超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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挿話3後編 あなたは僕で僕はあなたで……ってこれ何てラブコメ?と言う話

「……ふーん……イツキとコンパの身体と意識が入れ替わったねぇ……」

 

「これってあれだよね? お前は俺で俺はお前で的な転校生がヒロインのラブコメだよね?」

 

「ネプ子、アンタ年いくつよ?」

 

僕が叫んだことに驚いて、何があったのか確認をしにワザワザ下に下ってきたブランさんとネプテューヌとアイエフさんは、今はコンパさんの姿をしている僕の顔をマジマジと疑わしげに見つめていた。

 

「そんな疑わしげに見つめてこないでよ皆……僕だって信じ難いんだから」

 

「いえ……正直これを見たから入れ替わった事に関しては信じているわ」

 

ブランさんは僕の見る視線の方向へと顔を向ける。 そこには足をやや内股にし、両手をズボンの裾ではなく前に来るように置いており、一斉に視線を向けられた事を不思議そうに首を傾げている僕の姿をしたコンパさんがいた。

 

「? 皆さんこちらを見て、どうしたですか?」

 

「あの、コンパさん? 何で自分の身体が入れ替わったというのにそんな普通でいるの? 後、可愛らしい仕草はやめて」

 

「? 普通って何がですか?」

 

指を頬に当てて小首を傾げるコンパさん。 元の姿でやれば何ともあざとい仕草なのだが、目の前の姿形は自分と同一の者に行われると違和感しか感じられない。

 

「いや、その……もっと驚いたり、騒いだりするもんじゃない? だって、身体が、しかも異性と入れ替わっちゃったんだよ?」

 

身体が入れ替わった時点で僕は驚いていたし、ましてや異性との身体との入れ替え状態は、僕は気にしないが (別の意味で気になるが) 、コンパさんは女の子だし、男の身体と入れ替わるなんて不快でしか無いだろう。

 

そんな僕の質問にコンパさんは苦笑いして

 

「確かに驚きましたけど……いえ、今も驚いてはいるんですけど、あまりに驚き過ぎちゃって、一周回って落ち着いちゃったみたいです」

 

なんて答えていた。 であるならば、コンパさんが異性の身体との差に気がついて変に騒いだりしない内に解決した方がいいな。

 

「いやー、しかしこんな古典的なネタをこんなタイミングでやるとはここの作者さんは一体どんな趣味嗜好しているか甚だ疑問だね」

 

いつもならこの辺でネプテューヌにツッコミを入れるところなのだが、地に座り込んでいる僕にはツッコミを入れる余裕など無かった。

 

「うぅ……ネプテューヌのメタ発言にツッコミを入れる余裕も無い……」

 

と言うのも、コンパさんの疲労などはコンパさんの身体自身の物なので、身体を動かすのに慣れていないと言うのもあるが、体力面の問題で今は立ち上がる余裕は無かった。

 

(コンパさん……こんなに疲れていたのか……)

 

コンパさんの身体と入れ替わった事によって初めてコンパさんの辛さが分かった。 なる程、こんな身体じゃロッククライミングはハードワーク過ぎるな……

 

「そう言えばコンパ……じゃなかった。 イツキはどうして座っているのよ? 立ち上がらないの?」

 

今だに立ち上がらないことを不思議に思ったのか、アイエフさんはまだ入れ替わった事により呼称を間違えながらもそう聞いてきた。

 

「いや、立ち上がりたいんだけど、どうも疲労度とかは身体そのものに依存するみたいなんだ……当たり前と言えば当たり前だけど」

 

呼吸を整えながらそう答えたが、長く喋り過ぎたようで胸が苦しくなってきた。 僕は心拍数を上げて身体を圧迫している心臓を抑えようと、つい手を胸の位置に持ってきてしまった。

 

 

ふにょん

 

 

「……ん?」

 

何やら手の平から感じる好ましい感触に疑問を感じる。 この感触は、さっき感じていたような……

 

視線を下ろすと僕が触れてたのは胸。 すなわちコンパさんのたわわな果実であるわけで……

 

「あ」

 

気づいた時には遅かった。 完全に僕はセクハラ紛い……いや完全にセクハラをしていた。 あまりの事に間の抜けた声が漏れたが、前方から物凄く嫌な視線を感じて視線を元に戻すと

 

「あららー……」

 

何て言いながら何故か笑っているネプテューヌ。 これはいい

 

「あ、あうぅ……」

 

顔を真っ赤にして恥ずかしそうに視線を逸らしている僕の姿をしたコンパさん。 後で謝らないといけないな……でも今はいいんだ。

 

「何やってんのよイツキ……」

 

やや冷めた視線でこちらを見るアイエフさん。 視線が痛いが今はこれもいいんだ。

 

「……」

 

問題は今現在自慢のハンマーを肩に携え、片目を紅く光らせているブランさん。 ブランさんからは隠しきれない殺気がこちらに放たれていて、正直怖くて仕方が無い。

 

「ブランさんごめん! でもこれ事故……では無いけど僕の不注意だから! 故意じゃないから! それにこれコンパさんの身体だからそんな物騒なものは閉まって!」

 

両手を交互に振り回して必死に説得しようとするが、ブランさんはそんなことを意ともせず、全く僕の話を聞いてはくれない。

 

「……それはよぉ……」

 

やっと口を開いたブランさんはそう言って、自分の胸を一度見やり、すぐにハンマーを振り上げた。

 

この時点で思い出したことがあるのだが、既に地雷を踏んでしまったことにはどうしようもなかった。

 

「私へのあてつけかゴラァァァァアアア!!!」

 

「うおおおお!? あぶなぁあああ!!」

 

真上から振り上げられたハンマーを横にズレて避ける。 ズガン! と段差を粉砕する……何てことは無かった。 一応崖の段差の手前でハンマーは止められていた。

 

「ちっ……避けたか」

 

「そりゃ避けるよ!」

 

と言うかここで殴りかかってきたブランさんの理由はただの僻みって時点で大分理不尽だ。 まあブランさんの理不尽さは今に始まったことでも無いけどね!

 

「今なんか失礼なこと思わなかったか?」

 

「イイエナニモ」

 

ブランさんはもう瞳から紅く光る眼は消えているが、怒り顔でハンマーを僕の首筋に突き立てていた。 ブランさんはこういう時に妙に鋭い。

 

「あーはいはい。 とりあえずブランは落ち着いて。 気持ちは分からないでも無いけど、それはコンパの身体なんだから、あまり無闇に傷つけちゃダメよ。 お仕置きが必要ならイツキが元の体に戻ってからにした方がいいわ」

 

そんな様子の僕たちを見兼ねたのかアイエフさんがこの場をフォローしてくれた。

 

「……そうね、分かったわ。 確かに関係の無いコンパの体を傷つけるわけにはいかないわ。 体が戻った後で折檻をすれば問題もない」

 

「あのーブランさん。 許してもらうという方向は……」

 

「無いわ」

 

「……デスヨネー」

 

ブランさんのお仕置きは幾らか私怨があるとは言え、女の子の胸を触ってしまったし、これはある程度覚悟しておいた方が良いだろうか……

 

「じゃ、今はイツキの折檻に関する話は置いて、元に戻す方法を考えましょうか」

 

あれ? 何でアイエフさんも折檻の執行者になる流れなのですか? 何て思ったがここで追及したら堂々巡りなので我慢をしよう。

 

「んー、でもあいちゃん。 結局のところ戻す方法なんてさ……」

 

「ん? 何よネプ子?」

 

間を開けて何か考えるように言いながらネプテューヌは立ち上がり、僕とコンパさんとアイエフさんの服をまとめて手に掴むと……

 

「これしか思いつかないんだよね」

 

と呟くや否や、モーションを殆ど省いて僕たちを思いっきり引っ張った。 その先にあるのは足場のない空中である。

 

「ってまたかぁぁあああああ!!」

 

「ね、ねぷねぷぅぅうう!!?」

 

「ちょ、ネプ子!? 何で私まで落としてるのよ! この!」

 

アイエフさんは突き落とされた事実を知るとただでは落ちないと腕を振り回してネプテューヌの腕を捉え、そのまま道ずれにしようとする。

 

「うわわ! 引っ張らないでよあいちゃん! た、助けてブラン!!」

 

ネプテューヌはアイエフさんに腕を取られたことに驚き、このままでは自分は落ちてしまうと、藁にも縋る思いですぐ近くにいたブランさんに両手で抱きついた。

 

「わ! て、テメェネプテューヌ! 何しやがるんだ! 離しやがれ! ってうおっ!?」

 

急に抱きつかれたことに驚くブランさん。 足場の悪い崖ということもあり、バランスを崩して一緒に崖に投げ出されるのにはさして時間はかからなかった。

 

「「「「「うわぁぁぁあああああ!!!??」」」」」

 

結局その場にいた全員が崖から下の段差に真っ逆さまであり、叫び声も不時着タイミングもほぼ一致であった。

 

「ひ、酷い目にあった……」

 

最も、既に酷い目にあっていたのだが。 また頭がクラクラするが、運良くまたも気絶はまぬがれられたようだ。

 

「もう! 何するのよネプ子!」

 

頭を抑えながらこちらを見やって怒るコンパさん。 ……もう一度言おう。 頭を現在はさすりながらこちらを睨むコンパさん。 姿はコンパさんであるのだが……

 

「……アイエフさん?」

 

「は……? ネプ子、何よ急にかしこまっちゃって……気持ち悪いわ」

 

……真顔で言われた。 かなりキツイことを真顔で、しかもコンパさんの顔で言われた。 直接僕の事を指していないとは言え、かなり心を抉られた。

 

「痛たた……頭の十字コンが無かったら即死だったよ……」

 

あまりにストレートな言葉で気持ち悪いと言われて心が折れそうになっていた時、僕の後方からトーンは凛々しいがかなり間抜けっぽい言葉を喋るのが聞こえ、振り返った。

 

「うー……まだ頭がクラクラする……これは夜通しクソゲーをやった時に匹敵するよ……」

 

そこにいたのは頭をさすりながら何かぼやいているアイエフさんであった。 ……多分、と言うよりほぼ間違いなくこれはアイエフさんでは無く……

 

そんな事を考えていたらアイエフさん(?)はこちらの視線に気づくと

 

「ねぷ!? 何でここに女優が!?」

 

「君ネプテューヌだろ」

 

オーバーに驚くのと特有のボケを見て、今現在アイエフさんの体に宿っているのはネプテューヌと判明した。

 

「……わ、私がもう1人……!? って、そっか。 私たちも入れ替わっちゃったのね……」

 

後ろのコンパさんに宿っているのはアイエフさんである事も分かった。 ちなみに、僕が入れ替わったのはネプテューヌであるという事も。 まあこうなる事は分かっていたけどね……

 

「それじゃあ今ネプ子なのは……」

 

「……あー、僕だよアイエフさん。 イツキ」

 

控えめに僕はそう答えた。 少し傷心していたと言うこともあるが。 ネプテューヌの体に入れ替わっているのが僕だと分かるとアイエフさんは少し申し訳なさそうな顔をしていた。

 

「ごめんなさいイツキ……いつもネプ子を見ていたから、普段とのあまりのギャップに気持ち悪さを感じて……」

 

「うん。 まあ納得は出来るよ」

 

「それとなくわたしに風評被害が!?」

 

後ろでアイエフさんの姿をしたネプテューヌがぎゃあぎゃあと騒ぐ。 せっかくの凛々しさが台無しである。

 

「アンタの場合は普段からの行いのせいでしょうに……それにしても、目の前に自分の顔があるって、何か不思議な気分ね……」

 

「おーっとあいちゃん! ここで乙女っぽいことを言って女子力を高めに来たかー!」

 

「ネプ子。 わたしの体でそのアホっぽい喋り方はやめて」

 

「ひどっ! これって事故なんだしそんな事言わないでよ〜あいちゃん」

 

「どう考えてもアンタの引き起こした事態よネプ子!」

 

ネプテューヌの態度に憤慨しているアイエフさん。 それ以上に目の前の自分の姿をした者がいることで更に苛立ちを増しているようにも見えた。 最も外観からすればコンパさんがアイエフさんに憤慨しているようにしか見えないのだが

 

そんなアイエフさんを完全にスルーしているアイエフさんの姿をしたネプテューヌは、自分の頭を何かを探るように撫でていた。

 

「そっか、わたしはあいちゃんと入れ替わっちゃったんだ……む、この柔らかな手触りに流れるような双葉のリボンの形状……いつだったか寝ぼけてうっかりゴミ箱にいれてしまったリボンと同一だ!」

 

「一週間前に私のリボンが無くなっていたのはアンタの仕業かあああ!!」

 

何か知らなかった事実が露わとなっているが、これ以上ここで不毛な上に現在の状況を打破する上で全く関係のない話をされても困るし、とりあえず仲裁しよう。

 

「ほら、2人とも落ち着いて。 その話は関係ないし、今はこの現状の打破をしないといけないからさ」

 

2人の言い争いに割って入り、やんわりとそう伝えた。

 

「……」

 

「……」

 

しかしながら両者の反応は何故かこちらを複雑そうな視線で見ると言う物であり、少し首を傾げてしまう。

 

「……えっと、何?」

 

「……中はイツキだと分かっているのだけど、姿かたちも声もネプ子の状態でそんな事を言われても違和感しか無いと言うか……」

 

「うー……私もいざ目の前の自分が、わたしならやらないような行動を取られると変に感じると言うか……」

 

「……」

 

とりあえずネプテューヌが普段からどれだけ不真面目であることと、これ以上僕がこのネプテューヌの姿でいれば抉られる心すら無くなってしまうことが分かった。 早くもとの身体に戻らないと僕の精神に異常がきたしてしまう。

 

「うー……せっかく痛みが引いていたのに……」

 

どうやらまた1人うめき声を上げつつ何とか目を覚ましたようだ。 話し方からしてコンパさんなのだろう。 再び落下した彼女にとってはまさに踏んだり蹴ったりと言ったところだろう。

 

「コンパさん、大丈b……!?」

 

声の聞こえた方へ振り返り、無事かどうか確認しようとした言葉は続かず、代わりに驚き息を飲むと言う行為に繋がった。

 

「あ、ねぷねぷ。わたしは大丈夫ですよ」

 

満面の笑みでそう答えたのは、ブランさんの姿をしたコンパさんだった。 普段ならする筈の無い満面の笑顔を見て、僕はバカみたいに口を開けてほうけていた。

 

「? どうしたんですかねぷねぷ? ボーッとわたしの顔を見て。 わたしの顔に何かついてるですか?」

 

(はうあっ!?)

 

小首を傾げて人差し指を顎に当てて不思議そうに見つめるコンパさん。 だが中身がコンパさんと分かっていても姿形は完全にブランさんのものであり、その普段のブランさんなら絶対にしない可愛らしい行動に、ギャップ萌えを感じてドキマギしてしまう。

 

「あら、今はコンパはブランと入れ替わっているのね」

 

「え? わ、わたしです?」

 

「こんぱー。 今はあいちゃんはこんぱで、お兄ちゃんはわたしで、わたしはあいちゃん何だよー」

 

「え? あ、あいちゃん? ……えっと、あいちゃんがわたしで、ねぷねぷがあいちゃんで……あ、あわわ〜……」

 

入れ替わった状態のアイエフさんとネプテューヌに話しかけられ、ネプテューヌの雑な説明のせいで情報が増してわたわたとして慌てふためくコンパさん。 しかし姿形はブランさんであり滅多に見られないその可愛く慌てふためく姿に更にギャップ萌えを感じ……それはもう言ったよ!

 

いけない! このままじゃ本当にいけない! 僕の魔法都市の規律(エンデュミオンヴァーチュ)(好き勝手する。相手は死ぬ)が暴発し兼ねない!

 

「……? どうしたんですかねぷねぷ……の中の人? さっきから調子が変ですよ?」

 

誰が誰と入れ替わったのか分かり切っていないブランさんの姿をしたコンパさんが心配そうに顔を覗き込んで来た。 あまりにも無防備なその様子に僕は

 

「……き……」

 

「き?」

 

「消え去れ煩悩おぉぉおおお!!!」

 

突如奇声を上げた僕に周りのコンパさんたちは驚いていたが、気にせず僕は地面に頭を自ら叩きつけた。

 

「ね、ねぷねぷ!!?」

 

「ちょ、ちょっとイツキ!!? 何やってるのよ!」

 

「えええええええ!!? それわたしの体なんだけど!?」

 

僕の凶行とも言えるこの行動に誰もが驚いていたが、僕はすぐに地面に当てた顔を持ち上げて、心配しているであろう皆に平気であることを態度と共に示すために少し笑って

 

「な、何でもないよ。 心配しないで皆」

 

「い、いやアンタ頭から血を流していて全然平気には見えないわよ!?」

 

しかしアイエフさんはどうも取り乱して僕が出血していることを言っていた。 そっか、どうも視界の半分が赤いなって思ったけど、そう言うことだったんだ。

 

「問題無いよアイエフさん。 これは僕とコンパさんとブランさんのためにも、必要な犠牲だったんだ……それが止められるならこれくらいは些細な犠牲だよ」

 

「いやいやいや、それわたしの体なんだけど!? こういう時って大概体戻ったら何かメッチャ痛かったってオチだよね!?」

 

ネプテューヌが何か騒いでいるが、今の僕には誰も傷つけること無く、被害を抑え切ったと言う満足感故の優越感と、立ちくらみをしているかのような気持ち悪さを抑えるのに精一杯であったために、何を喋っているかは分からなかった。

 

少し時間が経ち、何とか立ちくらみが収まってきた。 よし……何とか本能の暴走は食い止められた。

 

しかしこのままブランさんのコンパさんの無意識なギャップ萌え攻撃に曝され続ければ僕のサンデーマンデーもとい、精神がさっきとは別の意味で精神に異常がきたしてしまう。 早く元の体に戻らないといけない……

 

と、考えたところで気づいたのだが、まだ僕の姿が見えていないということに気づき、そしてまだ現れていない残りの人物を組み合わせたことにより、この中で自分で言うのも何だが最悪の組み合わせが出来上がっていることに気づいたのだが、時は既に遅かった。

 

「……テメェ、ネプテューヌ。 よくもわたしを巻き込みやがったな……」

 

僕にとっていつも聞く声にいつも聞くような話し方の声が後方から聞こえた頃には、僕はパーカーの首根っこごと、猫をもつような形で釣り上げられた。

 

恐る恐る振り返り、顔を確認してみる。 いつも鏡越しに見るその僕の顔は、辛うじて判断できるもので、何故か片目は前髪に隠れ、もう片方の目と言えばそれは怒りの真紅で染まっていた。

 

 

だが、その姿は紛れもない僕であった。

 

 

「う、うっわ……イツキを本当の意味で怒らせたらこんな感じになるのかしら……」

 

「こ、これは……どこからどう見てもDQNです本当にありがとうございました」

 

「ね、ねぷねぷがあまりの事に変な顔になったです……」

 

他の3人もその僕と入れ替わったブランさんに引いていた。

つまり僕の姿に引いているということだ。 自分で言っておいて難だが凄く傷ついた。

 

ここで整理しておこう。 今現在ネプテューヌの体にいるのは僕、イツキだ。 コンパさんの体の中にいるのはアイエフさん。 アイエフさんの体にいるのはネプテューヌ。 ブランさんの体にいるのがコンパさん。 そして僕の体にいるのはブランさんということだ。

 

しかし今僕の目の前にいる僕の姿をしたブランさんはどうやら自分が入れ替わっている事に何故か気づいておらず、今ネプテューヌの体にいるのは僕ということに気づいていないようだ。 その証拠に、何故か右腕の拳が腰に構えられており、どう考えても拳が振るわれる直前の状態であったからだ。

 

「わー!! タイム! タイム!! ブランさん、今僕たち入れ替わっているんだよ! 今ネプテューヌの体にいるのは僕だよ! イツキ! そして今ブランさんがいるのは僕の体なんだよ!」

 

今にも僕に腹パンをフルパワーでしてきそうな僕の姿をしたブランさんに必死に呼びかける。 ナルシストみたいな言い方になるが、今ブランさんは入れ替わっていることに気づいていないようで、僕の体で加減抜きで腹パンをしようとしている。 毎日モンスターを殴りまくって鍛え上げたパンチの一撃を、フルパワーで使って耐えられる気がしないのだ。

 

「……そりゃ何だ? わたしを騙して何とか逃げるための方便か?」

 

「ならブランさん、目線の位置を考えてよ! いつもより遥かに高いでしょ?」

 

その言葉を聞いてブランさんは確かめるように周りをグルリと見回した。 僕とブランさんの身長差は大体ブランさんの頭が僕の首の真下当たりにくる身長だ。 これで違和感を感じない筈が無い。

 

「……成る程、私も入れ替わっちまったって訳か」

 

理解してくれたのか、ブランさんは僕を抑えていた腕を離してくれた。 だが苛立ちは抑えられていないようで、すぐにアイエフさん達に向き直ると

 

「おいテメェら。 今すぐ崖から落ちる準備をしろ」

 

と、簡潔に言った。 機から見れば完全に脅しにしか見えないのだが、皆その意図を理解していし、皆が早く元の体に戻りたいのは事実なので口を挟まなかった。 何よりも、僕 (一応男)の姿で、ブランさんのドスの利いた声を出せば、たちまち目の前の人物が反逆を許さない暴虐の限りを尽くす暴君としか思えなかったからだ。

 

しかし、そんな空気の中でも僕らのパーティには空気を読まない奴がいるわけで

 

「えー、別に今すぐ入れ替わることもないんじゃ無いかなー? だってここから落ちれば入れ替われることは証明されたわけだしさー」

 

凄まじい重圧の中でもあっけらかんとしているネプテューヌのその蛮勇に、僕はある意味尊敬すらした。

 

「こんなこと滅多に無いし、楽しまないともったいなーー」

 

ネプテューヌの発言は当然続く筈も無く

 

「い い か ら だ ま っ て い う こ と き け 。 じゃねえとテメェの身体と精神切り離すぞ」

 

「……はい」

 

どこから取り出したのか拳銃を右手に持ち、アイエフさんの姿をしたネプテューヌに構えるブランさんに、流石にさしものネプテューヌも逆らえなかった。

 

「……あの拳銃どこから取り出したんだろ?」

 

「……ああ言うの、『はーどぼいるど』って言うのでしょうか?」

 

コンパさんのつぶやきに僕は何も答えられなかった。 ただ自分の姿をしたものが行った今の行動を見て、これから変な怒り方は出来ないと思っただけだった。

 

 

 

 

 




実はイツキの標準装備、銃にしようかと考えていた時期がありました……

そんな訳で作者の思いつき企画第三弾! 楽しんでもらえましたかな?


追記

次の投稿遅れます。

詳しくは活動報告にて

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