超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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第59話 それぞれの道

「それで、お兄ちゃんは大丈夫なの?」

 

アイエフとイツキが扉を開け、ネプテューヌたちを部屋に招き入れた時、ネプテューヌはそう心配するようにイツキに聞いてきた。 ちなみに、ネプテューヌに先ほどまでのブランとアイエフのそれぞれのイツキに対する会話シーンを見せると、持ち前のKYスキルで雰囲気をぶち壊し兼ねないため、ネプテューヌはコンパにより麻酔を打たれ、先ほど目覚めた事を追記する。

 

「うん。 心配ないよ。 毒はもう完全に解毒されているし、外傷も殆ど無いから大丈夫。 ……どっちかと言うと、まだ体は怠いけどね」

 

イツキはネプテューヌに心配無いと言わんばかりに右腕をグルグル回す。 彼の言う通り、イツキに外傷は殆ど無かった。 途中参戦とは言え、マジェコンヌと戦い反撃をされているにも関わらず、だ。 と言うのも、これにはイツキの中に眠る『大罪の力』のある1つの力に起因しているのためだ。 体の怠さが抜けないのも、その力のせいだったりする。 ネプテューヌたちはその力について詳しいことは知らないが、ラステイションでイツキが大怪我からほぼ一瞬で外傷を治療したシーンを見ているので、ネプテューヌは気にはなるが、ラステイションの時もそれとなくはぐらかされたので、深くは追求しなかった。

 

と、そんな話をしている時、新たにイツキを訪ねてきた人物が2人程現れた。

 

「失礼しますわ……あら、イツキさんはもう目を覚ましましたのね」

 

「(´・ω・`)おはようなのイツキさん」

 

部屋に入ってきたのはベールとらんらんだった。 らんらんはやや足元が覚束ないものの、目立った外傷は無かったようであり、今は普通に自分の足で歩いていた。

 

「あの、らんらんさん。 怪我は大丈夫ですか?」

 

「(´・ω・`)らんらんは平気なの。 そんなことより、イツキさんは自分の心配をするべきなの」

 

一応イツキはらんらんを心配したのだが、逆に自分を配慮すべきだと窘められてしまった。 それに追撃を加えるようにネプテューヌとコンパとブランとアイエフ、主にブランを筆頭にイツキに説教じみた言葉を言う。

 

「らんらんの言う通り、イツキは自分のことを軽視し過ぎだわ。 もう少し自分のことを労わりなさい」

 

「そうです。 イツキさんそんなことばっかりしていたら、体を壊しちゃうです」

 

「……私の口からは言いにくいんだけど、あまり無茶をする事は良くないと思うわ」

 

「な、なにこの針の筵……」

 

他の人を気遣った筈が、何故か自分が説教の集中砲火を受ける始末。 イツキは口は災いの元と言う言葉が身に染みたような気がした。 この状況に片手で頭を抱えるイツキに、タイミングを見計らっていたネプテューヌが、ここだと言わんばかりにカッコつけて言う。

 

「皆の言う通りだよ。 お兄ちゃんは、自分が傷ついたら心配する人がいるんだって事を自覚するべきだよ!」

 

人差し指をイツキに勢い良く突きつけるようにして指差すネプテューヌに対し、イツキは数秒ポカンとするが、やがて再び片手で頭を抱えて呟く。 寧ろさっきよりも更に深く頭を抱えていた。

 

「……ネプテューヌに言われたら、本当にお終いだな僕……」

 

「そんなにヘコむもの!? ねぇ、このパーティのわたしの立ち位置ホントどうなってるの!?」

 

「ビリ」

 

「ドベ」

 

「ボケ」

 

「2文字で収まる程度の価値しかない最下位!?」

 

ちなみに上からイツキ、ブラン、アイエフの言葉である。 イツキとブランの言葉はともかく、アイエフに関しては別の意味だろう。 ツッコミ的な位置で。 ネプテューヌはその場でショックを受けて、部屋の隅で体育座りでいじけてしまった。 現在コンパが慰めているが、流石にあれから立ち直るのは如何にネプテューヌといえど時間がかかるだろう。

 

「うーん冗談だったんだけどな……半分くらい」

 

「私も、ちょっと言い過ぎだったわ……7割は本音だったけど」

 

「素が出てるわよアンタたち。 向こうに聞こえたらあの子もっとヘコむわよ」

 

アイエフに言われ、流石に自重するイツキとブラン。 そして何故か最初に矛先を向けられていたイツキから急転換し、ネプテューヌへと標的が変わったことに関して同情した。 元凶はイツキなのだが。

 

「ふふふ、みなさん楽しそうですわね」

 

「あ、ベール様」

 

声に反応し振り返ってアイエフは、後ろに立っていたベールに気づく。 ベールはイツキたちの会話を楽しそうにして眺めていたが、先にイツキに言わなくてはならないことがあるため、ネプテューヌとコンパが一時的に会話の輪から離脱したのを気に、話しかけた。

 

「あらためましてイツキさん。 わたくしはベールと申します。 知っているとは思いますが、このリーンボックスの女神ですわ。 どうぞよろしくお願いします」

 

ベールの丁寧な自己紹介に、イツキは起こしていた上体を伸ばして、自分も自己紹介を返す。

 

「僕はイツキです。 ルウィーの女神、ホワイトハート様の補佐官をしております。 こちらこそ、よろしくお願いしますベールさ……ベール様」

 

イツキはついうっかり、いつもの調子でさん付けでベールを呼びそうになり、口を噤んだ。 しかしそれにベールが気づかない筈が無かった。

 

「イツキさん。 わたくしにそんなに無理して丁寧に話す必要はありませんことよ。 それに、わたくしに様付けをする必要もありませんわ」

 

ベールはイツキに微笑みながら言った。 イツキは戸惑いながらベールに問いかける。

 

「……しかし、アイエフさんはベール様と慕っておりますが……」

 

「本当はあいちゃんにも、わたくしの事はニックネームで読んで欲しいのですが、慣れない様子で距離感を掴めずにいるあいちゃんが可愛いので、これはこれで良いのです」

 

「かわっ!?」

 

「……ベール。 惚気るなら後にしてくれるかしら」

 

「そして、ゆくゆくはわたくしとあいちゃんは禁断の愛を……」

 

「き、キキキキ禁断のラヴ!?」

 

「……ベール。 妄想も後にして。 アイエフから蒸気が出てきたわ」

 

「あら、これは失礼しました」

 

恥ずかしさで顔を真っ赤にするアイエフを見て、ブランはベールに自重するように求める。 これ以上はアイエフが蒸発しかねない。 ベールは一言謝り、再びイツキへと向き直る。

 

「イツキさんの場合ですと、何だか様付けに慣れてないとも言うべきでしょうか? ともかく、言いにくい様付けよりも自然体の方が、わたくしとしては嬉しいですわ」

 

ベールの言葉にイツキは少し考えるように口に手を当て、相手がそう言うなら無理をする必要も無いかと結論付け、返答した。

 

「はい、ありがとうござ……ううん、ありがとうベールさん。 そうさせてもらうよ」

 

「いえいえ、こちらとしても対等に話せる友達が増えて嬉しいですわ」

 

イツキとベールはそう言ってお互いに笑い合った。 そこでベールは1つ咳払いをした。

 

「さて、雑談はこれくらいにして、今後のことについて話しましょうか」

 

ベールのその言葉の元、注目がベールへと集まった。 それを確認したベールは話し始める。

 

「まずブランたちはこれからどうするのですの?」

 

「私とイツキは明日にはルウィーに帰るわ。 マジェコンヌに逃げられた上、あいつが向かった先はルウィーだったし、あいつの動向が気になるわ」

 

ブランの言葉に同調するようにイツキも首を縦に振る。 嘘ばかりでは無いが、マジェコンヌがルウィーへと向かったのは、現在マジェコンヌはルウィー教会を乗っ取っており、そこを拠点にしているからと2人は知っているのだから。

 

「そうですか。 わたくしもマジェコンヌの動向は気になりますので、マジェコンヌの事はそちらにお願いします」

 

ベールはブランにお辞儀して頼んだ。 ベールは今回の事件の被害者であり、最もこの事件に憤慨している者だろう。 ブランはベールの言葉に何も返さなかったが、ベールが顔を上げた時、黙って1度頷いた。 それを確認したベールは礼を言い、視線を変える。

 

「では、あいちゃんたちはこれからどうするのです?」

 

話を振られたアイエフと言えば、未だにベールの禁断の愛云々の発言が頭の中で回転していたらしく、返事をするのにやや間があった。

 

「……あ、は、はいベール様! えーとですね……私たちも明日には1度プラネテューヌに戻ろうと思います」

 

「えー! 帰るのいくらなんでも早いよあいちゃん! 3日、いやせめて1週間はリーンボックスで遊んで行こうよー」

 

アイエフの今後の意向に反論したのは勿論ネプテューヌだ。 滞在期間をせめてといいつつ増やす辺りネプテューヌらしいと言えばネプテューヌらしい。 先ほどまで部屋の隅でいじけていたが、心が挫けるのが早ければ、立ち直るのも早いのだろう。 アイエフはネプテューヌが反対してくると予測していたためか、やっぱりかと呆れつつもネプテューヌを嗜める。

 

「あのねネプ子、イストワールがマジェコンヌが鍵の欠片を回収しているって言っていたでしょ? ならその前に私たちで先回りして見つけないといけないわ。 わたしだってもっといたいのに我慢しているんだから、あんたも我慢しなさい」

 

「うぅ……あいちゃんが厳しいよぉ」

 

ネプテューヌはわかりやすくしょげて呟いた。 アイエフと違いネプテューヌが自身に甘いだけなのだが。 そんな落ち込むネプテューヌを見て、ネプテューヌに甘いコンパは励ます。

 

「ねぷねぷ。 今回はあいちゃんの言う通り我慢するです。 ところで、あいちゃん。 次はどこに向かうですか?」

 

「そうね、ラステイションの方はさすがにまだシアンたちの方も立て込んでいるだろうし、プラネテューヌとリーンボックスで鍵の欠片は見つけたから、順当に行ってルウィーかしらね」

 

アイエフの何気なく言った『ルウィー』と言う単語に、イツキはウッと誰も気づかない呟きと共に固まる。 ネプテューヌたちは既にプラネテューヌ、ラステイション、リーンボックスを訪れているために当然と言えば当然の話なのだが、今ルウィーで起こっている事件を知っている身として、そしてその事件にネプテューヌたちを巻き込みたく無いと考えるであろう主人の事を考えるとイツキは複雑な思いであった。

 

「ルウィーか〜……どんな国なんだろうなー?」

 

「私は何度か行った事があるけど、良い国よ。 と、言っても行くこと自体は数年ぶりだから、イツキとブランに現地の案内をしてもらいたいのだけど、頼めるかしら?」

 

「……あー……えーっと……」

 

アイエフに頼まれたイツキは言葉を濁していた。 イツキとしてはネプテューヌたちの手を借りたい所だが、主人であるブランはそれを良しとはしないだろうと考えている。 それにネプテューヌたちにはネプテューヌたちの目的があり、その迷惑になることはイツキ自身も行いたくは無かった。 しかし、ルウィーに来るなと言った所で理由を問われるだけであり、イツキはどう返答すれば良いか答えあぐねていた。

 

「? どうしたのよイツキ。 何か問題でもあるの?」

 

言葉を濁すイツキにアイエフは不思議そうに尋ねる。 イツキはそれを聞いて更に焦りを感じてしまう。 もうこのままネプテューヌたちに今ルウィーで起こっている事件について、話してしまおうかと思った時だった。

 

「今の時期にルウィーに来ることはお勧めしないわ」

 

イツキが口を開けるよりも先にアイエフの言葉に答えるように返答したのはブランだった。 イツキはブランへと視線を向けた。 それはイツキ以外の者たちも一緒であり、ブランの言葉の意味を問うような視線であった。

 

「ブラン、それってどう言う意味なの?」

 

「あなたたちは知らないでしょうけど、ここ最近のルウィーは局所ごとで突発的に大寒波が発生しているの。 その影響か、モンスターも活発に活動しているの。 雪の中での過ごし方を知っているルウィー国民たち(わたしたち)はいいけど、他国から来た旅人や冒険者の被害が後を絶たないのよ」

 

しれっと言うブランに、イツキは数日前のルウィーでの出来事を思い返したが、そんな事は聞いたことも無いし、フィナンシェもそんな事は言っていなかった。 勿論、イツキが聞いていないと言うだけで事実である可能性もあるわけだが、イツキがブランに目配せした所、黙っていろと言うアイコンタクトが伝わってきたために、これはブランの方便であるとイツキは確信した。 イツキにはどう言う意図があるのかは予想できたので、ここは素直に引き下がった。

 

「大寒波? そんなのこの時期にあったかしら……?」

 

当然アイエフはそれに対して疑問を感じ、自分の記憶を思い返すように首を傾げた。 その疑問が来ることは分かっていたのか即座に返す。

 

「あなたが知らなくても仕方ないわ。 ここの所のルウィーの大寒波の多発は本当に最近の事だし。 そうね……大体1ヶ月前くらいから多発し始めたわね」

 

「んー……それなら私が知らなくても不思議じゃ無いけど、イツキとブランが案内してくれれば平気なんじゃないかしら?」

 

アイエフはブランの説明に納得はしたが、それでも現地民であるイツキとブランが指示を出しながら道を進めば問題無いのではと疑問を投げかけた。

 

「あーアイエフさん。 そうしたいのは山々なんだけど、僕はマジェコンヌを追わなきゃいけないし、ブランさんはルウィーで寒波の被害にあった地域の復興の仕事とかあるから、ちょっとこの時期は忙しいんだ」

 

その質問に答えたのはイツキだった。 イツキは自分なりに気を遣ってブランのフォローをしたのだが、視線をブランへと向けると軽く睨まれたため、反省する。 とは言え、ブラン自身もイツキが気を遣った事は分かっているので心の中でため息を吐きつつもイツキに合わせた。

 

「イツキの言う通り、本当はルウィーでやらなくちゃいけない事があるのよ。 イツキと一緒にリーンボックスに来たのは、イツキがどうしても私も一緒に来て欲しいって駄々をこねたからよ」

 

「ブランさん、それとなく情報改竄をするのはやめようよ……」

 

しれっとブランはリーンボックスに来た理由をでっち上げた。 とは言っても、ブランがリーンボックスに来た真の理由を知っているのは本人以外では1人だけであり、イツキでは無いのだが。

 

「……」

 

「……? ベールさん、どうして笑っているです?」

 

「あぁ、いえ。 なんでもありませんわ」

 

その理由を知る人と言えば、ブランとイツキのやり取りを視界と耳に入れて微笑ましく笑っていた。

 

一方でブランのでっち上げの理由を聞いた、一歩引いて見守ると言う選択肢が存在しないネプテューヌは、恐れるものは無いとばかりにブランに特攻する。

 

「おお! これは意訳したら『べっ、別にアンタのためじゃないんだからねっ!』だね! ツンデレキャラはノワールだけかと思っていたけど、真のツンデレはブランだったんぎゃぁぁぁぁああああああ!!?!」

 

「そうだな……別に、お前のためじゃねえ……お前のためじゃねぇんだよ……絶対だ!!」

 

「わ、分かりました! 分かりましたからヘッドロックはご勘弁を! く、首をそんな方向には曲げちゃらめぇぇぇええええ!!!?!」

 

そして見事に玉砕した。 命よりもネタを挟む事を優先させる辺り、ネプテューヌはよく言えば勇者であり、悪く言えば死にたがりなのだろう。 ここにいる者の殆どがネプテューヌの行動を後者の意味でとっているが。

 

「さて、煩いのが静かになった所で話を再開するわよ」

 

「アイエフさん薄情」

 

現在ブランにより口から泡吹いて気絶しているネプテューヌをコンパが必死に呼びかけながら治療している光景をアイエフは完全にスルーし話を進行した。 イツキはイツキでアイエフにツッコミは入れたが、イツキもネプテューヌに構うつもりは無いのでスルー。 なんだかんだ言ってイツキも薄情だった。

 

「まあ、とにかくそっちの寒波が落ち着くまで、私たちはプラネテューヌで待機しているか、もしくは先にラステイションにもう一度向かう事にするわ」

 

「……ごめんなさいね。 あなたたちの力になれなくて」

 

「別にブランが気にすることは無いわよ。 自然現象はどうにもできない事だし、仕方ないわ」

 

その時のブランの一瞬の表情の変化はイツキにしか分からなかったが、アイエフの言葉を聞いた直後、ブランは申し訳さそうな表情をしていた。 そんな表情をした理由も、本人以外ではイツキにしか分からない事だろう。

 

「それで、ベール様はどうするんですか?」

 

アイエフは最後にベールへと話を振った。 その視線は隠されてこそ要るが、ベールが一緒について来てくれる事を願うような視線であった。 ベールにはその期待の視線が感じられたのか、少し期待を裏切ることになる返答を苦笑いしながら答えた。

 

「わたくしは今回の一件で仕事が増えてしまいましたので、当分はお仕事づくしですわ。 国内の魔王崇拝者やエネミーディスクの取り締まりを強化しませんと……」

 

ベールが女神の力を奪い返したのは良いが、その過程において浮き彫りになって来た問題をベールは解決しなければならない。 それはリーンボックスの女神であるが故の責務なのだ。

 

「そ、そうですか……」

 

「あいちゃん、そんな残念がらないで下さい。 それに、仕事が落ち着いたら、今度はわたくしの方からあいちゃんに会いに行きますわ」

 

少し残念そうにして落ち込むアイエフに、ベールは励ますように言う。 アイエフ自身も何となくベールはこれから今回の事件事後処理の仕事で大変になることは予想していたのだが、残念なものは残念なのである。

 

「ベール様……」

 

……が、ベールから会いに行くと言う言葉を聞き、アイエフはすぐに立ち直り、うっとりとした表情でベールを見つめていた。 それを見だがベール以外の一同は、やれやれとばかりに首を振るのだった。

 

 

 

「(´・ω・`)……やっぱりらんらん空気だった」

 

 

 

部屋の入り口近くで、らんらんが小さく呟いたが誰も気づかなかった。

 

 

 

 

 

 

「うー……本当に一緒に来てくれないの?」

 

教会を出た直後に、ネプテューヌがブランさんと僕、それとベールさんに向けて寂しそうに言った。

 

僕たちは昨日、自分たちの今後の行動について話し合った後、ベールさんの部屋に泊めさせて貰った。 女性陣の中にポツンと1人だけ寝ると言うのにはかなり抵抗があったのだが

 

『お兄ちゃんはそんなことしないよー。 ヘタレだし』

 

と言うネプテューヌの発言の元、特に縛られるなどの事はされなかった。 何故か皆それで納得しちゃったので、凄い複雑な気分だった。 まあ、下手なことしたら待っているのはブランさんによる拷問だし、する勇気も無いんだけど。 ただ、女性ばかりがいる部屋の中、男がたった1人と言う環境で眠れる筈も無く、若干寝不足気味である。

 

短い時間だが、ベールさんを交えて皆でお話をしたりして過ごして眠り、朝になってネプテューヌとコンパさんとアイエフさんはプラネテューヌに、僕とブランさんはルウィーへと帰るために教会を出て、ベールさんたちはその見送りを教会の前すると言う状況の前で今に至るのだ。

 

「ネプテューヌ、ラステイションでもノワールさんが言っていたでしょ? ネプテューヌたちにやるべきことがあるように、僕たちやベールさんにもやるべき事があるんだよ」

 

「うー……でもー」

 

そう言って僕はネプテューヌを説得しようと試みるが、あまり効果は無いようで愚図るような声を出すネプテューヌ。 こんな我儘ばかり言う癖に一国を司る女神なんだから彼女の守っている国の行く末が心配だ。

 

「ねぷねぷ、我儘はいけないです」

 

「そうよネプ子。 イツキやブラン、ベール様にも事情があるんだから我慢しなさい」

 

「うー……分かったよ」

 

コンパさんとアイエフさんの説得でようやくネプテューヌは引き下がった。 うーむ、何だか僕の説得が意味の無かった物のようで複雑だ……

 

視線を教会の方へと向けると、そこには見送る側のベールさんとらんらんさん、それと意外な人物が立っていた。

 

「……重ね重ね謝罪する。 儂はお主らに……イツキ殿にとんでもないことを……」

 

最敬礼で謝罪するその老人は、僕たちをあのパーティに招待し、罠を張ったイヴォワールさんだ。 昨日のこと、僕たちがベールさんの部屋で待機していると、ベールさんがイヴォワールさんを連れて来て、僕たちに謝罪させたのだ。 その時に、その場にいる皆がイヴォワールさんの事を赦した……いや、ブランさんはまだ引きずっているみたいだけど、マジェコンヌが騙してきたと言う事情は知っているので、その時皆イヴォワールさんを赦したのだが、赦された後でもイヴォワールさんはずっとこんな感じだった。

 

「イヴォワールさん。 昨日も言いましたが、今回の事件の元凶はマジェコンヌです。 あなたのせいではありません」

 

「……じゃが……」

 

まだ申し訳なさそうにしているイヴォワールさん。 立場的にも罪悪感を感じやすいのだろう。 そう言う立場だからこそ、今後の生活や仕事に影響があってはいけない。 僕はそこで多少イヴォワールさんの心持ちが軽くなるならと思い、提案した。

 

「では、こうしましょう。 今度、出来る範囲で良いので僕の頼みを1つだけ聞いてください。 これでどうでしょうか?」

 

「……あいわかった。 その頼み、必ずや引き受けよう」

 

あなたは武士か。 ともあれ、これで多少は罪悪感が薄れてくれれば良いのだが……

 

「それでは、私たちはそろそろ行きますねベール様」

 

「バイバイですぅ」

 

「またねー! 絶対だよー!」

 

アイエフを先頭に、ネプテューヌたちはプラネテューヌへと出発した。 ブランさんもそれを確認し、自分たちも出発すべく足をルウィーへと接岸場へと歩を向けた。

 

「私たちもそろそろ行くわね。 行くわよイツキ」

 

「あ、うんブランさん」

 

足早で進むブランさんに、僕はその場でベールさんたちに会釈してすぐに走って追いかける。

 

「それでは皆さん、道中お気をつけ下さいね」

 

「(´・ω・`)また来てなのー」

 

手を振って僕たちを見送るベールさんたち。 向こう側からネプテューヌたちも手を振っていたので、そちらにも手を振りかえした。

 

元気良く、子どものようにはしゃぎながら手を振り返すネプテューヌ。 それに呆れつつも片手で控えめに手を振るアイエフさんとコンパさん。

 

そしてネプテューヌたちは手を下げ、こちらを振り返るのをやめて前を向いて歩き出した。 ネプテューヌがまた変な発言をしたのか、アイエフは懐から取り出したハリセンでツッコミを入れていた。 すっかりいつも通りのアイエフさんだった。

 

 

それを見ていると、僕は不思議と心がポカポカと温かくなった。

 

「……」

 

「……? どうしたのイツキ?」

 

じっとネプテューヌたちの方を見つめていたことに、ブランさんは疑問を感じてそう聞いてきた。 だから、僕は今の素直な心境を言葉にした。

 

 

「いや、何でもないよ。 ただ───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「───守れて良かった、って思っただけだよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ーー 第三章 大罪人は誰が為に茨の道を ーー

 

 

 

……to be continue

 













こんにちは。 3月29日現在スキー合宿2日目な作者ことアルテマです。

遂に主人公が最後の女神、グリーンハートことベール様とご対面しました。 つまり挨拶は終わり、これから物語は本番を迎えるといった感じですね。 Re,birth1をやった方なら分かりますでしょうが、次章はいよいよルウィー編です。 イツキとブランにとっての始まりの地にて、そこで何が起き、2人の関係がどうなるのでしょうかね(すっとぼけ)

さてさて、事務的連絡の時間。 来月から、新たな生活を迎える方は多いと思いますが、私もその1人です。 ですので、その新しい生活に慣れて小説執筆の時間を確保できるまで更新出来ません。 新章の準備期間と思ってくれるとありがたいです。 申し訳ない。

……スキーの疲れがマッハですので、これで後書き終えます。 ……次回の挿話はスキーを題材にしようかな。



それでは、皆さん御機嫌よう






……以下、寸劇と言うか伏線回収?



イヴォワール「行ってしまわれましたな……さて、ベール様。 我々も今後のリーンボックスについて話し合わねば……ん?」

「」イネェ

らんらん「(´・ω・`) ベール様ならアイエフさんたちとあっち行っちゃったの」

イヴォワール「は?」

リーンボックス教会職員「イヴォワール様。 グリーンハート様より書き置きを渡すようにと頼まれたしたので、こちらを」

『イヴォワールへ わたくしはあいちゃんたちとプラネテューヌに向かいますわ。 その間、あなたには頭の固い議会の説得や書類の処理、魔王崇拝規制の案の提案をしておいてくださいな。 ベールより』

リーンボックス教会職員「事情は伺っておりますので、手始めにグリーンハート様の未提出の書類などの提出をお願いします」

イヴォワール「……それは、一体どれ程の仕事量なのだ?」

リーンボックス教会職員「提出期限を過ぎた物と本日締め切りの物だけで、優に100は超えるかと思われます」

イヴォワール「」

らんらん「(´・ω・`) イヴォワールさんが白目を剥いているの」

リーンボックス教会職員「らんらん殿にも書類の処理をしてもらうようにグリーンハート様から聞いておりますので、ご容赦を」

らんらん「(´・ω・`) え?」





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