アリアとペアになって、最初の相手がカナとコトミペア、という事は畑がカメラを構えるのは必至だと言い切れる。なぜならな……
「天草会長以外は乳揺れが期待出来ますねー」
「アンタはもう少し煩悩と戦った方が良い……あまりにも正直すぎる……」
津田に鉄拳制裁されている畑がシャッターチャンスを逃さないように必死になるのは当然だと分かっているからだ。
「畑のヤツ……後で説教してやる必要があるな」
「でもシノちゃん。畑さんが撮った写真をおかずにする男子生徒がいると思うと、少しくらいは協力してあげたほうが良いんじゃないかな? おかずが無くて溜め過ぎた男子が女子を襲っちゃったら大変だし」
「……一理あるかもしれない」
「無いよ」
アリアに説得しかけられた私の背後から、呆れたように津田がツッコミを入れて来た。
「そもそも真面目に試合するんじゃないんですか? 遊びでも常に全力だ! って何時も言ってるじゃないですか」
「そうだったな! ちなみに、勝ったチームは負けたチームの相手に一つ言う事を聞かせられるからな! これは初戦敗退だろうが、決勝で負けたチームだろうが関係なく対応するルールだからそのつもりで!」
「聞いて無いぞ、そんなの……」
「当たり前だ! いま思いついたからな!」
「威張るな!」
津田に拳骨を振り下ろされたが、痛みは無く程よい快感が私を包み込む……これがMが最強だと言われる所以なのだろうか。
「まぁ勝てば問題無いだろ。リスクはどのチームも同じだからな!」
「だいたい他の人が納得するわけが……」
「勝てばシノッチに足を舐めさせたり出来るのでしょうか?」
「私はアリア先輩を服従させてみたいです!」
「まぁ、勝てば良いのよね」
「相手は津田さんですけど……」
森以外はかなり乗り気で、津田は諦めて溜め息を吐いた。
「負けたリスクは考えての事なら良いです……」
あっさりと諦めた、と思ったが、津田も数で攻めれば折れてくれると言う事を忘れていた。ならこれからは集団で津田攻めをすればいいのか!
天草会長・七条さんペア対魚見さん・コトミちゃんペアの試合は、一進一退の激しい攻防の末、天草会長と七条さんのペアが勝利を収めた。
「ではカナは私の足を舐めろ!」
「クッ、だが命令なら仕方ない……」
「じゃあコトミちゃんは私のあそこを……」
「ひゃほー! 喜んで舐めますー!」
「………」
自分の妹であるコトミちゃんがぶっ飛んでるのを見て、津田君が絶望の表情を浮かべている……前から分かってはいたんだろうけども、ここまでぶっ飛んでると何周か回って再び絶望が訪れたんだろうな……
「津田、絶対に負けないからね!」
「あぁ……」
「津田さん?」
「何でしょう?」
「あの……大丈夫ですか?」
「えぇ……」
生返事しか出来ない津田君を見て、萩村さんも森さんも揃って津田君に同情の視線を向ける。私も似たような視線を津田君に向けているけど、これはさすがに仕方ないわよね……
「じゃあ次! 津田・五十嵐ペア対萩村・森ペアの試合を行うわよ!」
「さっきの試合より乳揺れの回数は少なそうですね……お嬢様、私にも舐めさせてください!」
審判の横島先生と、出島さんが私たちをコートに呼び、いよいよ試合が始まろうとしている……んだけども、津田君の意識はまだ完全に回復はしていないのだ。
「津田君、そろそろ復帰してほしいんだけど……」
「えぇ……分かってます」
やっぱり意識ここにあらずの津田君。人前で恥ずかしいけど、津田君を現実に復帰させる為なら仕方ないわよね……決して私がしたいからするわけじゃないんだからね!
「津田君、ごめんなさい!」
「っ!? 何を……」
「だって、何時までも心ここにあらずだったから……その、キスすれば復帰してくれるかなって……」
「おかげで復帰はしましたけど……萩村と森さんの視線が痛いんですけど……」
「森さんは責める資格は無いと思うんですけどね……」
私より先に――津田君のファーストキスを奪った森さんに、私を責める資格など無いと思ってるんです。
「風紀委員長が津田副会長の唇を強奪! 見出しはこれで決まりね! ……すみません、自重します」
津田君に睨まれて、畑さんがメモ帳をしまい砂浜に土下座した。相変わらず津田君の睨みには素直に降伏するのね、畑さんも……
「勝てば相手チームに一つ命令出来るのよね……」
「絶対に勝ちましょう! そして五十嵐さんに恥ずかしい事をさせます!」
「何故私!? 津田君じゃないの!?」
「俺は特に命令する事なんて無いんですけどね……」
一人ズレている津田君を他所に、萩村さん・森さんペアとのビーチバレー対決はスタートしたのだが……
「津田と五十嵐ペアの完封勝利ね」
「強すぎる……」
「さすが津田さん……」
「私、殆どボールに触って無い……」
津田君が殆ど一人で二人を相手にして完封、私たちのペアが勝利したのだった。
「じゃあ津田、勝者の権限で二人に命令しなさい!」
「何で嬉しそうなんですか……じゃあ、さっきのアレを見なかった事にしてくれると助かる」
「「………、プッ」」
津田君の命令とは思えない言葉に、萩村さんと森さんは揃って噴出した。
「しょうがないわね。命令されたんじゃ見なかった事にするしかないものね」
「そうですね。勝者の命令じゃ、仕方ありません」
「何か悪いね……」
恥ずかしそうに、ばつが悪そうに頬を掻きながら津田君は照れ笑いを浮かべてた。その表情は、今まで見た事の無い津田君だった。
「じゃあ決勝は、天草・七条ペア対津田・五十嵐ペアに決まりね! ちょっと休憩をはさんで開始するわ」
連戦となる事を考えたのか、横島先生がまともな提案をしてくれた。これでちょっとは気持ちを落ち着かせる時間が出来たわね……私、なんて事しちゃったんだろう……
タカトシから、ではなくカエデから……かなり大胆ですね