桜才学園での生活   作:猫林13世

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ようやく原作に戻ってこれた……


シノがお悩み相談

 テストも終わり、ようやく一息つけると思ったらプール開き。例によって新入生獲得のために俺は新聞部と学園に客寄せパンダとして使われることになった……

 

「今年は思いっきり泳いでくれていいわよ~」

 

「毎回思うんですけど、この映像はどこで流してるんですか? 俺は見たことないんですけど」

 

「新入生に向けての映像だから、在校生は見てなくて当然ね」

 

「……まさかとは思いますが、これで小銭を稼いでる訳じゃないですよね?」

 

 

 この人は油断すると商売を始めるからな……このあたりでしっかりとくぎを刺しておかなければ。

 

「学園が買い取ってくれてるので、別に商売しなくても問題ないわね」

 

「何やってんの!?」

 

 

 新聞部に依頼って、ちゃんと金を払っての依頼だったのか……てか、これ以上新聞部を富ませるのは良くないんじゃないだろうか……沖縄にも自腹切って来てたし……

 

「参考までに、目標は何メートルですか?」

 

「目標と言われましても……自分の限界が分かりませんし……とりあえず二百くらいで」

 

「萩村さんは?」

 

 

 畑さんが不意に俺の横に立っていたスズに話題を振った。この人は何をしたいんだろうか……

 

「十五メートル」

 

「おや~? 萩村さんは泳げないんでしたっけ?」

 

「いえ、今年こそあそこに足を着けてやるんだって思いまして」

 

「プールって、真ん中が一番深いんだっけ……」

 

 

 何となく悲しい目標だと思ったけど、スズがそれでいいのなら俺がとやかく言う事ではないだろう。

 

「では、津田副会長に泳いでいただきましょう。観客の皆さんは押さないようにお願いします」

 

「何ですか観客って……」

 

 

 クラスメイトが見てるだけだと思ってたけど、いつの間にか他のクラスの連中まで来てるし……てか、教師は何をしてるんだ……

 

「津田の半裸体が見れると聞いて!」

 

「……あの人クビにした方が良いんじゃないかな」

 

 

 あれで生徒会顧問だっていうんだから、世の中はおかしいんだろうな……てか、他の先生たちまで来てるし。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 放課後、生徒会室で一つの議題について話し合っていた。

 

「どうも野良ネコが住み着いて、悪戯をしてるらしいんですよね。原因は生徒たちが面白半分で残り物などをやって餌付けしたらしいからですが」

 

「うっ!」

 

「うっ!!」

 

「うっ!!!」

 

「……生徒会役員三人もですか」

 

「うぅ……」

 

「それで、横島先生は何故頭を抱えてるんです?」

 

「残り物って言うな……」

 

 

 一人だけ違うところに反応していたようで、タカトシはそれは取り合わなかった。

 

「保健所に連絡して駆除してもらうのが一番良いのかもしれませんが、誰か飼えないか聞いてみましょうか」

 

「それだったら、私の家で飼うよ~。出島さんが猫アレルギーだけど、たぶん大丈夫だから」

 

「では、早速猫を捕獲しましょう」

 

 

 ふざける暇を与えないタカトシの進行に、会長はさっきから一言も発していない。これじゃあどっちが会長だか分からないわね……

 

「ところで、猫ってどこら辺に出没するんですか?」

 

「校舎裏とか、中庭とかいろいろね」

 

「人に餌をもらってるって事は、それほど苦労しないで捕まえられそうだな」

 

「アンタは見たことないの?」

 

「あんまり外で弁当を食べることが無いからな……基本学食か教室で済ませるし」

 

「さすが主夫ね……お弁当だから気にしないって?」

 

 

 タカトシがお弁当なのは知っているし、基本柳本と一緒に食べているのも知っている。だけど、偶には私と一緒に食べてくれてもいいんじゃないかしら……まぁ、誘おうと思っても誘えてない私にも原因はあるんだろうけどもさ……

 

「あっ、いた」

 

「木の上ね……あれじゃ捕まえられない……え?」

 

 

 梯子か何かを探さなきゃと言おうとしたら、タカトシがあっという間に木に登り猫を捕獲した。相変わらずの運動神経ね……

 

「この猫で間違いないんだよな?」

 

「そうね。この子が住み着いてる猫ね」

 

「……なんか足元に猫がすり寄ってきてるんだが」

 

「妻子持ちだったのね……」

 

 

 結局、この猫一家は七条先輩の家で飼われることになった。出島さんが鼻水と涙を流しながら連れて帰ったのが印象的だったけど……てか、なんで出島さんがいたのかしら……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 お悩み相談室も、最近ではめっきり使われることが無くなってきた。と、言うわけで今日は私が相談したいと思う。

 

「……で、何故俺なんですか?」

 

「うむ。私の悩みに、君が大きく関係しているからだ」

 

「はぁ……それで、会長の悩みとは?」

 

「それだ」

 

「?」

 

 

 理解できなかったのか、タカトシは首を傾げた。まったく、普段は気づかなくてもいい事まで気が付くくせに、こういうところは鈍感なのだな。

 

「君が、いつまでたっても私の事を『会長』と呼ぶことが、私の悩みだ」

 

「はぁ……では、天草先輩とでもお呼びしましょうか?」

 

「アリアや五十嵐の事は名前で呼ぶのに、何故私だけ苗字なんだ!」

 

「別に深い意味は無いですけど……では、シノ先輩」

 

「うむ! これで私の悩みは解決された!」

 

「じゃあ帰っていいですか? 洗濯物を干しっぱなしなので」

 

「ああ、ご苦労だった」

 

 

 これでようやく私もタカトシに名前で呼んでもらうことが出来たな。気が付けばサクラ、五十嵐、カナ、萩村、アリアまでもがタカトシに名前で呼ばれてるからな……

 

「別に何とも思わないが、私だけ苗字だっていうのが気に入らない」

 

 

 三葉や轟、八月一日はともかくとして、私は結構早くからタカトシと知り合いだったのに、最後まで苗字だったからな……これでようやく他の連中と同じ位置まで来たな。べ、別に深い意味は無いのだがな。




タカトシの運動神経が光ったな……

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