さぁて、今度は手ごわいぞ…………。ちょっと気合を入れなおすか。
パァン!パァン!
よし!行くか!。
◆ ◆ ◆
セシリアがその扉の前に居た作戦会議室内では、重苦しい空気が流れていた。
発生源は織斑千冬。それも当然、たった一人の肉親を傷つけられたのだ、冷静で居られる方がおかしい。だが、織斑千冬は情にほだされながらもIS学園教師として、最適解な命令を繰り出していく。
海上のISは突然動きを止めた、暴走状態から正常なそれへと変わったのか。それとも、他の原因か、いまここに居る誰もが
「…………………。」
織斑千冬は、ディスプレイに写った銀の福音を睨み、その場に立っているだけだった。そのとき
襖が思いっきり開けられた音がした。その音に部屋の中に居る全員が注視する。
「よお。」
襖を開け放った
だが違う男は生徒だ。相手の教師と言う立場から見て脅威にはならないし仮にこの状態で暴れても、IS学園教師全員の前には一人を片膝すらつかせることは出来ない。
(なのに、なんだ?この異常なまでの自然体は?)
人間は大体、自身より大きい権力や直接的な力を持った人間には腰が引けたり、どこか挙動不審になる場合があるが、眼前の男は全くと言って良いほどの自然体だった。あまつさえ、どこかから座椅子さえ取り出しお茶を入れる始末だ。それを見かねた千冬は、男をこの部屋からつまみ出すことを考えていた。
「入るな、すぐさま出ろ。」
「勝手に出てっちゃうけどいいのかい?」
少し、的外れな回答が帰ってきたがとりあえず、織斑千冬はこの無礼な者を排斥する以外のことは頭になかった。
「勝手に入ってきて何を言っている?さっさと出ろ。」
「うぃっす。」
男は右腕だけにISを纏い、リーチの違うそれを杖のようにして使って立ち上がった。
「うおい!?」
「え?」
織斑千冬は男の肩を掴んで行動を止めた。当の本人はきょとんとした不思議そうな顔をしている。
「だって、
「知るかそんなもの!」
と、言いながら制服の襟を掴んで投げた。投げて気が緩んだのか、そのまま立ち上がろうとするが投げた手を掴まれ膝を付かされた。体を起き上がらせながら、口を耳の横まで持ってきて、荒く囁いた。
「お友達がやったと思って日和ってるんじゃねえよ。」
「!?」
思考の内を見透かされた。織斑千冬は、ISが暴走、第四世代ISの肉親への譲渡、そして進路からこの旅館の近くに行き着くと言うことから、そこまでISを操作し、尚且つタイミングが良過ぎることから、この件の首謀者は篠ノ之束と思っていたのだが。
違うと言うのだ。
「よっこらしょ」
男は年齢に合わない声を出しながら、織斑千冬の手に縋って立ち上がった。男の呼吸が不自然な物となっている、恐らく突発性のショックによる過呼吸だろうがあまりに必死そうなので指摘できないで居た。しかし、織斑千冬はそれすらも演技と思っている。真相は定かではない。
「いやぁ、ちょっとビックリした。」
「……………。」
織斑千冬は笑いながらそう言っている男を睨み付けながら、無い頭を絞り考えを纏めて行く。それを男はニコニコとしながら、見つめている。
「…………。お前が出ることで私達にメリットはあるのか?」
その質問は、周囲の人間を驚かせるには十分だ。質問は、相手と対等な関係の時に起こりうることだ、つまり織斑千冬は目の前の人間を対等だと認識したのだ。
その質問に男は、あごに手をやりながらこう答えた。
「いや。俺の目的は状況の停滞を打破するってだけだから、出撃するのはただの一つの方法論でしかない。
むしろ俺のISとIS技術だと邪魔にしかならないだろうし…………布陣や専用機の用法だけで勝てるとの見込みがあれば、指揮権やその他もろもろを任せて、アイディアのみを渡すと言うことも出来ます。
つまり、俺から言えるのはただ一つ。人を動かしても問題はないし…………逆に早めに人を動かさないと面倒くさい事になる。」
「…………理由、裏づけ込みで聞かせろ、早急にな。」
この時点で、男の勝利は確定した。
「理由は襲撃ISの中に入っているプログラムにVTシステムの亜種…………いや進化版のようなものがあると確認されました。」
音には出ない
「裏づけとしては、VTシステム特有の強引な機体の再構成の確認が挙げられます。確認できるところは全体的な黒色の分布です、まあ、機体のスペックデータにだけ目を向けていたら分からないことでした。」
「この進化版VTシステムの特徴として従来のVTシステムの行動強制に加え、強力なフラグメントマップの改変までさせる事により、根本からヴァルキリーになることが可能なことです。」
「つまり、これは搭乗者がポンコツであればヴァルキリーの付いて来れず体が壊れますし、そもそも精神の崩壊すらありえます。これは。世界研究者クラブとして情報です信頼性は高いかと。」
「…………これで搭乗者が死んだら某A国は誰に責任を求めますかね?これは俺の勝手な想像ですからあしからず。これで俺からの発言は終わりです」
「…………。」
そして、最後の一押し。
男は肩に手を置いて、織斑千冬にだけ聞こえる微妙な音量で囁いた。
「篠ノ之束が、なぜ貴方に関るものを先に潰しておかないのでしょうか?つまり、
それを、聞いた時…………織斑千冬は、考えるそぶりを見せた。そして、何かの算段を立てたのか
「お前は、今使用できる全専用機でどう対処する?」
「ハハッ、なんと言うか実に試そうとしているようで癪だな」
男のその一言で顔を歪ませる。その通りだったからだ。
「俺ならまず、編成は1,2,2で分けて、箒に、凰とオルコット、ラウラとデュノアの編成です。箒さんを当て馬にして、時間を稼ぎます。凰とオルコットは遊撃に周り、ラウラとデュノアはここの小島に待機させます。」
「次に、作戦ですがタゲ取りとして、ラウラには後方支援パッケージを付けさせ、近づいてきた所をデュノアが対処、そして、ワイヤーブレードで捕縛、一番面倒な兵装を叩き折りAICで固定化。後に総攻撃です。」
「…………及第点だな。全専用機持ちを召集!」
「「「「「はい!!」」」」」
ふすまを開け放って、一夏以外の全専用機持ちが揃っていた。
「どっから来たんだ・・・。」
「俺が呼んで置きました。それではノシ」
◆ ◆ ◆
とりあえず、俺はあそこから二度目の退席をした。それについて担任殿は何にも言わなかったのは、本当に俺の専用機の特性からして対個だとあまり意味がない。どちらかと言えばオルコット嬢よりな機体だし。
「あー、つかれた」
俺は、とりあえず羽を伸ばそうと自室に戻る事にした。
ふと、視界の端に女性が見えた。その女性は。
「コングラチュレーション!。」
いきなりそう言い出した。俺は非常に冷静にそう非常に冷静に冷めた目でその人を見ていった。
「お疲れ。つーか
「まあまあ、それよりちょっとおしゃべりしようよ。」
どうやら、俺の戦いはひとまずは終幕になったようなのだが…………非常にめんどくさい案件が目の前に転がっていた。。