桜才学園での生活   作:猫林13世

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梅雨入りしたばかりにこの話は……


雪の日の朝

 目を覚まして窓から外を見れば、そこには一面銀世界が広がっていた。私はとりあえず生徒会のメンバーに電話をすることにした。

 

『はい?』

 

「おお、タカトシ。起きてたか」

 

『えぇ、朝食の準備とかがありますので。それで、こんな時間に何か用でしょうか』

 

「物凄い雪が降って、辺り一面に積もっている。もちろん学校にも積もっているだろう」

 

『でしょうね。だから早めに出て雪かきでもしようと思ってたんですが、その電話ですか?』

 

 

 さすがは真面目なタカトシだ。言われなくても仕事を理解しているなんて。

 

「そのつもりだったのだが、どうせなら楽しもうじゃないか」

 

『楽しむ? 何かするんですか』

 

「童心に帰って雪合戦でもしないか? アリアとスズも誘うから、雪かきの前に少し体を動かそうじゃないか」

 

『……別に良いですけど、後悔してもしりませんよ』

 

 

 電話越しから伝わってくるタカトシの雰囲気は、どことなくコトミのそれに似ている気がした。兄妹だけあって、こういう事には本気なのだろうか?

 

「とりあえず、三十分後に集合な」

 

『分かりました』

 

 

 タカトシには伝えたから、後はアリアとスズだな。コトミは勝手についてくるかもしれないが、人数が多い方が楽しいし、何より雪かきを手伝ってもらえるからぜひついてきてほしいものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄についてきて生徒会のメンバーと雪合戦して遊んだあと、タカ兄以外のメンバーは疲れ果てて雪かきどころじゃなかった。他のメンバーも十分体力はある方なんだろうけど、動きにくい雪の上を、思いっきり走り回った結果、いつも以上に体力を消耗してしまったのだろう。

 

「だから言ったんですよ、後悔してもしりませんよって」

 

「あれはこういう意味だったのか……忠告は聞くものだな……」

 

「はぁ……コトミ、人数分のココアを買って来てくれ」

 

「了解だよ!」

 

 

 そう言って私は、タカ兄に向けて両手を差し出した。

 

「……ほら」

 

「それじゃあ、行ってくるね~」

 

 

 タカ兄から千円を預かった私は、五人分のココアを買いに自動販売機まで走る。他の先輩たちは疲労困憊だけど、何故か私はピンピンしてたから、タカ兄に頼まれたんだろうな~。

 

「あら? 津田さん、早いのね」

 

「五十嵐先輩。タカ兄についてきてさっきまで雪合戦してたんですよ」

 

「津田君が? 随分と子供っぽい事をしてるのね」

 

「ぶっちゃけると、シノ会長の発案です」

 

 

 私が正直に告げると、五十嵐先輩は納得したように頷いた。どうやら先輩の中で、タカ兄の方がシノ会長より大人だと思われているようだった。

 

「それで今は?」

 

「タカ兄と私以外全員ダウンしたので、温かいココアを買いに行くところです」

 

「そうだったの。呼び止めて悪かったわね」

 

「いえいえ、それでは」

 

 

 五十嵐先輩と別れ、私はさっさとお使いを済ませる事にした。もちろん、おつりを貰えるかもしれないから、しっかりと頼まれたことをしなくちゃね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 終業式までに、何とか雪かきを終わらせたのだが、電車などが遅れているために、終業式も遅らせる事になったようだ。ちなみに、生徒会室では会長たちがぐったりと机に突っ伏している。

 

「タカトシは兎も角、何でコトミは元気なんだ?」

 

「遊びに関しては、こいつは結構無尽蔵に動けますからね」

 

「タカ兄からお小遣いも貰いましたからね」

 

「お前が勝手に懐に入れただけだろ……まぁ、別に構わないが」

 

 

 期末試験も何とか赤点を免れたようだし、少しくらいやんちゃしても見逃してやろうと決めてたからな。まぁ、額が大きかったら許さなかったが。

 

「期末試験もタカトシたちのクラスが平均一位だったようだな」

 

「スズちゃんとタカトシ君がいる時点で、一位確定のような気もするけどね~」

 

「その反面、赤点補習が一番多いのもウチのクラスですがね……」

 

「今回は勉強会しなかったですからね」

 

 

 色々と忙しかったのもあり、今回はクラスメイトの面倒まで見ている暇がなかったのだ。そのせいで、結構な人数が補習になったりしたのだ……まぁ、今回は運が悪かったと諦めてもらったんだが。

 

「それにしても、今年ももう終わりか……」

 

「何だか一年が早く感じるわよね~」

 

「確かに。一日は長く感じるのに、不思議ですよね」

 

 

 しみじみと会話していると、シノ先輩が何やら考え出した。

 

「なんだか、このセリフ毎年言ってないか?」

 

「もう省略しても通じるくらい言ってるかもね~」

 

「よし、省略してみよう」

 

 

 そう言ってシノ先輩とアリア先輩は、俺の下半身に視線を向けた。

 

「もう終わりか」

 

「早いね~」

 

「先輩たち、タカ兄の息子はそんなに軟じゃないですよ!」

 

「……君たちは何の話をしてるのかな?」

 

 

 ニッコリと笑みを浮かべて目を見ると、三人は震えあがりその話題を終わらせた。うん、これで終わってくれると楽が出来て良いな。

 

「アンタ、最後までツッコミだったわね」

 

「別にこれで最後ってわけじゃないし、どうせ来年もボケ倒すのが目に見えてるんだけど」

 

「何を言っている! これで終わりじゃないぞ! 大晦日は全員で集まって、初日の出を見るぞ!」

 

「集まるって、何処に?」

 

「七条家のプライベートビーチの側にある別荘に」

 

「相変わらずブルジョワだな……」

 

 

 普通の高校生の家なら、そんな発想は出ないが、アリア先輩は良いとこのお嬢様だしな……ん? 七条家の別荘って事は、あの人もいるのだろうか。

 

「あの、そこって出島さんも来ます?」

 

「もちろんだよ~。車出してもらったり、色々としてもらわないといけないからね」

 

「……そうですか」

 

 

 まぁ、あの人は呼び捨てにすれば大人しくなるし、暴走しなければ万能だし、問題ないか……無いよな?




タカトシ相手に遊べば、そりゃそうなる……

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