 

 

 なんてところに遊びに来てしまったんだろう……今からでも遅くないから、私だけ帰ってもいいだろうか。

 

「すみません、遅くなりました」

 

「珍しいね。タカトシ君が一番最後って」

 

「洗濯物を片付けて、コトミの晩御飯の用意と並行して皆さんの分も作ってきましたので」

 

「これはかたじけない」

 

「で、何でスズは叫んでたの?」

 

「この部屋が事故物件だからだと思いますよ」

 

 

 タカトシが来てくれたお陰で、少しマシには感じるけど、それでもお札が貼ってあるような部屋で一夜を過ごしたくはないわね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシ君が用意してくれたもので食事を済ませた私たちは、交代で河川敷を見張ることにした。

 

「河童ですか……」

 

「あんまり信じていませんね?」

 

「いたらいたで面白いでしょうが、UMAの殆どがはっきりと姿を確認出来ていない訳ですからね」

 

「だからこそ追い求めるんです! ロマンを求めるんですよ」

 

 

 畑さんが力説している横では、タカトシ君が少し呆れ顔で容器を片付けている。

 

「そういえば、俺が何も持ってこなかったらどうするつもりだったんですか? 見たところそこらへんの用意はされていない感じですけど」

 

「私は非常食としてカップ麺を常備していますから」

 

「私たちは一食くらい抜いても問題はない!」

 

「あっ、シノちゃんダイエット中なの?」

 

「こら、アリア!」

 

 

 どうやら図星だったらしく、シノちゃんは顔を赤らめる。こういうところは可愛らしいわよね、シノちゃんも。

 

「ぱっと見た感じ日用品もありませんし、ちょっと買ってきますね」

 

「そこまでしていただくわけにはいきませんし、日用品は明日新聞部で買い足しておくことになっていますので」

 

「ならいいですが」

 

 

 腰を浮かしかけたタカトシ君だったけど、とりあえず買いに行く必要がなくなったのでその場に腰を下ろした。

 

「それにしても、こうして皆さんと一夜を過ごすのは久しぶりですね。桜才学園七不思議探検ツアー以来でしょうか」

 

「その後も、畑さんがタカトシ君に怒られてそのまま気絶させられたりして、一緒に朝を迎えたこともあるよ~」

 

 

 あの時は勇気を出してタカトシ君の布団に潜り込んだのに、いざ中を見たら畑さんだったというオチだったんだよね……

 

「萩村、そろそろ眠いんじゃないか?」

 

「いえ、大丈夫です……」

 

「眠気覚ましのコーヒーを淹れたよ~」

 

「ありがとうございます」

 

 

 残念ながらミルクもお砂糖も無かったからブラックだけど、タカトシ君は特に気にした様子もなく飲み始める。

 

「苦い……」

 

「アリア、さすがに苦すぎるぞ」

 

「そうかな~? でも、ミルクもお砂糖も無いし……困っちゃったね」

 

「津田副会長にミルクを――いえ、何でもないです」

 

 

 畑さんがエロボケを放とうとしたけど、タカトシ君とスズちゃんに睨まれて途中でやめてしまった。少し前なら私たちもノリノリで畑さんと盛り上がっただろうけどね。




コーヒー飲んで目が冴えるなんて幻想だろ……

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