桜才学園での生活   作:猫林13世

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時期的にどうかなとも思いましたが、これもめぐり合わせでしょうか……


避難訓練

 本日は避難訓練が予定されているが、より現実味を増す為に、いつ行われるかは伝えられていない。

 

「なんだかみんなそわそわしてるわね」

 

「まぁ、いつ始まるか分からないから仕方ないのかもしれないけどな」

 

「そう言えば今朝、七条先輩が着替えの途中で始まったらどうしようとか言ってたわね」

 

「……ちゃんと服着てくるんだろうな」

 

 

 あの人の事だから、本気で着替え中でも逃げてきそうな気がする……

 

「さすがの七条先輩でも、着替え途中で外に出る事は――ありそうね……」

 

「だよな……」

 

 

 自宅敷地内ならともかく――よくは無いが――学校でそんなことしたら、あの人の事だからただじゃすまないだろうな……本性を知ってなお、あの人が好きだという男子は後を絶たないのだから。

 

「おらー、お前らそわそわしてないでさっさと席に着けー! 今から小テストをやるぞー!」

 

「何かテンションおかしくない?」

 

「あの人がおかしいのは何時もの事だろ?」

 

「それもそうね……クビにならないのが不思議なくらいおかしいものね」

 

 

 なんとなく酷い事を言っている自覚はあるが、横島先生は本当におかしい人だからなぁ……

 

「何時避難訓練が始まるか分からないから、気になってテストに集中できませーん」

 

 

 三葉が予防線を張ろうとしてる気がするんだが……

 

「避難訓練は次の時間だから、安心してテストを受けろ」

 

「バラしちゃったよ……」

 

 

 緊張感を保つためにって案だったのに、時間バラしていいのかよ……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 避難訓練の途中で、本当に地震が起こってしまったので、私はクラスメイトを落ち着かせるために行動した。

 

「机の下に避難して、窓からは離れろ。教室の電気を消して二次災害を防ぐんだ!」

 

「さすがシノちゃん、こんな時でも冷静だね~」

 

「まったくです。さすが全校生徒から毛深い――じゃなかった。気高いと認識されているだけの事はありますね」

 

「認識されているのは後者だけだよな? な?」

 

 

 私は断じて毛深くは無いぞ! ちゃんと処理してるし、間隔もそれほど短くは無いはずだ……比較対象がいないから分からないが。

 

「とりあえず避難だ。慌てずゆっくり校庭に移動するぞ」

 

 

 教室から移動している途中で、タカトシたちと合流した。

 

「無事だったか」

 

「まさか訓練の最中に本当の地震が起こるとは……」

 

「ん? コトミから電話だ――どうした? ……はっ? ドアが開かない? あぁ、分かった。すぐに行く」

 

 

 タカトシが携帯でコトミと話している間、我々生徒会役員以外の生徒は校庭に避難した。

 

「コトミちゃん、どうかしたの?」

 

「さっきの地震でドアが開かなくなったらしいです。あの教室は前から立て付けが悪かったから、さっきの揺れで完全にゆがんでしまったのでしょうね」

 

「とりあえず、コトミたちの教室に向かうぞ!」

 

 

 取り残された生徒を救うのも、我々生徒会役員の役目だからな! 訓練だけじゃなく、本当に地震が起きてしまったのも、もっと大きな地震が起こった際にも冷静さを欠かないようにするための訓練になったかもしれないな。不謹慎かもしれんが、それほど大きな地震じゃなくてよかったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 タカ兄にヘルプの電話を掛けたが、閉じ込められた恐怖から泣きそうになるクラスメイトもちらほらと見受けられる。

 

「だりーな。訓練だけでもだるいのに、まさか閉じ込められるとは」

 

「トッキー、このドア蹴り飛ばせないの?」

 

「誰が弁償するんだ?」

 

「そりゃ、壊したトッキーでしょ」

 

「ぜってーにやらねー!」

 

 

 さすがのトッキーも、修繕費を考えて蹴り飛ばさなかったのか……タカ兄が来てくれれば、何とかなるかもしれないけど、どうやって助けてくれるんだろう?

 

「あっ、津田先輩だ」

 

「タカ兄! 早く出して~! このままじゃ漏れちゃう」

 

「……お前、この状況で冗談を言うとは、良い度胸してるな」

 

「あっ、やっぱりバレた?」

 

 

 本来なら授業中なのだ。トイレを我慢している事は確率的に低いだろうと判断して、タカ兄は私が冗談を言っていると判断したのだろう。まぁこのくらいの冗談を見抜けないようじゃ、タカ兄じゃないもんね。

 

「冗談はさておき、本当に早く出して~! 閉じ込められた恐怖から泣きそうな子だっているんだから」

 

「早く出してって、なんだかエロい響きよね~」

 

「その気持ち分かるぞ!」

 

「分かるな……ちょっと待ってろ」

 

 

 そう言ってタカ兄は、ドアを調べだし、何かを取りにどこかへ行ってしまった。やっぱりタカ兄も、ドアを破壊して――という行動はとらないようだ。

 

「これでズレを直して……スズ、ちょっとこっち押えといて」

 

「分かったわ」

 

 

 スズ先輩に手伝ってもらってるっぽいけど、スズ先輩の力で大丈夫なのかな? あの容姿じゃ相応の力しかないだろうし……

 

「無事出て来たら張ったおす!」

 

「壁越しに読まれただと……お主、なかなかやるな」

 

「厨二病もほどほどにしろって言ってるだろ……よし、これで動くな」

 

 

 そう言ってタカ兄はドアをスライドさせ、私たちを救出してくれた。

 

「さっすがタカ兄! 本当に頼りになる男だね~」

 

「会長、この教室のドアは早急に修理した方がよさそうですね。今回はまだよかったですが、大地震が起こった時にこの状況じゃ避難出来ませんよ」

 

「まぁ確かにな。学校に進言しておこう」

 

 

 無事に助かった私たちの横で、会長とタカ兄が真剣に話し合っている。訓練だったけど、問題点が見つかったので良かったのかな? それともまだまだ見つかってないだけで問題点があるのだろうか……まぁ、そんなことは私が考える事じゃないし、今は助かった事を喜ぼう。




不真面目にやってて、すみませんでした……避難訓練、大事です

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