桜才学園での生活   作:猫林13世

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誰の事かはすぐに分かるかと


二人の作戦

 折角タカトシ君と同じ部屋で寝泊まりが出来たのに、何時の間にかタカトシ君の布団の中には畑さんがいたので驚いてしまった。

 

「(でも、良く考えると畑さん、タカトシ君が使ってた布団に入ってたのよね……なんてうらやましい)」

 

 

 タカトシ君の事を想っている人はここにいる人間だけでは無い。コトミちゃんのお友達のマキちゃんや、ムツミちゃんなどもタカトシ君の事を想っているし、他にも沢山タカトシ君の事を想っている女生徒はいるのだ。

 

「(ここに畑さんまで入り込んできたら、かなり面倒な事になっちゃうんじゃないかな)」

 

 

 あの人の事だ。タカトシ君にへばりつく事など造作もないだろう……まぁ、バレたらすぐに剥がされて捨てられるだろうけどもね。

 

「アリアさん、さっきから固まってますが……口に合いませんでしたか?」

 

「えっ? ……ううん、凄く美味しいわよ」

 

 

 コトミちゃんの勉強の世話をするという名目でお泊りしていたので、今日一日もみんなで交代交代でコトミちゃんの勉強を見ていた。その間にタカトシ君は家の事を済ませたり、買い出しなどに出かけていたのだ。

 

「時に畑よ、お前は何時までこの家にいるつもりだ?」

 

「津田副会長のスクープを……いえ、大人しく帰ります」

 

 

 高らかに宣言しようとして、タカトシ君に睨まれて大人しくなり畑さん……何時までタカトシ君のスクープを狙えば気が済むのだろうか……

 

「てか皆さんは今日もお泊りなんですかー?」

 

「コトミの宿題が終わるまでは泊まり込みだな!」

 

「コトミちゃん、逃げたらお仕置きですからね」

 

「クッ……暴力になど屈するものか!」

 

「厨二禁止。お前は宿題だけじゃ無く、休み明けのテストの勉強もしっかり教えてもらうんだな」

 

「えぇー!? タカ兄、そりゃ無いよ~」

 

 

 コトミちゃんもタカトシ君に睨まれてあえなく撃沈……私も別の意味であの視線に屈しちゃった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 部屋割は変わる事無く、今日も私と森さんはタカトシ君の部屋で寝る事に。もちろんベッドは使わずに二人で布団を敷いているのですが。

 

「それにしても、タカトシさんは優秀な人ですよね」

 

「そうね」

 

 

 タカトシ君の本棚を見ながら森さんが呟いた。

 

「どうやったらあそこまでスピーディーに家事が出来るんでしょうか」

 

「慣れ、って言ってたわよ。昔からご両親が出張で家を空けがちだったから、タカトシ君が家事の殆どをやってたって」

 

「コトミさんは……」

 

 

 何かを言いかけて森さんは言葉に詰まった。まぁ何を言いたかったのかは私にも分かるし、言っても意味が無い事だという事も理解出来た。

 

『カエデちゃーん、サクラちゃーん、お風呂空いたわよー』

 

「だ、そうですよ」

 

「そうね。それじゃあ入りましょうか」

 

 

 津田家のお風呂は大勢で入るには不向きだが、二人ずつなら入れない事もない広さだ。したがって二人一組のペアを作り順番に入浴しているのだ。

 

「天草会長と魚見会長、七条さんと萩村さん、私と森さん、そしてコトミさんが入って、最後にタカトシ君の順番……」

 

「兄妹とはいえ、さすがに一緒には入れないでしょうからね」

 

 

 コトミさんは一緒に入りたがってたけど、タカトシ君に睨まれて諦めたのよね……

 

「異常性癖は認められないわね」

 

「まぁ、相手がタカトシさんじゃ仕方ないかもしれませんけど、コトミさんはベッタリし過ぎですよね」

 

 

 若干男性恐怖症の私も、タカトシ君なら大丈夫だったのだから、妹のコトミさんがタカトシ君の事を想ってしまっても仕方の無い事だとは私も思う。だけど紛れもなくあの二人は血縁関係なのだ。

 

「とりあえず、お風呂に行きましょうか」

 

「そうね」

 

 

 考えていても結論は変わらないので、森さんの提案を素直に受け入れた。この後タカトシ君もこの湯船に浸かるのよね……何か前の二組が仕掛けてるような気がするのは考え過ぎだろうか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリアっちとじゃんけんをして、今日は私がタカ君の隣の布団で寝る事に決定した。まぁ昨日は途中からタカ君では無く畑さんが寝ていたのだけども……

 

「(折角勇気を出して夜這いを掛けたというのに、まさかの変わり身とは……やはりタカ君は侮れない)」

 

 

 ただの偶然だとは思うけども、私たちが夜這いを仕掛けると分かっていた畑さんをこの布団に置いたのではないかと思ってしまうのだ。それくらい、タカ君の勘の鋭さは凄いのだから。

 

「カナちゃん、今日は大人しく寝るのー?」

 

「どうでしょう。タカ君が私の布団に侵入してきたら、そのまま……って事もあるかもしれませんよ?」

 

「それは無いと思うな―。だってタカトシ君、そんなに寝相悪くないもの」

 

「そうでしたね」  

 

 

 微動だにしない、は言い過ぎにしても、タカ君はめったに動く事は無いのでした……それじゃあこっちから忍び込んでタカ君をその気に……

 

「ならないでしょうね」

 

「なにがー?」

 

「タカ君をその気にさせたいと思ったのですが、私たち二人で迫ってもタカ君は何とも思わないでしょうね」

 

「サクラちゃんやカエデちゃんとキスした後、少しは気まずそうだったけどもね。今は普通に接してるし」

 

「では、我々もタカ君とキスをして、意識してもらいましょうか」

 

「でも、そんな隙がタカトシ君にあるかなー……」

 

 

 確かにアリアさんの言うように、タカ君に隙があるかが問題です。気配を察知出来るんじゃないかってくらい、タカ君の勘は鋭いですからね……

 

「とにかく、決行するなら抜け駆けは無しだからねー」

 

「分かってますよ。お互いフェアに行きましょう」

 

 

 シノっちやスズポンには悪いですが、同じ部屋だという事を最大に利用させてもらいましょう。




今度は邪魔が入らないはず……

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