超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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第37話 不安

「……えーと、私が目を離している間にネプ子は一体何をしでかしたの?」

 

リーンボックス中央公園の噴水エリアで、僕は逸れたネプテューヌを探していたらしいアイエフさんとコンパさんと合流した。

 

アイエフさん達がこちらに向かってきた際、ブランさんによるネプテューヌへの報復は続いていたので何かと思ったのだろう。

 

「ネプテューヌが持っていたアイスタワーが崩れて、今ネプテューヌに報復している僕の……うん友達かな。にぶちまけちゃって、すっごい怒ってるって感じ」

 

「全くあの子は……こんな人の多い往来で無駄に高いアイスタワー何てやめろって言ったのに……」

 

アイエフさんは頭を抱えて呆れていた。どうもここに来る道中でアイスクリーム屋を見つけて、アイスクリームをネプテューヌは食べたがったらしいが、僕らと合流することというのもあり買うのはやめさせたらしい。だが、どうも少し目を離した隙に勝手に離れて買ったようだった。

 

「……フン」

 

「……ね、ねぷぅ……」

 

気づけばブランさんのお仕置きは終わったようで、ブランさんとネプテューヌがこちらに向かっていた。……ネプテューヌは腕を引きずられてる。

 

「ね、ねぷねぷ!?一体何があったですか!?しっかりしてくださいです!」

 

そのネプテューヌの惨状に驚いたコンパさんがネプテューヌに駆け寄った。

 

「……こんぱ……?」

 

「そうですねぷねぷ!わたしです!しっかりするです!」

 

「大丈夫だよこんぱ……ちょっとヤケにクリアな川が向こう側に見えるから、ひと泳ぎしてくるよ……」

 

「ねぷねぷ!?それ三途の川です!渡ったら死んじゃうですよ!?」

 

「……えー……?だってさー……向こう側に何かたくさんプリンが並んでいるよー……?気のせいか全部見たことあるようなプリンが……」

 

「それ今までねぷねぷが食べてきたプリンです!向こう側は間違いなく死者の世界ですぅ!!」

 

「それー……プリンを求めて、いざいかーん……」

 

「ねぷねぷぅぅぅ!!!」

 

……また始まったよこの2人の劇。まあ、そんなことをできるくらいの体力は残っているというのなら色々と大丈夫だろう。

 

「……ハァ……またか……」

 

アイエフさんも呆れたようにため息をついていた。最早この2人の保護者的立場であるアイエフさんはプラネテューヌにいる間もこんなノリを貫くネプテューヌとコンパさんを見てきたのだろう。アイエフさんお疲れ様。

 

まあこの2人にツッコミを入れるだけ疲れるだけだし、とりあえずネプテューヌとコンパさんはスルーしよう。

 

ネプテューヌ達から視線を外し、僕はアイスをぶちまけられてそのままのブランさんにポケットからハンカチを出そうとしたが、少し考えてポケットに手を伸ばすのをやめて、バックからスポーツタオルを取り出してブランさんに手渡した。

 

「ブランさん、これ使って」

 

「ん、ありがとうイツキ」

 

ブランさんは僕からタオルを受け取ると、まずタオルに顔を埋めて、顔についているアイスクリーム拭き取っていく。服も所々アイスクリームがついていたが、幸い拭き取った際にシミなどは残っていなかった。タオルで汚れを拭き取っているブランさんにアイエフさんが話しかけた。

 

「ごめんなさいね。うちのネプ子が迷惑かけちゃって……あなたがイツキの言っていた、友達なの?」

 

「……ちょっと違うわね。イツキは私の下僕よ。それと、この子のことは別にあなたが謝ることじゃないわ」

 

「ブランさん。さりげなく僕の立場を貶める発言はしないでよ……」

 

何で僕とブランさんの関係はいつの間に主従関係になっているんだ……って、女神とその補佐官って主従関係だしあながち間違いでもないのか?

 

「それでも、ネプ子の保護者として謝らないといけないわ。ごめんなさい。私はアイエフ。それで、あそこにいるのがーーー」

 

「わたしはコンパですぅ。よろしくお願いしますです」

 

「わたしはネプテューヌ!よろしくね!」

 

「……相変わらず復活が早いわね」

 

気づけばネプテューヌとコンパさんはアイエフさんの隣に立っていた。流石の復帰力だと褒めたいところだ。僕は視線をブランさんに向けて自己紹介をするように促した。ブランさんは分かっていると言いたげに視線を寄越すとすぐにアイエフさん達に向き直る。

 

「そう……。わたしはブランよ。よろしくね、アイエフ、コンパ。……そして、ネプテューヌ」

 

ブランさんのその当たり障りのない自己紹介を聞いて、僕は少し安心した。

 

……ネプテューヌとのわだかまりは少しありそうで問題はあるかもしれないけど、今は様子を見ていようかな。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ネプテューヌ達と合流したイツキ達は1度自分たちの泊まるホテルにネプテューヌ達を案内した。幸い3人分の部屋は空いていたようなので、ネプテューヌ達も同じホテルに泊まることにし、今は3人は泊まる部屋に行き、荷物の整理をしている。その時、ブランはイツキの部屋に訪れていた。

 

「……それで、久しぶりにネプテューヌに会って感想は?」

 

「最悪ね」

 

「……即答ですかい」

 

イツキは持ってきた紅茶の茶葉で紅茶を淹れながらブランに質問したのだが、即座に返された簡潔な言葉に苦笑するしかなかった。

 

「顔を合わせる前の挨拶にアイスをぶちまけられると予想する人がどこにいるのよ……この服新しい服なのに」

 

「……まあそうだけど一応向こうも謝ってきたじゃん」

 

「軽ノリでごめんごめん言うことは謝るとは言わないわ」

 

ホテルに向かう道中ネプテューヌはブランにアイスをぶちまけてしまったことを謝りはしたのだが、謝る際の言葉がこちら

 

 

『いやーごめんねアイスぶちまけちゃって。私の可愛さに免じて、これで許してね!なーんて!』

 

 

人差し指を自分の頬に当てて可愛らしい仕草で謝罪したネプテューヌ。もちろんその後

 

 

『え?ちょっとブラン?どうして私の腰に手を回すの?……あー分かった!私の魅惑の腰つきにメロメロなんだね!ブランとは会ったばかりだけど、そう言うことならー、幾らでもこの私の腰が急激な加重により折れ曲がるぅぅぅぅぅ!!!ま、待ってブラン!人の腰はそんな方向には曲がらなぁぁぁぁいいいいい!??!!!』

 

 

 

「……あれは同性にやられても腹がたつだけだわ」

 

「分からなくもないけど、ブランさんも向こうから見たら初対面だと言うのに中々ぶっ飛んだことをしていると思うけどね」

 

「私はネプテューヌとは初対面じゃないからいいのよ」

 

「何その超理論……」

 

イツキは呆れながら淹れた紅茶をブランに手渡す。ブランは受け取るとすぐに紅茶を口につけ、すぐにまたカップをテーブルに置いた。

 

今イツキが淹れたのは無難にダージリンティーである。紅茶と聞けば割と多くの人が思いつく紅茶の一つであり、世界三大紅茶の一つであるのはこのゲイムギョウ界でも同じだそうだ。その特徴はやはり格別な香りであり、その味を楽しむのにはストレートが最も良いとイツキはフィナンシェに習っていた。紅茶を淹れるからにはそう言う所から学ばなくてはならないと教えられたイツキ。人に出せるくらには淹れられるようになったのは必然と言えるだろう。

 

「……イツキの淹れる紅茶はまだまだね……フィナンシェの方がまだ美味しいわ」

 

しかしイツキの淹れる紅茶はフィナンシェの淹れる紅茶によって下が肥えているブランから言わせればまだまだ未熟なものだそうだ。

 

「そりゃ本職には敵わないよブランさん……僕まだフィナンシェさんに教えてもらってから日が浅いんだよ?」

 

イツキはそう言ってブランの座るテーブルの向かい側にイツキは律儀に正座をすると、自分の淹れた紅茶に口をつけた。イツキ自身もフィナンシェの淹れる紅茶を嗜んでいるので比べることは出来る。

 

「……うん……何て言うか……フィナンシェさんの淹れる紅茶はもっと口の中に香味が広がるけど……僕はダージリンの香りを殺しちゃっているのかな……それがないや」

 

そう言ってイツキは目に見えて落ち込んだ。自分で言ったことでもあるのだが、自分で確認してしまったからこそ落ち込んでしまったのだ。それを見たブランは少しキツく言い過ぎたと思い、落ち込んでいるイツキにフォローを入れた。

 

「誰だって最初は上手くいかないものよ。失敗を繰り返して学んで、そこから段々と上達していけばいいわ。フィナンシェだって最初から上手く紅茶を淹れられたわけじゃないわよ」

 

「……うん。ありがとうブランさん」

 

ブランのフォローを得て、イツキが元気を取り戻したところでブランは話の本題に入ることにした。

 

「それで、話したいことって何?わざわざ私の部屋に呼び出すってことは、ネプテューヌ達には聞かせたくない話なんでしょ?」

 

「うん。一応ブランさんにリーンボックスにいる間に守ってもらいたいことの再確認をしたかったんだ」

 

それを聞いてブランは少し嫌そうな顔をした。ブランがリーンボックスに行くための条件としてフィナンシェとイツキが提示した条件なのだが、ブラン自身はそのことは耳にタコになるほど聞いたのだ。

 

「私、それはもう散々言われたんだけど?」

 

「それでもブランさん自身がしっかりと把握しているか確認しなくちゃ。大丈夫。これで最後だからさ」

 

本当に律儀な性格をしているなとブランは思うと、残っていた紅茶を飲み干して答える。

 

「その1、女神であることを公言しないこと。その2、リーンボックスに行く際には変装をすること。その3、女神化をしないこと……これで合ってるわよね?」

 

「うん。完璧だよブランさん」

 

イツキの100点満点の解答と教えてもらい、ため息を一つ吐いてブランはイツキにカップを差し出し、おかわりと意思表示した。イツキはカップを受け取り紅茶を注ぐ。注ぎ終えたカップをブランの目の前にガムシロップとミルクを添えて置いた。自分の淹れた紅茶では、味の変化が必要であろうというイツキの配慮だった。ブランはガムシロップだけ紅茶に入れると、イツキから受け取ったティースプーンで軽くかき混ぜた。

 

このフィナンシェとイツキが提示した、ブランがリーンボックスに行く際の条件は妥当、いやかなり譲歩している方だろう。条件事項にあるものは全て最低限度必要な条件と言える。本当は偽名を使うことなども考えたが、そこまで長くリーンボックスに滞在するわけでも無いので、もしもばれそうになっても他人の空似、同姓同名で押し通そうとなったのだ。

 

「ごめんごめんブランさん、怒らないでよ。そりゃしつこいとは思うけど、フィナンシェさんにリーンボックスでもう一度再確認するように言われていたんだ」

 

「……フィナンシェは心配症ね……」

 

ブランはフィナンシェの心配を余計なお世話だと言わんばかりの態度を取るが、レジスタンスのリーダーであるブランがいない今、指揮をとっているのはフィナンシェだ。勿論フィナンシェはマジェコンヌに奪われたルウィー教会で諜報活動をしながら、だ。こうして自分の我儘を受け入れ、レジスタンスの指揮もとってくれているフィナンシェにブランは感謝していた。

 

「まあ、私がこうしてイツキと共に行動できているのは、フィナンシェのおかげなのよね。そこは感謝しているわ。フィナンシェにならレジスタンスの指揮を任せることに心配は無いし」

 

「……ブランさんはフィナンシェさんのことを、信用しているんだね」

 

ブランの言葉に少し間を開けてイツキは呟いた。その声のトーンは感心するようでもあり、羨ましそうな声でもあった。

 

「当たり前じゃない。フィナンシェは私に長い間仕えている侍従なのよ。私はフィナンシェのことは誰よりも知っていると自負しているわよ。……もしかして、嫉妬してるの?」

 

ブランの問いにイツキは少し考えるように小さく唸り、目の前の自分のカップに入った紅茶に口をつけて一息入れると

 

「うん、ちょっと羨ましいよ。そう言うお互いに信頼しあっている関係って簡単に出来る物じゃないし」

 

イツキはそう羨ましそうに言って、また紅茶に口をつけ、一気飲みした。そんな様子を見てブランは指を顎に当てて言った。

 

「イツキは私とフィナンシェのような関係が欲しいの?」

 

「……欲しいと言って手に入れる物でもないけど……まあ……」

 

語尾をどもらせるイツキを見て、ブランは顔を傾けて考えるような仕草を取ると、イツキに聞いた。

 

「……そういう関係を私と結びたい?」

 

「……え?ごめんブランさん聞こえなかった。何て言ったの?」

 

「……何でもないわ」

 

そのブランの小さなつぶやきはイツキの耳には届かなかったようだ。辛うじて何か言っていたのは分かったみたいだったのでブランにもう一度言ってくれるように頼みはしたが、ブランが先ほどのような発言を2度も言える筈が無く、何でもないと言うしかなかった。

 

「……お互いに信頼し合う関係は、イツキの言う通り欲しがって作る物でも望んで作るものでもないわ。気づいたらそういう関係になっているのよ。私もフィナンシェと出会った頃は、ここまで信頼し合う仲になるとは思っていなかったわよ。……もし、私から言えることがあるとすれば、誰であれ誠実な態度であるべきよ」

 

その言葉を聞いてイツキはボソリと、誠実か、と呟きブランへと向き直った。

 

「……うん、分かった。ありがとうブランさん」

 

「どういたしまして」

 

ブランはイツキのお礼にそう返すと、イツキの再び淹れた紅茶に口をつけた。だがその直後のイツキの発言に口の中に入った紅茶は無駄となる。

 

「これからは一層ブランさんに信用されるように頑張るね」

 

「ブーーッ!!」

 

イツキの爆弾発言にブランは口に含んでいた紅茶を噴き出した。口に含まれていた紅茶が少なかったため、目の前のイツキに被害が及ぶことは無かったのは幸いだった。

 

「ぶ、ブランさん!?急にどうしたの!?」

 

「なななななななななな何言ってんだよこの馬鹿イツキ!!そ、そう言うのは段階を踏んでやるものであっていきなり言うもんじゃねえんだよ!」

 

ブランはこう言う真正面からの告白系統の言葉を聞くと顔を赤くして反論する。自分が偶にとは言えつぶやくことは出来るのと言うのにである。冷静に考えればイツキな指している関係は自分とフィナンシェのような関係であることや、どちらにしても段階を踏んで関係を良くすることなどなど矛盾があるのだが、焦るブランに気づく術は無かった。

 

と、こんな感じによくわからない理由で焦るブランとそれに対してどう対応すれば良いか分からないイツキ。2人のいる部屋はカオスへと陥っている中に、更に部屋を混沌へと落とす人物が現れる。

 

「やっほーお兄ちゃん!鍵が空いていたから遊びに来たよー!」

 

部屋を思い切り開けてやって来たネプテューヌ。戸締りを忘れたのはここでもイツキのうっかりなのだが、問題はそこでは無かった。

 

「……お兄ちゃん……だと?」

 

この言葉に反応したブランはさっきまでの焦っていた様子はどこへやら、ブランは目を怪しく赤く光らせていた。その視線の先はこの中でたった1人の男イツキ。

 

ブランはここまでの道中アイエフ達と話をしており、その輪の中に当然ネプテューヌは入っているので、ネプテューヌがイツキのことをお兄ちゃんと呼ぶシーンを聞いていないのだ。そしてブランはネプテューヌがイツキのことをお兄ちゃんと呼ぶ理由を知らない。

 

したがって

 

「………」

 

「いや、あのブランさん?ネプテューヌが僕のことをお兄ちゃんって呼ぶのには理由があって、と言うか向こうが勝手に言ってるーーー」

 

「……そんなに……」

 

「……え?」

 

「そんなに妹って響きが好きかこのシスコン野郎がァァァァァ!!!!」

 

「ドゥフゥワサ!??!」

 

 

……誠実な態度とは一体なんだったのであろうか

 

 

 

 

 





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