桜才学園での生活   作:猫林13世

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ジェットコースターの方が、観覧車より怖い気がするんですがね……


アトラクション試乗バイト その1

 ゴールデンウィークになり、私たちはシノっちのお誘いで七条家が保有するテーマパークのアトラクション試乗のアルバイトに参加する事にしました。

 

「珍しく三人がシフトに入ってない日に、こうして別のバイトをするのも悪くないですね」

 

「参加者は、私と会長、桜才学園の生徒会メンバーとコトミさんですよね?」

 

「それと、七条家の専属メイドの出島さんですね」

 

「また桜才の畑さんが紛れ込んでいる可能性は?」

 

「今回は無いと思いますよ」

 

 

 サクラっちとお喋りしながら待ち合わせ場所に到着すると、既に他のメンバーが待っていました。

 

「シノっち、なんだかそわそわしていませんか?」

 

「いや~、楽しみ過ぎてな」

 

「そう言えばシノ会長、確か高所恐怖症だと聞いていましたが」

 

「乗れるものは全力で楽しもうと思ってな!」

 

「楽しむのは良いですが、一応アルバイトなんですが」

 

 

 タカ君のツッコミに、シノっちは「分かっている」という表情で力強く頷いたのだった。

 

「皆様、本日はアトラクション試乗のアルバイトにご参加いただきありがとうございます。本日、皆様の案内役を務めます、七条家専属メイドの出島サヤカです。まずはジェットコースターに三十回ほど乗っていただきます」

 

「そんなに乗るんですか?」

 

「一回や二回では意味がないですからね」

 

 

 コトミちゃんの疑問に、出島さんは短くそう答えてジェットコースター乗り場に案内してくれました。

 

「スズポン、今幾つですか?」

 

「なっ! 人前で女性に身体の事を聞かないでください!」

 

「でも、生死にかかわりますから」

 

 

 スズポンの身長を尋ねたのですが、スズポンは慌ててその質問に反論してきました。

 

「では、二人一組になってください」

 

「じゃあ私はカナお義姉ちゃんと乗ります!」

 

「じゃあ私は出島さんと」

 

「残ったのは私とタカトシ、萩村と森の四人か……裏表で決めるか」

 

「シノ会長、ジェットコースターは大丈夫なんですか?」

 

「楽しい事は別腹だ。ジャガイモが苦手でもポテトチップスは好き、という感じだな!」

 

「……ちょっと良く分からない例えですが、大丈夫なら別にいいです」

 

 

 タカ君も納得したようで、そのままペア決めをしたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカトシの隣に座る森を睨みつけながら、私はタカトシの後ろに腰を下ろした。こういう時、森の運の良さが羨ましいな……

 

「会長、そんなに睨みつけられると反射で手が出そうなんですが」

 

「随分と物騒だな……」

 

「それだけ殺気立たれたらそうなりますって……」

 

 

 タカトシに注意を受け、私は殺気のこもった視線を森に向けるのを止めることにした。それでも、恨みがましく森の頭部を見てしまうのは仕方ないだろう。

 

「残念でしたね、シノ会長。やっぱり、サクラ先輩が私のお義姉ちゃんになるんですかね~?」

 

「サクラっちが義妹になるのは、私としてもありですね」

 

 

 タカトシの妹と義姉が森の事を認めているのは、私たち的には大きなハンディだろうな……タカトシも森の事は満更でもなさそうだしな……

 

「まぁ、誰がタカ君の彼女になろうが、私的には歓迎ですけどね~」

 

「カナお義姉ちゃんは良いんですか?」

 

「私は既に、血の繋がらない姉弟プレイが可能ですから」

 

「なるほど、マニアックプレイですね!」

 

 

 カナとコトミが盛り上がっているのに意識を向けていた所為で、落下寸前になっている事に気付かなかった。

 

「何時の間にー!?」

 

「あらあら、凄い悲鳴ですね」

 

 

 落下しきったタイミングで、カナが面白そうにそう呟いたのを、私は薄れ行く意識の中で聞いたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 二回目は辞退した会長に付き添う形で、私もベンチで休む事にした。どうせタカトシの隣はサクラさんで決まりなんだから、無理して乗る必要はない。

 

「会長、大丈夫ですか?」

 

「油断していたとはいえ、まさか一回で気持ち悪くなるとは……」

 

「カナさんとコトミとバカみたいなことを話してるからですよ……ちゃんと前を見てなきゃ危ないですよ」

 

「そう言う事は落ちる前に言ってほしかったぞ……」

 

 

 恨みがましい視線を向ける会長に、私は落下しているコースターに視線を向けた。

 

「タカトシの隣なら、もう少し我慢できたかもしれんな」

 

「七条先輩と魚見さんがタカトシの隣を避けたのに、結局はサクラさんなんですもんね……タカトシは誰でも気にしない様子でしたが」

 

「アイツは恋心を理解しているのか?」

 

「畑さんの話では、タカトシも異性を意識したりはしてるみたいですが」

 

 

 前にサクラさんにキスした後に聞いた話なので、意識してる相手はサクラさんなんでしょうけどもね……

 

「萩村、この後の観覧車の試乗は参加して来い。私は一人でも大丈夫だから」

 

「ですが、まだ二十回以上コースターに乗るわけですから、もうしばらく話し相手になりますよ」

 

「そうか。私たちはかなり出遅れている気がするよな」

 

「何に出遅れているのかは聞きませんが、そうかもしれませんね」

 

「アリアは横島先生のアシストでキス、カナは親戚の結婚で一気にタカトシとの距離を詰めたからな」

 

「逆転ホームランでも打たない限り、私たちの勝ちは無さそうですよね……」

 

「いっそのこと既成事実を……」

 

「それは止めろー!」

 

 

 直接的な表現に、私は大声でツッコミを入れたのだった。




まぁ、どっちも乗りませんが……

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