桜才学園での生活   作:猫林13世

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まだ諦めてませんよ


いったれスズちゃん

 シノ会長やアリア先輩、そしてカナ会長が私の部屋で私の勉強の面倒を見てくれている。のだけども、おそらくは私なんてついでなのだろう。

 

「会長たちもカエデ先輩のようにお泊り狙いですか?」

 

「な、何をバカなことを言う! 私たちは純粋に、お前の学力が心配なだけだ!」

 

「本当ですか~? さっきからタカ兄の部屋をチラチラと見ている気がしますけど」

 

「そそそ、そんなきょと無いですよ?」

 

「物凄い噛んでますし。大丈夫ですよ、私も皆さんと同じ気持ちですから」

 

 

 タカ兄の部屋で寝たい。タカ兄と一緒にいたい。これは他の人も同じだろうし、もちろん妹の私だって同じ気持ちになるくらい、タカ兄は魅力的な男子だ。

 

「私たちは兎も角、コトミちゃんはマズイんじゃない? その、世間一般から見たら」

 

「しかし、その背徳感がまた……」

 

「分かります。世間からどう見られようと、この気持ちは……ってやつですよね!」

 

「さすがカナ会長! 分かってくれますか」

 

 

 これをきっかけに私の勉強を、などと言う建前は捨てられてタカ兄談義になった。盛り上がってきた丁度そのタイミングでドアがノックされ、タカ兄の声が聞こえた。

 

『馬鹿な事を話してる暇があるのなら、貴女たちも手伝ってください。サクラさんやカエデさんだけが手伝うのは違うと思うんですけど』

 

「あれ、スズ先輩は?」

 

『萩村なら今買い出しに行ってもらってる。外にいた畑さんと一緒に』

 

 

 さすがはタカ兄……使えるものは何でも使うとはこの事だろう。

 

「あれ? タカ兄って何時からカエデ先輩の事を名前で呼ぶようになったの?」

 

 

 昨日までは「五十嵐さん」って呼んでたような気がするけど……

 

『細かい事は兎も角、勉強か手伝いかを選ぶんだな。強制的に寝かしつけられたいのなら別だが』

 

 

 底冷えするほどの殺気が、私の部屋へと流れ込んでくる。私たちは背筋をピンと伸ばして勉強を再開する事にした。だってぞろぞろとキッチンにいても邪魔だろうしね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 津田に頼まれた買い出しを終えて、私は津田家へと帰ってきた。

 

「津田、買ってきたわよ」

 

「うん、ありがとう。重かっただろ」

 

「そうね。人数が増えたんだから仕方ないけど、この量はさすがにね……」

 

 

 私がキッチンで作業してても、高さ的に戦力にならないので買い出しを申し出たのだけども、これほどまで重いとは思ってなかったわね。

 

「はい、お茶で良いよね?」

 

「あ、ありがとう」

 

 

 座り込んでしまった私に、津田は温かいお茶を出してくれた。

 

「少し休んでてよ。後は俺たちだけで出来るからさ」

 

「う、うん……そうさせてもらうわ」

 

 

 事実上の戦力外通告だけども、今の私はそれを素直に受け入れられた。津田もだけど、森さんや五十嵐先輩も手慣れた感じで作業を進めていくし、あそこに交ざっても私は戦力になれないだろう――身長的な意味でだけど。

 

「ふぅ」

 

「いいんですか? ライバルに差を付けられますが」

 

「ヒィ!? は、畑さん……いきなりなんですか」

 

 

 身体の力を抜いた瞬間、背後から畑さんが顔を出してきた。本当に怖かったわ……

 

「先ほど、七条さんと五十嵐さんが津田副会長に名前で呼んでほしいとおねだししてましたし、津田副会長も学外ならと了承しました。海で戯れに天草会長が申し出た時は全員呼んでもらえましたけど、その後定着しているのは英稜のお二人だけでしたからね」

 

「確かに……」

 

 

 私の事も未だに「萩村」だし……別にいいんだけども、なんか悔しいのよね。

 

「私の独自調査で、萩村さんは現在三番手ですが、七条さんや魚見さんが虎視眈々と津田副会長に意識してもらおうとしてますからね。天草会長は完全に出遅れておりますが」

 

「……貴女は何がしたいんですか?」

 

 

 さっきから私を煽ろうとしているのが良く分かるけど、ここで下手を打って津田との関係を壊したくないので慎重に動く。

 

「別に、私はただ恋する乙女にアドバイスをして回ってるだけですよ。その結果がスクープに繋がれば最高なんですがね」

 

「隠さずに言ったぞ、この人……」

 

 

 分かっててはいたけども、後半部分が無ければ良い話ぽかったのに……

 

「出遅れ組の七条さんと魚見さんには、あの巨乳があります。攻めるのには十分すぎる武器ですがね……津田副会長がそこら辺の男みたいにあっさりと籠絡されるとは思えませんし……」

 

「貴女は何が見たいんですか、結局のところ……」

 

「津田副会長が誰かしらと熱愛発覚か、ドロドロの修羅場を見たいですね~」

 

「何バカな事を言ってるんですか、貴女は……」

 

 

 呆れた声が私の頭上から降ってきた。聞き間違いようのないこの声は、現在この家の主であり、私たちの話題の中心であった津田だ。

 

「畑さんもずっと外にいたから寒いんじゃないですか?」

 

「大丈夫、防寒着やカイロを持ってるから」

 

「……これでも飲んでください」

 

 

 そういって津田が畑さんに差し出したのは白く濁った液体……これって甘酒かしら?

 

「これは?」

 

「軽く作ってみました。米麹なのでアルコールは入ってませんよ」

 

「こんな物まで……津田副会長は料理上手、と」

 

「一々メモるな!」

 

 

 普通に不法侵入してきた畑さんにまで、津田はちゃんと気配りをしている。この辺りがモテている理由なのだろうけども、その優しさは勘違いしてしまっても仕方ないだろう。

 

「萩村?」

 

「……スズ」

 

「ん?」

 

「学外だけで良いから、私の事も名前で呼んで」

 

「別にいいけど……何でいきなり?」

 

「良いから!」

 

 

 まるで子供の癇癪だ。今だけは子供っぽいという謗りも大人しく受け入れよう。

 

「分かったよ、スズ」

 

「ッ!」

 

 

 自分から頼んだ事だけど、これはかなり良いわね。もし津田と付き合えたのなら、私はずっとこう呼んでもらえるのかしら……




アリア、スズ、ウオミーは攻めてる感じはするが、シノがどうしても……

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