最近学園に必要無い物を持ってくる生徒が増えている。クラスにも何人か明らかに必要無い物を持って来ているヤツがいるし……
「てなわけで、抜き打ち部室チェックを行うぞ!」
「なにが『てなわけで』なのかを説明してください」
「最近学園に必要無い物を持ってくる輩が多いのだ。なのでまずは部活動をしている者からチェックしていこうと思ってな」
「確かに必要無い物を持ってて来てる人は多いですね」
今さっき俺も思ってた事だし、会長がその事を知っていてもおかしくはないか。
「さぁ、そうと決まったら急ぐぞ! まずは柔道部からだ!」
何で急いでるのかは分からないけど、会長と七条先輩は楽しそうに生徒会室を出て行った。
「これ、私たちも行くのよね?」
「生徒会の仕事、何じゃね?」
出て行った二人を呆れた様子で見ていた萩村も、渋々柔道部の部室に向かう事にしたようだ。まぁ、めんどくさいのは俺も思ったけどさ……
「最近学園に必要無い物を持って来ている者がいる! そこで、抜き打ちチェックだ!」
「分かりました」
部室に到着したら、既に会長たちが部室のチェックを始めていた。
「柔道部にゲーム盤は必要ないな」
「すみません」
「確かに、部活動によけいなものを持ち込んじゃダメですよね。恋愛とか!」
「……それは両立出来るんじゃね?」
相変わらずの三葉のピュア発言に、思わずツッコミを入れてしまった……
「では、次はロボット研究会だ!」
「轟さんの部活ね!」
「だから何でノリノリなんですか?」
萩村のツッコミは当然の如く黙殺され、会長と七条先輩はロボ研の部室へと急いだ。もちろん、廊下は走ってはいない。
「最近学園に、略!」
「どうぞどうぞ」
轟さんの許可も貰ったので、俺たちはロボ研の部室を調べ始めた。
「これは、こけしか?」
「はい、部屋の飾りに」
「ふむ、これくらいは良いだろう」
会長は気づかなかったが、俺は見逃さなかった。あのこけしに不自然なスイッチがある事を……でも、拘わりたくないので見逃した。だって嫌な予感しかしないんだもん……
「次は新聞部だ!」
最早萩村もツッコミを入れる事を諦めるくらいのテンションで、会長と七条先輩が新聞部の部室を目指し移動し始めた。
「最近、略!」
「そうですか。ウチには見られて困る物なんてありませんよ」
「この段ボールはなに?」
マル秘指定された段ボールが部屋の中心に置かれているのを見て、七条先輩が畑さんに尋ねた。
「それは皆さんが見られると困る物が入ってます」
「よし、押収だ」
「でも、津田副会長のは全然撮れないんですよねー……」
「て、ことは……この中身を見られて困るのは……」
「会長たちですね」
「ちょっと待て、津田!」
「はい?」
中身を確認しようとしたら、会長と七条先輩と萩村に物凄い勢いで止められた。いったいなんだと言うんだ……
「私たちで確認をしておく。君は今日アルバイトじゃなかったか?」
「もうそんな時間ですか? じゃあ申し訳ありませんが、あとの事はよろしくお願いしますね」
会長に言われて時計を確認したが、まだそれほど急ぐ時間では無かった。でも、そんな事を言いだすと言う事はだ、よほど見られたくない物が入ってるんだろうな、あの段ボール……
アルバイトが終わり帰り道、私はタカトシさんから今日の出来事を話してもらっていた。
「……っと、そんな事があったんですよ」
「そうなんですか。それで、結局何が入ってたんでしょうね、その段ボール」
「さぁ? 余程見られたくない物が入ってたと言う事だけは分かるんですけどね」
天草会長と七条さんは分かるけども、萩村さんがタカトシさんに見られたくない物って何なのでしょう……あまり想像がつきませんね。
「ところで、今日は魚見さんもシフトだったはずなんですけど……」
「カナ会長は風邪でお休みだそうです。学校もお休みでしたし」
「あの人も風邪なんて引くんですね……」
タカトシさんがしみじみと呟いた言葉に、私は思わず笑ってしまった。
「何かおかしなこと、言いました?」
「いえ、タカトシさんがカナ会長の事をどう思ってるか分かって少し可笑しかったんですよ」
「そうですか? ウチの会長もですけど、魚見さんも風邪引きそうに無いじゃないですか」
「確かに、それは私も思いましたけど、実際にカナ会長は風邪で休んでますし」
「だから意外だと思ったんですよ」
もう一度、しみじみと呟いたタカトシさんに、私はもう一度笑ってしまいました。
「そんなに可笑しいですか?」
「ええ。それはもう」
タカトシさんは私がどれだけ笑っても怒ったりはしないで苦笑いを浮かべています。
「今日は少し早いんですよね」
「ん? 新しい夜勤者が入ったからって、俺たちは早めに上がれたんですよね」
「良かったら何処かに寄って行きません?」
「別に良いですよ」
ナチュラルにお誘いして、これまたナチュラルに了承を貰えた。あの旅行から、私は明らかにタカトシさんの事を意識している。いやまぁ、旅行以前から意識はしていたのですが、あの旅行を境にタカトシさんの事を考える時間が増えているのは確かなのです。
「それで、何処に行きますか?」
「この辺りに美味しい甘味処があるんですよ」
「そうなんですか?」
「ええ。だから、行ってみません?」
「良いですよ。サクラさんの行きたい場所に付き合います」
タカトシさんの手を取り、私は目的地である甘味処に向かった。本当は、甘味なんてどうでもよくて、ただタカトシさんと一緒にいたかっただけなんですけどね……もちろん、甘味だって楽しみなんですけど。
完全にデート、なのですよ……