桜才学園での生活   作:猫林13世

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タイトルから分かるように、今回タカトシはお休みです


ツッコミ不在の恐怖

 隣のベッドで津田君が寝ているのに、私は緊張する事無くぐっすりと寝る事が出来た。去年の夏は、まだ津田君の事を信頼する事が出来てなかったから微妙に寝不足に陥ったのだけども、今年は快眠だった。

 

「おはようございます」

 

「おはようございます、五十嵐さんも朝早いんですね」

 

「森さんこそ……あれ? 津田君は如何したんですか?」

 

 

 起き上がり森さんと朝の挨拶を交わしてから、私は隣のベッドにいるはずの津田君の姿が無い事に気がついた。

 

「津田さんなら私が起きた時からいませんよ。多分朝の散歩か何かに出かけたんだと思いますけど」

 

「そう言えば、去年もそんな事がありました」

 

「そうなんですか? 去年は私は参加してませんでしたので、その辺りの事は分かりませんけど」

 

「でも、津田君って何時から起きてるのかしら? 少なくとも、私たちより遅くに寝たんでしょうし」

 

 

 津田君が先に寝たはずは無いのは分かっている。だからこそ、彼が寝不足に陥らないか心配なのだ。

 

「この間津田さんの家に泊まった時も、かなり早くから起きてましたよ」

 

「泊まった?」

 

「ええ。津田さんの家に遊びに行ったら、台風で電車が止まってしまいまして。出島さんの車が丁度車検だったのでお迎えも無く、止む終えず津田さんの家に泊まったのです」

 

「そうだったんですか……なんだかお泊り会みたいで面白そうですね」

 

「でも、津田さんは大変そうでしたけどね」

 

 

 森さんからその「大変」の内容を聞かされて、私は津田君に同情した。何で自分の家でそこまで疲れ無きゃいけないんだろうか……

 

「とりあえず着替えましょうか」

 

「そうですね……あっ、でも津田君が途中で入ってくる可能性も……」

 

「大丈夫じゃないですか? 津田さんってかなり勘が良い人ですから」

 

「確かに……」

 

 

 あれは勘なのかしら? それとも、部屋の中の気配なんかも察知出来るのかしら?

 そして、タイミングを計ったのかの如く、津田君は私たちが着替え終わったそのタイミングで部屋に戻ってきたのでした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 昨日はサクラとカエデの二人に付きっきりだったタカトシを、何とかして私たちの側にいさせたい。私とカナとアリアの三人で、その作戦を立てる事にした。

 

「やっぱり~タカトシ君を誘惑して側に誘うしかないと思うんだよね~」

 

「しかし、タカ君は真面目な子のようですし。サクラっちとカエデっちの特訓を投げ出してまで誘惑に乗るとは思えないんですよ。ましてやシノッチの誘惑じゃあ」

 

「カナ、やはり一度本気で喧嘩しようじゃないか!」

 

「まぁまぁシノちゃん。カナちゃんだって悪気があって言ってるわけじゃないんだから。ただ事実を言ってるだけなんだよ~?」

 

「アリアまで苛めるのか!」

 

 

 自分でも分かってはいるが、アリアとカナの大きさに比べたら、私なんて無いのと変わらない……いや、萩村よりは有るのだが。

 

「私たちも二人の特訓を手伝う、という名目でタカ君の側にいるのは如何でしょう? 隙を見てタカ君に抱きついてオッパイアピールなんていうのも出来ると思いますし」

 

「それいいかも! ……でも、タカトシ君が私たちの邪念を感じ取って断る可能性があるんじゃない?」

 

「確かに……アイツは妙に勘が良いからな……」

 

「サクラっちやカエデっちも完全にタカ君の事を意識してますし、あの二人だけキャッキャウフフな展開を繰り広げているのは不公平ですよね」

 

「そうだ! シノちゃん、夜の肝試しでタカトシ君と回る方が良くない? 怖さにかこつけて抱きついたり、そのまま外で……」

 

「それ良いな!」

 

 

 問題は、ちゃんとタカトシとペアになれるかなんだが……

 

「初めてが外、などとは興奮しますね!」

 

「あっでも、ペアって二人一組なんだっけ。この中の内一人だけがタカトシ君とペアになれるのよね……」

 

 

 もちろん、この部屋に中からペアが出来るとは限らない。最近やたらとタカトシと接触の多いサクラや、むっつりスケベのカエデなどがタカトシとペアになったりしたら、アリアの妄想がそのまま実行されるかもしれないじゃないか……

 

「もし三人以外なら、萩村が良いな」

 

「スズちゃんならタカトシ君が変な気を起こす可能性なんて無いものね」

 

「タカ君がペドだったら大変ですけど、普段の二人の関係を見る限り大丈夫でしょう」

 

「こうなったらペア決めの際に少し細工をするしか……」

 

「シノちゃん、不正は駄目だよ? タカトシ君にバレてお説教されるのがオチだから」

 

 

 そうなんだよな……タカトシの前で不正をしようものなら、長時間お説教の上、拳骨や鉄拳制裁が待っているんだよな……こうなったら今から神に頼むしかないのか……

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 何だか、私がいないところで酷い言われようをされたような気がずっとしているのだが、確かめる手段も無いので大人しく海で遊んでいる。向こうでは津田が五十嵐さんと森さんに色々とレクチャーしている。

 

「私も加われたらな……」

 

 

 泳ぎには自信がある。だけども、津田たちがいる場所では、私は足がつかないのだ。

 

「スズ先輩」

 

「なに?」

 

「容姿相応に砂のお城でも作りませんか?」

 

 

 何となく引っかかったけど、コトミちゃんの提案に乗る事にした。このもやもやした気持ちは全て、創造にブッければすっきりするはずよね。

 

「そう言えば昔、砂場で山を作って穴を掘りませんでした?」

 

「やったわね」

 

「あれって楽しかったんですかね?」

 

「如何かしら?」

 

 

 今考えれば、子供のころの遊びなんて殆ど今やっても面白くないと感じるのだろう。だけどあの時は不思議と楽しかったんだろうな。

 

「今だったら大人の穴掘りを……」

 

「おっと、そこまでだ」

 

「じゃあ貫通式でも……」

 

「だからそこまでだと言ってるだろうが!」

 

 

 ツッコミを入れてもボケ続けるコトミちゃんに、私は如何対処すればいいのだろうか……普段津田に任せっきりなので、こういった場面の対処法を、私は持ち合わせていなかったのだ。

 

「ところでスズ先輩は、前と後ろ、どっちが気持ちいいと思います?」

 

「………」

 

 

 誰か、この思春期娘を止めてくれないかしら……出来れば津田がいてくれると助かったんだけどな……




主人公のセリフ無しってのも珍しい気がする……
そして何だか分かりませんが、お気に入り登録者数が一気に増えて1000人超えを。ありがたい事です。

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