超次元ゲイムネプテューヌ 雪の大地の大罪人   作:アルテマ

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挿話1 朝

こんにちは。私はルウィー教会で侍従を務めさせていただいています、フィナンシェと言う者です。

 

今日は私のある日の朝の出来事を、私が見たこと感じたことをここに綴らせていただきます。

 

「……んー……」

 

基本的にルウィー教会の侍従の起床時間は朝食準備時間に間に合えば良いのですが、最近の私は朝日が上り始め、日が強く差し込んできた辺りで目を覚まします。

 

……と言うよりも、目が覚めてしまうのでしょうかね?

 

ベットから足を下ろし、洗面所の前で顔を洗って、髪のセットし、服を着替えると、私は部屋のカーテンを開き、窓を開け放ちました。

 

その瞬間雪の大地に触れ、冷たさを帯びた眠気を飛ばしてくれる風と共に、入ってくるものがあります。

 

「…512!…513!…514!」

 

教会の庭で、威勢の良い声で腕立て伏せをしている黒髪の男の人がいました。

 

一週間程前、この教会で保護をされたイツキさんです。

 

彼は保護当初は、ひどい怪我を負っていたのですが、4日程前に傷は完治し、その翌日の朝早くからこのように腹筋や腕立て伏せなどのトレーニングをしていました。

 

「イツキさーん!おはようございまーす!」

 

「あ、フィナンシェさん!おはよう!」

 

私がイツキさんに挨拶をすると、彼は腕立て伏せの体制のまま顔をあげて、こちらに挨拶を返してくれました。

 

イツキさんは外見は優しげな人で、性格も優しい人です。まだ私たちと出会って一週間程しか立っていないため、まだまだ私たちに遠慮がちなところもありますが、チョットずつ、互いに分かり合えるようになると嬉しいですね。

 

私はイツキさんのトレーニングを邪魔しないために、今日の朝食のメニューを伝えると、手を振り窓から離れました。

 

「どわっ!」

 

手を振り返そうと片手を上げ、腕立て伏せの体制を崩してしまったイツキさんにはそのときは気づきませんでした。

 

 

 

 

 

 

 

「……おはようフィナンシェ」

 

「おはようございますブラン様」

 

朝食の準備をしていると、眠気眼を擦りながらテラスに私の主人、ブラン様がやって来ました。

 

ブラン様はこのルウィーの女神、ホワイトハート様であり、私はその女神様の直属の侍従をさせてもらっています。

 

他の女神の方がどのような方かは知りませんが、ブラン様の侍従をさせてもらい、ブラン様の生活を見ていて、女神と言っても、私たち下界の人間と大きな差はないと感じています。

 

「……ハァ…一時のテンションで凶行に及ぶと痛い目に会うって、今更わかったわ……」

 

「またイツキさんと夜更かししたのですか?」

 

「……だってイツキ、私の書く小説の良さを分かってくれないのよ……絶対イケると思うのに、主人公に比べて他のキャラの個性が薄いとか、展開が安直過ぎるとか……ブツブツ」

 

ブラン様は最近、たまにイツキさんと執筆中の小説の意見の出し合いや、評論をしているようです。

 

……もっともブラン様の性格のことですから、イツキさんは無理矢理付き合わされているのでしょう。

 

そんなことがあっても、毎朝トレーニングを欠かさず行うのは素晴らしいことだと思います。

 

「ブランさん、フィナンシェさんおはよう」

 

「ん、おはようイツキ」

 

「おはようございます。イツキさん」

 

トレーニングの汗をシャワーで流したのでしょう、イツキさんの髪の毛は少し濡れていて、髪のセットが雑にされているとすぐにわかりました

 

「イツキ。あなたちょっと髪型変よ」

 

と、私が言う前にブラン様に先に言われてしまいました。

 

「あー…ちょっとシャワー長めに浴びてて急いでいたから……」

 

イツキさんは髪型を探るように手を頭に当て、直そうとしますがどうもうまくいっておりません

 

「しょうがないわね。私が直してあげるから、こっち来なさい」

 

「え、いいよ。後で直すよ」

 

「いいから。早く来なさい」

 

「いや、だから「い い か ら」……はい」

 

イツキさんは渋々テラスのテーブルの席とは別の、背もたれのないイスに座り、その後ろにブラン様が立ち、手でイツキさんの髪の毛を整え始めました。

 

「イツキって、髪の毛硬いのね。リンス使ってる?」

 

「使ってるよー。多分男だから元が相当硬いんじゃないかな?」

 

そんなやりとりは何だか仲の良い兄妹のようで、見ているこちら側には、とても微笑ましいものでした。

 

「……」ジー

 

「……?どうしたのフィナンシェ?ジッとこっちを見て?」

 

「いえ、こうして見るとブラン様とイツキさん、仲の良い兄妹のようだなーって思ったのですよ」

 

朝食をテラスのテーブルに並べながら、私は思ったことを伝えました。ブラン様はそれを聞いて

 

「……兄妹……そうね。中々手のかかる弟だわ」

 

「いやいやいや、どう考えてもこれ僕が兄で、ブランさん妹ポジションでしょ」

 

「何を言っているの?私はあなたよりずっと年上なのよ」

 

「フィナンシェさんは『こうして見ると』って言っていたし、少なくとも外見では僕の方が大人でしょ」

 

「……そりゃ何だ?私が幼児体型だって言いてぇのか?あぁ?」ガシッ

 

「ちょちょちょちょ!ブランさん僕の頭に両手乗せて何をする気なの!?」

 

「それはな……こうするんだよ!!」ワシャワシャワシャワシャワシャワシャ!!

 

「ちょっとー!?ブランさんやめてー!!髪の毛グシャグシャにしないでー!!直すの大変なんだよー!」ギャース!

 

ブラン様とイツキさんのこう言ったじゃれ合いも、ここ最近の日常です。こう言う所も、本当に仲の良い兄妹のようですね

 

 

 

 

 

 

朝食を済ませた後は、紅茶を飲みながら談笑する時間です。私はこの紅茶を嗜みながら、ブラン様とイツキさんとお話をするのが好きです

 

「やっぱりフィナンシェさんの淹れる紅茶って美味しいです」

 

「ありがとうございます。イツキさん」

 

「イツキって味の良し悪しわかるの?」

 

「え?……そ、そりゃ分かるよ」

 

「じゃあ今飲んでる紅茶の茶葉答えなさいよ」

 

イツキさんはそう急かされ、カップを口元に運び、少し紅茶に口をつけました。

 

「…うん、この紅茶のまろみと上質な香り、そして素晴らしいまろみ……ダージリンだね?」

 

「……イツキさん、今日のはアールグレイです……」

 

「ウグッ!」

 

「……プッ」

 

「あー!!ブランさん笑った!今の笑い絶対嘲笑でしょ!?」

 

「そ、そんなことないわよ……」プルプル

 

「それ笑い堪えてるでしょ!?絶対そうだよね!?」

 

「この紅茶のまろみと上質な香り(笑)」

 

「ウグ!」グサッ

 

「そ、そして素晴らしいまろみ(笑)」

 

「グググ」グサグサッ!

 

「……ダージリンだね?」キリッ

 

「……うわぁぁぁぁぁぁん!!!」バターン!

 

イツキさんは声を上げると扉を勢い良く開いて、飛び出していきました。ちょっと不憫ですね……

 

「ブラン様、追いかけないのですか?」

 

「放っておいていいわよ」

 

「あ、あはは…」

 

イツキさんには少し可哀想ですが、放っておくことにし私たちは談笑を続けました

 

「そういえばブラン様、今日は何だか調子が良さそうですね?」

 

「え?夜更かししたからどちらかと言うと悪いと思うけど……」

 

「いえいえ、そう言う意味ではありません。何だか、昨日より憑き物が取れたと言うか、何か吹っ切れたような顔をしていますよ?」

 

「……そう。どうして分かったの?」

 

「伊達にブラン様の侍従を務めさせてもらっているわけではありませんよ」

 

いつものブラン様とそこまで差がある訳ではありませんが、今日のブラン様は何だかいつも抑え気味の感情が、少しですが、緩くされているような感じがしました。

 

ブラン様は口につけていたカップをテーブルに置き、一息ついてから話しました。

 

「……『世間の認めるらしさより、自分でありたいらしさの方が大事』」

 

「?」

 

「昨日イツキが私に言ってくれた言葉よ。イツキはその言葉は、私に対して言ったのじゃなくて、自分なりの意見として言っていたけど、何て言うかこの言葉聞いて、これまで私が気にしていたこと、全部馬鹿らしくなっちゃったわ」

 

口は悪く言ってはいても、ブラン様は微笑みを浮かべていました。

 

「今まではコンベルサシオンとかに、女神様らしく振る舞えって何度も言われてきて、私って全然女神らしくない女神って自己嫌悪に陥っていた」

 

空になったカップに紅茶のおかわりを注ぎますと、ブラン様はありがとうと言い、話を続けました

 

「でもね、そのイツキの言葉を聞いて、心に響いたの。……私がこれからどう振る舞うかは、まだ分からないけど、私はこれから女神様らしく振る舞うんじゃなくて、自分らしい女神様として、そしてそれをルウィーの国民に受け入れられるように頑張ろう……そう思ったの」

 

そのときのブラン様の顔は少し恥ずかしげでしたが、確かに決意の表明をできた、決心した顔でした

 

「イツキには、感謝しなくちゃね……」

 

「ブラン様は、イツキさんの事が好きなんですか?」

 

何気無く聞いたことなのですが、ブラン様のカップを持っていた手が硬直し、ピシッと音をたてたようにブラン様は固まりました。

 

そして数秒後

 

「……な、な、なななななななな、何を言っているの!?私があんな奴のこと、好きな訳ないでしょう!?」

 

「あらあら」ニコニコ

 

「フィナンシェェェェェェ!!その笑みは何だぁぁ!!」

 

「いえいえ。ただこの様子ならイツキさんにブラン様を任せられそうだと思ったのですよ」

 

「何だそりゃ!?その両親的なコメントは何なんだ!?いつからあんたは私の両親になったんだ!?そして今すぐその良心的な笑みをやめろぉぉぉ!!」

 

「それでは、私は片付けがあるのでこれで」

 

私は朝食の片付けをするために、お皿をまとめて部屋を出ました。

 

「おい!話は終わっていないぞフィナンシェ!」

 

ブラン様の声が部屋から響きますが、何とちょうど良くイツキさんが傷心から復活し、廊下を歩いてこちらに向かっていました。

 

「あ、フィナンシェさん。片付け手伝おうか?」

 

「そうですか。ではお言葉に甘えさせていただいて、テラスのテーブルを拭いておいてくれませんか?」

 

「ん、分かったー」

 

イツキさんが部屋に入り、扉を閉めたのを確認した私はその場で十字を切り、ワゴンを引いていきました

 

「その後、テラスの部屋からはこの世のものとは思えない断末魔の声が上がったのであった……」

 

ナレーションも忘れずに、です。

 

 







チョロインではないです。照れ隠しなんです(必死)




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