IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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この話の主人公、相澤康一は、なぜか美人な先生と一つ屋根の下、一日を共にしていますが。
実は、筆者は先生と一日だけ一つ屋根の下に居たことがあります。

…………おっさん、だったよ。


White sport

イン ザ ホテル!!

 

「…………ですね。」

 

ああ、今俺はオーストラリアのお偉いさんに会ってきて、面談が終了し。そのお偉いさんが用意したであろうホテルに到着したところだ。

 

「なんだ?言いたいことがあるのか?」

 

と、俺の旅(強制)の同行人担任殿こと織斑千冬が俺の独り言に対してそう聞いてきた。

いや、この旅の始めから最後まで言いたいことは尽きないでしょうが、その度に文句を言い巻くって居たら口周りの筋肉が崩壊するので自粛させていただくが、これだけは言いたい。

 

「ホテル高級すぎて蕁麻疹出そう…………。」

 

俺はこのホテル内の何かに触った途端蕁麻疹が出るんだ。俺はこのホテル内の何かに触った途端蕁麻疹が出るんだ。とりあえず、二回ほど暗示をかけておこう。

 

「…………はぁ。先が思いやられる。」

 

溜息を付きながらそう言った。それはこっちのセリフです、拉致、詐欺、借金の三重苦なので。俺はその言葉を黙殺して、担任殿の背中に付いて行く。チェックインの処理を受ける筈だが、それを素通りして、カードキーを貰っていきついでにと、手を変な機械にかざした。

 

「なんですか?それ?」

 

「指紋アンド静脈センサだ。…………これなら指を切り落とされない限り入れないだろう?」

 

「わぁお、厳重ね。俺が殺された時は気をつけてくださいね。」

 

「フン、私が居る限りそんなことさせるか。」

 

おふッ。あらまぁ。俺は織斑千冬に続いて、機械に手をかざしカルガモの如く後ろを付いて行く。ロビー、エレベーター、廊下を経由して、一つのドアの前に立つ。

ポケットから取り出した、カードキーと指を照合させて開き中に入る。

 

「お邪魔します。あー疲れた。」

 

俺は高級そうなベット(目に付くもの全てが高そう)にダイブするように倒れこんだ。

 

「蕁麻疹は!?」

 

「…………忘れてた。まあ、良いや。」

 

そのベットは高級そうと形容するだけあって、物凄くふかふかだ。ああ、ふかふかだ。今すぐにでも眠れそうだ。だが、俺の本来の目的は…………日本政府の思惑に便乗して、遊ぶことだ。

 

「それじゃ、冬のスポーツでも楽しみますかね?」

 

「…………確か、このホテルの裏手にスキー場があったはずだ。」

 

それなりに、というか、かなりのめんどくさがりの俺だがこと、遊ぶと言うことにおいては手を抜かないようにしている。そうしないと、動く時になかなか動けなくなってしまう。

 

「フロントでスキー道具一式貸し出しているらしい、ま、気をつけろよ。」

 

「了解です。」

 

俺は、今から白銀の世界に飛び込んでいく。

 

 ◆ ◆ ◆

 

日本語が通じてよかった………。俺は英語が出来ない。からな。

言語の問題を、相手側のスキルで埋めてくれた事に感謝しながら、貸し出してくれたスキーウェアに身を包む。結構この吹雪の中でも暖かい。さて、昨今はスノーボードが主流なのだろうが、俺はスキー板を借りた。理由は何で人間は自然体では前しか見えないようになっているのに、真横に滑る板を履かなければいけない?と言う理由だ。後ろとか見えないじゃん。

 

「さて、行くか。」

 

俺はスキー板を履き一歩を踏み出し

 

「アベッ!?」

 

こけた。…………まあ、しょうがない。めげずにもう一回。七転八倒とも言うし。ってかそこのお姉さん?笑わないでもらえます?逆の立場だったら俺も笑うけどさ。

 

「フベッ!?」

 

「ウゴッ!?」

 

「ヒデブッ!?」

 

「タワラバッ!?」

 

「アベシッ!?」

 

「チバ~!?」

 

…………ここで拗ねたら面白そうだなぁ。と、俺は灰色の空と少し、スキーウェアの熱で溶けた雪の水が染みてきた服の冷たさの中で。そう思った。さて、雪まみれの体を再度起こし考える。

 

ここで帰っても良いが、それだけではただ雪と戯れてきましたで終わりだ。そして俺の心象的に、スキー場に来たからには滑るようにしたい。のだが、これと言った方法が無い。教えてもらうにも金が必要だ、そこまで甘えられないし甘える必要もない。

 

「どうするかな?」

 

いや、この状況では一つしか無い訳だが。ふと、

 

――――あのお姉さん、結構上手かったな、さっきっから何度も見ているし――――

 

 

反芻 彼情報スキー板装着状態 彼我との比は1:1.7ほどの体長、体格差 誤差の範囲と判定 足幅 肩幅水準 スケートのように滑っている…………。

 

「おお、行けた。」

 

とりあえず、まねしておこうと言う訳だ。専売特許・・・というわけじゃないが、それなりにさっきの転びまくりのオンパレードよりかはマシになっただけだ。問題は、あのお姉さんについていかなければならないと言うことだ。正直、ここで回数を少なくして完璧にトレースしないと、この女尊男卑の時代である限り悲惨な事になる。それは…………。

 

『この人ストーカーです!!』

 

ってなる。

 

まあ、暗めのゴーグル、ぶかぶかのウェア、吹雪いているからつけたネックウォーマー、目深な帽子。これだけの要因で俺を男と判定するはずが無い。し、そこまで怪しい人間に深入りすることはないだろう。

 

「よし!行くか!」

 

尾行は間を開けて回りに適合するように移動する、そこで絶対に自らの存在を認識させてはならないし、させてしまったのならば、服装、もっと言えば人を変えるのが一番だろう。だが、防寒対策をしていると、脱ぎづらいしめんどくさい。ここは絶対に気取らせないように移動するのが一番だ。

 

っと、そんなことを考えていたらリフトの降り場に着いた。さて、ストックとスキー板の先を上げて…………よいっと。初めてやったけどこれ怖い。

一応、スキーは…………先にも言ったとおりスノーボードが主流である今では凄い場違いだが、先にも言った通りの理由に準じてスキー板を履いている。スキーはリフトと呼ばれる山を登るかごのようなものに乗り、山肌から滑るオリンピックの種目となっているウィンタースポーツの代表格だ。

俺的には雪合戦が好きだが、相手が居ないので一人でやる事になるが、滑稽なダンスを踊っているようにしか見えないので却下しよう。

 

やり方は簡単ただ、良く滑る板を履きそれを斜面で滑る。一見簡単そうに見えるが、言うは易く行うは難しと言う格言があるとおり、難しいのがある。すべるのは簡単、ただ、オリンピックでやっているようなターンをするのが初心者にはハードゲームというだけだ。…………あのお姉さんを見て思った。

 

ただ、滑るだけだったら何も難しい事はない。難しいのは曲げる…………ターンするのが難しい。右に行きたかったら、右に体重を移動するだけでいいが、その時に自分のバランスも崩れてはならない。相反する行動を一緒にこなさなければならない。

ターンしなければいいじゃんと言う話だが、ターンしながらやらないとスピードがとんでもない事になる。しかも、ターンはスキーのエッジに上手くやれば減速させずに移動する事だって可能だ。

 

「…………ってこれ、何時もやっていることと同じじゃないか。」

 

まあ、仕方ない。けど一人で黙々とやっているのも楽しいし、こんな速度人間の体じゃ味わえない。

 

「ISで結構速度出しているけど、これはこれで趣があるな。」

 

とまあ、よく真似できていたなと感じながら。お姉さんに付いて行く。

 

 

 

 

 

 

 

 

さて、ここで一つ思い出して貰いたい。

俺が、一回だけこの手法を取った時(楯刃の足音1)のことを。

 

『そう、俺がやっているのはただの模倣』

 

『オルコット嬢と自分の姿を重ね、吸収し昇華させる』

 

『実はこれ、体に負担が掛かる。』

 

 

うん…………三回滑っただけで物凄い辛い。つらい、がちゅらいになるぐらいに辛い。もう、体の節々が痛い、けど面白いから止められない、止まらない。さっきのお姉さんも抜かしそうになったし。つか、どこ行ったっけ?まあいいや、とりあえず心の中で礼でもしとこか。

 

「めっちゃ、楽しいじゃん。」

 

俺は、結構に純粋に楽しんでいた。

っと、そろそろ、リフトの降り場が見えてきた。そのリフトは二人乗りで上まで行くと最上級コースに一直線の道だ、それだけは、やって3時間ほど(内1時間は転んでいた)の人間にはハードルが高過ぎる。だが、その人が初心者だった場合に途中で下りる救済措置がある。

 

「それじゃそろそろ…………。」

 

と、降りようとした所。

 

ガキッ!!

 

ん?

 

違和感、動かない体。いや、それほどの事でもない、ちゃんと手は動くし、捩ればなんてことはないが。ふと、おなかの方に目をやる。すると手すりにストックが挟まっている。そのストックの主を見ると…………。

 

 

 

あ、お姉さん……………奇遇じゃないですか?こんな所で出会うなんて。それはそうとそのストックを外していただきたいのですが。あっダメですか。そうですよね~脳内で話しかれるわけ無いですよね~はい、存じておりますぅ~。

 

 

すると、ここ(オーストラリア)の公用語ではない言葉が聞こえてきた。

 

「そろそろ、坊や。イっちゃってみない?」

 

「お断りしたいんですがねぇ」

 

イタリア語(・・・・・)は嗜み程度に覚えている。もしかしてこれって…………。

 

「もしかして、始めましてですか?イタリアの国家代表さんとやらとは?」

 

「!…………私はセラフィーナ・カンタレッラよ。」

 

「イタリアの国家代表にして、今現在進行形で俺の命を脅かそうとしている人ですよね?」

 

うん、リフト降り場過ぎた。はぁどうしようかなぁ。

 

「そうだね。ま、ここで自動小銃を持ち出さない優しさは評価してもいいと思うけど?」

 

それは、断じて優しさじゃねえ。喉元まででかかった言葉を押し殺して、その言葉を返した。

 

「そんなもので殺せはしませんよ。」

 

俺はネックウォーマーを上にずらして、俺の足首につけていたものを見せる。伸縮自在とは知らなかったぞ……………つまり、俺の首にペットのようなものではない、罪人につけるような無骨な首輪が掛かっていた。もう一つ自分に付いていた輪はスキーウェアの中を通って右手首についている。

 

「…………珍しい待機状態ね。」

 

「これぐらい普通ですよ、男性なんですから。一人目(・・・)は手甲、ガントレットでしたし。」

 

「そう。」

 

興味が無いように、視線を俺から外してそう言った。何か引っかかるな…………少し探りを入れてみるか。

 

「おや?あなたは一人目と戦いたいといってましたよね?」

 

「違う。男性と戦いたいの。」

 

そうか、何かに似ていると思ったら。箒さんと凰に似ているんだ。男勝りで強い。だけど、女だからと。

 

「まあ、ありふれた話よ。生まれてから男勝りでね、それでどんどんと絡んで行ったらいつの日か、女というだけで跳ね除けられるようになった。その復讐みたいなものさ。」

 

こうなる訳だ。面白いね。

 

「そうですか。」

 

「そうなのよ、それより坊や。貴方チフユ・オリムラの弟のことを一人目と言ったわよね?それ、どういう意味?」

 

「なにが目的です?」

 

「いやいや、大して深い意味を持っているわけじゃないの。」

 

「保身の為です。そういうようにと指示されましたので。」

 

「ふうん?坊やは素直に人の話を受け取るのは苦手な手合いだと思うけど?」

 

否定はしない。がそこまででもないような・・・違いますよね?。

 

「そう見えますか?ならそれは大きな間違いです。大抵の日本人は、大きな権力には上手く取り合ってきたんですので。長いものには巻かれろと言いますし。」

 

とりあえず、それっぽいことで誤魔化しておいた。しかし担任殿の知り合いというだけであって、オルコット嬢や代表候補生相手よりは組しにくいな。

 

「ふう、貴方。何歳?…………うちの、狸ジジイどもと同じ匂いがする。」

 

「期間限定の15歳ですよ。っとなんかこれ使うの久しぶりな気がする。」

 

「フフフッ。何時も言われていたのね。」

 

「ええ実は。加齢臭でも出ているのですかね?」

 

「15歳でも出る物なのかしらね?」

 

なぜだか、凄い自然な会話。それで居て、俺は警戒せざるを得ない。危険なにおいがする、落ち着いた物腰、口調。それは、荒ぶる大海のような荒々しを芯にしている不安定なものだ。担任殿に狂戦士とまで形容させた人間だ、警戒しても仕切れないレベルにあることは間違い無いのだろう。そう、俺を油断していたとは言え出し抜いていたのだ。この山の頂上にまで来てな。

 

 

 

 

 

「あの…………お姉さん。」

 

「なに?坊や?」

 

「めっちゃ坂が急なんですが?」

 

むしろ崖だ。

 

「そりゃ、元々パラグライダーのテイクオフとかに使うところだし?」

 

「…………疑問文で言わんと居てくださいよ。迂回コースは?」

 

「ない!」

 

ああ、そんなにキラキラした目で見てるんじゃないよ……………。

 

「サアァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァァッ!イッっちまおうぜェ!!」

 

ああ、バーサーカーだな。

 

「イヤッホォォォォォォォォォォォォォォ!!!」

 

「ギャァァァァァァァァァァァァァァァァ!!!」

 

自動演算 反芻 体重移動のトレース開始 

 

脳が焼き切れるんじゃないかと思うぐらいにやって来た、そう俺は。

 

 

 

 

生きている。

 

 

 

 

 

 




この話を書いているうちに前書きのことを思い出してキーボードクラッ○ャーになりそうになりました。

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