超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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思いの外早く書けた。だけど塾四時間とかいるととても書けん……


第三章
第30話 帰還


ゲイムギョウ界の四大陸の1つ、夢見る白の大地ルウィーの雪を踏みしめて歩く2人の人影。

 

1つの人影の正体は、その人影の人物自身が気に入っている紺色のGパンに、黒のTシャツに赤と黒のチェックのパーカーを着た少年。昼だと言うのに足を踏み入れれば深く足が沈む雪をザクザクと慣れないような足取りで歩んで行く。

 

もう1つの人影はその少年の後に続くのは、背が低くショートボブの茶髪と、その大きな帽子が特徴的な少女。少女は少年の踏み固めた雪の部分を歩み、大した労力も消費しないで進んでいく。

 

「……ねえ、ブランさん?」

 

「何よイツキ?」

 

2つの人影の正体、イツキとブランは一般人は通るような国道では無く、モンスターが生息するダンジョンを通り、目的地へと歩んでいた。

 

わざわざモンスターのいるダンジョンを通っているのは、ただ目的地への近道をすると言うことだけで無く、これから行く場所に必要な物資を調達するために街によるということもある。

 

このことを提案したのはイツキなのだが、ここまで来てもイツキには納得出来ないことがあった。

 

「……本当にブランさんも来るの?」

 

「しつこいわね。行くって言ったら行くのよ。それとも、ついてこられたら、何か困ることでもあるの?」

 

「いや、無いけど……ハァ……」

 

引き下がらないブランにイツキは溜め息をつく。

 

(……何でこんなことになったのかなぁ……)

 

イツキは今の現状がどのようにして出来上がったのかを振り返るためにラステイションからこのルウィーに帰還した時のことを振り返った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「テロリストの主犯の1人、イツキ!大人しく我々について来てもらうぞ!」

 

ラステイションから帰って来た僕を出迎えたのは、人ではなく銃口でした。……まあ、人が持っているから出迎えてるのは人ではあるけど、どう考えても歓迎はされてない。

 

ラステイションからルウィーへと渡り、街からすぐに出て歩くこと数分したらこんなことになっていたってどんだけ動き早いの君たち?暇だったの?

 

それも帰ってくるなり人をテロリスト呼ばわりとは……まあ、この事態は何となく予想はしていた。殆どのルウィー教会職員は今は知らないけど、マジェコンヌがルウィー教会を乗っ取った時点では誰もブランさんがすり替わっていることには気づかなかったし、僕たちはレジスタンスとは名乗ってはいるが、教会側からしたら僕たちはテロリストなのだろう。様するに、見方の問題だ。

 

「おい!聞こえているのか!大人しく手を上げろ!」

 

思案にふけっていて気づかなかったが、苛立たしげにリーダーらしき男が銃を突き付けているのを見て、僕を囲う者たちの持っている銃は、確かGGM-Ⅲとか言うモデルの銃だ。鉛玉は使用せず、特殊なエネルギーを消費してレーザー光線を照射し、対象の運動神経を一時的に麻痺する捕縛用の武器だ。レーザータイプであるために発砲時の反動は無く、子供や女性にも使えると言うのがウリらしい。僕を囲う者たちの中にも何人か女性がいた。

 

おっと、あんまり考え事ばかりしていると向こうが苛立って撃つかもしれないな。早いとこ行動しよう。

 

僕は頭は動かさず、目だけを動かし人数を確認する。

 

(……8人か。周りにもこの人達以外に人は居ないし、ここは強行突破するか)

 

後先のことも考えて、ここでこの人達を全員気絶させることも考えたが、それでは結局のところ僕のテロリストの容疑を深いものに変えられかねない。ルウィー教会にいた頃から分かるが、教会職員の人達は皆熱心なブランさんの信奉者だ。この人達も今は騙されているだけで、悪い人では無いのだろう。

 

「おい!聞いているのか!……チィ!もういい、構え!」

 

痺れを切らした様子のリーダー格の男は号令を出し、その号令に従って銃を持ち直しているのが見えた。

 

「撃て!!」

 

そして許可される発砲の合図と共に、ビーという機械的な発砲音と共に四方から僕に向かってレーザーが向かってくる。僕はその場で高く飛び上がりそれらを避けた。

 

「避けた!?」

 

僕の真下ではレーザーが互いにぶつかり合い、相殺され消えた。飛び上がった勢いで僕は包囲網を突破し、体力面のことを考えて全速力の8割ほどのスピードで駆け出す。

 

「逃げる気か!?追え!追うんだ!」

 

あっさりと包囲を突破されたことにより、少しは硬直からの立ち直りに時間がかかると考えていたが、思っていたよりも早くリーダー格の男は立ち直り、未だにポカンとしている者たちに命令をする。そこで皆が立ち直ったようで、銃を構えながら僕を追いかけ始めた。

 

「撃て!撃ちながら追いかけろ!」

 

その命令と共に僕の横をレーザーが通り抜けたりするのが見えた。割と最初のスタートダッシュで引き離したので、的が遠く、その上走りながらなので狙いも定まらないのだろう。とはいえ、向こうが下手な鉄砲数撃ちゃ当たる作戦をされたら非常に面倒なので、こちら側からも手を打とう。

 

強欲(グリード)!」

 

僕は走った勢いのまま、前へと高く飛び上がり、一際多くの雪の積もった場所に、硬化した腕を叩き込む。瞬間積もっていた新雪は噴火するように舞い上がり、その場の見通しを悪くした。当然その雪煙は追いかける者たちに降りかかり、互いの視界を悪くした。

 

「くっ!目くらましか!撃ち方やめ!」

 

フレンドリーファイアを危惧してリーダー格の男は撃つ命令を取りやめ、雪煙からの脱出を優先したようだ。……っといけないいけない、早くここから逃げないと。

 

僕は駆けていた方向とは右に90度ほどズレて駆け出し、その先の森の中へと突っ込んだ。ある程度森の中を進んだところで振り返り遠目で見た所、雪煙は既に全て落ちていたが、もう彼らは僕を見失っているだろう。それだけ確認すると僕は目的の街へと一直線に駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

追跡者達を振り切り、何とか僕は目的の街へと辿り着いた時、僕は真っ先に僕とブランさんが襲われ、負傷した際にフィナンシェさんに運び込まれた家に向かったが、中に人がいる気配は無かった。

 

僕はそれに気づくとすぐにその家の居間にある雑誌棚にある一冊のノートを取り出した。題名はデカデカと大きな字で『さくしノーと』と汚い文字で書かれている。僕はそのノートのページをペラペラめくっていく。

 

そこに書いてある内容は小学生が書くような落書きや、辛うじて文字の羅列があったりもするが意味が分からないものだった。そして最後に書き込まれたページを発見し、僕はそこでページをめくる手を止めた。

 

そこに書かれているのは今までのページよりはマシだが、やはり汚くバランスの崩れた文字で『オゼタヒワカウカカコロハクシエネガケラナテチワ』と書かれていた。何も知らない人からすれば、前までのページに書かれていたことからこれもただの落書きと判断するだろう。

 

だが、あらかじめ僕はブランさんに、もしも何かあったらこのノートに暗号を残すと聞いていた。暗号の解き方も習っているので僕は近くにあった万年筆を取り出し、暗号の書かれた隣のページに解読した暗号の答えを書いていく。

 

「……あじとへんこうここからほくせいにごきろのちてん……『アジト変更。ここから北西に5キロの地点』か……」

 

暗号の解き方のキーは至ってシンプルだ。書かれている文字に対応した『あかさたな行』をう段を中心にひっくり返したのだ。あ行の場合は『あ→お』『い→え』『う→う』『え→い』『お→あ』となり、それぞれの行も同じように変換するのだ。例えをだすと『ありがとう』を暗号化すると『おれごたう』となる。暗号を出す提案をしたのはフィナンシェさんだが、暗号を考えたのはブランさんだ。……と言っても、小説にあった暗号をそのまま使ったらしい。その時は、その小説読んでる人がこれ見たらあっさりと見破られることを考えないのかと思ったものだ。

 

僕は解読した答えの書かれたページを破り、懐に突っ込んだ。この場で細かく破いてしまっても良かったが、確実に証拠を隠滅するためにも、後で燃やした方がいいだろう。目的地が分かればここに居る必要は無いし、早いとこここから出よう。

 

僕はすぐに家から飛び出し、携帯のアプリで方角を確認すると、人目につかないように路地裏を通りながら北西に進んだ。

 

今更だが、こうしてルウィーに戻るのは数日ぶりだ。もしかしたら、誰か出迎えてくれたりしてくれるかもしれない……って、さっきの教会職員の人からの出迎えは含めないし、教会職員の人からの出迎えはお断り。それ以外なら割と出迎えに来るのはなんでもいいや。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

……何て考えたから罰があたったのか

 

「ゴギャァアアアアア!!!!」

 

「グルっ!!グルォオオオオ!!!」

 

「ギャオオオオオオ!!!!」

 

わーい。懐かしい顔触れだ。アイスゴーレム君やスカルフローズン君、コールドリザード君が、しかも集団で迎えてくれたよ!皆揃いも揃って咆哮をあげて、僕が帰って来たのを喜んでくれてるのかな?

 

「……ねぇ、君らは僕が嫌いなの?嫌いだから妙に団結してるの?被害者の会か何かなの?」

 

街を抜けてそこそこ進んだ平原で、僕はモンスターに囲まれていた。

 

出迎えは確かに何でもいいって言ったよ……だけど誰がモンスターが出迎えるなんて予想するんだい?訳が分からないよ。

 

知らず知らずのうちに溜め息をつく。本当に今日は厄日なんじゃないかと疑うくらいだ。帰ってきて早々にテロリスト呼ばわりされるわ追い回されるわ、更にはモンスターからのお出迎えってこれはもうルウィーの大地は僕が嫌いなのかと思うくらいだ。

 

「ゴギャアア!!!ゴガアアアアアア!!!!」

 

と、そんなくだらないことを考えさせてくれる暇など与えないと思わせるような特攻を前にいたコールドリザードがすると、それを皮切りに他のモンスター達もコールドリザードに続いて来た。

 

何はともあれありがたい。こうやって突っ込んで来てもらえれば、大分殲滅も楽という物だ。

 

僕はコールドリザードが手に持っている斧の射程に入る前にコールドリザードに詰め寄ると、無駄に重い斧をはたき落とし、宙に浮いているコールドリザードの足を掴み取り、コールドリザードを地面に叩きつけた。

 

「ギャオオッ!?……オッ……」

 

地面に頭をぶつけて気絶したようだ。これで準備は完了だ。

 

「フゥ……おおおおりゃああああああ!!!!」

 

一呼吸入れた後、僕は気絶したコールドリザードの足を掴んだまま、ハンマー投げの要領でコールドリザード振り回し、モンスターの集団に突っ込んでいく。

 

風切り音と共にモンスターの集団に接触し、初めに振り回しているコールドリザードにぶつかったスカルフローズンの骨の体がバラバラに砕かれるのが一瞬見えた。それ以降はあまり周りは見ずに次々とモンスターを薙ぎ払う。モンスターが薙ぎ払われていく様子は振り回しているコールドリザードからする平手打ちを低くしたような乾いた音が鳴り響く度に分かった。

 

「おりゃ!!」

 

とりあえず僕は適当なタイミングで回転を緩め、コールドリザードを高く振り上げると地面に叩きつけた。何も声を上げられずコールドリザードはそのまま霧散した。本当ならこの叩きつけも敵にぶつけたかったが、あいにくと僕には回転中にも敵の位置を完璧に把握するほどの技量は無かった。

 

(すごいなぁ、ブランさんは。回転中にも相手の位置を完全に把握するんだもん)

 

今回僕が行った技はブランさんの必殺技、『テンツェリントロンペ』を参考……と言うより武器以外はぶっちゃけそのままだ。武器の重さを利用して回転し、回転した勢いで武器を振り上げて敵にトドメを刺す技。ブランさんは相手が単独の時でも使うが、この技の殲滅力は相手が集団、それも数が多ければ多い程真価を発揮するだろう。

 

「……うっ……気持ち悪っ……」

 

止まってみて分かったが、思ったよりも回転した際の酔いは酷かった。慣れるまであまりこの技は多用しない方がいいだろう。頭がクラクラして視線が定まらないが、どうにかして周りを確認して生き残りを確認する。

 

(えと……アイスゴーレム1体にスカルフローズンが3体か……ま、充分かな)

 

酔いは止まれば急速に回復する。まだ頭の眩みはあるが、動くことに問題は無い位には回復した。先手必勝とばかりに最も距離の近いスカルフローズン達の内の一体に詰め寄ると、構えていた左腕でボクシングで言うジャブを打つ。

 

「ゴガッ!」

 

呻き声をあげるスカルフローズンだが、決してこの程度では倒れはしない。そもそもジャブは威力を求めるパンチでは無い。体重をかけて威力を上げるストレートパンチとは逆で引き戻すことに力をいれて、素早く次のパンチに繋げるのだ。ジャブはスピードが命である。

 

「ゴグカガァァァアアアア!!!」

 

「ゴキガアアアアアアア!!!」

 

スカルフローズンの1体にジャブを浴びせている間に他の2体のスカルフローズン達は黙っているはずがなく、こちらに向かって来たので僕はジャブを浴びせていたスカルフローズンの頭を鷲掴みにすると、向かってきた内の1体に投げつける。

 

いきなりのことに反応出来ずそのスカルフローズンはまともにぶつかりバランスを崩す。投げつけたスカルフローズン大分弱っていたらしく向かって来たスカルフローズンに衝突した瞬間に霧散した。

 

バランスを崩したスカルフローズンがすぐに立ち上がろうとしていたので、素早く頭を鷲掴みにし、近くにあった岩場に叩きつけた。

 

「ペギャ!!」

 

これまでの奇声からは予想出来ないような呻き声を上げて骸骨の体は岩場にぶつかった瞬間にバラバラになり、霧散した。……これは我ながらエグいことをしたな。

 

「ゴガアアアアアア!!!!」

 

「!うおっと!」

 

もう1体のスカルフローズンのことを失念していた。咄嗟に横に避けると、すぐ隣で氷の吹雪が横切っていた。スカルフローズンの持つボトルのようなものからはこのような吹雪を起こせることを僕は忘れていた。見れば生き残っていた1体のアイスゴーレムもこちらに突進している。

 

「おりゃああ!!」

 

アイスゴーレムは防御は堅いが遠距離の技を持っていない。ならば先に遠距離攻撃を持つスカルフローズンを攻撃をすべきと判断した僕は、何故か大して距離をとっていないスカルフローズンにタックルをし、バランスを崩したスカルフローズンに、右足でミドルキックをお見舞いする。

 

「ゴギガッ!??!」

 

ミドルキックがスカルフローズンに直撃した瞬間に、スカルフローズンの体は粉砕され、すぐに霧散した。

 

「……?」

 

僕は自分でキックをしておいて疑問に感じた。前に戦ったスカルフローズンは2撃程度ではやられず、もう少し耐えてきたのだが、何故かいつもより右足のキックが威力を孕んでいる。何て表現すれば良いのだろうか?右足でキックする際に振り抜きやすく、スピードが生まれていたのだ。

 

「ゴギガガガガガ!!!」

 

あんまり考えている時間は無いようだ。とりあえず今は右足のことは置いておき、折角右足の調子が良いのだ。このアイスゴーレムには僕の今習得したい技の的になってもらおう。

 

「はあ!!」

 

アイスゴーレムのパンチを避けて、右ストレートをアイスゴーレムの顔を殴る。硬化をした腕なので、アイスゴーレムの殴られた部分は少し欠けた。フラフラとバランスを崩すアイスゴーレムに僕は左ジャブの連弾をお見舞いし、動きを鈍らせる。

 

そしてジャブの左腕を引くタイミングで攻撃を右足での攻撃に切り替えた。左腕のジャブよりも速いスピードで蹴ることができ、アイスゴーレムの体が少しづつ浮いてきた。

 

「吹っ飛べ!!!」

 

ある程度高くなった位置で僕は右足を円状になるように足を上げ、アイスゴーレムの顎を蹴り上げた。僕が取得したい技その1、サマーソルトキックである。

 

サマーソルトは敵を高く蹴り上げ、動きを封じて敵を攻撃する。ノワールさんのレイシーズダンスという技の初段を見て、やりたいとは思っていたが、蹴り上げた勢いのままバク転のようなことが出来るような気はしなかったので、控えていたのだが、右足の調子が良いので試してみた。

 

「あたっ!」

 

しかし右足の調子が良くても初めてやる技。そう上手くいくはずも無いようで、僕は一回転しきれず頭から地面に落ちた。幸いしたは新雪だったので衝撃は抑えられたが、これは要練習だな。

 

それにしても、どうして右足の調子……、いやこれはもう調子が良いとかのレベルじゃなくて、部分的に強化されているのだろうか……と考えたところで心当たりに一つ思い当たった。僕が右足を負傷したまま無意識でノワールさんの力を吸収したという可能性だ。いや、多分これで確定なのだろう。無意識で僕の内にある、とある1つの力は、平たく言えば回復的能力なのだが、回復エネルギーに変換する際に別のエネルギーを調達しなくてはいけない。多分その時にノワールさんの女神としての力の余剰のようなものが右足に加わっているのだろう。確証はないが、今度ノワールさんに会ったら謝らないとな……

 

「……っと、さてとあのアイスゴーレムは……」

 

立ち上がり、周りを見た所、蹴り上げた遠くの位置にアイスゴーレムの身体らしきものが突き刺さっていた。僕の見たタイミングで体力が尽きたようで、すぐにアイスゴーレムは霧散した。

 

「……ふぅ。歓迎会はもう結構だよ」

 

本当は歓迎されて嬉しくないやつなどいないが、モンスターからの歓迎なんて願い下げだ。さっさとアジトに向かおう。

 

僕は携帯を再び取り出し方角を再確認して一目散に北西へと駆け出した。




いつか活動報告で言った第2章の没ストーリー、内容を軽く書くべきかな?

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