んじゃ、次はどこに行くかな…………。
『前回までのあらすじ。口八丁手八丁で、専用機持ちを戦いに向かわせる事となった相澤康一は次なる人物へと向かっていくのであった。って、あぶねッ!?うっかりVTシステム暴走させちゃう所だったよ…………。』
そうだな、凰とデュノアの娘っこ辺りは何も言わずに行ってくれそうだ。そうすると後やらなきゃいけないのは。
◆ ◆ ◆
少なからず、織斑一夏と言う人物の影響は大きいようで。金髪縦ロールの少女が作戦会議室のような所の入り口の前で、何かに押しつぶされそうな表情をしながら命令を待っていた。
いつもの高圧的な態度とは裏腹に、その横顔はただの可憐な少女だった。あれ?一度もそんな描写してなくない?
「………………誰ッ!?」
いきなり人の気配を感じたかのように、飛び上がるように人の気配を追っていく。するとそこには。
「相澤…………康一。」
「…………どうした?」
因みに、セシリアから見た康一の印象として織斑一夏の腰巾着としか見ていない、それかたまに出てくる変な人だ。
「逃げた癖に。」
ぼそりと、口からその言葉がこぼれた時。少しばかり康一の体が動いたのにはセシリアは気が付かなかった。
「ふうん…………その言葉の意趣返しをする訳じゃないんだがな。」
と、一言前置きしてから咳払いをする。そして、体から発する雰囲気を変えて、剣呑なそれに変質していく。それに気が付いたセシリアは、固唾を飲み込まずには居られなかった。
「今から丁度5年前。イギリスで何があったか知っているか?」
「!!。」
セシリアは思った。彼は同じ目をしている。そう、私のプライドのみをずたずたに破壊した時のあの、憤怒とも悲哀とも取れる蛇が舌なめずりしている時のような目を。
「…………わたくしの前で5年前とは。列車の横転事故のことですわね?」
「ああ、列車事故が起きた。オルコット嬢お前の両親が死んだ…………そうだな?」
セシリアは首肯した。
「
その言葉にセシリアは頭の芯から温かい何かが下っていく様に怒りを覚え、気が付いた瞬間にはすでに康一の頬を打っていた。それに、康一が怒りを覚えるようなことは無くただ淡々と言葉をつむいでいく。
「本当によかった、それを聞いて殴ってこないようだったらどうしようかと…………。本題セシリア・オルコット。お前は大切なものをまた失いたいのか?」
「…………もう、失いたくありませんね。父はともかく。」
セシリアの父と言う単語に少し、康一の顔が変に歪んだ。
「そうか、それなら待っていろ。……………最高の舞台を用意してやる。」
◆ ◆ ◆
ぶっちゃけ、確認のためだけにこんな奔走するのはめんどくさいな……………もしかしたら命令違反でフラーと行っちゃうのを待った方が良い様な気がする俺にとってだが。
ま、それ以上に俺があまり
「割り切ったと思ったんだけど……………ま、頑張るよ。」
俺は脚に付くISを撫でた。
「それじゃ次は……………。箒さんか。」
今度は搦め手らしく。
◆ ◆ ◆
その少女は、想い人…………織斑一夏の穏やかではない理由で、静かな寝息を立て眠って居る横顔を見て、自身の過去を思い出していた。IS、姉が作った世界を揺り動かす物に振りまわされ、親とは勿論一夏との仲を引き裂かれた。一夏との仲を取り持つ物だった剣道、それを憂さ晴らしのための力として使った。
それは、驕りだった。それは、自身の未熟さだった。それは、心の弱さだった。そして…………今度も。
「私は…………。」
ピシャリと部屋のふすまが開く。その行為に驚きはしたものの、それを行った人物を見て酷く納得してしまった。ふすまを開けたのは
そしてこの時、なかなかにどうしてか箒は、無意識のうちに自分が悲劇のヒロインを気取ってしまっていることを今更ながらに勘付いていてしまった。
「…………よお。」
相澤康一の顔は酷く疲弊していた。箒の目からは、頬が痩せこけ、目はぎょろりとしていると幻視するほどには、なぜだかやつれた様に見えた、少し気を取り持つとそれらは一切にその記号は康一から霧散していった。彼はその時間遡行をして朽ちたような空気を纏いながら、一夏を一瞥して視線を箒さんへ戻し口を開いた。
「すまねえが…………席を外しちゃくれないか?」
目は虚ろ、何を考えているのかも分からず…………といっても箒にとっては何時もと同じものだったが、その時は気味の悪さで行動し。
「…………ああ。」
後ろ髪を引かれるような思いで退席した。と言っても…………箒は、離れたくなかった。プライドが許さないのだ、自身が想う人を自分が力に溺れてしまったがために、傷つけてしまったことへの自分の敗北感が、足を自身を締め出した部屋の前で縫い付ける。
どうしていいのか分からない、一夏の隣は私の居場所だったがそれを少し貸している今は、少し混乱気味になっていた。目の前が歪み、頭が締め付けられ、下っ腹が押さえつけられるように痛くなる不快感。
「 だな。」
そんな不快な波に揺られていると。不意に声が聞こえ、なぜだか其方に意識を向けていると頭の痛みが和らいでいくような気がした。
「…………本当に無様だな。」
淡々とした口調で、激しい悪口を言っていた。
「守ろうとして傷つける、守られているのにもかかわらず守ろうとする。鈍感だ、すでに自分が守っているとも知らずに。」
「ま…………こんなこと言ってるが、俺だってわからねえよ。」
「少し、昔話をしようか。」
箒はまるで、本当に相手が起きて話をしているかのように話す少年に薄気味悪さを感じずには居られなかった。が、それに耳を傾けないわけには行かないのだ。
「俺はまともに育てられていない。…………まともな愛情を貰っていなかった、奴らから貰ったものと言えば金ぐらいだろう。」
「それでも、世間体がある、とりあえず死にさせたくは無かったんだろう…………家政婦みたいなのが居た。」
「…………俺以上に、よく分からない人だったよ。」
がらりと声色が変わりまるで、古くなったアルバムを見つけて撫でるような優しい声色だった。
「いや、普通すぎて俺には分からなかった、だな。」
「けど、それなりに楽しかったよ」
「そして、分かっていたけど家政婦…………契約が切れた。」
「いつか来るとは思ってはいたけど。…………小6あたりで別れた。」
「その時、苛立ちを誰にぶつけて行けばいいのか分からなかった。」
「なあ、一夏…………お前は守りたいって言ったな。」
「それなら俺は、何を守ればいい?」
「何を守れるんだ?」
「俺は、お前みたいに強くない…………。」
「どうすりゃいいんだよぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉぉッ…………。」
「いやなんだよ」
「引き止めたいんだよ」
「変わって欲しくない!」
「俺の周りが変化していくのがどうしようもなく嫌なんだよ!」
「それなのに力が無い!」
「知恵も無い!」
「目の前にある闇に踏み出していく勇気だって無い!」
「信念だって、根性だって、何一つ無い!」
少し、変に大人びた少年が、年相応に悩みを叫んで泣いていた。ただ、その
「…………すまねえ、俺が弱いだけだ。俺が幼いだけだ。」
「はぁ、諦めるか逃げるかのツケが回ってきたか。」
「ったくどうしようもねえよ…………なッ!!」
ドスン、と言った音が響く。
「一夏…………俺はやってみるよ。」
少年が立ち上がるような音が聞こえる、それは盗み聞きしていることを思い出させる一つのキーとなった。箒は慌てるが、隠れるやそれに順ずる行動を取るより早く少年がふすまを開けるほうが早かった。
「ッ!?」
泣き腫れた眼をから涙の乾いた涙の後があり、半ば開いたような拳が少し赤くなっている。箒はその姿に言いようもなく、小さく哀れに思えてしまった。すると、少年が箒を見つけたようで、表情が驚き半分、怒り半分ほどで固まっていた。
「聞いたとしたとしたら…………。」
そう言っただけで少年は去ってしまった。
その言葉に完全に怒気が込められていて、一応、剣道全国大会優勝者の肩書きを持っている人間が、物怖じしてしまうほどの物だった。
「…………大いなる力には大いなる責任が付きまとう。そして私は力を得た、ならば。」
いつか見たのであろう名言のようなものを口ずさむ。少女は自身の手を掲げ二つの鈴が付いた赤い紐を見て、拳を作った。
「私は私のためだけにこの力を振ろう、まずは、一夏を守り隣に立つ。」
独善的でもいい、ただ振るう。自分の力を振るう言い訳を、他人に押し付けないように。自分の良心に縛るように。
◆ ◆ ◆
「ふぁ~。疲れたぁ。」
嘘泣きって久々にやったよ。とりあえず、これで行動の固定化は済んだし。行動の矛盾の解消は済んだ。まあ、元々の俺のキャラからして、そこまで問題があるわけじゃないし
「さてと、次の下準備でも行きますか。」
いやこれほんとに夏の戦争だね。