桜才学園での生活   作:猫林13世

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とりあえず、あのボケはそのままで


黄金週間

 新学期早々遅刻した私は、生徒指導室で担任の先生に怒られることになった。

 

「アンタも成長しないわね」

 

「胸は成長してるんだけどね」

 

「そのボケ、津田先輩の前では止めた方が良いわよ」

 

「分かってるって……」

 

 

 マキに注意され、私はこんなことをタカ兄の前で言えばどうなるかを想像し、力なく項垂れる。最近はシノ会長たちも下ネタを言わなくなってきたから、タカ兄の周りでこんなことを言うのは私と轟先輩くらいになってしまったのだ。まぁ、ボケは相変わらずなので、タカ兄のツッコミの腕は落ちるどころかさらに磨きがかかっているのだが……

 

「憂鬱だな~」

 

「だったら遅刻しなければ良いじゃない」

 

「そんな事で遅刻しないならとっくに治ってるってば」

 

 

 注意だけで遅刻が改善されるなら、この世から遅刻など無くなっていると思うんだよね……

 

「コトミ、放課後じゃなくて昼休みじゃなかった?」

 

「げっ! ヤバい! 今すぐ行ってくる!」

 

 

 放課後だと思い込んでいたが、お説教は昼休みの内にするとさっき言われたんだっけ……私は猛スピードで生徒指導室へと駆け込んだ。するとそこには、担任の先生とタカ兄が待っていた。

 

「あれ、タカ兄? 何でここにいるの?」

 

「保護者として呼び出された。お母さんたちはまた出張だからな」

 

「面目次第もありませぬ……」

 

 

 タカ兄に迷惑を掛けるのだけは避けたかったのに、さっそくこれだもんな……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 どうやらコトミがこっ酷く怒られたらしいと、我々は畑からの情報で知った。まぁアイツの遅刻の回数は既に内申に響くどころではないくらいだからな……

 

「タカトシ、コトミの奴は大丈夫なのか?」

 

「とりあえず反省文と、次遅刻したら罰則課題を出すという事で今日は終わりました」

 

「タカトシ君と一緒に登校するようにすれば大丈夫なんじゃない?」

 

「あんな時間に起きるわけないですよ」

 

 

 服装検査とかが無くても、タカトシは大分早く学校に来ているからな。その時間にコトミが起きられるとも思わないが、少し無理をさせた方がアイツの為だと思うのだがな。

 

「これ以上酷くなる場合は、俺が叩き起こしてでも連れて来る事になってますから」

 

「明日からした方がいいんじゃない?」

 

「高校生にもなって、そこまで過保護にされなきゃ起きられないなら、この先やってけないだろうからな。すぐに実行するんじゃなく、少しくらいは自分で何とかしてもらわないと」

 

 

 萩村の言葉に、タカトシは非常に残念そうに答える。確かに高校生にもなって、親や家族に起こしてもらわないと起きられないというのは問題だな……

 

「カナ義姉さんのお陰で、勉強はそこそこするようになりましたがね」

 

「そうか……相変わらずカナはお前たちの家に入り浸ってるのか」

 

「前ほどではありませんよ。俺がバイトでいない日とか、カナ義姉さんが時間に余裕がある時だけです」

 

「今度、私たちもお手伝いしに行ってもいいかな~?」

 

「構いませんよ。むしろこちらからお願いしたいくらいです」

 

 

 タカトシの家に行く口実が出来た私たちは、浮かれ気分で家路についたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コトミの遅刻問題から数週間が経ち、いよいよ楽しい季節が近づいてきたと、会長が浮かれている。

 

「いよいよ来週からは、これだ!」

 

 

 ホワイトボードに掛かれた、ゴールデンウィークの文字。また何か計画してるのだろうか……

 

「シノちゃん!? ……あっ、ゴールデンウィークか。ゴールデンウォーターって書いたのかと思ってちょっとびっくりしたよ~」

 

「アリア先輩、眼科に行くか、滝行にでも行って煩悩を払ってくることをお勧めします」

 

 

 最近大人しくなってきてたけど、この人はこういう人だったわね……ここで言わない分、家で発散してるのかしら?

 

「そこでなんだが、七条家が所有するテーマパークのアトラクション試乗バイトがあるのだが、我々で行こうではないか」

 

「我々というのは、生徒会役員でという事ですか?」

 

「カナやサクラも都合がいいらしいし、どうせならコトミも呼んで大勢でいった方が楽しいだろうな!」

 

「バイトじゃないのかよ……」

 

 

 楽しむつもりが強すぎる会長に、タカトシが一応のツッコミを入れる。だがタカトシ本人もあまり効果があるとは思ってないようで、本当に形だけの一応なツッコミだった。

 

「と、とにかくだ! 来週のゴールデンウィークは、七条家が保有するテーマパークのアトラクション試乗のバイトを行う!」

 

「まぁ、お金を払って乗るよりは、乗るだけでバイト代がもらえる方が良いですからね」

 

「一気に現実感満載になったわね」

 

「家計をやりくりしている身としては、テーマパークに遊びに行くお金があるなら、食費なんかに使いたいからな」

 

 

 現実感ではなく、主夫感満載ね……とは言えなかった。タカトシが家計をやりくりしてるのは前から知っていたし、タカトシがそう言われたくないのも知っているから、私は心の中に留めたのだった。

 

「それじゃあ、当日は現地集合だからな! 詳しい事は後日メールで知らせるので」

 

「分かりました」

 

「それじゃあ、よろしくね~」

 

 

 先日は山で、今度はテーマパークか……七条グループってかなり手広いのね……




見間違いにも程がある……

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