桜才学園での生活   作:猫林13世

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描写が無かった一年生は簡単に終わらせます


マラソン大会 前編

 マラソン大会が開催されたがあいにくの空模様……雨は降らないだろうがイマイチテンションが上がらないな。

 

「トッキーは優勝を狙うの?」

 

「あ? ダリいから狙わねぇよ。てか、お前らと走るから優勝なんて無理だろ」

 

「私たちは精々真ん中くらいでゴール出来ればいい方だからね~」

 

 

 タカ兄ならぶっちぎりで優勝出来るかもだけど、私じゃそんなのは無理だから最初から諦めている。練習してなかったら恐らく、ゴールすることなく終わっていた可能性だってあるくらいだ。

 

「それにしても、随分と気合の入った人もいるね~」

 

「アイツは陸上部だからだろ。見せ場だとか思ってるんじゃね?」

 

「名前も描写もないのに張り切ってるなんてね~」

 

「訳のわからない事を言うな」

 

 

 トッキーにチョップされ、私は軽く舌を出して反省した。

 

「とりあえず完走を目標に頑張ろう! トッキーは迷子にならないように気を付けてね」

 

「だからお前らと一緒に走るんだろうが」

 

「トッキー……それは威張っていう事じゃないと思うんだけど」

 

 

 マキのツッコミに、トッキーは明後日の方へ視線を彷徨わせた。柔道部の走り込みの時もそうだけど、トッキーは道さえ間違えなければ凄い記録が出るんだろうけどね……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一年の部が終わり、次は私たち二年生の番になった。ちなみに一年生の部ではコトミたちが丁度半分くらいでゴールしていたので、私もその辺りでゴール出来ればいいいかなと思っていたりする。

 

「スズちゃんは一番を狙わないの?」

 

「良く考えなさい、ネネ。この学年にはムツミとタカトシがいるのよ? 体力バカ二人にどうやって私が勝てるって言うのよ」

 

「確かにムツミちゃんも津田君も早いけど、戦う前から諦めるなんてスズちゃんらしくないよ」

 

「ネネ……」

 

 

 私を鼓舞してくれるなんて、やっぱり親友っていいものね……

 

「気合いが入ってないなら、このスズちゃん用に改良したバ○ブを――」

 

「ネネ、貴女が途中でバテないように見張るから、ちゃんとゴールしましょう」

 

 

 感動した途端にこれだもんね……ネネは相変わらずで涙が出るわよ……

 

『よーい!』

 

 

 そんなやり取りをしていたら、スターターの会長の声が聞こえた。さっきの一年の部ではタカトシがスターターを務めたが、今回はアイツも参加者なので会長が代理を務めたのだろう。てか普通、こういうのって会長の仕事だと思うんだけど、何で一年の部ではタカトシが務めたのかしら……

 

『どん!』

 

 

 会長の合図とともにスタートピストルの音が鳴り響き、二年の部がスタートした。スタートダッシュを決める男子が大勢いたが、あんなの途中でバテて駄目になるパターンの典型じゃない。

 

「私たちは堅実に行きましょう」

 

「スズちゃん、私もう……」

 

「演技してないで行くわよ」

 

「せめて演技に対するツッコミをしてほしかった……」

 

 

 スタートしてないのに疲れ果てるなんてありえないものね……いや、体力がないネネならありえるのかしら。

 

「それにしても、あっという間に最下位の方だね」

 

「スタートダッシュを決めて喜んでる男子が落ちて来るだろうから、結果的には中間くらいでゴール出来るはずよ」

 

「何で男子はスタートダッシュなんてしてるのかな」

 

「一瞬だけでも先頭に立ちたいって願望じゃない? 私には良く分からないけど」

 

 

 私の目論見通り、無駄に体力を使った男子たちを抜いて行き、中間地点では上位すら狙える位置まで順位が上がっていた。

 

「今先頭走ってるのは誰ですか?」

 

「今は柔道部と陸上部の人間が競ってる感じだな」

 

「そうなんですか」

 

 

 中継点にいた大門先生に先頭の状況を確認すると、意外な事にムツミでもタカトシでもない他の人が先頭を引っ張ってるようだ。

 

「お前らも気合いみせろ」

 

「先生、疲れた……」

 

「情けない……それでも男か」

 

 

 給水して回復した私たちは、弱音を吐いている男子を他所にゴール目指して走り始めた。

 

「給水があってよかったよ。妙に喉が渇いて駄目だね」

 

「口で呼吸するから乾くのよ。こういう時は鼻で呼吸すれば楽になるわ」

 

「分かった。鼻息荒くすればいいんだね」

 

「イマイチちゃんと伝わってない……」

 

 

 隣で鼻息を荒くしながら走られるのは、かなり気が散るんだけどな……まぁ、これでネネが楽になってるならいいんだけどさ……

 

「スズちゃん……余計に疲れてきた」

 

「当たり前だろ!」

 

 

 余計な事をしてるんだから、その分疲れるのは当然である。そんなことも分からずにやっていたなんて……

 

「とりあえず、ゴールするまでは大人しくしてるね」

 

「そうしなさい……」

 

 

 私たちは結局、半分より前でゴールする事が出来た。要因は殆どの男子が中間点前で体力を使い果たし、後半はだらだらと走っていたからだろう。

 

「二年生の部、一位は柔道部主将の三葉ムツミさんです」

 

「いや~、勉強出来ない分こっちで頑張らないとって思ってましたから」

 

「ラストのごぼう抜き、凄かったですね」

 

「タカトシ君が泣いてた女の子を助けてなかったら、私は二位でしたけどね」

 

 

 なるほど、それでタカトシがトップじゃなかったのね。

 

「人助けとは、さすが副会長ですね」

 

「たまたま視界に入っただけです」

 

「ご謙遜を。未来のハーレム要員?」

 

「新聞部は余程潰されたいんですね」

 

「ごめんなさい、冗談です」

 

 

 何やってるんだか……まぁ、タカトシなら泣いてる子を無視して走り続けるなんてしないだろうと思うけど、まさかほんとに助けてたとはね。

 

「スズちゃん、顔赤いよ?」

 

「な、何でもないわよ!」

 

 

 これは疲れたからよ! そうに違いないわ!




畑さんのセリフ、楽勝で脳内ボイス再生が出来たんですが……

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