超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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第23話 アヴニール

「それじゃ、今日もアヴニールの仕事を受けるわよ」

 

ホテルのロビーでチェックアウトをする人が少し多くなる時間帯の朝に、ネプテューヌ、コンパ、アイエフ、ノワールは昨日に引き続きアヴニールの仕事を受けるためにロビーに集まり、互いに体調などの確認をしていた。

 

「あれ?お兄ちゃんまだいないけど?」

 

ネプテューヌはまだ少し眠かったようで、イツキがこの場にいないことに気づくのは少し遅かった。

 

「一応、部屋に行ってインターホンは鳴らしたんだけど、全く反応がないのよ」

 

「何かあったのかしら……?」

 

アイエフとノワールの見解ではイツキは、人を待たせるようなタイプでは無いと思っていたので、少し心配になっていた。

 

「お、お前らまだ居たか。丁度よかったよ」

 

と、ホテルの入り口の方から声が掛けられ、一同はそちらの方に向く。そこには肩に細長く布で丁寧に包まれた棒を掛けたシアンがネプテューヌ達の方にに向かっていた。

 

「シアンさん?こんな朝からどうしたんですか?」

 

「ああ、実は武器のフィードバックをもう一度してもらいたくてな。またアヴニールの仕事のついででいいから、やってくれないか?」

 

ここで追記しておこう。実はネプテューヌ達一行はアヴニールの仕事を受ける片手間にシアンの作った武器のフィードバックも依頼していた。この武器はシアンがラスティションで開催される『総合技術博覧会』の下町の代表として出場するための武器だ。しかしぶっつけ本番でだすのはあのアヴニールの前では無謀である。そこでネプテューヌ達にフィードバックをしてもらい、修正点を細やかに調整することにより、備えようという訳だ。

 

「ってことは、昨日の今日で調整やっちゃったの?」

 

とは言え、ネプテューヌが武器のフィードバックの報告をしたのは昨日の夕方だ。それを受けてから次の日の朝に終わらせるというのには、言われずとも大変なことであることが分かり、あのネプテューヌも少し驚いていた。

 

皆に驚かれている中で、シアンはポリポリと頬を掻いて答えた。

 

「ま、なんと言うかだなお前のフィードバックの感想を受けて興奮しちまって集中してやってたんだよ。俺1度集中すると、周り見えなくなっちまうからな……あいつにも悪いことしちまった」

 

「あいつ?あいつって誰のこと?」

 

「ん?ああ、イツキだよ。あいつずっと俺の作業見ていたんだけどな、途中で寝ちまったみたいで、今は俺の工場で寝てるよ」

 

「ああ、だから部屋に行ってもいなかったのね」

 

「な、何ですと!?実はお兄ちゃんとシアンは、『ゆうべはお楽しみでしたね?』だっタワバッ!?」

 

「アンタは朝っぱらから何言ってんのよ!」

 

ネプテューヌのおふざけにアイエフは制裁を加えると、とりあえずイツキの所在を確認できたことに安堵し、伝言をシアンに頼むことにした。

 

「だったらシアン、イツキに私たちはアヴニールの仕事を受けに行くから、途中から行けるなら来てって伝えてくれる?これ、場所のメモ」

 

「おう、分かった。ちゃんと伝えておく。そんじゃガンバれよ」

 

シアンは了解するとメモを受け取り、一言ネプテューヌ達を激励するとホテルを後にした。

 

「それじゃ、私たちも行きましょうか」

 

アイエフの言葉に一同は頷き、ホテルを後にし目的地へと向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

まず最初に感じたのは聴覚。普段は小鳥の囀る時間より早くに起き、日課の朝のトレーニングをするのだが、今は小鳥達の声がよく聞こえる。

 

次に感じたのは触覚。朝日が差し込み顔を照射されていることに気づき、僕はゆっくりと目を開けようとするが、眩しい光が瞳にかかり、とても開けていられず、すぐに目を閉じて横になって光を避けるようにして目を開けた。

 

「……?畳?」

 

横たわって目を開けたので、目に付くのはその床だった。ルウィー教会にも幾つか和室はあったが、それはここ最近見ることは無かった畳。そして自分の横たわっている布団だった。

 

「……」

 

僕はくるりと反転し、逆側を見るがそこにあるのは日の差し込む窓と片方空いている障子だった。全く見覚えの無い部屋に僕は少し戸惑った。そして戸惑った結果

 

「……とりあえず、 もっかい寝よ……」

 

という結論に出た。ここ最近寝不足気味だったのだ。連続で日課の朝のトレーニングをサボることになるが、たまにはいいだろう。

 

僕はまた半回転して枕に顔を埋めた。それから両腕で深く枕を抱きしめ、更に深く埋もれた。気の所為だとは思うが良い香りがする。

 

とりあえずその香りを楽しみながら僕は再び眠りにつこうとしたのだが

 

「よっ!イツキ!朝だぞ起きろ!」

 

障子の向こうから声が掛けられ再び覚醒する。声をからその主はシアンさんだと分かった。

 

「……んぅ…」

 

「ん?寝ぼけてんのか?ほら、朝だぞ?あいつらアヴニールの仕事受けに行っちまったし起きろよ」

 

ゆさゆさと控えめに揺らされるが、布団の世界から離れたくない僕は、自分でも寝ぼけ気味の声で反抗する。

 

「……起きたくない……」

 

「……そうか。なら無理に起こそうとしねぇよ」

 

…ダメと言われるかと思ったが、案外シアンさんは心の広い人なのだなと再認識し、再び僕は眠ろうとしたのだが……

 

「ところでだ、イツキ」

 

「……?」

 

「実はここはウチの従業員の仮眠室でもあってな、熱の篭った工場で働きまくったおっさんの汗をその布団や枕にはグッショリ染み付いていt」

 

「おっしゃ起きたぁぁぁぁぁぁぁ!!!!!!これ以上無いほど起きたぁぁぁぁぁ!!!」

 

掛け布団を蹴り飛ばすような勢いで立ち上がり、布団から脱出をした。どうやら良い香りがするのは完全に気の迷いだったようだ。何が悲しくて工場にいるようなおっさんの汗の染み込んだ布団で寝なくちゃいけないんだ……!

 

「あははは!冗談だよ!ここは工場じゃなくて、その隣の俺の家さ。お前の寝ていた布団もお客さん用だぜ?」

 

「ぁぁああぁぁ……え?」

 

「え?って当たり前だろ?俺が無理矢理連れて来たようなもんだし、これくらいするだろ?」

 

「いや、あの、何で嘘ついたかの釈明は?」

 

「そうでもしないと起きないだろ?あ、そうだ。あいつらからの伝言だ。アヴニールの仕事受けに行くからお前も途中から来れるならこのメモの地点に来てくれってよ」

 

「あ、ありがとう」

 

「それと、お袋が朝飯お前の分も作ってくれるらしいから、そこの洗面台で顔洗ったら食堂来いよ〜」

 

手をヒラヒラして障子を閉めていくシアンさんを僕は見送ると、少し現状の把握に努めた。

 

確か僕は……そうだ。昨日眠れなくて散歩していたらシアンさんに会って、無理矢理シアンさんに工場に連れて行かれた後、シアンさんの作業をずっと見ていたんだ……

 

記憶はそこで途切れているから恐らく途中で寝てしまった僕を、シアンさんはここで寝かせてくれたのだろう。女手で男性を運ぶのには苦労したはずだ。後でお礼を言わないと……

 

「で、ネプテューヌ達はアヴニールの仕事を受けに行ったか……」

 

ナチュラルに僕に来るように言う辺り、僕は既にあのパーティのレギュラーメンバーに勝手に抜擢されているのだろう。別に向こうが勝手に判断しているからどうでも良いのだが、ずっとあのパーティと行動するとは思えない。だがこうして伝言を受けたわけだし、行くとするか。

 

この後の行動も決めた僕は洗面台に移動すると、まだ覚めきってない脳を覚醒させるために、冷え切った水を顔にぶちまけた。

 

 

 

 

 

 

 

「そんなわけで、またまたアヴニールのお仕事を受けることになったねぷ子さん御一行は、街外れにある廃工場にやってきたのでした!」

 

「はぁ……。相変わらずアナタは気楽でいいわね」

 

「記憶喪失だって、人生何事も楽しんだもの勝ちだよ!」

 

「たまにあなたの能天気さが羨ましくなるわ……」

 

ネプテューヌの能天気さにノワールは感心2割、呆れ8割くらいに呆れていた。アイエフも仕事前から元気なのは良いが、仕事中になってバテるのは止してもらいたいなとも危惧する。

 

「……それにしても、こんな廃工場の前に呼び出して、何を考えているのかしら?」

 

ノワールは目の前に建っている工場に注目する。廃工場と言っても、所々に錆は目立つがまだまだ稼働できそうな雰囲気を纏っていた。稼働中だったとしても、疑問は抱かないだろう。

 

と、そう考えていたところで工場とは逆の方向から声が聞こえてきた。

 

「お久しぶりですみなさん。今日もお仕事の内容の説明で来ました」

 

メガネにスーツを着こなす、見た目から出来る社会人と思わせる人物、ガナッシュである。今日はガナッシュだけがいるようで社長のサンジュは来ていないようだ。まあ前回はサンジュがいたのは工場の視察のためだったからであり、自らが動いて説明するような事はないのだろう。

 

「おっひさー!お仕事いつも大変だね、休みとかないんでしょー?」

 

「そんなに忙しそうに見えますか?ここのところ、週半分は休日なんですけどねぇ」

 

「一週間の半分が休みなんて羨ましいです」

 

コンパは羨ましそうに言う。それはそうだろう。アヴニールはやり方はどうあれ大企業であり給料も多い筈。それでいて週半分は休日であると言うのに給料を貰えるといる言うのだ。羨ましい限りである。

 

「我が社の仕事のほとんどは、機械が自動でやってくれますからね。そのおかげで、楽をさせてもらっています……ところで、イツキさんの姿が見えませんが?」

 

ガナッシュはこの場にイツキがいないことに気づき、そんな様子のガナッシュにノワールは

 

「あら、随分イツキの事を気に入っているのね?」

 

ノワールは納得はしたものの、やはりガナッシュのイツキへの期待具合を怪しく思うようだ。そんな質問を受けてガナッシュは特に動じはせずに

 

「イツキさんは、ダンジョンでモンスターに追い詰められた私を助けてくれましたのでね。個人的に気に入っているのですよ。それで、彼は今日は何か御用でも?」

 

「あーお兄ちゃんならね、シアnモゴモゴモゴ……」

 

「あーイツキなら今日は用事あるらしくて、多分来れないって言っていたわ」

 

うっかり口を滑らせたネプテューヌの口を抑えたアイエフは、大きな声で用事のある旨を伝えるとネプテューヌの肩を掴み、振り返って耳打ちをする。

 

(こらアホネプ子!ここでシアンの名前を出すんじゃないわよ!私たちの立場を忘れたんじゃないでしょうね?)

 

(あ、そうだった。ごめんごめ〜ん)

 

(ごめんごめんじゃなーい!バレたら迷惑が掛かるのは私たちだけじゃなくて、シアンもなのよ!)

 

(あいちゃん、そんなに怒ると眉間の皺が増えて可愛い顔が台無しだよ?)

 

(……ネプ子。丁度懐に生ナスがあるんだけど)

 

(次からは気をつけます!!気をつけますからお慈悲を!!)

 

(よろしい)

 

秘密のやりとりを終え、2人は所定の位置に戻るとネプテューヌは

 

「そうそう。お兄ちゃんは何か朝から用事があるから来れないんだって!今思い出したよ」

 

少々無理矢理言わされている感があり、アイエフは頭を抱えたくなるがここでは我慢する。

 

「そうですか……それは…」

 

「……?今、何て言ったの?聞こえなかったわ」

 

「いえ、独り言ですよ……さて、雑談はこれくらいにして、本題の説明に参りましょうか」

 

ガナッシュは話を切り上げるとネプテューヌ達を通り越し、施設を手で指し説明を始めた。

 

「この施設なんですが、見た目以上に年数が経ってまして、実はもう廃棄された施設なんです……」

 

「それで、その要らなくなった施設で何をすればいいわけ?」

 

「実は施設を引き上げる際に、必要な資材の一部が取り残されたままになっているんです。今回は、そんな資材の回収をお願いしたいのです」

 

「それだけ?なんだ、今回は簡単そうだね」

 

ここまでの話だけを聞けば誰にでも出来そうな依頼だ。ネプテューヌはそんな皆の気持ちを代弁していたが、ガナッシュは次にネプテューヌ達に頼んだ理由の分かる原因を話す。

 

「しかし、困ったことにいつの間にかモンスターが棲みついてしまい、回収が困難になってしまったんです」

 

「なるほど。だがら、そこでわたしたちが必要になったってわけね。それで、その回収しなきゃいけない資材ってなんなの?話を聞く限り、かなり重要なものみたいだけど」

 

「とある鉱石……そうですね、我が社では『ラステライト』と呼んでいる鉱石です。たった1グラムでゲーム機を1万年も動かせる常軌を逸したエネルギーを秘めた鉱石なのですが、最近はモンスターの増加も影響して採掘量が下がってきていまして、我が社では少しでも数を揃えたいと考えているんです」

 

回収してもらいたい鉱石を少し週順して答えたガナッシュ。その鉱石の名前を聞いてアイエフは少し眉を顰めた。

 

「……ねぇ、ラステイションにそんな凄い鉱石あったかしら?」

 

アイエフはこの中で知識の多そうなノワールに聞いてみるが、ノワールは首を傾げている。

 

「ラステライト……私は初耳ね」

 

「わたしも。そんか凄い鉱石があるなら、私が知らないはずないんだけど……」

 

ノワールの答えを聞き、更に眉を顰めるアイエフ。しかしガナッシュはそれはさも当然のように

 

「それは当然です。その鉱石はここ数年で発見され、我が社が採掘を独占しているんです。その存在も、社のため公にはしていません」

 

と言った。しかしこの言葉を聞いたアイエフとノワールはそんなので納得する訳でも無く、少し受けた依頼に胡散臭さを感じ始めた。が、

 

「ねえねえ、そんなに凄い鉱石ならさ、お仕事が終わった後にちょっとだけくれないかな?」

 

「こら、ネプ子。何馬鹿言ってるのよ!」

 

「だって、あいちゃん。1グラムで1万年もゲーム機を動けせるんだよ。携帯ゲーム機に使えば、いつでもどこでも電池の残量に気にせず遊べるんだよ!ACアダプターの呪縛からの解放だよ!」

 

依頼内容の鉱石の存在を微塵も疑いもせず、あまつさえ分けてもらおうとする(もう一度言うがあるかは分からない)ネプテューヌにアイエフは呆れてしまい、依頼への疑問は後回しにされてしまう。とりあえずアイエフはネプテューヌを咎めようとしたが

 

「欲しいのでしたら分けて差し上げますよ」

 

「ほんと!?」

 

「はい。前回のあなた方の働きにより、当初のスケジュール通り工事に着工できましたし、この鉱石のことを秘密にするという約束さえしていただけるのでしたら差し上げましょう」

 

「わーい!アヴニールってあんまりいい印象無かったけど、ガナッシュのおかげで株が上昇中だよ」

 

「それは嬉しいですね」

 

ガナッシュに上手く丸め込まれているようなネプテューヌにアイエフは更に頭が痛くなり、オマケにアヴニールの自分の印象をペラペラ話してさっき釘を刺したのが既に緩くなってきているのに更に頭を抱えたくなる。そんな様子のアイエフにノワールは苦笑いしていた。

 

「……さて、時間ももったいないですし、さっそくお願いします」

 

「うん!大船に乗ったつもりでこのねぷ子さんに任せなさーい!」

 

「今にも沈みそうな大船ね……」

 

とりあえずここでは適当にツッコミを入れて、中に入ったらもう一度釘を指しておこうと決めると、さっきまで感じていた疑問はここでは置いてしまった。

 

そして一同はネプテューヌを先頭に廃工場に入る。

 

その時だった。

 

「なにっ!?」

 

ガーン!と強固な鉄同士がぶつかり合う音を聞き、ノワールは口に出して驚いていた。一同が振り返ると、自分たちの入った扉が閉じていた。勿論この中で入口を閉めた人物は1人しかいない。

 

「なんでいきなり入口が閉じちゃうの!ちょっとガナッシュ、変な冗談やめてくれる!?」

 

アイエフは外から扉を閉めた人物に問い詰めた。一応扉越しからでも声は通るようだった。

 

「いやぁ、すいません。手違いで閉まっちゃいました」

 

おどけた様子で言うガナッシュだったが、こんなのは冗談では済まないと閉じ込められたアイエフ達は怒りを露わにしてる。

 

「……と言うのではなく、単純にこちらの都合です。あなたたちには、この中でモンスターたちの餌食になっていただきます」

 

しかしこのガナッシュの発言に冗談では無いと分かったのだった。

 

「そ、それは一体どういうことです!?」

 

「ちょっと!なんで!どうしてさ!?そんなことするんじゃ、取ってきてあげないよ!」

 

「……この状況でどうしてそう間の抜けた発想に繋がるんでしょうねぇ」

 

コンパは困惑し、ネプテューヌも怒りを感じ扉越しのガナッシュを問い詰めるが、ガナッシュはネプテューヌに対して簡単に騙されていることに呆れていた。

 

「ゲーム機が1万年も動く石なんて、そんなものあるわけないじゃないですか」

 

ここでアイエフとノワールの後回しにした依頼への疑問は再び引っ張り出され、理解をした。

 

「まさか……騙したのね!あなた目的は何!?」

 

ノワールはガナッシュを糾弾するが、その発言にガナッシュはまたも呆れたように言った。

 

「騙すとは人聞きの悪い……それはあなたたちのしようとしていたことと、どれくらい差のある行為なのでしょうね?」

 

「ま、まさか……」

 

「ええ。あなたたちがパッセとかいう町工場の協力者であることは分かっています。大概、我が社の仕事を受けることで、博覧会の出展物に探りを入れ、あわよくば妨害することが目的だったのでしょう?」

 

「あいちゃん、全部バレバレだよ!?わたし必死にバレないようにしたのに意味なかったよ!?」

 

「まさか、バレているなんて……」

 

ネプテューヌは釘を刺された意味をアイエフに聞いたが、アイエフはそれを無視し自分たちは不注意であったようだと歯噛みした。

 

「我が社の勝利は間違いありませんが、何かあるかわかりませんからね。障害となりうる芽は早いうちに摘み取って置きたいわけですよ。……それでは、時間が惜しいので私はここで」

 

ガナッシュはそれだけ言うと廃工場から立ち去った。

 

「待ちなさい、ガナッシュ!……っく!」

 

扉越しからでもガナッシュが離れて行くのが分かり、アイエフは呼び止めるがそれに応じるわけもなく返事は無くなり、アイエフはまた歯噛みして扉を叩いた。

 

「……これはもうダメね。ご丁寧にしっかりとロックされてるわ」

 

ノワールは扉を開けようとするが、外側からロックがかかっているらしくビクともしない。

 

「ど、どうすれば……そ、そうです!イツキさんです!あいちゃんイツキさんに助けを呼ぶです!」

 

コンパはイツキへと助けを求めることを提案するが

 

「無理よ。ここ、電波通らないし、イツキの連絡先も分からないわ」

 

「……あいちゃん。わたしたち、どうなってしまうですか?」

 

「そ、それは……」

 

「……」

 

不安そうにしているコンパに何も声を掛けられないアイエフ。そんな様子の2人を見てノワールは

 

「……ごめんなさい。こうなったのも全部私のせいだわ。……私が、アヴニールの仕事を受けようなんて言わなければ、こんなことになるなんて……」

 

「……」

 

コンパたちに謝り、今の状況が自分によって引き起こされてしまったと言った。勿論コンパ達は微塵もそんなことを思ってはいない。しかし、自責をするノワールに何もかける言葉が思い当たらず、黙り込んでしまった。

 

「んもー!何みんなで辛気臭い空気出してるのさ!そんなのわたしたちらしくないよ」

 

しかし暗い雰囲気の中で皆を励ます人物がいた。ネプテューヌだ。

 

「まだここから出られないって決まったわけじゃないんだしさ、諦めないで出口を探そう」

 

「……そうね。ネプ子の言うとおりだわ。こんなに広い工場なんだし、きっとどこかに出口があるはずよ」

 

ネプテューヌの言葉を受け、アイエフはザッと工場を見渡す。機材は1つもなく完全に撤収されたようで、土や雑草が手入れもされずに放置されていた。しかし機材が無いのなら移動をしやすい。

 

「誰があいつの思惑通り大人しくモンスターの餌になってあげるものですか」

 

アイエフの言葉に一同は頷くと、自分たちの武器を構えて廃工場を進んで行くのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




非常にストーリー展開が長いですね……書きたいこと書きまくってますから……

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