桜才学園での生活   作:猫林13世

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やっぱり残念……


備品の買い出し

 先日流れた備品の買い出しを、ちょうどいいから行ってしまおうと決めたのが昨日。そして当日になって、アリアと萩村が都合がつかなくなったと連絡がさっきあった。つまり今日は津田と二人っきりという事に……

 

「ぐふ、ぐふふふ……」

 

「何怪しい笑い方してるんですか?」

 

「おっと、何でも無いぞ……何故コトミまでいるんだ?」

 

「タカ兄に色々みつくろってもらおうと思いまして」

 

「元々コトミとの約束が先でしたし、ついでに荷物持ちもさせられますからね」

 

「そんなの聞いてないよー!」

 

「ああ、言ってないからな」

 

 

 私の側で繰り広げられる兄妹の会話は、私の耳には届かなかった。せっかく津田と二人っきりだと思ったのに……

 

「あっ、会長」

 

「なんだ……」

 

「さっきの笑い声、畑さんがボイスレコーダーで録音してましたけど」

 

「なにっ! それを早く言え!」

 

 

 私はすぐそばにいるであろう畑の姿を懸命に探した。だが、私では発見に至らない……

 

「津田、どこだ! 何処に畑がいる!」

 

「何処って……ここに」

 

「やっ!」

 

 

 津田に居場所を聞こうとしたら、既に津田が捕獲済みだった……相変わらず素早いヤツだ。

 

「現役女子高生の怪しい笑い声ってタイトルで着ボイス化を狙ってみようと思っただけです」

 

「思うな、開き直るな、少しは悪びれろ」

 

「折角ですし、買い出しに付き合いますよ」

 

「畑さんも何か買うんですか?」

 

「修理に出していたカメラを受け取りに、その後はどうせ密着取材するつもりでしたから」

 

 

 つまり津田にバレて怒られるくらいなら、最初から同行しようというわけなのか……何故私と津田を二人っきりにしてくれないんだ! ……ん? 待てよ! 集団で買い出しするのなら、手分けして買った方が早く終わるではないか!

 

「よし、ペアを作るぞ!」

 

「手分けして買い出しを済ませるわけですか。それなら終わった後にコトミの買い物も出来るな」

 

「やったー!」

 

「お金は自分で出せよ」

 

「分かってるってー」

 

 

 仲の良い兄妹だが、ここは私に津田を譲ってもらうぞ!

 

「では、裏表で決めよう!」

 

「私は構いませんよ」

 

「では、行くぞ!」

 

 

 こうして、私たちはペアで買い出しを始める事になったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 生徒会の備品の買い出しなのに、畑さんやコトミが同行しているのはどうなんだろうと思ったが、コトミを連れてきたのは俺だし、畑さんを見つけ出したのも俺だ。細かい疑問はとりあえずおいておく事にしよう。

 

「それで、次はバインダーか……」

 

 

 萩村が作った買いだしメモと予算を交互に確認し、必要な物から買って行く。生徒会も予算厳しいからな……

 

「ねぇ……」

 

「ん?」

 

「何で私が荷物持ちしなきゃいけないの! 普通タカ兄が持つんじゃない、こういう場面って!」

 

「お前にお金を渡すとろくなことにならないからな。後で何か買ってやるから今は我慢しろ」

 

「ほんと!? タカ兄の奢りだからね!」

 

「はいはい……」

 

 

 こいつはこんな小さな事でこき使われる事を承諾するのか……まぁ別に騙される心配をしなくてもコイツなら大丈夫だろう……大丈夫だよな?

 

「それにしても、まさか一回でペアが成立するなんてねー。やっぱり私とタカ兄は強い絆で繋がれているんだね!」

 

「邪な考えを持った人と、興味が薄かった人がペアになったからだろ」

 

「?」

 

 

 コトミには何の事か伝わらなかったようだが、会長は俺とペアになりたいと――デートの風を装おうとしすぎて、畑さんは誰とでもスクープになりそうだと考えて、その結果があの二人だという事だろう。狙って良い事があるなんて滅多に無いんだから……

 

「今日はこんなものかな。予算を使い切るわけにもいかないし」

 

「でも今月分でしょ? 使っちゃえばいいじゃん」

 

「生徒会が率先して無駄遣いするわけにもいかないだろ。それに、まだ今月は終わって無いんだから」

 

 

 また必要なものが出てくるかもしれないし。その時に予算がなかったら困るからな。

 

「それじゃあ集合場所に行こう! タカ兄に奢ってもらわなきゃ!」

 

「お前は本当にがめついな……」

 

「そんな事無いよー。タカ兄に奢ってもらえるって知れば、大抵の女子はこんな反応だって」

 

「そんなもんか?」

 

 

 何故コトミが自信満々なのかは分からなかったが、これ以上追及しても俺には理解出来ないだろうから止めておいた。そういえば、荷物は七条先輩が一度持ちかえって明日持ってくる手筈になってたんだが、どうするんだろう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日の買い出し、タカトシと会長の二人に任せちゃったけど大丈夫だったかしら……主に心配なのは会長が暴走してタカトシに心労が溜まって無いか、なのだけど。

 

「おはよう、昨日はゴメンなさい」

 

「ん? ああ、事情は聞いてるから」

 

「大丈夫だった?」

 

「なにが?」

 

 

 教室でタカトシを見つけすぐに頭を下げたが、特に苛立ってはいなかった。つまり何事も無かったのだろうか?

 

「だって会長と二人っきりだったでしょ? ツッコミとか色々」

 

「コトミと畑さんがいたから大丈夫だ。それに、俺はコトミと回ったから」

 

「そうなの? てか、何でコトミちゃんまで……」

 

「先約だったんだよ。それでコトミの買い物に付き合うついでに、荷物持ちをさせた」

 

「ふーん……それで、コトミちゃんの買い物って?」

 

「春物を買うからみつくろってくれって。何で俺に頼むんだろうな、アイツ」

 

 

 タカトシは分かって無いみたいだったけど、おそらくコトミちゃんはタカトシに選んでもらった服を買いたかったのだろう。自分で同じものを選ぶより、タカトシに選んでもらった方が嬉しいから、タカトシにみつくろってもらったんだろうな……

 

「羨ましい……」

 

「なにが?」

 

「別に」

 

 

 何でも気が付くクセに、こういうところは気づかないのよね……まぁ良いけど。




じっさいあんな風に笑う女子高生がいたら、嫌だな……

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