桜才学園での生活   作:猫林13世

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まさにその通りだ……


賢兄愚妹

 今日から衣替えなので、長袖を着て学校にやってきた。ちなみに、コトミは寝てたので置いてきたのだが。

 

「やはりクリーニングしたての制服は気持ちが良いな! 皺ひとつ無い!」

 

「……皺発見」

 

「しまった!? 下着穿いてくるの忘れた!?」

 

「なにやっちゃってんの……」

 

 

 登校して早々にくだらない事を聞いてしまった……そもそも七条先輩にあれほど注意している会長本人が忘れるとは……この学校の生徒会はダメかもしれないな……

 

「萩村、教室に行こう」

 

「そうね」

 

 

 会長を放置する事にして、俺は萩村と一緒に教室に向かう事にした。

 

「今日コトミちゃんは?」

 

「寝てたから置いてきた。そろそろ起きて慌ててる頃だとは思うけど」

 

「大変ね、アンタもコトミちゃんも」

 

「あはは……」

 

 

 コトミが大変なのは自業自得だが、俺が大変なのは本当に情けない理由だからな……高校生にもなって自分で起きられない妹の面倒を見てるんだからな……

 

「津田、おはよう」

 

「ああ、おはよう」

 

「スズちゃん、おはよー」

 

「おはよう」

 

 

 教室に入って、俺は柳本に、萩村は轟さんに挨拶された。

 

「衣替えっていっても、まだ外暑いのにな」

 

「そうだな。でも、そのうち涼しくなるだろ」

 

「暑くても着崩すのはダメだからね」

 

「分かってるよー。だから今日私は下着穿いてないもん!」

 

「ここにもいたか……」

 

 

 会長は単純に忘れたっぽかったけど(それもそれで問題だが)、轟さんは確信犯だった。てか、周りの耳を気にしろよ……男子連中が前かがみで教室から出て行っちゃっただろ……

 

「あれ? みんなどうしちゃったんだろう?」

 

「轟さん……スカート捲れてる……」

 

 

 視線を逸らしながら指摘すると、轟さんは恥ずかしそうにスカートを直した。てか、今わざと捲くってなかったか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 一日下着を穿いて無かったからか、下の方がスースーしていた。だが意外と悪くない。

 

「アリア、穿かないってのはなかなかいいな!」

 

「シノちゃんも漸くこっち側に来てくれたんだね!」

 

「貴女たち、廊下でなんて話をしてるんですか!」

 

 

 アリアとノーパン談義に花を咲かせていたら、五十嵐に注意された。

 

「私たちはそれ程直接的な表現はしてないぞ?」

 

「カエデちゃんは今の会話だけで何処まで想像しちゃったのかなー?」

 

「そ、それは……」

 

 

 私たち二人で責めると、五十嵐は後ずさりながら逃げようとしていた。

 

「逃がすと思ったか?」

 

「白状するまで逃がさないからね~」

 

「……何してるんですか、貴女たちは」

 

「先輩方、そろそろ会議ですので生徒会室まで行きましょう」

 

「もうそんな時間か?」

 

「じゃあ仕方ないねー」

 

 

 津田と萩村がタイミング悪く現れたため、五十嵐を追及する事は出来なかった。

 

「それにしても、五十嵐は相変わらずムッツリだな」

 

「『穿いてない』ってだけで、それがパンツだって分かるんだもんね~」

 

 

 言葉だけ聞けば『履いてない』ともとれるのに、五十嵐はしっかりと『穿いてない』と解釈したのだ。もしかしたらアイツも穿いてなかったのかもしれないな……

 

「風紀委員長がノーパンか……」

 

「風紀が乱れまくってるね~」

 

「本人がいない場所で酷い風評被害だ……」

 

「誰も拡散しないだけマシよね……」

 

 

 津田と萩村が呆れながら呟いた言葉に、私とアリアは笑いそうになってしまった。確かに風評被害かもしれないが、もしかしたら本当に……って事もあると思っていたからだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 遅刻してしまったせいで、放課後に反省文を書かされる破目になってしまったのだ。

 

「まったく……妹をおいていくなんて薄情な兄を持って大変だよ」

 

「そもそも津田先輩はコトミを起こしたんでしょ? それで起きなかったコトミが悪いと思うけど」

 

「そうだな。兄貴は何も悪くないと思う」

 

「なんだよー! マキもトッキーもタカ兄の味方するのー!」

 

 

 反省文を書いている間、マキとトッキーには待ってもらっていたのだ。提出して愚痴をこぼした私に対して、マキもトッキーも冷たかった。

 

「そもそも何で寝坊したのよ」

 

「昨日夜遅くまでダンジョンに旅立っていたのだ」

 

「……ゲームしてたって言えよな」

 

「それで寝坊したんでしょ? 津田先輩は全然悪くないじゃないの。そもそも起こしてもらっておいて起きなかったんだから、やっぱり完全にコトミの所為じゃない」

 

「だって最近タカ兄が遊んでくれないんだもん! 一人でゲーム……じゃなかった。ダンジョン探索に出かけても仕方ないでしょ?」

 

「高校生にもなって兄貴にベッタリってのは変じゃね?」

 

 

 トッキーのセリフに、私は思いっきり反論した。

 

「普通のお兄ちゃんならそうかもしれないけど、タカ兄はそこら辺のお兄ちゃんとは訳が違うんだよ! あんなお兄ちゃんがいたらベッタリになるのはおかしくない! そもそもお母さんたちがしょっちゅう出張で家にいなかったから、私がタカ兄にベッタリになるのは必然で、全然おかしくない!」

 

「……大声で何を言ってるんだ、お前は」

 

「あれタカ兄? 生徒会の仕事終わったの?」

 

「じゃなきゃここにいないだろ……」

 

「相変わらずねー、アンタの妹」

 

 

 昇降口でタカ兄の素晴らしさを熱弁していたら、本人がそこにいた。ちなみにスズ先輩も一緒だった。

 

「タカ兄、今日は暇でしょ? 放課後どっか行こうよ!」

 

「悪いが暇じゃない。買い出しと晩飯の準備、それから洗濯物を取り込んで畳まなきゃいけないからな。退屈なら一人で遊んでろ」

 

「えー! 偶には一緒に遊ぼうよー!」

 

「なら、少しは家の事を手伝えよな。お前がやらないから……」

 

「だって私がやるよりタカ兄がやった方が早いでしょ? それに、私がするとタカ兄が直すから二度手間だよ?」

 

「ハァ……」

 

 

 タカ兄に盛大にため息を吐かれてしまったけど、私が言っている事は間違ってないのだ。つまり私は悪くない!




逆恨みも甚だしいぞ、コトミ……

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