超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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第42話 魔王崇拝

何とか崖で鉢合わせをしたモンスターを退け、崖を登り切ったイツキ達。 少々アイエフが暴走した戦闘ではあったが、モンスターに八つ当たりをしたことにより落ち着いたアイエフにイツキ達は安堵し、目的通り隣町への道へと進み始めた。

 

……のはいいが

 

「う、うへー……もうダメ……疲れたよ……」

 

「わたしも……足が痛いですぅ……。 休憩にしましょうよ……」

 

やつれたような顔で休憩を求めるネプテューヌとコンパ。 2人とも語尾は消えいるような物であった。

 

「やっぱりか……まあこの2人にロッククライミングの後に歩かせるという苦行は厳しいわよね。 それに、私もちょっと休みたいわ」

 

先頭を歩いているイツキとブランとアイエフは振り返り、既にその場に腰を下ろして呼吸を整えているネプテューヌとコンパを見て、アイエフは隣を歩くブランとイツキに提案した。

 

「そろそろ隣町の筈なんだけど……まあ確かに、ロッククライミングの直後じゃあ厳しいよなぁ……どうするブランさん?」

 

「……仕方が無いわね。 少しここで休憩にしましょうか」

 

とりあえずイツキとブランとアイエフはネプテューヌとコンパが腰を下ろしているところまで引き返すと、自分たちも腰を下ろして水分補給等の休憩を取ることにした。

 

「はいコンパさん。 回し飲みになっちゃうけどこれ。 しっかり水分補給してね」

 

イツキは自分の持つ斜めかけカバンから取り出した大きめの水筒を取り出し、一番疲弊のひどいコンパへと手渡した。

 

「え? イツキさん、これ何ですか?」

 

「スポーツドリンクだよ。 このダンジョン行く前に持っていた水筒に移し替えたんだ。 ……あぁ、ちゃんと濯いであるし、それ新しく買い換えたやつだから安心して」

 

そう言ってイツキは同じカバンからいつも彼が朝の運動の際のお供の小さな水筒を取り出し、飲み口に口を当てちびちびと口にする。 これは回し飲みに男である自分も飲むと気にする者がいるかもしれないという考慮からのものである。 最も気にしない者がいてもイツキには自発的にやるほどの気概は無いが

 

「イツキさん、ありがとうございますです」

 

丁度喉が渇いていたコンパはイツキにお礼を言うと、軽く水筒を煽った。

 

「へー、イツキって気が利くのね。 どっかの誰かさんにも見習って欲しいわ」

 

アイエフはイツキの気配りに関心したような声を出し、今現在コンパから回された水筒を受け取ったネプテューヌへと視線を向けて言った。 視線を向けられた方と言えばアイエフの視線に気づくが

 

「だってー。 どっかの誰かさん」

 

と、とぼけて水筒のスポーツドリンクを一気に煽った。

 

「……言っておくけど、どっかの誰かさん(イコール)ネプ子の事だからね」

 

それからネプテューヌ達はお喋りし始めたのだが、そんな歓談中、ネプテューヌ達に声を掛ける者が居た。

 

「お話中悪いけど、ちょっといいかな」

 

声を掛けられて振り返るネプテューヌ達。 そこに居たのは全身を包み込むローブを着用し、ローブのフードを目元にまで被った、辛うじて声から青年であると分かるだけである人物であった。

 

(……怪しい……)

 

まるで駅前で見るようなキャッチセールスマンのような話し方にやや警戒を高めるイツキ。 隣を見ればブランも警戒を高めるように目を細くしていた。

 

「ねぷ? お兄さん、もしかしてナンパ? けど、ごめんね。 全世界70億人の画面の前のお友達の為にもお受けできないんだー」

 

しかし警戒と言う言葉が頭の辞書に無いとしか思えないようなネプテューヌのボケだか素なのか分からない振る舞いにイツキとブランはその場でアニメのようにズッコケそうになり、高められた警戒もやや霧散した。 全世界の人間が自分のファンだと思っているネプテューヌの豪胆さは流石と言えよう。

 

「ほら、わたしのファンって、モブとはいえ男の人と話すだけでも嫉妬しちゃう純粋な人たちばっかりだからさ〜」

 

ネプテューヌのファンが純粋かどうかは知らないが、某動画でこれが流れたなら、画面に流れるコメントは嫉妬コメントでは無いと断言できる。 なんてイツキはこのネプテューヌの発言を聞いて、口には出さないが心の中でつぶやいていた。

 

「いえ、ナンパとかじゃなく、ただちょっと話を聞いてもらいたいだけなんです」

 

しかしイツキ達に話のあるこの青年はネプテューヌの発言を右から左に受け流した。 そもそも、ダンジョンでナンパ何てこともおかしな話だ。

 

「お話、です?」

 

こんなダンジョンでする話とは一体どんなものであろうかと、首を傾げて疑問を感じるコンパ。 間髪入れずに

 

「えぇ。 あなたたちは魔王ユニミテスをご存知ですか?」

 

「……!」

 

青年の口にしたワードを知っていたイツキは少しだけ眉を動かすと、すぐに戻し、隣で武器を構えようとしていたブランの肩へと手を添えた。 ブランは止められた事に少し驚き、説明を求めるようにイツキの顔を見る。 それに対してイツキは青年には目立たぬようにブランの耳元へ口を近づけて耳打ちした。

 

(ブランさん。 気持ちは分かるけど少し落ち着いて。 もう少しだけ泳がせよう)

 

それだけ言ってイツキはすぐにブランの耳元から離れた。 ブランはそれから少し目を閉じめ、装備しようとしていたハンマーを手に取るのをやめた。

 

 

魔王ユニミテス

 

 

それはイツキがこの世界に来てブランと出会い、建前上補佐官として勤め始めて間もない頃に出会い、ルウィーの宣教師コンベルサシオンの口から出た言葉であった。

 

コンベルサシオン。 つまり、ブランから女神の力を強奪し、ルウィーを乗っ取った元凶であるマジェコンヌ。 イツキはコンベルサシオンが魔王ユニミテスと言う名を口にしていたことをブランに報告していたため、ブランはこれ程過敏に反応したのだ。 しかしここで変に刺激し、逃げられたりすれば何も得られず、逆にここで少し泳がせれば、何かマジェコンヌに繋がるような有益な情報を得られるのではと考え、イツキはブランを抑えたのだ。

 

「ユミニテス?」

 

ネプテューヌは青年の言葉に疑問符を浮かべていた。 そもそも記憶喪失である彼女が知っている筈も無いのだが。

 

「いえ、ユニミテスです」

 

「……魔王ユミニテス、ね。 魔王なんて私は初めて聞いたけど、コンパは知ってる?」

 

「だからユニミテスですからね、ユ・二・ミ・テ・ス!」

 

ネプテューヌとアイエフはどうにもその魔王の名前を言いにくいようで、そのユニミテスの使いと名乗る青年に訂正をされていた。

 

「わたしもバルサミコスさんなんていう魔王さんは知らないです」

 

「いや、あんた絶対わざとでしょ!? もはや ‘‘ミ’’ と ‘‘ス’’ しか合ってないよ!?」

 

コンパに至っては魔王の名が調味料のようになってしまい、青年はペースを完全に狂わされていた。 しかも恐ろしいことに、この間違いをコンパは素でやっているということだ。

 

イツキはそんなコンパを見て、彼もコンベルサシオンに会った時、ワザと魔王の名前を間違えたことを思い出し、その後のコンベルサシオンの反応も思い出して、クスッと少し笑った。 今にして思えばあのコンベルサシオンの反応は、ただ素に戻っていただけと分かったからだ。

 

しかしイツキは横からブランに軽くどつかれたため、すぐに緩んだ顔を引き締め、コホンと咳払いをして青年に話しかけた。

 

「それで、その魔王ユニミテスとやらを知っているか聞くあなたは我々に何の用があるのでしょうか?」

 

「え、えぇ、実は僕、ユニミテスの使いと言いまして、魔王様の布教をしているんです。 だいぶ遠回りしましたが、今日はあなたたちに魔王ユニミテス様の良さを知ってもらおうと声をかけたんです」

 

(……?)

 

イツキは少し眉を顰めた。 イツキがコンベルサシオンと出会った際にコンベルサシオンが語った魔王とは混沌と畏怖の魔王と言う存在であると言っており、とても良い存在とは思えないどころか真逆の方向を行っている。 胡散臭さは変わらないが、到底良さを知るような点は無いように思えるのだ。

 

「……胡散臭いわね。 残念だけど、諦めてちょうだい。 私たちは魔王ユ何とかなんて興味ないし、ちゃんと信仰している女神様がいるわ」

 

「はいです。 わたしは、パープルハート様を信仰しているです」

 

アイエフはこのパーティの中で割とミーハーであるが、自身が聞いたこともないその魔王崇拝は胡散臭く興味も湧かないようだ。 コンパは純粋な少女なため、そんな怪しげな宗教よりも、友達であり信仰対象であるネプテューヌを選ぶのは当たり前だ。

 

「僕も、今信仰している女神様から改宗するつもりは毛頭ないです」

 

イツキも今信仰している女神、つまりルウィーのホワイトハートを裏切るなんて選択肢は存在しない。 そもそも裏切るなんてことを思い浮かべることが無いのだ。

 

「……右に同じく」

 

そのイツキの隣にいたルウィーの女神のブランは少し考えてからそう答えた。 興味無い、と切り捨てるだけでも良かったが、皆が皆キチンとした信仰対象がいると答えているため、自分だけ答えないのも変だと考えたのだ。 かと言って自分はホワイトハート様を信仰しているなんて言うと、今ネプテューヌやアイエフ達は知らないとはいえ、ナルシストのようで恥ずかしいので、あながち間違いでも無いイツキと同一の答えであると示したのだ。

 

「……あれ? そういえば、ねぷねぷはどうなんですか?」

 

コンパのこの質問は、ネプテューヌ自身が信仰の対象となる4女神の内の1人であることから来る質問である。 ネプテューヌはそのコンパの質問には笑ってこう答えた。

 

「わたし? わたしが信仰するって言ったら、もちろん、わ・た・し。 なんちゃってー! いやーん恥ずかしー。 ナルシストって思われちゃうかもー」

 

「……」

 

「……あ、あれ? もしかして、滑っちゃった?」

 

ネプテューヌの口から出たその冗談で何故かその一帯だけ気温が下がったようだった。 一応、イツキ達はネプテューヌがパープルハートであると知っているので、女神自身が他の女神を信仰しているなんて言っても可笑しな話だと分かっている。 だがネプテューヌのこのギャグは笑えず、もう少しマシな事を言えないのかと呆れていた。(ネプテューヌがこういう所で嘘をつける程器用でないことも知っているが)

 

(無難な答え方しといて良かったわ……)

 

ちなみに、ネプテューヌが周りからドン引きされている中、同じことをしなくて良かったことをブランは安堵していた。

 

「ま、まぁまぁ、そんな魔王様を邪険にしないで。 楽しいよ、魔王崇拝」

 

ネプテューヌが女神自身であることを知らないその青年は若干ネプテューヌに対して引いていたが、何とか持ち直して勧誘をなおも続ける。

 

「いや、邪険にしているのはあなたなんだけど」

 

「そうだ! ここで会ったのもきっと魔王様のお導きのおかげ。 君たちには特別に、この『魔王ユニミテスグッズセット』をあげよう! 残念ながら3人分しかないんだけど、はい」

 

青年はどこから持ってきたのか、3つの妙に大きい紙袋をイツキ達の目の前に置いた。

 

「いや、わたしたちそんなのいらないから」

 

「そう言わずに受け取ってよ。 便利な日常品だって入っているんだよ」

 

アイエフの的確なツッコミとハッキリといらないと言った答えを跳ね除けて、その青年は1つの紙袋に手を突っ込んで何かを取り出した。

 

「例えば、この魔王印のマグカップは職場や学校でも使えるシンプルデザイン。 このマグカップで飲むコーヒーは格別さ」

 

そう言って手に持つそのカップを見せて紹介してきた。 カップの持ち手を境に2つのマークがあるが、2つとも何やら禍々しいとしか言えないような残念な絵の魔王らしきものが描かれている。 まだ無地のカップの方がマシなデザインだ。

 

「そして、魔王さまのシルエットが印刷されたあぶらとり紙は思春期の少年少女には必需品!」

 

次に青年が取り出したのはプラ袋に纏められたあぶらとり紙。 1枚ごとにシルエットが違うようだが、何故か全体的にあぶらとり紙の色が暗い色であり、シルエット付きのそのあぶらとり紙に見られてるような気がして使う気になれない。

 

「さらに、豪華イラストレーター陣が自分たちのイメージする魔王様を描いた 『魔王ユニミテストレカ』 のボックスセット! そして、そのカード用に描き下ろしたイラストを1冊にまとめた薄い本は全年齢対象だから子供でも安心して見れるよ」

 

パラパラと手に持つそのイラストの描かれた本を青年は見せるが、イツキ達にはどうも全て同じような絵にしか見えなかった。

 

「でもって、1番のウリは、この魔王様のシチュエーション音楽ディスク。 添い寝やお風呂、ゲームをしたり、魔王様とのいろんなシチュエーションを60分も楽しめるんだ。 もちろん、ダミーなんとかマイクっていう人の頭の形をした高いマイクで収録してるから、臨場感抜群。 いつでも魔王様を傍に感じられる超お得な1枚さ!」

 

得意げに1番のウリと言うCDについての説明をされるが、正直魔王なんて悪の代名詞的存在に添い寝やお風呂に一緒に入ったりやゲームを一緒にするシチュエーションはどう考えてもシュールとしか思えない。 CDで聴いたその人間はうなされることであろう。 音質が良いのは最早デメリットにしかならない。

 

「ちなみに、今各大陸の魔王様公式ショップで買物をするとスタンプがーー」

 

「あぁもううるせぇ! こっちが黙ってるからって聞いてもいねぇことベラベラ喋りやがって! そんなのいらねえって言ってんだろ!」

 

矢継ぎ早に繰り出される青年の勧誘トークについにしびれを切らしたブランはいつものモードに入った。 急に怒り出したことで、もうブランが急に怒り出しても、慣れてしまって動じないイツキ以外は少なからずギョッとしていた。

 

「あー、皆。 これブランさん耐えたほうだから、大目に見てあげて」

 

すかさずイツキはフォローを入れておいた。 実際ブランは青年のセールストークの間ずっと拳を握りしめて怒りを耐え忍んでいたのだ。

 

「そうだよ! わたしとしてもちょっと憤慨だよ! このモブキャラここでもわたし以上に長セリフをしゃべるなんてどうなってるの! どう考えても文字稼ぎをしているとしか思えないよ!」

 

「……ま、まぁまぁ、それくらいのことはちょっとくらい大目にみてよ。 缶バッチもつけるからさ」

 

ネプテューヌの(メタ)発言に若干引きつつも、青年は誰かの声の代弁ともとれる言葉をいいつつ中々引き下がらなかった。

 

「ブランの話を聞いてなかったの? 缶バッチどころか、こんなの全部いらないわよ」

 

「ただより高いものはないって、おじいちゃんも言っていたです。 だから、返すです」

 

いらないと言ったにも関わらず、しつこくグッズを渡そうとするその青年に、アイエフもブラン程では無いにしろ怒っているようで、苛立たしげにしていた。 コンパも怒ることは無いにしろ、いい加減迷惑に感じているようだ。

 

「僕からの気持ちだから是非受け取ってよ。 それじゃ、僕は次の勧誘があるからこれで!」

 

しかし青年はそれすら気にせず、紙袋を置いてその場からさっさと逃げようとした。

 

が、

 

「あぁ、少し待ってください」

 

「……は、はい? 何でしょうか? もしかして、魔王様を信仰する気になってくれたのですか?」

 

青年の肩は掴まれ、振り返って見れば表情こそ普通であるが、瞳の奥ではやや冷ややかな目をしたイツキが青年の肩を掴んでいた。

 

イツキに引きとめられたその青年は無理矢理止められたことにより驚き、言動が少し敬うような形になっていた。

 

「いえ、あなたに聞きたいことがあるんです」

 

「な、何でしょうか?」

 

言葉遣いは丁寧だが、語調は冷淡に、あくまで形式的に問うようなイツキに青年は背に冷や汗をかいていた。

 

「簡単な質問ですよ。 あなた、どうやってここに来たんですか?」

 

「? イツキ、どういうことなの?」

 

イツキの質問の意図が分からない様子のアイエフは、皆の疑問を代表して聞いた。

 

「アイエフさん、この人はどうしてわざわざこんなダンジョンで勧誘をしてきたんだろうね?」

 

「魔王崇拝なんて胡散臭いし、異教だから国の目から逃れるためじゃないの?」

 

「それだったら路地裏とか場所はもっとあるし、そっちの方が人がいるよ。 こんなモンスターのいるダンジョンで、しかも一般人なんてほとんど通らないような場所じゃあ割に合わない」

 

幾ら国が治安維持に力を入れても、どうしても国の目が届かない場所は出来てしまう。 国の目を逃れて異教を布教するのはわざわざこんな場所である必要はないのだ。

 

「……いや、そもそもここに来ることすら難しいよ。 僕らこそ普通に通過できるけど、ここはモンスターがうじゃうじゃいるダンジョン。 この人が一般人ならまず来れないさ」

 

この世界で雑魚に分類されるモンスターでも、一般人にとっては強大であり、出会ったらすぐに逃げろと言うのが一般人の常識だ。 では何故この青年はこんな場所に1人でいるのだろうか? イツキは1つの可能性として、この青年自身がモンスターを倒しながら進んだことを考えたが、イツキにとって軽く押さえているにも関わらず、身をよじって抜け出そうとするが抜けられない青年を見て、その可能性は無いと判断した。

 

「ならその人も、わたしたちと同じように、モンスターさんを倒してきたんじゃないですか?」

 

「それを今聞いているのさ。 で、その辺どうなんですか?」

 

「そ、それは……」

 

青年は言葉を詰まらせていた。 本当にモンスターを倒してきたのなら、言葉を詰まらせることは無い筈。 つまり、この青年には何かやましいことがあるのだ。

 

「よーし、さっきからテメェには苛つきっ放しだったんだ。 発散ついでにテメェを尋問してやる!」

 

1度怒りスイッチが入ったブランは中々止まらないので、未だにキレモードに入っているブランに、イツキは少々青年がこの後人の形を残せているのか心配になった。

 

「? ねぷねぷ? 何してるですか?」

 

そんなピリピリとした雰囲気の中、ネプテューヌは1人何やらごそごそと何かを漁っていた。

 

「あぁこんぱ? いやぁネプテューヌさんはこう言うシリアスな雰囲気にはどうも似合わない気がして、とりあえず黙っているんだけど暇だし、この袋の中身に何があるのかなーって」

 

あっけらかんとしたネプテューヌにイツキやアイエフは頭を抱えたくなった。 今このユニミテスの使いを名乗る青年を警戒している中で、何故その警戒対象の持ってきた紙袋を漁っているのかが分からなかった。 怪しいものが無いかチェックするような技術はネプテューヌには無く、どうも無警戒に漁っているようだった。 さすがに見兼ねたアイエフが紙袋を漁るのを止めようとしたのだが

 

「お、これが噂のダミーなんとかマイクを使った誰得シチュエーションCDだね。 ……ってあれ?」

 

「どうしたんです、ねぷねぷ?」

 

「このディスク……あの何かモンスターが出てくるディスクに似ていない?」

 

「な、何だって!?」

 

イツキはネプテューヌの発言を聞き、すぐさま近くの紙袋を乱暴にまさぐり、中からディスクを取り出しネプテューヌが持っているものと比較し、全く同一のものであると分かった。

 

ネプテューヌ達がモンスターディスクと呼ぶそれは、各国が今まで知らなかったモンスターの出処であることをイツキは聞かされていたのだ。

 

すぐにイツキはこのことを青年に問いただそうとしたのだが

 

「!?」

 

「あわわわわわわ。 なんか光だしちゃったんですけどー!?」

 

ネプテューヌとイツキの持つディスクと、もう一方の紙袋が輝き出した。

 

「っ!!」

 

イツキが手を離したのと、ディスクが光だして注意がディスクに向かれた瞬間に、青年は逃げ出した。

 

「あ! テメェ待ちやがれ!」

 

ブランは逃げ出した青年の背を追おうとしたが、既に現れたモンスターに行く手を阻まれてしまった。

 

「あの男、騙したのね!」

 

アイエフは悔しげに言うが、既にその青年は森の中へと姿を消していた。 追おうにも既にディスクより飛び出したモンスターはイツキ達を囲い、逃がすような様子は無かった。

 

「くっ……やるしかないか……ネプテューヌ! ディスク割っちゃって!」

 

「あいあいさー!」

 

イツキはこれ以上の増援を避けるために手に持っていたディスクを握りつぶし、ネプテューヌにもディスクを壊すように指示した。 ネプテューヌはディスクを地面に置き、両足でディスクを踏み砕いた。

 

「お、おおおお……このパリパリって破砕音……プチプチを潰すのとはまた違う感覚……癖になりそうだよ……」

 

ディスクを踏み砕いた瞬間、何故か満足気なネプテューヌがいた。 ちなみにネプテューヌが前々からディスクを何の躊躇いもせずに壊したかったという願望を知るのだが、それは後の話

 

「おいネプテューヌ! 巫山戯てる場合か! さっさと女神化しろよ!」

 

感動に打ちひしがれているネプテューヌをブランは装備したハンマーで紙袋ごとディスクを壊しながら女神化するように促す。

 

「おっとと、そうだったそうだった。 それじゃあ……刮目せよ!」

 

恰好良く指差しポーズを取った瞬間にネプテューヌは光に包まれる。 包まれた光が爆発するように拡散すると、そこにいるのはネプテューヌの女神としての姿、パープルハートであった。

 

「早くこいつら片付けて教会に報告に戻りましょ。 こんなのが街中でばら撒かれたら大惨事よ」

 

皆がネプテューヌの言葉にうなづくと、一斉に各々の獲物を構え、自分たちを囲むモンスターへと突撃を始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 




……ネプテューヌの発言に関してはすみません。 リバース1のセリフそのまま抜くとちょっと意味が分からないので、別のメタ発言にしました。

……で、でも『作者に訴えるよ!』って言わせて無いし(震え声)

幾らネプテューヌと言えど、本編で作者を出すのはマズイと感じたのでこのようなセリフにさせていただきました。ご了承ください……

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