超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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確か俺はネプテューヌのイツキの呼び方を変えると言ったな……あれは嘘だ。(ごめんなさい!あだ名考えたんですけど、イッツンしか浮かばない上に、これいーすんとかぶる上に読みにくいので不採用にしました……)


第16話 紫の女神

太陽が丁度真上に昇り、雲一つない快晴と言える天気の中、ラステイションのとある遺跡跡地『ザラット神殿』へと進む一行がいた。

 

その一行は下町のパッセと言う町工場の社長、シアンという女性からの頼みと、下町の人々の生活とアヴニールの悪政を放ってはおけず、今回アヴニールの仕事を受けた。

 

矛盾しているように聞こえるが、実際は四年に一度開かれる総合技術博覧会でアヴニールがどんな展示品を出すのかを、受ける依頼から推測するためだ。

 

総合技術博覧会とは、様々な会社が決められたジャンルで展示を行う催しで、その目的は技術交流であり、出展したモノの中で、最も優れた展示品にはラステイションの女神、ブラックハートから直々にトロフィーが贈られる。

 

シアンの着眼点は女神、という点だった。総合技術博覧会で優勝し、ブラックハート様からトロフィーを賜わる際に、下町の現状とアヴニールの凶行を直談判しようという魂胆であった。

 

「さーて、大変不本意ではありますが、アヴニールの仕事をするとしますかー」

 

「お願いだから、そう思っていても絶対に口に出さないでよ」

 

「ねぷねぷは正直者ですからねぇ…」

 

「この場合は、馬鹿正直って言うのがしっくりくるけどね」

 

道中談笑しながら依頼人の元に行く4人の少女たち一行。その様子はとてもモンスター退治の依頼に行くとは思えない。

 

「えーい!鏡の前でメガネな自分に酔いしれて待ち合わせの時間に遅れたノワールには言われたくないよ!」

 

「だーかーら!そんな恥ずかしいことをするわけがないでしょ!」

 

「はいはい、ストーップ。戯れるなら後にして。もうすぐアヴニールの依頼人との待ち合わせ場所なんだから」

 

「はーい。分かりましたー……って、あれ?依頼人ってあの人たちの事かな?」

 

「3人いるのが見えますですぅ」

 

「……おかしいわねぇ…確か、依頼人はアヴニールのガナッシュって人だっt「あーーーーっ!!!そこにいるのはまさか!!?」な、何??いきなり叫ばないでよネプ子!」

 

薄紫色の髪をした少女は声を上げると、3人のいる元へと駆け出していった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっぱり!お兄ちゃんだ!!おーい!元気ー?」

 

薄紫の髪の色の少女が、僕の方に駆け出してくるのが見えてくる。

 

忘れようもないその声と特徴的な十字コントローラー型の髪留めに、パーカーを着たあの少女だ。

 

「いやー、こんな所で会うなんて奇遇だね?もしかして、私達って運命的な出会いをしていて、ここで会うのも必然だったとかー?なんちゃってー!」

 

少女は僕の元まで来るなり、そんな事を言い出したがそれをスルーし、ガナッシュに確認を取る。

 

「あの、まさかとは思いますがどう高く見積もってもこの15、6歳にしか見えないこの子供がもう一つの依頼を受けたグループって事ですか?」

 

「いえ、依頼を受けるのは4人とギルドから聞いたのですが……」

 

と、ガナッシュは答えた。この時例の少女がまた子供扱いしたことにご立腹であったが全力スルー

 

「ちょっとネプ子!急に叫んだと思えば急に走り出してどうしたのよ!」

 

薄紫色の髪の少女の後を追いかけ、声をかけてきたのは青いコートを着た茶髪のロングヘアーに、芽が出たばかりの双葉のような緑のリボンが特徴的な少女だった。

 

「ねぷねぷ〜。急に走り出さないで欲しいですぅ。走るなら走るって、言ってくださいですぅ」

 

「もう、何なのよネプテューヌ!」

 

その後ろから何だか気の抜ける声を出す白っぽいセーターにオレンジ色の髪の胸の豊かな少女と、恐らく僕に一直線に突っ込んで行った少女のことを怒っている、黒髪のツインテールで、ゴシック調のミニドレスを身に纏っている少女が続いて来た。

 

合計4人。どうやら僕の他に依頼を受けるグループと言うのは彼女達で確定のようである。

 

全員薄紫色の髪の少女と同じくらいの年齢で、一瞬何かの手違いでここに来たんじゃないのかと考えたが、すぐに否定する。これまで僕はこの子達と同じくらいの見た目でありながら、危険種を余裕で倒す人を見てきたじゃないか。見た目で判断をするのはいけないことだ。

 

「ごめんごめん3人とも。ちょっと私の命の恩人が目に写って、いてもたってもいられなかったんだよ〜。ね?お兄ちゃん?」

 

「「「お、お兄ちゃん!?」」」

 

3人の少女のハモった驚愕の声で思考状態だった僕は現実に引き戻される。またあの少女が後々説明が大変なことを言っていた……

 

「ねぷねぷのお兄さんですか!?良かったですね、ねぷねぷ。ご家族の人に会えて!」

 

「この人が、ネプ子の兄……似てない兄妹ね……」

 

「ネプテューヌのお兄さん……って事は、私の……い、いやいやいや聞いたこと無いわよそんな事!?」

 

各々の少女3人が勘違いをして、何だかドンドン誤解を解くのに大変な状況になって来ている……!早いとこ誤解を解かないと!

 

「違いますよ!僕はこの子の兄j「雑談はこのあたりにして、今回のあなた達に依頼する仕事の内容を説明させて頂きます」……えー…」

 

弁明を入れようと口を開いたのだが、ガナッシュに横槍を入れられてしまった。

 

まあ、この誤解は解くのに時間がかかりそう(主に薄紫のせいで)なので、とりあえず依頼の内容を聞くことにする。

 

「事前に依頼内容はモンスター退治だと知らせましたが、詳しく説明させて頂きますと、この辺りは近々我が社の新プラントの設立予定地となっているのです。しかし、工事着工前にして少々厄介なモンスターが棲みついてしまって困っているのですよ」

 

「なるほど。そのモンスターの討伐が今回の仕事なのね」

 

ガナッシュの説明にうなづきを入れて納得をしていたのは、黒髪のツインテールの少女だ。掛けている知的なメガネもあいまって、グループのブレインに思える。

 

「その通りです。この後、私と社長はこの辺りの視察があるので、それが終わるまでにモンスターの討伐をしていただきたいのです」

 

「なーんだそんなことかー。てっきり面倒な手作業をするのかと思ってたよー」

 

「私も、細かい手作業は苦手なので助かるです。前やってたお刺身の上にタンポポ乗せるアルバイトもあんまりうまくいかなかったです」

 

「へー……そうなんだ……って、あの仕事本当に実在したの!?」

 

「ネプ子がツッコミに回るのは珍しくわね。それと、それタンポポじゃなくて食用菊だから」

 

……この緊張感の無いやり取りを見て、僕はまたも心配になって来た。本当にこの子達大丈夫なのだろうか?

 

「説明はこれで以上です。くれぐれもミスをして例のモンスターを我々が視察している方に逃がさないように気をつけてください……それでは、我々はこれで。イツキさん、よろしくお願いします」

 

説明を終えたガナッシュは、僕の方に一礼するとアヴニールの社長と共に、森の方へと去って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……社長、あの黒髪の少女ですが」

 

「お前も気づいていたか」

 

「はい。コスプレにしてはあの方に似すぎているかと……」

 

「確か、教会の奴らからの報告では先日から失踪していたんだったな」

 

「なので、その可能性も十分かと。……どうしますか?」

 

「どうするもなにも、本人かどうかわからんことにはどうしようもない」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ただ、目だけは離すな」

 

 

「……御意に」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……と言うわけでありまして、この子が勝手に僕のことを兄呼ばわりするんですよ」

 

ガナッシュ達が去り、事情の説明をと詰め寄る少女達に、イツキは薄紫色の少女と出会った経緯を3人に話した。

 

「そうなんですか……ねぷねぷのお兄さんじゃなくて残念ですぅ」

 

「なるほど……だから昨日待ち合わせに遅れたのね〜ネプ子……人様に迷惑かけて、挙げ句の果てには奢らせるとは……」

 

「あ、あいちゃん?何だかとっても怖い顔になってるよー?ほらー、スマイルスマイル〜」

 

「……そうね〜ネプ子?ほら〜笑ったわよ?スマイルよ〜?これでいいのかしら?」

 

「そ、それはそれで怖いよあいちゃん…!って何でゆっくり近づいてくるの?や、やめねぷぅぅぅぅぅぅぅぅぅ!!!」

 

森の茂みに消えて行った2人。何か叫び声が聞こえるが聞こえない振りを敢行する。

 

「そっか……ネプテューヌが勝手に呼んでいるだけなのね……あ、自己紹介がまだだったわね。私はノワールよ」

 

胸に手を当てノワールと名乗ったのは黒髪ツインテールの少女。

 

「私は、コンパですよ。よろしくお願いしますですぅ」

 

オレンジ色の髪の女の子はお辞儀をして、コンパと名乗った。

 

イツキもそれに習い、自分の名前を名乗ろうとしたのだが森の茂みの方から2人が帰って来たのを確認した。

 

薄紫色の少女がちょっと涙目であったので、大方嫌いな食べ物でも無理やり食わされたのであろう。何故ちょっと涙目なだけで嫌いな物を無理矢理食べさせられたのか分かるのかは突っ込まないで貰いたい。ノワールは互いに自己紹介をしている旨を2人に伝えた。

 

「あー、そういえばあの時まだ名前言ってなかったね?私はネプテューヌ!」

 

「私はアイエフよ。よろしくね」

 

イツキのことを兄と呼ぶ薄紫色の髪の少女はネプテューヌ、ネプテューヌに折檻をした少女はアイエフとそれぞれ自己紹介をした。

 

4人の少女達は自己紹介を終えたので、今度は自分の番だと少し深呼吸し、名を名乗った。

 

「僕はイツキです。よろしくお願いします」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「お兄ちゃんは何でラスティションでアヴニールなんかの仕事を受けているの?」

 

「僕はルウィーからラステイションに来たんだけど、途中で路銀が尽きちゃってね。後、お兄ちゃんやめて」

 

「へー……イツキはルウィーから来たのね。どうしてラステイションに?」

 

「深い理由は無いよ。ちょっとした旅行と考えてもらうと楽かな」

 

イツキ達は互いに談笑しながらザラット神殿を進んでいた。イツキは最初こそ堅苦しい口調ではあったが、あのネプテューヌと同じくらいの、つまり自分より年下に見える女の子達に敬語を使うのも可笑しいと感じ、すぐに砕けた口調にした。

 

「イツキさんは旅をしてるですか〜。何だか、ちょっと前までのあいちゃんみたいですぅ」

 

コンパは懐かしむようにつぶやいていた。そのほわほわした声はとても保護欲がそそられる気がしたイツキ。

 

「そういえば、あいちゃん私たちと初めて会った時、『私はゲイム業界に吹く一陣の風!アイエフよ!』とか言ってたよねー?」

 

「わ、忘れなさいその事は!」

 

「ほらほら、落ち着いて落ち着いてアイエフさん」

 

怒るアイエフをイツキは宥めた。初対面ではあるが、このグループに溶け込めているように見える。

 

が、

 

(……あの子、やっぱ僕を睨んでいるよな……)

 

イツキは周りにいるネプテューヌ達から視線を外し、チラッと少し後ろを歩いている黒髪の少女、ノワールを見た。

 

「……」

 

表情こそ無表情だが、その瞳の奥には疑り深い目線。ネプテューヌとコンパは特にイツキを疑いもせず、フレンドリーに接している。アイエフも、最初こそ遠慮気味だったがイツキと話すにつれて打ち解けていった。が、ノワールだけは表面上こそ普通の態度だが、後ろからイツキの一つ一つの挙動に注目していた。

 

(……ふむ、ちょっと考えてみるか……)

 

イツキは顎に手を当て、自分が疑われている理由を考えてみる。そこで考えたのは2つの可能性だ。

 

1つはノワールとイツキはイツキが記憶を失う前からの知り合いで、記憶を失う前のイツキがノワールに何かをやらかした可能性だ。

 

そもそも、失くした記憶が前の世界の物だけと言う前提は確実ではない。イツキがゲイムギョウ界に来てからの記憶も消えている可能性だってあるのだ。

 

とは考えたが、正直可能性は薄いだろうとイツキは考える。何故なら最初に顔を合わせた時のノワールの反応は完全に初対面の反応だった。

 

勿論初対面のフリをしている可能性はあるが……

 

「ねぇねぇノワール?どうしてそんな後ろからついてくるの?……あーそっか。お兄ちゃんとは初対面だから話しにくいんだね?ぼっちスキルが発動したんだね!」

 

「ぶーっ!!誰がぼっちよ誰が!」

 

「大丈夫だよ〜ノワール〜。私はぼっちと呼ばれるそんなノワールを応援してるから!」

 

「だ〜か〜ら〜!!」

 

……こんなやり取りをする辺り、ノワールは嘘はつけない女の子なのだろう。

 

 

さて、イツキが次に考えた可能性、それはノワールはイツキの事をアヴニールの関係者と勘違いしている可能性だ。

 

イツキはネプテューヌ達が来る前にガナッシュ達と合流していたので、見方によっては最初から3人であの場所にいたとも思われる。オマケにガナッシュの最後の発言、つまりイツキに対する信頼の現れのようにも受け取れるあの発言が問題だった。

 

イツキはこれが一番考えられる可能性だろうと推測する。と言うのはこれも前提が曖昧な物となるが、恐らく彼女達はアヴニールと敵対、大方下町の工場の人達の肩を持っているのだろう。少なくともさっきのネプテューヌの『アヴニールなんか』と言うワードから、良くは思っていないのは確実だからだ。

 

勿論イツキの目的もアヴニールの内情や目的の調査であり、決してアヴニールの味方と言うわけでは無いが、自分の目的を話すつもりもない。

 

(……となると、地道にコミュニケーションとか取って、信頼を得るしかないかな……でも、こっちの真意を話さないのに信頼を得るってのもな……そこはおいおい考えるか)

 

当分のネプテューヌ達に対する方針を決めたところで、何と言うかちょうど良いタイミングでモンスター達が現れた。

 

「モンスターさんたちが現れたです!」

 

「おお……あ、そうだ!ねぇねぇノワールは今日から一緒に戦ってくれるし、お兄ちゃんも今は私たちのパーティにいるんだよね?丁度良い機会だし、お兄ちゃんとノワールの実力を見せてよ」

 

モンスターが現れたのをいい事に、イツキとノワールに実力を見せる提案を出したネプテューヌ。イツキとしてはこのパーティに実力を認められるのは信用の近道だろうと思い、この提案に乗ることにした。

 

ちなみにイツキはお兄ちゃん呼びに関してはもう諦めかけている。

 

「ずいぶん私も甘く見られたものね。……いいわ、私の実力、その目に刻むといいわ」

 

ノワールもノワールで強気に出ていた。イツキはノワールは乗っては来ないだろうと予想していたのだが、どうもノワールはやや好戦的な性格のようだ。

 

「でねでね〜普通にやってもつまらないし、ここはこの3人で戦って、負けた2人は一番活躍できた人にプリン奢るってのはどう?」

 

「いや、どうも何も……まあ、負けないようにはするか」

 

「望むところよ。ま、当然勝つのは私だけどね」

 

ネプテューヌの提案には2人とも違う反応を見せるが、どちらも勝ちを譲るつもりはない姿勢を示した。

 

それを確認したネプテューヌは不敵な笑みを浮かべ、イツキとノワールの前に歩いてきた。

 

「それはどうかなー。私だって負けないもんねー!変身!」

 

その掛け声を言った瞬間、ネプテューヌが眩い光に包まれた。

 

「……!」

 

そして光が弱まると、ネプテューヌのいた場所には全く別と言える人間が立っていた。

 

黒地に薄紫の十字の髪飾りをし、黒のレオタードのようなものを身に纏った女性。纏っている雰囲気と覇気。

 

イツキはこの現象を知っていた。この姿形が元とは大幅に変化する現象を……

 

「私も本気をださせてもらうわ」

 

(あ、ありのまま今起こった事を話すぜ!自分のことをやたらお兄ちゃん呼ばわりする少女が実は女神の1人だった!何を言ってるのかわからねーと思うが、幸運だとか主人公補正だとかそんなチャチなもんじゃあ断じてねえ……もっと恐ろしいものの片鱗を味わったぜ……)

 

もはや変身前とは違うと伺える声の抑揚のネプテューヌに、イツキは更に頭を痛め、つい目頭を抑えた。

 

「ちょっと!あなただけ変身するなんて卑怯よ!」

 

「なら、あなたも変身すればいいじゃない」

 

「ねぷねぷ、普通の人はねぷねぷみたいに変身できないですよ?」

 

「相変わらず、酷い無茶ぶりをするわね……って、どうしたのよイツキ?急に頭抱えて」

 

「いや、まさか女神様に会えるとは思えなくて……」

 

「!!」

 

「女神様……ですか?」

 

「?どこにいるのよ?」

 

イツキのつぶやきにアイエフとコンパは疑問を感じ、辺りをキョロキョロと見回す。

 

「え?いやいやいや、今ネプテューヌさんがやったのって、女g「うわー足が滑ったー!」ミドバ!?!!」

 

わざとらしい声と共にイツキの足にスライディングをしたのはノワールだ。イツキは絡まる足を何とか解き、立ち上がろうとするが、ノワールの耳打ちが聞こえて止まる。

 

(お願い!今あの子に女神だってことは明かさないで!)ヒソヒソ

 

(え?何で?今の現象ってどう見たって女神化だよね?)ヒソヒソ

 

(いいから!詳しい話は後でするから!今は黙ってて!お願い!後で幾らでも切り刻んであげるから!)ヒソヒソ

 

(下手に出てるかと思ったら最後はただの脅し!?)ヒッソー!

 

若干ノワールの凶行と理不尽さに嫌になるイツキだが、事情は後で話してもらえるらしいので、とりあえず今はモンスターを何とかしよう。

 

「2人とも、ふざけてないで早く戦うわよ」

 

ネプテューヌは未だ倒れている2人を叱咤する。変身前の言動とは似ても似つかないその様子に、イツキは変身って同時に変心(へんしん)もするのかな……と、くだらないことを考えながら、準備をすることにする。

 

「よし!行くわよ!」

 

イツキとノワールが戦闘準備を終えたことをネプテューヌは確認すると、モンスターたちに突進して行った。その後に続くようにノワールとイツキも駆け出すのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

イツキ達の前に立ち塞がったのは、リザードマンの中でも頭領の風格を持ち、その名前に名前負けしないと言われるボスリザードと、クモ型モンスターのスパイダー2体だった。

 

「やああっ!!」

 

まずは先鋒のネプテューヌがボスリザードに突っ込んだ勢いのまま袈裟斬りで斬り込んだ。

 

「グラァァァァ!?」

 

助走の入った斬り込みにボスリザードは耐えられず、浮いていた体は地面を削りながら後ろに吹き飛ばされる。が、さすがはボスリザードと言うべきか、すぐに体勢を立て直すとまるで大したダメージを与えられていないかのような印象を思わせるように、ネプテューヌへと突進する。

 

ネプテューヌは突っ込んできたボスリザードの振り上げられた斧を避けると、手に持っている紫の刀身だが装飾はまるで機械を思わせるような剣を横薙ぎに振るい、ボスリザードの土手っ腹に一撃をお見舞いした。しかし、ボスリザードは大きな仰け反りなどのアクションは起こさずネプテューヌにそのまま斧を振るった。

 

「遅いわよ!」

 

しかしネプテューヌは振るわれた斧を剣で防いだことにより、ネプテューヌとボスリザードの(つば)()()いが起こった。

 

「「フシュルルルル……」」

 

そして鍔迫り合いが起こっていることにより、手を離せないネプテューヌを狙う2体のスパイダー。

 

「イツキ!私は片方のスパイダーを狙うから、残った方を倒しなさい!」

 

「了解!」

 

そうはさせじとイツキとノワールは、2体のスパイダーに向かって駆け出す。

 

「シュルル……!シュラ!」

 

敵の接近に気づいた2体のスパイダーは自衛のためにも標的をネプテューヌから迫ってくる2体に変えざるを得なくなり、照準をそれぞれの迫ってくる相手に向かい糸を放った。

 

「うわ!汚い!」

 

イツキは相手が蜘蛛だったために、糸を吐く攻撃はしてくるだろうと予想していたので簡単に避けるが、避けた糸の山芋のような粘性を見て、生理的な嫌悪感を抱く。

 

「イツキ!スパイダーには麻痺攻撃があるから注意しなさい!」

 

ノワールは何度かスパイダーを相手にしているのだろう、慣れた様子でスパイダーの攻撃を避け続け、余裕があるのかイツキにモンスターの情報を与えていた。

 

「やあぁあ!!」

 

ノワールはスパイダーの攻撃を踊るかの如く避け、僅かな隙も見逃さずに、持っている剣をスパイダーへと突き刺していく。

 

ネプテューヌの剣は威力(パワー)重視のようで、殆ど両手持ちで攻撃しているのに対し、ノワールの剣はどうやら敏捷(スピード)重視のようで、片手で持ったその剣を主に刺突剣(レイピア)のように扱い、少しでも隙があれば空中に銀の閃光を描きながら斬撃を繰り返していた。

 

「おりゃぁぁあ!!!」

 

イツキはスパイダーに肉迫すると、蜘蛛に皮のグローブだけで触れるのは気が引けたので助走をつけた勢いでスパイダーを蹴り上げる。空中に飛んで行ったスパイダーに追撃を加えようと膝を曲げ、地面を蹴り出そうとした瞬間、頭上でスパイダーが真下に向かって毒針を打ち出してきた。

 

「!強欲(グリード)!!」

 

咄嗟に強欲(グリード)の力を解放し、右腕を硬質化して毒針を防いだ。手のひらを翳して針を受けたために針が皮のグローブに突き刺さるが、硬化した生身の手には届かない。

 

おそらくこの針についている毒は麻痺毒なのだろう。それを理解したイツキは気を引き締め、未だ空中を彷徨うスパイダーにトドメを刺すために、膝を曲げ地面を蹴り上げる。

 

「落ちろ!!」

 

イツキは両腕を硬質化し、その硬質化した際の重さと重力と相乗させてハンマーナックルをスパイダーの顔にお見舞いする。

 

「ペギャ!!」

 

まともに攻撃を食らい、地面に撃ち落とされたスパイダーは1度バウンドし、唸り声を上げると呆気なく霧散した。

 

「よし、終わりーっと」

 

スパイダーが消えたのを確認したイツキはもう片方のスパイダーの相手をしている筈のノワールを見た。

 

「レイシーズダンス!」

 

ノワールはスパイダーにサマーソルトキックをし、空中に浮いたスパイダーに蹴りのコンボを叩き込んだ。器用にも地面に落とさないように何度か蹴り上げ、トドメとばかりに持っていた剣でスパイダーを一閃した。声もあげられずスパイダーは粒子となる。

 

「よし!終わりよ!」

 

イツキはノワールがスパイダーの相手を終えたことを確認すると、ボスリザードと相対しているネプテューヌを見た。

 

「せやぁぁあ!!」

 

「グオオオ!」

 

ネプテューヌはボスリザードの攻撃をものともせず、次々と攻撃を加えていたが、あのボスリザードはかなりタフであるようで、多少は応えているが未だに決定打となる攻撃を加えられてはいなかった。

 

「ネプテューヌさん!ちょっと下がって!!」

 

イツキはネプテューヌに下がるように頼むとボスリザードへと駆け出していった。

 

「!分かったわ!」

 

ボスリザードの斧を受け止めていたネプテューヌはイツキの頼みに返答すると、持っていた剣を持つ手を緩め、ボスリザードの体勢を崩すと後ろに下がった。

 

イツキはそれを確認すると地面を蹴り出し跳躍した。膝を曲げ回転しながらボスリザードの頭上へと向かいながら、足を硬質化すると、曲げていた膝を抑えていた腕を解放し、ギロチンの如くその踵を対象へと振り下ろす!

 

「兜割り!!」

 

イツキの叫び声とともに、イツキの回転かかと落としがボスリザードの脳天を捉えた。

 

「グオォウ!!……ガッ…ゴガッ…」

 

頭に攻撃を受けたために、ふらつくボスリザード。そのチャンスを逃さないためにもイツキは叫んだ。

 

「ネプテューヌさん!ノワールさん!トドメお願い!!」

 

「「ええ!!」」

 

2人はふらつくボスリザードに駆け出し、肉迫するとほぼ同時にボスリザードを一閃した。

 

「「これでトドメ!!」」

 

「グオオオォォォオオオオオォ!!!!」

 

断末魔の声を上げたボスリザードは粒子となり、そのまま風に流されていった。

 

ボスリザードを倒したことを確認したイツキは労いの言葉でも2人にかけようとしたが

 

「私がトドメを刺したから、私の勝ちね」

 

「何言っているのよ、私の方が早かったわ」

 

「いえ、私の方がコンマ二桁早かったわ」

 

ネプテューヌとノワールはどちらが先に仕留めたかを言い争っていた。ネプテューヌの場合はプリンが食べたいだけだが、ノワールはネプテューヌに負けると言うのは気に食わないようだ。

 

「はいはい、ストーップ。二人とも同時だったわ。イツキのサポートのおかげで2人共トドメをさせたんだし、この勝負は引き分け。いい?」

 

この言い争いに歯止めをかけたのは遠方からイツキ達を見ていたアイエフだ。どうやら今回の賭け事の審判らしい。

 

「そんなはずないわ!」

 

「そうよ!私がネプテューヌと互角な訳ないわ!」

 

その審判に異議を立てるネプテューヌとノワール。横暴審判とばかりに審判の再審を要求していた。

 

「あーもう!2人ともしつこい!!」

 

「「ひぃ!?」」

 

2人のワガママに怒るアイエフ。その怒気の籠った声にネプテューヌとノワールは声を漏らした。

 

「審判が引き分けって言ったんだし、ここは引き分けってことにしようよ。2人とも」

 

「ちなみに、認めないなら2人にプリンをわたしとあいちゃんにご馳走してもらうですよ。勿論2人にはプリン無しです」

 

「「それだけはやめて!」」

 

イツキのフォローの後のコンパの発言にネプテューヌとノワールはそれはもう悲痛な声を上げた。てっきりノワールらネプテューヌに負けたくないだけかと思ったが、結局自分もプリンを食べたかったようであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




今回一万文字書きました……すいません長くて


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