桜才学園での生活   作:猫林13世

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プール開き、津田編です


津田の実力

さっきの写真は全部没収して処分は五十嵐さんに任せた。何時焼き増ししたのか分からないが、畑さんはあの写真を50枚は持っていた……新聞部の部室に調査を入れた方が良いのだろうか?

 

「まったく畑さんには困ります……」

 

「アンタも大変ね~」

 

「萩村だって他人事みたいに言ってるけど、被害を被ってるんだろ?」

 

「どうせ私の体型は倫理に反するからね」

 

「何時まで自虐ってるんだよ……」

 

 

明日の水泳の授業に畑さんが来ると言っていたが、萩村はまぁ色々問題があって撮られないのだ。その事を自虐って落ち込んでいるのだ。

 

「体育合同なんだから、しれっと入り込めば良いだろ?」

 

「そうか、その手があったわね!」

 

「……言わなければ良かったか?」

 

 

何だかもの凄い地雷臭がした気がしたんだが、きっと気のせいだよな。

 

「そう言えば津田君は泳げるの?」

 

「ええまぁ、人並みには泳げるつもりですが」

 

「ちなみにどれくらい?」

 

「そうですね……400は軽く」

 

「それって凄いよ~」

 

「そんなものですか?」

 

 

別に大した事では無いと思うんだけど……

 

「津田って結構ズレてるわよね」

 

「えっ、そうかな?」

 

「良い意味でだけどな!」

 

「確かに~」

 

「えっ?……えっ?」

 

 

会長や七条先輩にもズレていると言われた……俺はズレているのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

昨日生徒会室でズレていると言われたので、柳本にも確認してみた。

 

「なぁ柳本、お前ってどれくらい泳げる?」

 

「そうだな……50くらいかな」

 

「それって普通なのか?」

 

「水泳を真剣にやってない人間には普通だろ」

 

「そうなんだ……」

 

 

やっぱり俺はズレてるのか……

 

「何々~何の話~」

 

「三葉はどれくらい泳げる?」

 

「私は100くらいかな~」

 

「やっぱ三葉はスゲェな」

 

「そうかな~?」

 

 

あの三葉でも100だと……やっぱり俺はズレてたんだな。

 

「そう言う津田はどれくらい泳げるんだよ?」

 

「……さぁ」

 

「もしかしてタカトシ君、泳げないの?」

 

「泳げるが……どれくらい泳げるのかは分からない」

 

 

実際限界まで泳いだ事なんて無いからな……

 

「じゃあ今日限界まで泳いでみてよ!」

 

「俺も気になるな」

 

「……期待してもらうほどでは無いと思うが」

 

 

泳ぐ事によって、俺は変人だと思われてしまうんではないか……そんな不安が頭をよぎった。生徒会の仕事は主に事務作業だし、運動部でも無い俺が三葉以上の距離を泳いだら絶対におかしな目で見られそうだな……かと言って手を抜くのは失礼だろうし、俺は如何すれば良いのだろうか。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

頭を悩ませたが、結論が出る前に水泳の授業になってしまった……気が進まないなぁ、一昨日の会長の気持ちが何となく分かる。雨でも降って中止になれば良かったのに……

 

「それじゃあ津田副会長、まずは1枚普通に撮ります」

 

 

約束通り畑さんが授業に参加している……この人2年生なのに1年の授業に参加するなんて、学園側は良く許可したよな。

 

「それじゃあ次は本気で泳いでください」

 

「泳ぐんですか?」

 

「泳いでるところを撮りたいので」

 

「……全力でですか?」

 

「ムービーも撮りますから」

 

「何に使うんだよ!」

 

 

動画まで撮られるなんて聞いてない。俺は断固として抗議する事にした。

 

「写真だけだって言ってましたよね!?」

 

「いいえ~私は授業にお邪魔するって言っただけですよ~」

 

「会長たちは写真だけだったじゃないですか!」

 

「だってこれは学園からの指示ですから~」

 

「学園から?」

 

 

なんだって学園がこんな事を畑さんに頼むんだ……

 

「来年からの生徒確保に、生徒会の皆様には一肌脱いでいただこうと」

 

「客寄せパンダか……」

 

 

学園もこんな事で生徒確保しようとするなよな。

 

「なので思いっきり泳いでください。むしろ限界まで!」

 

「如何なっても知りませんからね……」

 

 

学園の後ろ盾があるんじゃ、俺1人の力では如何しようも無い……俺は諦めて言われるがまま泳ぐ事にした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

はっきり言って、津田があそこまで泳げるとは思って無かった……今からでも遅くないから、水泳の日本代表にでも名乗り出ればと思うくらいの泳ぎだった。

 

「あの人って、確か生徒会の人だよね?」

 

「そうそう、中間テストでも上位に名前があったよね」

 

「それに結構カッコいいしね~」

 

「他の男子とは違う感じがするわよね~」

 

「「「分かる~」」」

 

 

クラスメイトの女子たちが、津田の事を見てそんな事を言っている。確かに津田は他の男子とは違う感じはするし、頭も悪く無い。それに加えて運動まで出来ると来れば、これは会長並に人気が出てもおかしく無いのだろう……だけど何故か面白く無いと感じてしまうのは何でだろう?

 

「ムツミ~アンタ津田君をスカウトした方が良かったんじゃないの?」

 

「私もそう思ったよ……」

 

 

運動が得意だって豪語してた三葉さんも、津田に圧倒的な差を見せ付けられて落ち込んでいる様子だった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

放課後、津田君が帰った後に私とシノちゃん、そしてカエデちゃんは畑さんに呼び出され視聴覚室に来ている。

 

「お待たせしました」

 

「何の用ですか?」

 

「何だ、五十嵐も聞いてないのか」

 

「それで畑さん、何で私たちは呼ばれたのかな~?」

 

「まずはこれをご覧ください」

 

 

そう言ってスクリーンに映し出されたのは、学校のプールで個人メドレーをしている男子生徒の映像だった。

 

「これは?」

 

「今日撮った津田副会長の泳ぎです」

 

「これ、津田君なの!?」

 

「所々畑の声が聞こえるのだが」

 

「泳法を変えてもらったんですよ。普通にクロールだけだとつまらなかったので」

 

 

最初津田君はクロールで泳いでいたんだけど、畑さんに言われて背泳ぎ、バタフライ、平泳ぎと泳法が変わっていっている……普通なら始めにバタフライなんだろうけど、津田君はメドレーをするつもりは無かったんだろうな。

 

「しかし良くクロールから背泳ぎに変えられるな」

 

「津田君の運動神経の良さが分かりますね」

 

「カッコいいね~」

 

「そこで皆さん、この映像を買いませんか?」

 

「何!?」

 

「そう言えばスズちゃんを呼ばなかったのは何で?」

 

「萩村さんは生で見てますから」

 

 

そう言えばスズちゃんは津田君と合同で水泳の授業だったのね。

 

「お3方にはお安くしておきますよ」

 

「ちなみに、おいくら?」

 

「本来ならこれくらいですが、特別価格でっと」

 

 

畑さんの提示してきた額は、それほど高い値段では無かった。シノちゃんもカエデちゃんも迷ってるみたいだけど、私は即決した。

 

「じゃあもらう~」

 

「毎度あり~」

 

「なっ、アリア!」

 

「ん~?」

 

 

だって津田君のカッコいい映像なら、それだけでおかずになるもの。

 

「私も買う!」

 

「会長!?」

 

「後は風紀委員長だけですね~」

 

「私は……」

 

 

カエデちゃんは買うか買わないか迷っているようだった。それなら私が決心させてあげようっと。

 

「早速お家で使うわね」

 

「つ、使うって?」

 

「もちろんおかずによ!」

 

「なっ!」

 

「うふ」

 

 

カエデちゃんは焦っているようだった。まさか私も津田君に好意を寄せているとは思って無かったのだろうな。

 

「買います!」

 

「はい、毎度~」

 

 

結局カエデちゃんも津田君の映像をお買い上げになった。後日この事が津田君にバレて、畑さんはお説教されてたけど、誰に売ったかは最後まで言わなかったようだった。

さすがに津田君に知られるのは恥ずかしいからね、畑さんは顧客の情報は漏らさなかっただけ立派なんだろうな。




実際400M泳ぐのって大変なんでしょうね。

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