桜才学園での生活   作:猫林13世

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そりゃそうだよな……


お疲れのツッコミ組

 初日の出を拝んだ後、眠ってしまった萩村さんをタカトシさんが背負って別荘へ戻り、そのまま新年会となった。今回はさすがに料理担当は出島さんに任せ、タカトシさんも仮眠をとっている。

 

「森様もお休みになられたら如何でしょう。天草様たちはお嬢様たちと盛り上がっておられですが、森様はあそこに混ざる側ではありませんよね」

 

「確かにそうですね。五十嵐さんも気絶しちゃいましたし、私も少し休ませていただきます」

 

「料理が出来次第声をお掛けしますので、存分にお休みくださいませ」

 

 

 普段駄目な言動が目立つ出島さんだが、メイドとしては普通に優秀な部類なので、こういった時にしっかりとゲストをもてなせるのだろう。主である七条さんは先ほどからカナ会長たちと新年早々よくわからない話題で盛り上がっているので、出島さんが私たちに気を配ってくれているのだろう。

 

「寝顔のタカトシ様もそそりますね」

 

「………」

 

 

 前言撤回。やっぱりこの人も変態畑の人だった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ついつい盛り上がってしまって気づかなかったが、私たちの側ではタカトシとサクラも小さく寝息を立て始めていた。

 

「あらあら、さすがのタカトシ君もお疲れみたいね」

 

「仕方ありませんよ。徹夜で私たちの相手をしてたのですから」

 

「うむ、そうだな」

 

「何だかカナちゃんの言い方って卑猥に聞こえない?」

 

 

 徹夜で相手をしていたと聞いて、アリアが別の意味に解釈したようだった。実際には、タカトシは私たちのボケにツッコミを入れていただけなのだが、表現だけ見れば夜の相手とも取れる発言だったからな。

 

「タカ君になら、一晩中でも相手してもらいたいですけどね」

 

「なるほど……津田副会長は絶倫、と」

 

「畑、お前タカトシが起きたら怒られるぞ」

 

 

 私たちの会話から、畑がまた斜め上の受け取り方をした。まぁ、何時もの事だから気にはしないが、新年早々怒られるのを見るのも忍びないので、一応釘は刺しておいた。

 

「大丈夫ですよ。バレなければ何の問題もありません」

 

「忘れてるかもしれないが、萩村は睡眠聴取が出来るんだぞ? つまり、この会話も萩村は聞いていると言う事なのだが」

 

「……記事にはしませんので」

 

 

 もしかしたらタカトシも聞こえてるのかもしれないが、我々が確認しているのは萩村だけだ。だが、萩村から間違いなくタカトシへと伝えられるだろうし、タカトシに伝わればすなわち、畑が怒られると言う事になる。

 

「そう言えばシノちゃん、タカトシ君たちが寝ている間に、私たちはお風呂にでも入らない?」

 

「別に構わないが、何故だ?」

 

「だって、コトミちゃんが浜辺で遊んで砂だらけで部屋に入ってきたから」

 

「えへへ、つい遊び過ぎちゃいました」

 

「……そう言えば見かけないと思ったが、新年早々何をしてるんだお前は」

 

 

 全身砂だらけのコトミが、廊下で頭を掻いている。仕方ない、我々もお風呂でさっぱりする事にしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 人がいなくなる気配を感じ、俺はゆっくりと目を開けた。軽く寝ただけだが、これでも大分違うものだな。

 

「おはようございます、タカトシ様」

 

「おはようございます。あの、何故そんなところで?」

 

 

 なんとなく分かってはいたが、キッチンから望遠鏡を使って出島さんがこっちを見ていた。火を使っているからキッチンから離れられないのだろうが、よそ見してていいのだろうか?

 

「タカトシ様の寝顔を、少しでも長く見ていたかったのです」

 

「寝顔なんて見ても面白くは無いでしょうよ……」

 

 

 ただ目を閉じているだけで、普段の顔とさほど変わらないだろうし、別に見られても恥ずかしいと言うわけでもない。

 

「萩村様の寝顔は、子供みたいでしたけどね」

 

「あまりそう言う事言うと――」

 

「子供って言うなー! ………」

 

 

 子供という単語に反応し、一瞬だけ起きたスズだったが、再び眠りに落ちた。しかしまぁ、この睡眠聴取という特技は、本当に羨ましい限りだ。

 

「さて、する事も無いですし、手伝いますよ」

 

「それはいけません。本日はタカトシ様はゲスト、ホスト側である私が、全ての準備をしなくては――」

 

「年越しそばの準備も手伝いましたし、今更ですよ」

 

 

 本当はコトミの宿題でも見ようと思ってたのだが、シノ先輩たちと風呂に行ったようだし、出てくるまでは手伝うくらいしかする事が無いからな。出島さんなら料理中にふざける、と言う事は無いだろうけども、監視の意味を込めて手伝う事にしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 いつの間に寝てしまったのか覚えてないけど、目を開けると毛布が掛けられていた。

 

「これ……誰が掛けてくれたのかしら」

 

「あっ、おはようございます、カエデさん」

 

「お、おはよう……何でタカトシ君が私の部屋に……」

 

「寝ぼけてるんですか? ここは七条家の別荘で、カエデさんは会長たちの会話を聞いて気絶したそうです」

 

 

 思い出した。年明け早々卑猥な話を聞かされて、私は意識を失ったんだった……

 

「今何時かしら?」

 

「もうすぐ朝の八時ですね」

 

「まだそんな時間なんだ」

 

 

 日の出が六時くらいだったから、あれからまだ二時間くらいしか経ってないのね……

 

「まだ準備出来てませんし、もう少し休んでてください」

 

「私も手伝うわ」

 

「それには及びません。準備は私とタカトシ様で十分間に合いますので」

 

 

 手伝おうと思ったけど、出島さんに断られてしまった。それにしても、萩村さんも森さんも、よほど疲れてるのかぐっすり寝ているわね……あれ? そう言えば私が気を失う前、タカトシ君も寝てたんじゃ……

 

「タカトシ君は何時起きたの?」

 

「三十分前くらいですかね」

 

 

 仮眠にしても、ちょっと短すぎる気もするけど、まぁタカトシ君なら何でもありなのかな。




ツッコミって意外と疲れるんですよね……

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