桜才学園での生活   作:猫林13世

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それでいいのか、元生徒会長……


マラソン大会 後編

 三年生の部という事で、運営本部を任された俺は、スターターとしてスタート地点に向かう事にした。するとこの間生徒会室で見たOGの古谷さんがシノ会長とアリア先輩に話しかけていた。

 

「暇だから遊びに来たら、面白そうな行事やってるな」

 

「古谷先輩、一昨年までこの学園にいたじゃないですか。マラソン大会だってあったでしょうに」

 

「いや~運動会とかマラソン大会とかの前日に風邪をひいてた記憶しかないな~」

 

「古谷先輩、こういった体を動かす行事嫌いでしたものね~」

 

 

 つまり、サボってたという事か……仮にも生徒会長だった人がいいのか、それで……

 

「おっ、スターターは津田君なのか。それ貸してくれ」

 

「はぁ……まぁいいですけど」

 

 

 こんなのは誰がやっても変わらないし、横島先生と顔見知りという事で問題なく溶け込んでるようだしな……

 

「よーしそれじゃあ、一位の奴には津田君と一発やる権利を進呈しようじゃないか!」

 

「下らん事言ってないでさっさと準備しろ」

 

「おっ、年上に対してため口とは、なかなか度胸があるね、君は」

 

「普段はちゃんと敬語使いますけど、ツッコミの時はどうしても使っちゃうんですよ」

 

「というか、随分と気合が入ってる連中が多いな。どれだけ堕としてるんだ、君は?」

 

「知るか! てか、さっさと仕事しろ!」

 

 

 最近シノ会長やアリア先輩が大人しくなってきたから忘れてたけど、何でこの学園は下発言を普通に流してるんだか……

 

「よーい! バン!」

 

「スタートピストルじゃなく口で言ったよ、この人……」

 

 

 何のために渡したんだか分からなくなってきたな……まぁ、スタートしちゃったし仕方ないか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 古谷先輩の登場でちょっとおかしな展開でスタートしたが、私とアリアは問題なく走っている。

 

「スタートダッシュを決めたやつらも、ペース配分を間違ったからかあっさり抜いてしまったな」

 

「本気は最後まで取っておくものだもんね~」

 

「そろそろ給水ポイントが見えてくるはずだが」

 

「前に何人くらい走ってるんだろうね~」

 

 

 普通に実力者の連中はまだ前にいるだろうし、気合いで保ってる人間も数人いるだろう。少なくとも私たちがトップ、というわけではないだろうな。

 

「お疲れ様です」

 

「ここは萩村の担当なのか」

 

「ええ。本当はタカトシが担当するはずだったんですけど、私では古谷さんの相手は出来ませんので」

 

「まぁ、私たちも若干扱いにくいからな、あの人は」

 

 

 昔のままなら何とかなったかもしれないが、私もアリアもタカトシに変えられてしまったからな……

 

「むっ」

 

「どうしたの、シノちゃん?」

 

「いや、今『タカトシに変えられた』と心の中で呟いたんだが、なんだか意味深な気がしてな」

 

「下らん事考えてないでさっさと走ってください。会長と七条先輩は現状十位と十一位ですので」

 

「なんだ、前にそれだけしかいなかったのか」

 

 

 もう少しいるかと思ってたのだが、どうやら普段のペースでも問題なく上位に食い込めるようだな。

 

「ちなみに、先頭は五十嵐先輩ですので」

 

「五十嵐が? アイツ、そんなに足早かったのか」

 

「男子から逃げてるうちに早くなったのかな~?」

 

「私が見た限り、鬼気迫るものを感じましたが」

 

「やはりアイツはムッツリスケベだな」

 

 

 古谷先輩が勝手に設定した賞品がそんなに欲しいのか……だが、万が一本当に一発やれるとなると、不純異性交遊になるのではないだろうか……

 

「学外なら問題ない、か……アリア、少しペースを上げるぞ」

 

「そうだね」

 

「では、頑張ってください」

 

 

 萩村に見送られ、私たちはさっきまでよりもペースを上げ前を走る九人を追いかける事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 畑さんも走っているので、実況を任された私とムツミ先輩は、ゴール地点で先頭のランナーが帰ってくるのを待ち構えていた。

 

「そう言えばムツミ先輩、トップでゴールおめでとうございます」

 

「ありがとう。でも、タカトシ君が人助けしてなかったらきっと二位だったろうけどね」

 

「まぁ、タカ兄が本気で走ってたら、ぶっちぎりの一位でしたでしょうし、適度に手を抜いていたのが分かる走りでしたからね」

 

「タカトシ君、身体能力も高いもんね」

 

 

 雑談で盛り上がっていると、向こう側にいるタカ兄に睨まれたので、私は大人しく先頭のランナーが来るのを待つことにした。

 

「おっ、見えてきましたよ」

 

「ほんとだ! あれは……天草会長と七条先輩だー!」

 

 

 実況という事で、ムツミ先輩は観客を盛り上げるように喋っている。天然ピュア娘だが、このくらいは出来るようだな。

 

「さらに、二人の少し後ろには五十嵐先輩もついてきているー!」

 

「これは三人の一位争いですね」

 

「残りは直線三百メートル、誰が一位でもおかしくない展開だー!」

 

「おっと、三人の後ろに畑先輩もいますね~。さすが、日夜スクープを探して東奔西走してるだけはありますね」

 

 

 正直畑先輩は最下位争いかなと思ってたけど、やる時はやるんだな~。

 

「残り百メートル、これはタッチの差か~!」

 

「いや、胸の差じゃないですかね~」

 

 

 私のコメントが聞こえたのか、ゴール手前でシノ会長がヘッドスライディングをかまし、見事一位に輝いた。

 

「ヘッドスライディングでゴールする人、初めて見ました」

 

「私もだよ……」

 

 

 ちなみに、一位の景品はもちろん認められず、シノ会長には万雷の拍手が送られたのだった。




不純な動機で頑張るのは良くないですね……

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