桜才学園での生活   作:猫林13世

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コトミの自爆ですね……


小遣いの使い道

 いよいよ明日は文化祭! なのだが、何処のクラスも準備が滞っているのか終わりが見えてこない。生徒会としても何とかしたいので、我々は様々なクラスの手伝いに駆り出されているのだ。

 

「これは我々も泊まり込みで作業するしかなさそうだな」

 

「こんな事もあろうかと、お泊りセットを持ってきてます」

 

 

 萩村が何処からか取りだしたバッグには、着替えや歯磨きセットなのが入っていた。用意周到なヤツだとは思っていたが、本当にさすがだな……

 

「しまったな~。私も持ってくればよかったよ~。替えの下着とか」

 

「アリア……そもそも穿いているのか?」

 

「あっそっか! 問題無かったよ~」

 

「いや、人として問題あるだろ……」

 

 

 アリアの答えを聞いた津田が、呆れたようにツッコミを入れる。

 

「津田! 乙女の会話を盗み聞きとは感心しないぞ!」

 

「そうだよ~! ノーパンだって聞かれたくなかったのに~」

 

「アンタらそもそも聞こえる声量だったろうが……それに、七条先輩がノーパンである事は、学園の殆どの生徒が知っている事ですが」

 

「そうなの~?」

 

「この間畑さんをとっ捕まえて自白させたので間違いないかと」

 

 

 つまりはそういう事なんだろうな……

 

「あのー、これ差し入れです! 良かったら食べてください!」

 

「えっ? ありがとうございます」

 

 

 生徒会室の扉が勢いよく開かれたと思ったら、料理部の後輩がおにぎりを津田に押し付けて帰って行った。受け取った津田も呆気に取られたのか、おにぎりの乗った大皿を持って固まっている。

 

「折角の好意だ、食べようじゃないか」

 

「そうですね。じゃあお茶淹れますね」

 

 

 さすがに復帰が早い津田は、大皿を机に置きお茶の準備を始めた。

 

「みんなはおにぎりの具で何が好きだ?」

 

「シャケ」

 

「私はアレ! えっとピンク色の……」

 

「桜でんぶ?」

 

「そう、それ!」

 

「良かったー! ピンク色の具、って事で、どっちか迷ったんだよなー」

 

「おにぎりの具で、他にピンク色の具ってありましたっけ? お茶です」

 

 

 そういう知識に疎い津田は、私のボケを拾う事無くスルーした。そして津田が淹れてくれたお茶は、何となく美味しかった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 進行状況を確認する為の見回りを萩村としていたら、萩村がしみじみと呟いた。

 

「文化祭って、結局は子供だましよね」

 

「あはは……」

 

 

 それは俺も思っている事だが、口に出すのはどうなんだ? 一生懸命準備している人たちに聞かれなかったのがせめてもの救い、なのだろうか?

 

「甘いっ!」

 

「横島先生……五月蠅いのでドアはもう少しゆっくり開けてください」

 

 

 生徒には聞かれなかったけど、教師には聞かれていたようだ。だが本当に五月蠅かったのでもう少し自重してほしかった。

 

「文化祭の良さというのはね……」

 

「聞いてねぇし、この人……」

 

 

 俺の注意を完全に無視して、横島先生は文化祭の良さを熱弁し始めてしまった。

 

「合法的に高校生と戯れられる事よ!」

 

「アンタは出入り禁止にしたい」

 

「無理よ、だって教師だもの……」

 

「うん……分かってるんだけどさ……」

 

 

 この人を野放しにしていると、何人かの生徒が襲われるのではないだろうか……などと考えていたら、その問題教師の背後から別の声が聞こえてきた。

 

「タカ兄ー! ポスター貼るの手伝ってー!」

 

「ちょっとコトミ! 津田先輩は別の仕事で忙しいんでしょ!」

 

「ダリィ……」

 

「はぁ……ちょっと手伝ってくる」

 

「頑張れ、お兄ちゃん!」

 

「その励まし方はおかしい……」

 

 

 萩村に変な励まされ方をされたが、俺はコトミたちの仕事を手伝う事にした。

 

「それで、何でコトミが演劇部のポスター貼りをやってるんだ?」

 

「実はですねー……」

 

「コトミがいたら作業がはかどらないから、演劇部の友達に押し付けられたのか」

 

「演劇部の……って! 何で分かるの!?」

 

「不本意ながら、お前の兄貴を長年やってきたんだ。それくらいの予想は付く」

 

 

 本当に不本意だが、コイツの行動のだいたいは想像が付くのだ。本当に、本当に不本意だが……

 

「さすが津田先輩。コトミの事で苦労してきているだけはありますね」

 

「マキ、それって褒めてるのか?」

 

「時さん、それは気にしちゃダメだよ……」

 

 

 八月一日さんの言葉にツッコミを入れた時さんに、俺はやんわりとツッコミを入れる。気にしたら負けなのだ、だから気にしちゃダメなのだ。

 

「あれ? この劇の主役の人、タカ兄と名前が一緒だー!」

 

「ん? 本当だ。何だか親近感湧くよな」

 

 

 会った事も無い相手だが、名前が一緒というだけで何故だか親近感を覚えた。

 

「分かるー。私もこの間名前が一緒なゲームキャラがいて親近感を覚えたんだー」

 

「そうなのか?」

 

 

 ゲームで「コトミ」なんて名前が付けられるキャラってどんなキャラなんだろう……そもそもそのゲームは何を目的としたゲームなのだろうか?

 

「エロゲで。しかも性癖も一緒だった」

 

「……来月のコトミの小遣い、半分な」

 

「ええっ!? 何でよ!?」

 

「もう少し有意義な使い方をしているならまだしも、変なゲームを買ってると分かったお前に与える小遣いは存在しない」

 

 

 そもそもお母さんたちが共働きで稼いでくれたお金で何を買ってるんだコイツは……

 

「そんな殺生な……来月も気になる新作が多いんだよ~!」

 

「……お前、いったいいくつ買ってるんだよ」

 

「えっ? トッキーもやりたいの?」

 

「チゲェよ! 少しは兄貴の苦労を分かってやれって言ってるんだ!」

 

「そこの一年生! 廊下で大声を出してはいけません! ……ってあら? 津田君じゃない」

 

「五十嵐さんも泊まり込みですか?」

 

「ええ……ところで、何を怒ってたんですか?」

 

「妹の不甲斐無さに、時さんが代わりに怒ってくれてたんです……」

 

 

 身内の恥を晒すのはさすがに避けたかったので、俺はある部分を割愛して五十嵐さんに説明する事した。だって包み隠さず話したら、五十嵐さんが気を失う可能性があったから……




次回文化祭当日、英稜の二人の出番はあるのか……

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