桜才学園での生活   作:猫林13世

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本当に、どう賞賛を送れば……


不動の八番

 今日は桜才学園と英稜学園でソフトボールの試合が行われる。我々生徒会は応援としてグラウンドを訪れると、見知った人がユニホームを着てグラウンドに立っていた。

 

「カナじゃないか!」

 

「おや、シノっちではありませんか。それにタカ君にスズポン、アリアっちも」

 

「こんにちは。カナさんって部活をやりながら生徒会とバイトをしてたんですか?」

 

 

 タカトシの質問に、カナは笑顔で首を横に振った。

 

「今日は代理です。メンバーが一人、風邪を引いてしまったらしいので」

 

「ですが、急に言われて出来るものなんですか?」

 

 

 萩村が当然の疑問をぶつけると、カナは胸を張って答えた。

 

「昔少しやっていたんですよ。これでも、不動の八番と言われていましたので!」

 

「……どう賞賛を送ればいいんです?」

 

 

 なんとも微妙な二つ名に、萩村は困ったような顔でカナを見上げる。

 

「そう言えば、萩村さんは帰国子女でしたね。欧米風の挨拶を」

 

「いえ、もう日本も長いので……」

 

「まぁまぁ、そう言わずに……っ!」

 

 

 萩村にハグをしたカナが、ビクッと身体を震わせる。なんだ? いったのか?

 

「今『えっ、ブラしてるの』って反応しただろ……てか、してるの見た事あるだろうが!」

 

「そそそ、そんな事ないですよー」

 

 

 カナが誤魔化しきれずに視線を私たちに向け、親指を立ててグラウンドに戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 カナ会長の応援で桜才学園を訪れたら、タカトシさんたちも来ていた。私は桜才生徒会メンバーの方々と合流して、会長の試合を見学する事にした。

 

「サクラさんは、カナさんがソフトボールをやってるとこ、見た事ないんですか?」

 

「そうですね。会長が運動神経が良いと言う事は知っているんですが、実際に何かをしてるところを見たことは多くないですね……」

 

 

 水泳などは見たことありますが、球技をやってるとこを見たことは無いような気がします……

 

「おっ、良い当たり」

 

 

 桜才の選手が痛烈なセンター返しを打つと、カナ会長が回り込んで一塁に送球した。

 

「凄い反応でしたね」

 

「守備範囲が広いんですね」

 

 

 タカトシさんとカナ会長の今のプレーを振り返っていると、会長が何か恥ずかしさを隠してるような表情でこっちを見ている。その目を見て、会長が何を考えているのかを見透かそうとすると――

 

『何故今のプレーで、私にショタ属性があると分かったのだろう』

 

 

――と書いてあった。

 

「どうやら、何か勘違いしてるようですね」

 

「そのようですね」

 

 

 私は会長の目を見て何を考えているのかを見透かしたのだが、タカトシさんは特に目を見たわけでもないのに、分かっている様子だった。

 会長の活躍で桜才の攻撃をゼロ点で抑え、今度は英稜の攻撃。打席にはカナ会長が立っている。

 

「不動の八番と言われていたと言っていましたが、打撃は微妙だったのでしょうか?」

 

「どうなんでしょう……小技とかが得意なら、二番に入るでしょうし……」

 

 

 そんな話をタカトシさんとしていると、若干ボール球にも見える球を強引に打ち返し、その打球はぐんぐん伸びていき――

 

「ホームラン、ですか」

 

「そうですね」

 

 

――見事スタンドまで運んでいった。

 

「良くあんな球を打ちましたよね」

 

「きっと、ストライクゾーンが広いんですよ、会長は」

 

 

 普通なら見送るような球を打ち返し、そしてホームランにしたのだから、会長にとってあそこはストライクゾーンだったのだろう。

 

「?」

 

「何故カナさんがこちらを見てるんでしょう……」

 

 

 先ほどの守備の時同様、カナ会長が私たちの方を見て焦っているように見える。

 

『やはり、私のショタ属性があるとバレている!?』

 

「また勘違いしてますね」

 

「カナさんの思考回路はどうなってるんですか……」

 

 

 呆れたように呟き、タカトシさんはカナ会長から視線を外した。そのまま試合は進み、会長の活躍虚しく英稜の敗北となったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 試合が終わり、私はシノっちたちと合流した。

 

「後でメールしてもいいか?」

 

「もちろんです!」

 

「会長たちはプライベートでもお付き合いがあるんですね」

 

「まぁな。私たちは色々と似ているからな」

 

「似ている? まぁ、生徒会長同士ですし、勉強も出来ますからね」

 

 

 スズポンが常識的な共通点を挙げたが、私たちは頷きあってもう一つの共通点を教えることにした。

 

「「発情のスイッチも同じだったし」」

 

「嫌な共通点ですね……」

 

 

 タカ君のツッコミが入り、私とシノっちは満足して手を振り別れた。

 

「サクラっちに質問です」

 

「はい?」

 

「何故試合中のプレーを見ただけで、私にショタ属性があると分かったのですか?」

 

「そんな話は一切してないんですが……」

 

「え?」

 

 

 だって「守備範囲が広い」とか「ストライクゾーンが広い」とか言ってたのは、私がショタもいけると見抜いたからじゃなかったのでしょうか。

 

「あれは普通に、会長の守備に対する賞賛と、バッティングに対する賞賛ですよ。難しい打球を処理したり、ボール球を打ち返したり」

 

「じゃあ、タカ君にもバレてなかったんですか?」

 

「どうなんでしょう……タカトシさん、心の裡を見透かしたような顔をしてましたから」

 

 

 サクラっちの言葉に、私は今更ながらにタカ君のスペックの高さを思い出した。タカ君は読心術が使えるんだから、あんなことを考えていたら一瞬でバレるじゃないですか……

 

「どうしましょう……タカ君に変態だと思われてしまいます……」

 

「えっ?」

 

「え?」

 

 

 サクラっちが驚いたような声を上げたので、私はそれに反応して声を出した。サクラっちが何に驚いたのか、その事は教えてくれなかったのでした。




凄い事は凄いんですが、考えてる事が残念……

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