生徒会新聞の更新の為、今日は生徒会室で内容に関する意見を出し合う事になった。
「そういえば、共学化してから新しい校則が追加されているんだが、あまり知られていないようだ。それを生徒会新聞に載せるのはどうだろうか」
「良いと思いますよ。でも、一字一句忠実に書くのは大変だと思いますよ。文字数の関係もありますし」
「そうだな。少しかみ砕いてみよう」
タカトシの進言を受け入れ、とりあえず分かりやすく言葉を砕くことに決めた。何せ生徒会新聞と名を打っているが、そこまで堅苦しいものではないのだから。
「では萩村、最初の新校則を言ってくれ」
「学園内での男女の恋愛を禁ず」
「ふむ……」
その校則をかみ砕いた表現にするには……
「よし! 『リア充禁止』っと」
「粉砕したな……」
的確な表現だと思ったのだが、タカトシは少し呆れてる様子だった。まぁ、細部は後で決めるとして、今はこれで行こう。
「次、異性の手から肘以外の身体の部位に触れるの禁止」
「えっ、そうなんだ。俺ら結構触れ合ってますよね。スズを肩車したり、シノ先輩を持ち上げたり」
「気軽に出来んもんだな」
タカトシはそれ以外にも、溺れた五十嵐を持ち上げたり、水上騎馬戦で三葉を持ち上げたりとしてたからな。そう考えるとタカトシはかなりの回数、校則違反をしていたことになるのか。
「そんな校則あったんだねー。それじゃあタカトシ君に踏んでもらう事も出来ないね」
「何企んでるんですか」
アリアが最近、タカトシ限定のMに目覚め始めているからな……まぁ、あの出島さんや横島先生もタカトシに責められたいと考えてるようだし、アリアや私がタカトシ限定のMに目覚めても仕方ないのかもしれないな。
「失礼します。男女間の立場を明確にするのは良い事だと思います。あとこれ、報告書です」
報告書を持ってやって来た五十嵐が、新校則について話し合っている我々に意見を述べてきた。まぁ、風紀委員長としての立場から考えれば、そうなるよな。
「最近ふしだらな空気が蔓延していますからね」
「ごめんなさい」
「え?」
アリアが急に謝ったので、五十嵐が面食らった顔をしている。
「実は、カエデちゃんの三つ編みを見るたびに、お尻がムズムズしてたの」
「………」
「気絶してますね、これ」
「そんなに過激だったかなー?」
アリアの発言は、それほど刺激的だとは私は感じなかったが、五十嵐には刺激が強かったのだろう。立ったまま気絶した五十嵐を、タカトシが保健室まで運んでいる間に、生徒会顧問の横島先生がやって来た。
「どうも。生徒たちから尊敬されるベテラン教師、横島ナルコです」
「言い切りましたね……」
横島先生を尊敬してる生徒なんているのだろうか、とタカトシがいればそういったツッコミが発生したかもしれないが、今はいないので軽く流して終了した。
「しかしそんな私も、教育方針で悩んでいるのよ」
「生徒の立場からの意見としては、アメとムチを上手く利用した指導が一番いいのでは?」
「なるほど……」
私の意見を吟味しているのか、横島先生が真面目な顔で考え込んでいる。この人のこんな表情は初めて見たかもしれない。
「ちなみに、その場合ってどっちが罰になるんだ?」
「先生が思ってる方ではありませんね」
この人は本当に……まぁ、それがこの人が生徒会顧問たる所以だから仕方ないのかもしれないけどな。タカトシがいたら大目玉を喰らってたかもしれないと、理解しているのだろうか……
カエデさんを保健室に運んで戻ってきたら、どうやら生徒会新聞に掲載する事に関する話し合いは終わっていた。後で精査しないとまた問題になりそうな予感がするんだよな……
「おっ、カナからメールだ!」
「カナさんから?」
シノ先輩は機械音痴で、大抵の事は電話で済ますのに、カナさん相手ならメールなのか……まぁ、少しずつ慣れていけば、シノ先輩も自由にメールが出来るようになるだろうしな。
「なんと! カナはあがり症で人前に立つのが苦手だったのか。これは、同じ生徒会長としてアドバイスせねばいけないな」
生徒会長としてアドバイスする理由は分からないが、人に何かを教えるのは良い事だと俺も思う。
「『そう言う時は、人をナスに見立てるとよい。キュウリも可』っと」
「ジャガイモは?」
普通は芋かかぼちゃってアドバイスだと思うんだけど、何でナスとかキュウリなんだろう……何か意味があるのだろうか?
「来週、英稜が文化祭で、そのお誘いが来ているぞ」
「あぁ、そう言えばそんなこと言ってましたね」
先日のバイト帰りに、カナさんとサクラさんが話してるのを聞いた気がするな。特に誘われなかったのは、生徒会として誘ってくるからだったのだろうか。
「屋外イベントも充実しているそうだ。上着を忘れないようにとの注意書きもあるぞ」
「丁寧ですね、魚見会長」
「それから、迷子預かり所は昇降口から入ってすぐの教室だそうだ」
「その捕捉は必要なのでしょうか?」
若干青筋を立てたスズに、さすがのシノ先輩も余計な事は言わなかった。
「それにしても、他校の文化祭は参考になるかもしれませんね」
「そうだな。カナとサクラはウチの文化祭にも来たことがあるし、今度は我々が英稜の文化祭を見学して、より良い文化祭を目指そうではないか!」
「シノちゃん、お祭り大好きだもんね~」
「そ、それは関係ないだろ!」
あぁ、お祭り好きだからあんなにテンション高かったのか……でもまぁ、確かにお祭りはテンションが上がってもおかしくは無い行事だから、行き過ぎない限り温かく見守ることにしよう。
あんまり厳しいと反発が凄そうだ……