桜才学園での生活   作:猫林13世

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ウオミーと森さんは別行動で


乙女の闘い

 来るバレンタインに向け、私と萩村はアリアに誘われて七条家を訪れた。どうやら出島さんがチョコ作りを指導してくれるらしいのだ。

 

「いらっしゃい」

 

「アリア、今日はよろしく頼むぞ」

 

「私じゃなくて、出島さんに言ってあげて。私も今日は出島さんに習う側だから」

 

 

 アリアも公言しているように、タカトシ狙いだ。だが今日だけは、同じ目的を持った者同士、邪魔をしないと決めたのだ。

 

「お待ちしておりました、天草様、萩村様」

 

「出島さん。今日はメイドとしてではなく、先生としてここにいるんでしょ~? だから、畏まる必要はないよ」

 

「そうでしたね、お嬢様。では天草さん、萩村さん、さっそくキッチンで作業を始めましょう」

 

 

 メイドとしての挨拶をしてから、アリアに注意された出島さんは、少し砕けた口調で挨拶をし直した。

 

「出島さんって、何でも出来るんですね」

 

「まぁ、お菓子作りは趣味程度ですが、お三方に教えることくらいは出来ますよ」

 

「多分タカトシも出来るだろうが、あいつに渡すチョコを作るのに、あいつに習うのはな……」

 

「何の楽しみも無いですね、それだと……」

 

 

 恐らく津田家のキッチンでもチョコ作りが行われているだろうが、そこにタカトシは存在しないだろう。今日はカナとサクラがシフトから抜けたとかで、代わりを任されてるとか聞いたからな。

 

「カナやサクラ、そして八月一日に負けないように頑張るぞ!」

 

「おー!」

 

「青春ですねー……何とも羨ましい限りです」

 

「出島さーん? 息が荒くなってるよー?」

 

 

 何を想像して興奮したのか分からないが、出島さんはアリアに注意されてもしばらくは息を荒げたままだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 コトミちゃんにお願いされ、私とサクラっちは津田家のキッチンでチョコ作り指導をしていた。

 

「八月一日マキです! 今日はよろしくお願いします!」

 

「……時です」

 

「えっと、津田コトミです。今日はわざわざ来ていただき、ありがとうございます。これ、お礼のタカ兄のパンツです」

 

「確かに」

 

「ちょっと会長? タカトシさんに怒られますよ?」

 

 

 サクラっちに怒られ、私は手に入れたタカ君のパンツを断腸の思いでコトミちゃんに返却した。

 

「それでは、これより、タカ君に渡すチョコを作りたいと……」

 

「未練タラタラですね」

 

 

 視線がタカ君のパンツから動かせないのに対して、サクラっちにツッコまれた。だって、あれがあればソロプレイの際に困らないじゃないですか……

 

「まぁまぁカナ会長。パンツはダメみたいですが、この捨てられていたシャツなら問題ないですよ」

 

「それでは、そのシャツで手を打ちましょう」

 

 

 本当はパンツが良かったですが、シャツでも十分満足出来ますからね。コトミちゃんから手渡されたシャツをバッグにしまい、いよいよチョコ作りを開始する事にした。

 

「まず、どのような感じで渡すのかを聞いておきましょう。本命ですか? それとも義理?」

 

「私は義理です。兄貴にはいろいろと助けてもらってるからな」

 

「と見せかけて○毛を紛れ込ませたりは?」

 

「しねぇよ!」

 

「じゃあ○液?」

 

「ほんとに大丈夫なのか、この人で?」

 

 

 時さんに蔑みの目で見られ、私は不覚にも興奮してしまいました。これはこれで、新しい世界が開けたのかもしれませんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何だか校内が騒がしいが、そんなに浮かれる事だろうか? 元女子高だと言う事もあって、こういった行事は盛り上がるんだろうな……

 

「あの、津田先輩」

 

「ん? あぁ、八月一日さんに時さん。何か用?」

 

 

 昇降口で声を掛けられ、振り返った先にはコトミの友人の八月一日さんと時さんが立っていた。

 

「これ、お世話になったお礼です」

 

「兄貴のお陰で、私も赤点回避出来てるので」

 

「ありがとう。すごくうれしいよ」

 

 

 わざわざ手作りしてくれたようだし、後でしっかりと食べて感想を言わなければ。

 

「おはよータカトシ君!」

 

「ああ、三葉か」

 

「これ、チョコレート」

 

「私からも」

 

「ありがとう、三葉。そして轟さんも」

 

 

 教室に到着するなり二人にチョコを渡された。三葉のは兎も角、轟さんのには変なものとか入ってそうだな……いや、せっかくもらったのに失礼か。

 

「おはよう……何故お前は血涙を流してるんだ?」

 

「モテ男には分からないだろうさ! この無念さが!」

 

「モテ男って、義理チョコだろ? そこまで欲しいか?」

 

「義理チョコって……その中に何個本命が混じってるか分かってるの!!」

 

「お、おぉ……すまん」

 

 

 柳本の迫力に押され、何故か頭を下げた。てか、クラスメイト(主に男子)から鋭い視線を向けられてるんだが、何でそんなに睨んでくるんだ……

 

「それはですね~、津田副会長がいろいろな女子とフラグを建てまくってるからですね~」

 

「……どこから現れるんですか、貴女は」

 

「普通にドアから入ってきましたって。てことで、コレあげる」

 

「どうも」

 

「貴方にはいろいろとお世話になってますし、エッセイも好評ですからね。新聞部からのお礼だと思ってください。間違っても私は、タカトシハーレムには入りませんから」

 

「だからそれは何なんですか……」

 

 

 畑さんからもチョコをいただいたが、轟さん以上に何が入ってるか不安なチョコだな……

 

「ちなみに市販されているチョコですので、特別に手を加えたりはしてませんよ」

 

「なら安心ですね」

 

「まさか普通に返されるとは……やはりお主は一筋縄ではいかないな」

 

「どんなキャラ付けなんですか……」

 

 

 ツッコミを入れたが、既に畑さんの姿は無かった。本当に神出鬼没な人だな……




渡すだけで何回か消費しそう……

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