少子化の影響で共学化した私立桜才学園。
そこに入学していきなり生徒会に入れられた俺、津田タカトシ。
正直言って生徒会なんて荷が重過ぎる。
そう言ったら・・・
「何を軟弱な事を、私なんて月一で重い日があるんだぞ!」
などと言われた。
正直しったこっちゃない。
現在生徒会室で話し合いをしている。
「共学化にあたって、我々は様々なものを共有する事となる。」
「例えば?」
「う~む・・・プールの水とか。」
「今年の夏はドキドキね!」
・・・辞任したい。
「ん?如何した、津田。」
生徒会長の天草シノ先輩。
半ば強引に俺を生徒会に入れた張本人、だが面倒見は良い。
「会長、ここなんですけど・・・」
「!?」
な、何だ?
「君は私の右腕なんだから、右側に立て~!」
「ええ~。」
とても変な人だ。
「シノちゃん。そこまで徹底しなくても良いんじゃない?」
「そうか?アリアがそう言うなら・・・」
彼女は七条アリア先輩。
共学して間もないのに、既に男子生徒の憧れ的な先輩だ。
「近頃イジメが流行ってるらしい。」
「イジメはいけないこと?」
「当たり前だろ。」
うん、会長の言う通りイジメは良くないな。
この学校ではそんな事無いんだろうが、最近イジメが原因で自殺する人も居るくらいだ。
何事も行き過ぎは良くないんだろうな。
「でも、家の父は母に毎晩イジメられて喜んでるわよ。」
・・・それは意味が違うのでは。
「うむ、仲睦まじいんだな。」
天然?
今の発言、学校でして良いものなのだろうか。
しかも会長もあっさりその話題に乗るし・・・
「ふわぁ~」
おっと。
ついついあくびが出てしまった。
「午後って何で眠くなるんでしょうね。」
「そうだね~。私も眠いよ~。」
「お昼の後だからだろう。」
「そうですかね?」
「ああ、お腹が溜まれば眠くなるものだ!」
「そうだね~。」
確かに一理あるかもしれない。
人間、空腹が満たされれば眠くなるのだろう。
・・・あれ?さっきから萩村が会話に入ってこない。
「萩村?」
「・・・・・・」
「あれ?」
「すーーすーー」
寝てる!
まさか本当に寝てる人が居るとは思わなかった。
「ちなみにスズちゃんは本当にお昼寝をしないと持たないの。」
・・・やっぱり子供だ。
しかし、気持ちよさそうに寝てるな。
何だか俺も寝たくなったぞ。
午後の授業が終わり再び生徒会室。
そこに居たのは俺と同い年の萩村スズ。
身長控えめだが学年トップの頭脳の持ち主だ。
・・・だがなんか偉そうな感じがする。
「何?」
「いや、何で腰に両手を置いてるのかな~って思ってさ。」
「ああ。私、こんな見た目だからナメられないようにこのポーズをとってるのよ。」
「へぇ~。」
小さいとそんな悩みがあるんだな~。
俺は幸いにして身長には恵まれている。
同学年の中でも大きい方だ。
そんな事を考えていると・・・
「でも、このポーズには大きな問題がある。」
「それは?」
あのポーズの問題と言えば、偉そうに見えるしか無いと思うんだが。
それ以外に何か問題でもあるのだろうか。
「前にならえの先頭を髣髴とさせる。」
・・・はい?
「このジレンマ、如何すれば良いの!」
「すげー如何でも良い。」
前にならえなんて小学校以降した事も無い。
しかも先頭なんて縁の無いものだったし、思いつかなかったわ。
「別に誰もそんな事思わないから、気にしなくて良いんじゃない?」
「それは私しか先頭を経験してないって言うのか~!」
「落ち着きなさい。」
フォローしたのに怒られたー。
少し気にしすぎのような気がするんだが・・・
まあ、萩村には萩村にしか分からない悩みがあるんだろう。
俺だって全部分かろう何て思わないし。
しばらくして会長と七条先輩も生徒会室にやって来た。
「より良い学園を作るためには生徒の声を聞くのが大切だ。」
確かに、共学化するに当たって色々と問題があるな。
例えば男子トイレの少なさとか、女子が多いので女子同士での会話に遠慮が無いとか、他にも色々あるだろう。
「そこで、目安箱を設置しようと思う。」
目安箱か・・・
徳川吉宗が庶民の声を聞くために設置したのが有名だが、実際に学校に投書している人を見たことが無い。
「でも会長。目安箱って以前にも設置しましたけど、あんまり投書無かったですよね。」
あっやっぱり投書されなかったのか。
「うむ、なので今回は入れたくなるように一工夫してみた。」
そう言って会長は目安箱を取り出した。
その目安箱の入れ口には、一本の線が引いてあった。
「これは?」
「ついつい入れたくなるだろ?」
「いや、不信任ものだろこれは・・・」
発想が思春期過ぎますよ・・・
翌日
「今回は随分と投書が来たぞ!これもあの工夫のおかげだな。」
「違うと思いますけど・・・」
とりあえず投書を読んでいく。
なになに、社会科の先生にカツラ疑惑、食堂のおばちゃんは実は若い、何だこれは・・・
「あっ、これ津田君宛てだね。」
「俺に?」
生徒会に入ってまだ日が浅い俺に、いったいなんの要望だ?
え~と・・・
「会長に手を出したら、穴ぶち抜きます。」
「・・・・・」
「シノちゃんのファンからね。あっこれもそうね。」
神様~。
俺はいったい何をしたって言うんですか。
普通に高校に通ってるだけなのに、何故こうも狙われなきゃいけないのですか!
っと、現実逃避をした所で何も変わらないだろうな。
「津田君の初めてが狙われてるのね!」
「何!?津田の初めてだと!」
「うん!しかも後ろの!」
「おお!津田はそう言う趣味なのか。」
「ちげーよ!」
こうしてまた一日、ツッコミで終わっていくのか・・・
萩村、お前も少しは手伝ってくれよ。
次回は伝説の校内案内です。
どうアレンジして行こう・・・