桜才学園での生活   作:猫林13世

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何時までもダラダラ続けるのもね……


お泊り終了

 人の気配を感じて目を覚ますと、アリアさんとカナさんが俺の布団に潜りこんできていて、何食わぬ顔で寝ていた。

 

「何がしたかったんだ、この人たちは……」

 

 

 ガッチリと腕を掴まれていて、柔らかい感触が腕に伝わってきているが、それよりも何がしたかったのかに興味が向いた。やはり俺は普通の高校生男子の感性は持ち合わせていないのだろうか……

 

「とりあえず、どうやって脱け出すか……」

 

 

 軽く運動もしたいし、昨日の掃除じゃ不十分だった箇所もあるだろうから、早めに終わらせておきたいんだよな……さて、どうしたものか……

 

 

「腕が使えないとなると、足でどうにかするしかないよな……ちょっと失礼」

 

 

 足を動かして、二人の足の裏をくすぐる。くすぐりに弱いのか、アリアさんの力が少し緩んだのを見逃さず、俺は腕を引き抜いた。

 

「あん!」

 

「……寝てるよな?」

 

 

 引き抜いた際にアリアさんが嬌声を上げたが、その後は規則正しい寝息に戻っている。

 

「さて、今度はカナさんの方だが……どうしたものか」

 

 

 くすぐってもカナさんの力が緩む事は無く、逆に強まってしまったのだ……強引に引き抜く事は可能だろうけども、もしかしたら起こしてしまうかもしれないしな……

 

「ま、その時はその時か」

 

「そこらめぇ~! ……スー……」

 

「……起きてるのか?」

 

 

 二人とも引き抜く際に嬌声みたいな声を上げたので、ひょっとしたら起きてるのではないかと疑ってみたが、その後の規則正しい寝息を聞くと、やはり寝ているようだった。

 

「ま、とりあえず脱け出せたし、着替えて外を走りに行くか」

 

 

 自室はサクラさんとカエデさんが使っているので、昨日の内に着替えは部屋から出しておいたのだ。人の布団に潜り込んでいた二人の説教は後回しにして、とりあえずしたい事をしてしまおう。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 今朝は何時もより早く目が覚めたので、偶には運動でもしておこうかなと思い外に出ようとしたら、玄関の鍵が開いている事に気がついた。

 

「昨日閉めなかったのかな? でも、タカトシさんがそんなミスを犯すとは思えないし……もしかしてタカトシさんも外に出てるのかな?」

 

 

 良く見ればタカトシさんの靴は玄関に無く、私の推理が正しいのを証明してくれた。

 

「何時に起きてるんだろう……」

 

 

 私だって早起きした部類の時間なのに、タカトシさんはそれ以前から起きていてのだ。普段寝る時間も遅いはずなのに、どうやってこんな時間に起きてるのかしら……

 

「ん? サクラさん、おはようございます」

 

「おはようございます、タカトシさん。やっぱり朝、早いんですね」

 

「昨日は風呂で疲れてしまって早く寝たからですよ」

 

「お風呂で? 何があったんですか?」

 

 

 タカトシさんから、昨日お風呂場であった事を聞いて、私はタカトシさんに同情してしまった。会長たちや七条さんはまだ分かるけど、まさか妹のコトミさんもタカトシさんでなんて、同情するしかないですよね……

 

「ところで、サクラさんは何故玄関に?」

 

「あっ、これから少し身体を動かそうかと思いまして」

 

「そうですか、じゃあ帰ってきたらシャワー浴びます?」

 

「そうですね……じゃあ使わせてもらいます」

 

 

 すぐにこういった考えを出来るタカトシさんは、やはり普段から身体を動かしているのだと理解させられました。寝起きだというのに、こういった気配りに抜かりが無いのはさすがだと言えるでしょうね。

 

「私も、せめてもう少しくらい気配りが出来るようになりたいですよ……」

 

 

 そんな事を考えながら、軽く走ったのですが……

 

「あれ?」

 

 

 慣れない道だったので、どっちが津田家だったか分からなくなってしまいました……

 

「情けないですが、タカトシさんに助けに来てもらいましょう」

 

 

 念の為持ってきた携帯が、まさかこんな役に立つとは……

 

『どうかしましたか?』

 

「ちょっと道に迷ってしまいまして……」

 

『どこです? 迎えに行きますよ』

 

「お願いします……えっと、今いる場所の特徴は……」

 

 

 その電話の五分後、私は無事津田家に戻ってくる事が出来たのでした……考え事しながらのジョギングは慣れない場所では止めておこう……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 皆さんが手伝ってくれたおかげで、私の宿題は史上最速で終了した。

 

「いやーこれで残りの冬休みは遊んで過ごせますよー」

 

「お前は宿題が残ってても遊んでただろ」

 

「嫌だなータカ兄は、普段の私はねー……宿題が残ってるのを気にしながら遊んでたんだよー! それが今年はそんな事を気にせず遊べるんだから」

 

「……何の自慢にもならないな。それに、お前は休み明けテストの為に勉強しておいた方が良いんじゃないか? 赤点だと小遣い減らすからな」

 

「こ、怖い事言わないでよー」

 

 

 タカ兄の権力は、私なんかじゃ太刀打ちできないし、お小遣いを減らそうとすればタカ兄の独断で減らす事すら出来るのだ。

 

「じゃあ私たちもこのまま泊まってコトミの……」

 

「いえ、さすがにこれ以上は皆さんに悪いですし、そろそろご両親も心配するんじゃないです?」

 

「別に問題は無いよー。パパとママは海外に行ってるし、家に帰っても出島さんしかいないものー」

 

「ウチも両親は不在ですし、このままでも大丈夫です」

 

 

 アリア先輩とカエデ先輩は問題なし。だが他の皆さんは残れる理由が見当たらなかったようだ。

 

「ではアリアさんとカエデさんにコトミの面倒は任せます。俺は買い出しと駅まで見送りに行ってきますから」

 

「うん、いってらっしゃい」

 

「さあコトミさん、勉強しますよ」

 

「嫌だー! せっかく宿題が終わったのにー!」

 

 

 タカ兄争奪戦に変化がありそうなのに、それを楽しめないなんて……こうなったら私も参戦してかき乱すしかないのだろうか……




このお泊りで、カナとアリアはタカトシと同じ布団で寝て、カエデとスズは名前で呼んでもらうようになって、サクラは相変わらずリードしている状態なのに、シノだけ進展が無かったな……

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