桜才学園での生活   作:猫林13世

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このメンバーの花火大会、見た目はいいけど疲れるだろうな……


花火大会 後編

 アリア先輩の家で花火大会があると聞いて、私はトッキーとマキを誘って一緒に行く事にした。

 

「だりー」

 

「トッキー、せっかくお屋敷に行くのに、その格好なの?」

 

「別に構わないだろ?」

 

「マキはバッチリ浴衣なのに」

 

「だって花火大会だってコトミが言うから……」

 

「タカ兄に見てもらいたかったんでしょ? 下着を着けて無いマキの格好を」

 

「コトミ!」

 

 

 相変わらずマキはタカ兄の事が好きなんだなってバレバレな態度だな。でもそのタカ兄はこの前の旅行でサクラ先輩とカエデ先輩とキスをしちゃったんだよね。さすがにこの事はマキには言えないが。

 

「私も浴衣だし、トッキーも浴衣着ようよ!」

 

「別に構わないだろ。そもそも持ってないし」

 

「ところでコトミ、七条先輩のお屋敷って何処なの?」

 

「えっ? ……私が知るわけ無いじゃん」

 

「「………」」

 

 

 トッキーとマキに冷たい目で見られて、思わず興奮してしまった。今はパンツ穿いて無いから、おつゆがおまたから零れてきちゃう。

 

「もしもし、津田先輩ですか? ……はい、それで、七条先輩のお屋敷は何処なんでしょうか? ……はい、分かりました。失礼します」

 

「何だって?」

 

「えっとね、ここから数駅……」

 

「あれ?」

 

 

 私を完全に無視して、タカ兄に電話で場所を聞いたマキとトッキーが先に行ってしまう。

 

「待ってよー!」

 

 

 二人を追いかけながら、私は足をつたっている露をそっとふき取った。さすがに電車の中で興奮し続ける訳にもいかないもんね。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 アリアの屋敷に到着したら、既にタカトシたちがいた。タカトシの隣にはカナや森、五十嵐と言ったライバルたちが既に陣取っている。

 

「出遅れたな……」

 

「会長? 何か落ち込んでません?」

 

「あれを見ろ、萩村! タカトシの隣は既に取られてしまってるんだぞ!」

 

「別にあそこに固定でいるわけでは無いんじゃ……」

 

「そうですよー! タカ兄の隣なんて、何時でも取れますって!」

 

「あら、コトミちゃん。お兄さんと一緒には来て無かったのね」

 

「トッキーたちと一緒に来たんですよ」

 

 

 背後から声を掛けて来たコトミ、その隣には時と八月一日の姿もあった。時以外は浴衣姿だった。

 

「シノちゃん、いらっしゃい」

 

「やあアリア。お誘いありがとう」

 

「あっちに横島先生やスズちゃんのお母さんも来てるわよ」

 

「何で!?」

 

 

 どうやら萩村母が来ている事は、萩村娘は知らなかったようだな。ちなみに誘ったのは私だが。

 

「皆さん、本番の花火の前に――」

 

「「「「「「「(本番!? あっ、いやいや)」」」」」」」

 

「「「(あっ、今本番って言葉に反応したな……)」」」

 

 

 出島さんの「本番」という単語に反応した、私とアリアとカナとコトミと横島先生と萩村母と轟。その反応した七人に反応したタカトシと萩村娘と森。見事にツッコミの数があっていない。

 

「――こちらの花火でお楽しみください」

 

 

 そういって出島さんが取りだしたのは線香花火などが入っている花火セットだった。

 

「でも出島さん、水が無いですけど?」

 

「ご安心ください。すぐに用意しますので」

 

 

 そう言ってバケツの上に立ち、足を広げてスカートを持ち上げる出島さん。何をするのか理解したタカトシが、出島さんからバケツを取り上げる。似たような光景が、あと二、三個広がっているが、私は参加する気にはなれなかった……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何とか出島さんからバケツを取り上げて、普通に水を用意した。ほんと、なに考えてるんだあの人は……

 

「津田さん、隣良いですか?」

 

「森さん。構いませんよ」

 

 

 さっきの騒動で花火って気分じゃ無くなったので、俺は少し離れた場所でみんなを眺めていた。ポジション的には引率の先生ってところなのだろうか……本物の教師がいるが、既に萩村母と酒を酌み交わし酔っ払っている。

 

「みんな楽しそうですね」

 

「そうですね。会長や魚見さんなんて、はしゃぎ過ぎですよ」

 

 

 線香花火を両手に持ち、どれが一番最後まで生き残るか対決しているのだが、何故両手で?

 

「コトミさんは振り回してますしね」

 

「アイツに情緒を楽しむ、なんて出来るわけありませんからね」

 

「ねぇ、タカトシさん」

 

「何でしょうか? サクラさん」

 

 

 呼び方が苗字から名前に変わった。別にどっちでも気にしないので、俺は相手に合わせて呼び分けているのだ。

 

「あの旅行から、私たちの距離ってかなり縮まったと思いませんか?」

 

「そうですね。サクラさんとは距離がひらく可能性は殆どないですからね」

 

 

 下ネタは言わないし、天然ボケをかます事も無い。何より一緒にいて非常に楽なのだ。距離がひらく可能性などほどゼロだろう。

 

「他の人たちには悪いですけど、私はもっとタカトシさんと仲良くなりたいです」

 

「それは、光栄だと思って良いのでしょうか?」

 

「ええ。五十嵐さんほどではないですけど、私も男性は苦手なんですよ」

 

「そうなんですか?」

 

「ええ、あの露骨な視線とかが……」

 

 

 そういってサクラさんの視線を辿ると、そこにはいやらしい目をした柳本の顔があった……なるほど、確かにあんな視線を向けられたら男性不審にもなるか……

 

「でも、タカトシさんは……」

 

「津田君! ちょっと助けて!」

 

「五十嵐さん? 何を急に……あぁ」

 

 

 逃げまどう五十嵐さんの背後に、カメラを構えて追いかけまわす畑さんと、面白がって付き合ってる会長と七条先輩の姿があった。畑さんは兎も角として、三人共、浴衣で良く走れるよな……

 

「えっと、サクラさん。何か言いかけましたよね。何です?」

 

「いいえ、まだ時期じゃないって事でしょうね。また今度にします」

 

「? 分かりました。とりあえずあの三人を捕まえて説教してきます」

 

 

 何を言いかけたのか気にはなったが、サクラさんに言うつもりが無さそうだったのであっさりと聞くのを諦めた。

 

「……バカ」

 

 

 サクラさんが何かを呟いたように思えたが、そのタイミングで花火が打ちあがり、サクラさんの声は爆音にかき消されたのだった……唇の動きだけを見れば「バカ」と言ったようだが、それが何に対しての言葉なのか、俺には分からなかった。




アニメでは色々と大変そうだったしな……主にツッコミメンバーが……

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