桜才学園での生活   作:猫林13世

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高校の文化祭の思い出なんてない……


英稜高校文化祭

 英稜の魚見会長の招待で、私たち桜才学園生徒会役員は英稜高校の文化祭を見学する事になった。会長同士の交流もあるし、タカトシと英稜生徒会の二人が同じバイト先という縁もあり、結構気楽に誘ってくれたのだ。

 

「随分とにぎわってますね」

 

「我々もこれくらい盛り上がる文化祭を目指そうではないか」

 

「そうだね~……」

 

 

 会長の言葉に同意した七条先輩だったが、なんだか落ち着きのない感じで、辺りをキョロキョロと見回している。

 

「先輩、そんな落ち着きがないと、田舎者だと思われちゃいますよ」

 

「実はスカート穿いてくるの忘れちゃって」

 

「まさかその下も……」

 

 

 普段から穿いてない七条先輩の事だから、可能性はゼロじゃない。少しでも強い風が吹いて、コートの裾が捲りあがってりでもすれば……

 

「カナさんかサクラさんに事情を話して、ジャージでも借りてきましょうか」

 

「そうね。タカトシ、お願いね」

 

「いや、スズが行きなよ」

 

「言い出しっぺでしょ」

 

「だから、俺が女子のジャージを持って歩くのはちょっと……」

 

 

 タカトシが何を危惧していたのかを理解した私は、少しでも自分が楽をしようとしか考えてなかった事に気付かされた。仕方ない、ここは私が行くしかないのかな。

 

「良く来たな、お前ら」

 

「むっ、現れたな!」

 

「……何ですか、この流れは」

 

 

 魚見さんを捜しに行こうとしたところに、タイミングよく現れたのは良かったのだが、天草会長となんかおかしなテンションで盛り上がってるし……

 

「丁度良かったです。カナさん、ジャージの下をアリア先輩に貸してもらえませんか?」

 

「保健室に予備のジャージがあると思いますが、どうかしたのですか?」

 

 

 貸してほしいと言われても、用途が分からなかったのだろう。魚見さんはタカトシに近づき理由を尋ねた。

 

「実はですね――」

 

 

 さすがに大きな声で言えることではないので、タカトシは魚見さんに耳打ちをして、ジャージを借りたい理由を説明している。

 

「そう言う事でしたか。てっきりタカ君がジャージ女子を見たかったのかと思いましたよ」

 

「何処をどう解釈したらそういう発想になるんですかね」

 

「まぁ、細かい事は兎も角、サクラっち、保健室に案内してあげてください」

 

「分かりました。七条さん、こっちです」

 

「我々は外で待たせてもらおう」

 

 

 結局全員連なって保健室に向かう事になった。そう言えば、しれっとコトミちゃんがついてきてるけど、何しに来たのかしら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 保健室でジャージを借りたお陰で、周りを気にする必要が無くなったので、思いっきり楽しむことが出来そうね。だけど、さっきから男子も女子も、私たちの事をちらちら見てくる気がするんだけど、まだ何か着てくるの忘れたのかしら?

 

「さすが桜才の皆さん。英稜でも大人気ですね」

 

「主に見られてるのは、アリアとタカトシのような気もするがな」

 

「タカトシさんは英稜でも有名ですからね」

 

「アリアっちは、初見でも男子を興奮させるスタイルですからね」

 

「まぁ!」

 

 

 カナちゃんの言葉に、私は興奮して少し濡れてきてしまった。パンツを穿いてないから、借りたジャージにシミが付いちゃうよ。

 

「皆さんには、料理研の出し物に参加してもらおうと思います」

 

「何を作るんですか?」

 

「お味噌汁と野菜炒めですね」

 

「随分と定番のものを作るんですね」

 

「そんなに凝った物を作る時間もありませんしね」

 

 

 サクラちゃんの案内で、私たちは家庭科室で行われる調理実習に参加する事になった。グループでやるらしく、私たちは六人で料理を作ることにした。

 

「それじゃあ、分担して作ろう。私とカナは野菜を切るから、タカトシとアリアが調理、サクラとスズは後片付けを頼む」

 

「なんか納得いかないですが、愚痴を言っても仕方ないのでやりましょう」

 

 

 男の子のタカトシ君が調理担当と言う事で、周りから注目されたけど、そんなことはお構いなしにタカトシ君は慣れた手つきで調理を進めていく。

 

「さすが主夫だな。他のグループに大差をつけているぞ」

 

「勝負じゃないんですから、大差とか無いでしょ。はい、出来ました」

 

「やはりタカ君は嫁にしたい男子ナンバーワンですね」

 

「……何ですか、その嫁にしたい男子っていうのは」

 

「桜才裏新聞で掲載されていた、マル秘アンケートです」

 

「……今度畑さんに会ったら説教ですね」

 

 

 タカトシ君に秘密だって言われてたはずなのに、カナちゃんはあっさりとその事をバラしてしまった。まぁタカトシ君なら、いずれその秘密にたどり着いてたでしょうし、今教えてもあまり変わらないのかな?

 

「それじゃあ、頂こうか!」

 

「そうですね。せっかくタカ君の愛がこもった料理が目の前にあるんですから、冷めないうちに食べましょう」

 

「なんか、誤魔化してる気がするんだよな……」

 

 

 タカトシ君の追及を避けるために、シノちゃんとカナちゃんが積極的に話を先に進めた。タカトシ君も疑ってはいるが確証がないので、首を傾げながらもそれ以上追及する事は無かった。

 

「美味しいよ、タカ兄」

 

「……そういえば、お前は何をしてたんだ?」

 

「心の迷い人として、迷子センターに行ってた」

 

 

 ちゃっかりとタカトシ君の分の料理を食べているコトミちゃんに、タカトシ君が呆れた目を向ける。準備も何もしてないのに、食べるタイミングになると現れるなんて、さすがコトミちゃんよね。普段からタカトシ君にご飯の準備をしてもらってるから、嗅覚だけで料理が完成した事に気付けるなんて。




祭りは嫌いです……

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