桜才学園での生活   作:猫林13世

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ここのタカトシは遅刻しないだろうということでアレンジしました


夏休み明け

 夏休み終盤を成績上位者にしごいてもらったお陰で、私とトッキーの休み明けテストの結果は上々だった。具体的に言えば、クラスで真ん中よりちょっと高い位置に属していた。

 

「二人とも、夏休みはしっかりと先輩たちにしごかれてたんだね」

 

「あれだけ勉強させられてたら、いやでも覚えるよ……マキも来ればよかったのに」

 

「私は宿題も終わってたし、コトミみたいに赤点すれすれじゃないし。そんな私がコトミの家に遊びに行っても邪魔なだけでしょ? 精々先輩たちのお手伝いくらいしか出来なかっただろうし」

 

「まぁ、マキは先輩たちにしごかれてた私たちより成績上位だもんな」

 

 

 マキは相変わらず上位に名があり、今回も三十位くらいには名前があってもおかしくない結果なのだ。ちなみに、今回は定期テストではないので、結果は廊下に貼りだされることは無い。

 

「津田先輩も萩村先輩も忙しい中コトミたちの面倒を見てくれたんでしょ? 天草会長や七条先輩もだけど」

 

「後はお義姉ちゃんとサクラ先輩、カエデ先輩なんかもいたけどね~」

 

「お礼言っておいた方が良いんじゃない? コトミはテストの結果が上々だったから、今日の遅刻はお咎め無しだったんだしさ」

 

「寝坊しちゃったんだよね~」

 

 

 テストが終わり、気が緩んでついつい遅くまでダンジョンに旅立ってたら朝になってて、慌てて来たんだけど間に合わなかったんだよね。

 

「本来なら罰則掃除があったはずなんだし、その事も含めて生徒会室にお詫びとお礼を言いに行くべきだよ」

 

「そんなこと言って、マキがタカ兄に会いたいだけじゃないの?」

 

 

 マキも忙しかったらしく、夏休みの間は全然タカ兄と会えなかったし、もしかしたらそんなつもりなのかと疑って見たが、怖い顔で睨まれてしまった。

 

「バカな事言ってねぇで、お礼言いに行くならさっさと行こうぜ。私も部活あるしよ」

 

「あっ、待ってよトッキー」

 

 

 トッキーを追いかけるように教室から駆け出し、廊下を早足で進む。せっかく良い点数を取ったのに、廊下を走って怒られるのは避けたいもんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室で作業をしていたら扉をノックされた。

 

「はい? おや、コトミにトッキー、それに八月一日じゃないか、どうかしたのか?」

 

「会長たちのお陰で今回のテスト、無事に済ませる事が出来ましたので、お礼を言いに来ました」

 

「そうか。だがタカトシは今五十嵐に連れていかれていないぞ」

 

「カエデ先輩に? 何があったんですか?」

 

 

 さすがコトミ、タカトシが問題を起こしたとは思わないようだな。

 

「アイツのクラスメイトたちがエロ本を学校に持ち込んだとして、風紀委員会本部で訊問しているはずだ。本当なら五十嵐がやるべきなんだろうが、アイツはタカトシ以外の男子が駄目だからな」

 

「それでタカ兄を頼ったんですね。まぁ、それだったらタカ兄には家でお礼を言えばいいか。会長、アリア先輩、スズ先輩、本当にありがとうございました」

 

「それだけコトミとトッキーが頑張った結果だ。私たちはただ教えてただけだからな」

 

「感謝されるのって、悪くない気分だね~」

 

「これで満足しないで、これからも継続して今の順位をキープしなきゃ意味ないからね」

 

 

 萩村に言われた事をコトミとトッキーは困った顔で聞いていた。恐らく自分たちだけでは難しいとか思っているのだろうな。

 

「後輩の面倒を見るのも先輩の務めだからな! 定期試験の時もまた相手してやろう!」

 

「あんまり甘やかさないでくださいよ……まぁ、時さんは兎も角コトミは面倒みないと赤点だろうからな」

 

「あっ、タカ兄」

 

 

 風紀委員会本部から戻ってきたタカトシが、呆れながらも私たちに頭を下げる。

 

「妹がお世話になりました。また、ご迷惑をお掛けして申し訳ございません」

 

「なに。タカトシが頭を下げる必要は無いさ。お前は私たちに美味しい料理を食べさせてくれたりしてるからな」

 

「そもそもタカトシ君に対する恩をこれで返していかないと、私たちが大変だからね~」

 

「確かに。タカトシには返しきれないほどの恩がありますからね」

 

 

 こいつが入学してからというもの、私たちはどれだけこいつに借りを作った事か……それを纏めて返せとか言われたら無理だし、コトミの面倒を見る事でちょっとずつ返済していけば何とかなるだろうしな。

 

「別に貸しなんて作った覚えはないのですが……まぁ、とりあえずコトミがお世話になったのは事実ですから」

 

「それじゃあタカ兄、私は先に帰るね」

 

「あぁ。洗濯物取り込んどいてくれ」

 

「りょーかいだよ!」

 

 

 コトミたちが帰って行くのを見送り、私たちは残りの作業を再開する事にした。

 

「それにしても、コトミもトッキーもだいぶ成長してきたな」

 

「あれが持続してくれれば俺も楽なんですがね」

 

「コトミちゃん、覚えたことをテストで全部吐き出しちゃうからね~」

 

 

 アリアの言うように、コトミは詰め込むだけ詰め込んで、試験でそれを吐き出して、後には何も残らない頭の持ち主なのだ。タカトシが言うように、塾に通わせてもあまり意味がないというのは、この結果だけでも良く分かるのだ。

 

「とりあえず、補習にならないように気を付けてくれれば、後は何も言わないんですけどね」

 

 

 しみじみと呟いたタカトシに、私たちは同情の視線を向けるのだった。




成長してもすぐに元に戻るダメ妹……

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