IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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撮られも撮る

「撮影入りまーす!」

 

俺の耳に感嘆符が付きそうなほどに張りがある声が届く。まあ、写真だからなにか失言しても記録は残ら無いので安心だ、まあそれでも、報酬を貰っている以上、仕事は仕事だしっかりやりますか。

明言していなかったが俺の格好は普通にタキシードだ。変わっている点としては、もしかしたら左右の肌の色が違うこともばれるかも知らないので白い手袋を用意している。

 

「どうも、着替えてきました…………大丈夫ですか?」

 

「いい格好よ。撮影に出ても問題ないわ。」

 

「そうですか、ありがとうございます。黛さん、撮影は・・・あのソファーでやるんですか?」

 

「そうね、共演者が来るまで待っていてもらえると助かるわ。」

 

「はい。」

 

俺は、癖のような感じでソファーの背にどかっと腰掛けた。なぜだかいすの背に乗るのって楽になるときがある。

 

共演者は俺より来るのが遅いが、時間差で来るのは女の常。遅れてくるのは仕方がない、ましてやこんなご時勢だ三時間ぐらいは余裕で待つわ。……………女装とか化粧めんどくさい時あるし。

とまあ、ありふれた稀有な悩みを大暴露した所で、共演者セラフィーナ・カンタレッラは来た。

その格好を言い表すのであれば妖艶な鋼鉄処女、美しすぎる毒バラと言ったところか、ワンピースとか色々組み合わせてそのような感じになっている。

 

俺としては服装なんぞどうでもいいからな、とりあえず仕事を進めよう。

 

「なにか、感想は?」

 

とソファーに座りながら聞いてきた。その質問に俺は背もたれに腰掛けながら手袋をつけて言った。

 

「貴方ならジャージで来てもおかしくは無かったので安心しました。」

 

「…………そんなことは無いわよ?」

 

図星かよ。俺は手袋をつけ終わった。不意にフラッシュが焚かれる。

 

「あ、ごめんなさいあまりにもいい構図だったから…………。」

 

「いえ、それより目とか瞑ってないですよね?」

 

「ええ、しっかり撮れているわ。」

 

よし、危なかった。次は…………。

 

「それじゃ、康一君。セラフィーナさんの隣に立ってもらえる?」

 

「はい。」

 

「…………。」

 

フラッシュが俺の顔を照らす。撮っているほうも少しエンジンが温まってきたようだ。

 

「もう少し笑顔になれる?」

 

「こうですか?」

 

爽やかな笑みを浮かべておいた。

 

「いいわよ。それじゃ、隣の空いている所に座ってもらえるかしら?」

 

「分かりました。」

 

すこしネクタイを緩めて第一ボタンを開ける。柄が悪くたっていいだろう。きっと後で編集するわ。何度目かのフラッシュが目を焼く。

 

「腰に手を回して。」

 

「なるほど、あざといですね。」

 

「いきなり引き寄せるのはちょっと…………。」

 

いまって、かなりエロくても婉曲に表現したら結構素通りされることがあるし、そこまで考慮することはない。というかちょっと顔が赤くなってる?処女ビッツの典型的だな。

 

「・・・萌え。」

 

「へ?今なんて?」

 

「撮影に集中しましょう。」

 

いつの間にか指示で俺が押し倒しているような格好でそう言っていた。しかし暇だなぁ。

 

「撮影は終了よ、お疲れ様でした。」

 

このときを待っていた!。

 

「すみません、ちょっと待ってください。」

 

「え?なに?」

 

振り向くと同時にダッシュ!そして、視界外に出て俺のカメラを回収し直ちにシャッターを切る!。パシャとかいった効果音が流れそうな聞き飽きた音が流れる。

 

「……………いつの間に移動したの?」

 

そんな事に耳を傾けている場合ではござらん!

 

「……………凄い楽しそうな笑顔ね。」

 

「撮影、彼に任せたほうがいい写真取れそうな気がしたのは気のせいかしら?」

 

 

 

こうして、俺の写真撮影は終わった。これで…………俺の財布が潤う。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

すべてはこのためにかけていた、のはここで言うことの程でもない。

俺は終了した仕事の報酬、つまりは一夏にも渡されていたレストランの無料チケットを受け取りその場所を出た。よし、売ろう。だってああいうとこと行っても堅苦しくてダメだ。

 

「二人で行かない?」

 

「行かね、そこらへんの男にでも誘ってくれば?。」

 

「口調がこれでもかというぐらいに砕けたわね・・・。」

 

それが俺クオリティ。はぁ…………いや、前にも行ったけど鈴也さんの所なんだ、だから行きたくないし、それにまだ凰の写真が溜まってないし。

 

「それは置いといて行きたくないんだよ。」

 

「どうして?」

 

「…………知り合いが働いている。」

 

「…………それじゃ、私と食事に行ってくれたら何でも言うことを聞くわ。」

 

『ピピッ。録音しました。』

 

「あれぇ!?なんで!?…………おかしいな、私はただこの子ともう一度戦いたかっただけなのに・・・。」

 

「分かった行こう、約束をフイにするのは無しにしてくれよ。」

 

まあ、これは行幸か約束というものを取り付けた訳だし。それにしても、その願いをかなえて欲しくば「私を倒してから行くんだな!!」みたいなフラグが立っているような気がする。

 

「まあ、いっか。」

 

「それではレッツゴ-!」

 

こうして、俺は食事に行った。…………正直ホームグラウンドみたいなものだからなぁ。

 

 

「ウィーッス、鈴也さんですか?」

 

『はい、鈴也でーす。お、どうしたの?康一君こんな時間に電話かけてきて。』

 

「いや実は、今から最上階のレストランで女性と食事する事になってですね。」

 

『ヒョー!まz、ホント?え?相手はあの簪さん?』

 

「違います。まあ、同じく堅気の人間ではないことは確かですが。」

 

『そうなの?二股はイケナイゾォ、背中から刺されることもあるし。』

 

「それは鈴也さんの事後処理の問題でしょ。それでものは相談なんですけど、最高VIP席に移動させてもらえます?そっちの方は年がら年中空いているでしょ?」

 

『いや、今日に限って一人いるんだよねぇ。』

 

「え?それは…………うん、そうですか。」

 

『あ、でも今はワンランク下の部屋に一夏君しか入れてないけど?』

 

「何やってんすか!?」

本当に何やっているのだろうか?俺たちが今から行くレストランは、普通席、VIP席、最高VIP席とランク付けされている。

まあ、そのシステムはあまり鈴也さん自身は好んでいないようだ。

 

『いやいや?未来の義父の顔を覚えてもらわなきゃ困るしね。整形もしたから気が付かなくてもおかしくは無いけど』

 

ここまで職権を乱用しているのは珍しいか…………これを掘り返すとやぶへびなんだよな。

 

『で?それは置いといて、どうする?一夏君と一緒に食べる?』

 

「いや、そこを離れたらこっちに連絡してくれすれ違うようにしてそっちに行く。元々、時間差があったしすれ違えるだろう。」

 

『うん、分かった首を長くして待ってるよ。』

 

「それはどうも。」

 

 

 

 

よし、約束も取り付けられたし、大丈夫なはずだ。…………最近、どんどんと約束や契約という貯金を浪費しているように感じるが、けどそれも俺の我侭だ。

 

「じゃ、行きましょうか」

 

「ええ。」

 

俺の目の前の道はもう真っ暗だった。

 

 

 

 ◆ ◆ ◆

 

「ねえ?ここって…………。」

 

高級料理店です、はい。前にも簪と行こうとして最終的にファミレスに行ったビルの最上階にある高級料理店だ。そこについている。もうすでに鈴也さんが見張っているような気もしないでもないが、それはここの料理の味には関係がない、結構どころかかなり上手かったし。どのくらい上手いかというと海原○山が「この○○を作ったのは誰だー!!」といわないレベルで考えてもらえれば幸いだろう。

 

「ええ、そうじゃないですか?確かに報酬としては良い物ですね、俺は知り合いがいるのでまかない食べ放題ですが。」

 

「高級料理店のまかないって…………大丈夫なの?」

 

「まかないじゃないくても、ゴミ箱漁るとあら不思議。」

 

「それまかないじゃないわよ?」

 

そのツッコミを黙殺しながら俺たちは店内に入った。店内には初老の男性が出迎えてくれた、執事ですといってもおかしくないようなゆったりとした物腰、風貌で口にひげを蓄えている。

 

「いらっしゃいませ」

 

「VIP、名刺で。」

 

「……………畏まりました。」

 

渡したのは鈴也さんの名刺だ、ここでの鈴也さんは途轍もない影響力を持っているから…………と言うよりここの人間は全て鈴也さん自身がスカウトしてきた人なんだけど。カリスマ性は十二分にある。

 

「それではご案内させていただきます。」

 

 

 

「本当に貴方何者なの?」

 

「別に?ちょっと顔が広いだけのガキですよ」

 

飯うめえ。なんつうかここじゃないと人様に迷惑かけるからな…………一般人に気分を害するのは俺の趣味じゃない。

 

「おいしいわね。」

 

「ええ、そうですね」

 

それより、俺はこっちの方が気になる。

 

「しかし、よくもまあ。そこまで戦おうと出来ますね。俺なら疲れていますよ?」

 

「うん…………なんというかISに乗ると高揚するのよね。昂ぶっちゃってもう仕方ないわ。」

 

確かに、全能感すら感じられる…………というか実際に全能なのだ、俺の腕を直せるくらいには。それに気が付かない頭の固い人間どもが兵器として扱っているだけで、多種多様に使いようがある。

 

「確かに否定はしません。」

 

「そういえば、どうしたのその敬語キャラ?」

 

「これですか?ま、利益を上げれるのであれば尊敬はしますよ。」

 

と俺はカメラを見せた。ここには大量の写真が入っている。売れば一ヶ月は暮らせるレベルの。

 

「…………キャラは統一するか、だんだん変化させていった方がいいわよ?」

 

「分かってますし、それなりに本性は見せましたよ?」

 

むしろ本性というのが分からん。ただ、その人を見ていなかっただけだろう、けど本性というものをそこまで理解し観察しているような奴がいたらそれはストーカーだし。俺はパパラッチだ。

 

「それはあの言葉遣いの事かしら?」

 

「まだ俺には本性とか分かりませんよ。まだ探している最中です。まだ十五歳ですし」

 

こういっておけばいいだろう。というより話を逸らそう

 

「俺は……………。」

 

 

 

 

接待としては大成功だっただろう、それなりに満足して帰ってもらったらしい。

 

「いや~疲れましたよ鈴也さん。」

 

「一夏君も鈍感だったけど君も大概だねぇ。」

 

「アレは恋愛感情じゃないでしょ?負けたから悔しくて追いかけてくるみたいな感じで、実際にはバーサク野郎ですよ。女ですが。それとは関係無しにフラグはぶち折るものと考えていますし一ヶ月単位でかけたフラグぐらいしか俺には引っかかりません。」

 

「……………はぁ、強情というかなんと言うか。」

 

「生き方は変えられませんよ。」

 

 

生き方……………ねえ、目下の悩み事だな。


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