桜才学園での生活   作:猫林13世

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後輩の為に上級生が動く……


補習回避へ

 タカ兄が修学旅行に行っている間、私は代理で生徒会役員を務めていた。それが原因で、私はこの三日自由に過ごせる時間が減ってしまったのだ。

 

「コトミ、今日は生徒会に行かなくて良いの?」

 

「タカ兄が帰って来たし、これ以上行っても戦力にならないからね」

 

「そう言えばここ数日、付き合い悪かったな。何かあったのか?」

 

「いや……計算ミスに誤字脱字が多かった所為で、会長と七条先輩にみっちり勉強を教えてもらってたんだよね」

 

 

 二人のお陰で、少しは勉強がはかどったかもしれないけど、その分疲労が蓄積していて、発散も出来ていないのだ。

 

「普段からちゃんと勉強しておかないからでしょ」

 

「理屈なんて聞きたくない!」

 

 

 昨日タカ兄が帰ってきて、さっそく報酬を要求したら、サーターアンダギーをくれた。欲しかったものと違ったけど、美味しかったのですぐに食べちゃったんだけどね。

 

「やっぱり、頭を使うと糖分を欲するんだね」

 

「アンタの場合、単純にお腹がすいてたからじゃないの?」

 

「そもそもお前が頭を使ってもたかが知れてるんじゃないのか?」

 

「マキもトッキーも酷いよ! ちゃんと勉強してたんだから!」

 

「じゃあ今度のテストは大丈夫だね」

 

「……それとこれとは話が違うし」

 

 

 次の試験で平均以下なら、私とトッキーは夏休みの半分を補習で潰さなければいけないのだ。せっかくシノ会長やアリア先輩がまた何かを企画するって言ってたのに、補習じゃそのイベントに参加出来なくなってしまうのだ……

 

「また津田先輩にお願いするつもりなの?」

 

「だってタカ兄は私のお兄ちゃんだし、成績優秀だからね。トッキーも一緒にお願いする?」

 

「……兄貴が迷惑じゃなければ、お願いしたいけどよ」

 

「およ? やっぱりトッキー、タカ兄に撫でられてから変わった?」

 

 

 前からタカ兄の事は気にしてたけど、何だか顔が赤いし……もしかしてトッキーも墜されたか?

 

「とりあえず、生徒会室にいるタカ兄にお願いしてみよう。マキも一緒に来るしょ?」

 

「貴女たち二人で生徒会室に辿りつけるかも心配だしね」

 

「うっせ!」

 

 

 ドジっ子のトッキーと道を覚えない私を心配してる風を装ってるけど、マキは単純にタカ兄に会いたいだけなんだろうな。何せ数日会えなかったんだし……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会室で会長と七条先輩にお土産を渡すと、二人は喜んでくれた。ちなみに、お土産はサーターアンダギーだ。

 

「そう言えば会長、アリア先輩。コトミがお世話になりました」

 

「なに、後輩の面倒を見るのも上級生の務めだからな」

 

「お礼はタカトシ君の○貞で良いよ~」

 

「良いわけあるか!」

 

 

 珍しく会長がツッコミを入れたところで、生徒会室の扉が勢いよく開かれた。

 

「タカ兄ー、ちょっと良い?」

 

「ノックぐらい出来ないのか、お前は……で、何の用だ?」

 

 

 一応の注意をしながらも、タカトシはコトミの用件を訊ねた。なんだかんだで妹には優しいのよね、タカトシって……

 

「今度の休み、私とトッキーに勉強を教えてくれないかな?」

 

「……申し訳ないです」

 

「別に構わないし、時さんがそこまで恐縮する必要は無いんだけどな……」

 

 

 タカトシがそう言いながら、困ったように私の方を見てきた。

 

「なに?」

 

「俺ってそんなに怖いか?」

 

「はい?」

 

 

 何か的外れな質問をされている感じがするのは何故だろう……もしかしなくても、タカトシは時さんが委縮してるのは怖いからだと誤解してるんじゃ……

 

「仕方ないな! トッキーもコトミも纏めて面倒見てやろう!」

 

「3Pね!」

 

「……阿呆な上級生は放っておくとして、勉強を見る事自体は構わない。場所は何処にする?」

 

「ウチで良いんじゃない? トッキーとマキと私の三人とタカ兄だけなんだし」

 

「八月一日さんも来るの?」

 

「え、えぇ。お邪魔でなければ」

 

 

 そう言えば、あの子もタカトシの事を……系統はムツミと同じっぽいけど、彼女は自分がタカトシの事を好いているって気付いてるしね……ムツミよりかは強敵ね。

 

「私も行って良い?」

 

「スズも? でも、勉強するなら自分の部屋の方が落ち着くんじゃない?」

 

「バカね。私も教える側で参加するのよ。コトミちゃんと時さんを同時じゃ、さすがのアンタも大変でしょうし」

 

「まぁ、また両親は出張だしね」

 

 

 修学旅行中は何とか帰ってきてたらしいけど、タカトシが帰って来た途端にまた出張に行ってしまったらしい……これはお泊りのチャンス?

 

「それなら私たちも参加するぞ! もちろん、ウオミーや森も参加させる!」

 

「それならカエデちゃんも誘わない? チャンスは平等に与えるべきだと思うの」

 

「何のチャンスですか……まぁ、泊まり込みで勉強会を開くのは構いませんが、ちゃんと勉強してくださいよ?」

 

 

 タカトシは、今の会話の裏に隠された乙女の戦争には気付いていないようだ。タカトシの家に泊まる=同じ部屋で生活出来るチャンスが生まれるという方程式は、タカトシの中には存在しないモノなのだろう。

 

「成績上位者が多ければ、コトミや時さんも補習を逃れられるかもしれないしな」

 

「桜才三年生のスリートップと英稜三年のトップ、桜才二年のツートップに英稜二年の上位、そして桜才一年の上位がいるんだ、コトミやトッキーも成長すること間違い無しだ」

 

「でもシノちゃん、私たちもちゃんと勉強しなきゃダメじゃない? 今回は範囲が広いんだから」

 

「もちろん自分の勉強もするぞ。だが、それよりもコトミとトッキーの成績の方が心配だからな」

 

 

 会長や七条先輩なら、自分たちの勉強をしなくてもトップ周辺にいられるでしょうけども、コトミと時さんはそうはいかないものね。今回は純粋に二人を心配しての勉強会になると良いんだけど……

 

「えっと……会長にアリア先輩、カエデ先輩にスズ、カナさんにサクラさん、時さんと八月一日さん……十人分の食事を用意しなきゃいけないのか」

 

「アンタの心配事はそっちなのね……」

 

「ん? ちゃんと勉強してくれるかも心配だがな」

 

 

 主夫タカトシの心配事は、勉強より食事だったようだ……まぁ、そっちも誰かが手伝って進めるでしょうし、それもまたアピールに繋がるんでしょうね。




本音はタカトシと一緒にいたいだけ……

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