IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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真の心と捻くれものは似合わない。

「…………。」

「…………。」

 

その空間は、無言に包まれている。その原因は十中八九、俺こと相澤康一なのだ、この部屋に居るもう一人、担任殿こと織斑千冬のせいではない。さて、とりあえず、この凝り固まった空気をどうにかする為に、事務連絡でもしようか。

 

「担任殿。いつ帰国するんだ?」

 

「明日の正午だ。」

 

了解とだけ伝えた。担任殿は何も言わずベットに腰掛けた。とりあえず、このまま放置だな。相手側から何か動きがあったところで対処と言う形を取ろう。…………はぁ、流石に驚いた。俺は小細工弄してやっと勝てるってレベルの人間だからなぁ

さて、スーツに着替えて治療したりしたから色々と散らかしちまったし片付けるか。

 

「…………。」

「…………。」

 

そう、アレだよね、気まずくなった時って用事を作りだす天才になっていると思うんだよ、そしていつもはやらない仕事すらやるあの原理。どうしてだろうか?

俺が片付けていると担任殿が立ち上がった。…………あ。

 

不味い。俺の爪が甘かった、炭化してはがれた欠片が床に落ちてやがった。ええ?あれだ、カンガルーのBBQしていたって言えば・・・無理ですな。え?どうする?何も見ていない俺は何も見ていない。まじまじとその炭化したナニカを見ている

 

「相澤ちょっとこっちへ来い。」

 

再びベットに腰掛け足を組んだ、担任殿。正直俺には貴女が教師ではなく女王を生業にしているとしか思えません・・・。

だがそんなことは口が裂けても言えはしない。金で目をふさがれたら恐怖のあまり喋ってしまうかもしれないがな。黙って近づいておこう。

 

「なんでsムグッ!?」

 

…………え?なにこれ?いやいやいやいやいやッ!!?何でこうなっているんですかねぇ!?おい!そこ代われ!いいなぁ、俺もお姉さんの胸に飛び込んでみたい、現在進行形でやっているじゃん!?あれ?何で?あ、俺ニンジャだった?アイエェェェェェッ!?ニンジャ?ニンジャナンデ!?無理ですよね!

 

「何やってるんだお前は…………。」

 

「それはこっちのセリフだ。やわらかくて気持ちいいけどどどどどどどどどどどどッ!?ギブ!ギブだって!。」

 

死ぬ、このままでは死ぬ。真面目に死ぬ。

 

「心配を掛けさせるな。」

 

「なに?一夏のオッパイでも恋しくなったんでちゅかね?」

 

ヘッドロックゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥゥッ!?いてえ!あの孫悟空の頭に付けられているあの輪っこレベルに痛い、のたうちまわりたい!!つかさっきからギブアップの意をタップして伝えているんだけど、早くどかしてくれませんかね?

 

「…………なんで、そこまで自分を蔑ろにするんだ。」

 

蔑ろにしてないよ?だからこうして脱出を図ろうとしているのですよ気が付いてぇ!!

なんか本当に○ッパイやら、痛いやら、苦しいやら、なんかちょっといい匂いするやらで、俺の心中は地獄絵図ですよ?ええい!まままままよ!違った!ままよ!人間は同情という性質がある、そこを突く!

 

「蔑ろにしていい人間だからですよ。」

 

ヤッベェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェェッ!?さらに締め付けられてきた、三蔵さん呪文みたいなの止めてぇ!耐えろ、耐えるんだ俺!

 

「そんな訳ないだろう。」

 

「俺言いましたよね?いじめられたあの屈辱をうんたらかんたらと。それ、本当ですよ?」

 

よし、まずは強引に話をすべり込ますことに成功した!少し担任殿の中の三蔵さんも呪文を唱えなくなったぜ!

 

「とりあえず、こんなことしないで腹を割って話そう。」

 

その言葉に三蔵さんも了承したのか、俺を拘束する手を緩めた。あぶねえ。

 

「ああ、洗いざらい吐いてもらうぞ。」

 

さて、ここからはただの事実。まあ、あの時はそれなりに幸せだし。

 

「俺は、生まれた時に親と会ってないんですよ。」

「後から聞いた話なんですけど、父はよく分かりませんが、母は研究者でまあ家庭より研究みたいな所があって…………確か中三の夏あたりまで両親に会ったことがないんです。」

「親が居て、子は育ちます。それから離れた俺は小学校に入った時ずれていたんですよ。そんな中に群れをほうりこんでみてください。いじめの勃発です。」

「前に担任殿が、俺はトラウマ持ちだとか言ってましたけど。それはその名残です。」

「以上。これが俺に起こったことの全てです……………。」

 

 

「って言えりゃよかったんだけどなぁ。」

 

 

「いやぁさ、その時にはいじめの証拠を全部残してクラスの奴全員と担任、学校にも訴訟起こして、全部勝っちゃったんだよ。賠償金とかもう資産レベルの奴。トラウマ以外にも金玉なくなったりしているから。たしか何千万は余裕で行っているぜ?多数にやったから余計に、しかも結構金持ちの人間の息子や医者の息子とかも居たからがっぽがっぽよ。

あの時は稼がせてもらったぜ?しかもPTSDは俺の演技で付加価値だ。七三分けの弁護士もウハウハだったな、隣の女の人に

「君もこの少年のように一度袋叩きの目にあってくるといい悪い脳内細胞がつぶれて少しはマシになるだろう」とか嬉々としていっていたくらいだし。」

 

「ああ、そう俺の掌さ。…………な?蔑ろにしてもいい人間って意味はこういうことさ。」

「今じゃ性欲もないし、中性的な顔になっているし、莫大過ぎる富にも恵まれた。唯一つ人を嵌めたことだけで。」

 

ああ、長々と喋っていたなここらで一回終わりにして。

 

「まあ、こんなもんですわ酷いことはしてきましたし、それをされる覚悟もある。どうする?憂さ晴らしに一発。」

 

頬に指を刺す。むかつくな、これ。

 

「…………気分が悪い。少し部屋を出る。」

 

俺は扉を閉めた。

 

 

 

ウォォォォォォォォォォォォォっよかった、誤魔化しきれたわ!よっし、そして今度はこの気まずい空気に耐えるだけだ、その位ならちょちょいのちょいだ。あの三蔵さんから逃げる程度のことは耐えれる!

 

『お前、人の気持ちを素直に受け取れない奴は何時か後悔するぞ?』

 

「もう、しているし。変えられない。俺は不器用なんだよ、勘弁してくれ。」

 

人は変わらない。三つ子の魂百までなどのことわざの通り、人は思ったより変わらない。ただ、磨耗しているのだ、他人に叩かれ嬲られ、社会に適合するように。

だって、俺の時もそうだ。小学生の中の悪はただの異端なんだよ、それを大衆という正義が裁きと言う名の刑を執行する。そしてジャン○システム的に仲間(奴隷)を増やしていく。

 

だからなんだと言うのだ。それがどうしたと言うのだ。俺は騙す正義も悪も、自分自身もどうだっていい俺が、俺が大切なものを守るのに必要だからな。

 

といって俺は誤魔化した。…………何気に一番疲れた気がする。


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