さまざまな思惑が絡んだ彼や彼女達の休日が始まる。そんな話。
簪SIDE
どうも、更識簪です。このたび私の同居人である相澤康一の引っ付き虫でございます。とまあ、冗談なのですが。彼の視点から見たら、用事のついでに相手されるような存在であることはたしかであるのは真実です。因みに私の用事は水着を買いに来ました。
とりあえず、待ち合わせとして駅前のショッピングモールの噴水に立っているんだけど………全然来ない・・・。
「ヘイ、彼女お茶しな~い?」
…………っは!?・・・なんかウィキペ○ィアに出てきそうなステレオタイプのナンパ男数人に話しかけられた。どうしよう・・・。
「ねぇねぇ、君どこから来たの?」
「ゲーセン行こう。」
「オレラトイッショニアソボーヨ。」
・・・最後の人キャラ付けそれとも天然?
「すみません、待ち合わせ相手が居るので。」
「いいじゃん、そんな奴より俺らと遊んだ方が楽しいって。」
あながち間違ってはいないから困る。
「ほら、一緒に行こう。」
いきなり手を掴まれた。なぜか、途轍もない嫌悪感を示して思いっ切り振り払ってしまったのだ。そう、つまり逆上する理由を此方が作ってしまったのだ。ステレオタイプのナンパ男は目に敵意いや、狩猟者の輝きを宿して向き直った。そして、唇を振るわせ怒鳴るかしようとしたときに。
「あのー、ちょっといいですかね?」
「あ゛ぁ゛?」
…………………………………なにその制服と思しきものは?。彼が前に言った相澤康一が学生服(別名学ラン。しかも冬服)を着てそこに居たということしか分からない。なぜにその格好?というより手に持ったキャリーバックにそこはかとなく危険な香りがするのは気のせい?
「彼女は僕の待ち合わせ相手ですが?何か御用でしょうか?」
「ああ!?こちとら、お話中だよ!!。」
「そうですか。それなら、僕を通して言ってください。サル語は疎いのでちゃんと聞き取れる自身はないのですが・・・大丈夫でしょうか?」
煽った!?まあ、この程度なら康一君でも撃退できそうだけど・・・。路地裏に行った…………康一がこっちに向かって歩いてきて、キャリーバックを手渡し・・・
「身を潜めろあとで連絡する。」
私は、その通りに出来ずに……………少し、時間を空けて、事の成り行きを見守ることにした。
三人称SIDE
路地裏だ、ここに。複数人で向かい合っている男達が居る。理由は前述を見て貰いたい。
「全く、ナンパ二回も失敗するしツイてねえな。お前本当についていないなぁ。」
大人数の大多数がそれぞれの構えを作った。拳すら作っていないのは一人だけ学ランの男だ、彼は笑顔を絶やさず
「君たちはkブッ?!」
殴られた。有無を言わさず殴られた。それはもう暑苦しいまでに殴られた。一瞬にして学ランの男は囲まれて具体的な様相を挙げるならばドラエ○ンなどの喧嘩で土ぼこりを挙げて、喧嘩しているような感じだ。いや喧嘩じゃない一方的なリンチである!
簪SIDE
エエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエエッ!?笑えないよ!!!!?ッてかやばい隠れなきゃ!
……………………行った?よし早く治療を・・・。
「あれ?ポリバケツのお化け?」
「せめて妖精と言いなさい!!」
確かに慌てすぎて、なぜポリバケツに隠れていたのか自分でも分からないけど。その結果を笑われるのはちょっと…………。
「まあ、しょうがない。」
「それは普通こっちのセリフ!」
少しは落ち着きを持ったかなとか思っていたのに…………この人の前では落ち着きというものが掻き消される。
「というかあの程度、貴方ぐらいだったらあんなにボコボコにされなくても・・・。」
「過剰防衛になっちゃうでしょうに。」
そう言いながらカラカラと笑っていた。正直、たまにこの人の思考回路には行けなくなるときがある。
「だから、殴られ代金でも貰ったし、等価交換にはなっているでしょ。」
……………。その手に財布が数個。正確にはあのナンパ男達の人数分だけ財布を持っていた。
「あっはっはっはっはっはっは。どうしたの?そんなビックリしたような顔して…………。」
「呆れてものも言えないだけよ。」
「…………あ、少ねぇなこれで遊ぼうとか…………危なかったね。」
「ド畜生が!!!」
つまり、体目当てだったって訳ですか…………今度会ったらぶち殺そう。言ってダメなら殺ってみな。
「フォースの暗黒面が出ている…………。まあ、ちょっと待ってくれ着替える。」
彼はいきなり路上で脱ぎだした…………あ、下に着ているんですね。あぁ良かった今後はまともだ。カジュアルな格好で、ここにビニールのイルカと浮き輪を持たせれば夏男になるのではないのかと思うくらいには清涼感のある格好で、仕上げと言わんばかりに恐らく男性用のカチューシャをつけた。
「変装完了!!」
「わぁ、もう誰だか分からないや。」
「ひでぇ。」
いや完全に変装できてますよ。
「しかし…………絡まれることは想定していなかったな。」
それはそうでしょう…………まあ、当たり前か。
「仕方ないな。ちょっと遠くなるけど一夏も遅くなるし大丈夫か。」
・・・?何を言っているの
「よし、簪。」
「なに?」
「俺の知り合いの場所に行くが、いいか?そこならまあ、絡まれることはないと思う…………このあと俺も用事あるし、どうする?。」
……………少々不安は残るけど。
「分かった。付いていく。」
甘んじて受けることにした。
康一SIDE
あービックリした。まあ、しょうがないかお金もそれなりにもらえたし。いや盗んだし。移動の足があってよかった。電車すげ。やべ、アポとってねえや。
「もしもし?あ、開いてる?OK客っつーか女の子一人匿って欲しいんだわ。マジ?いいよいいよ何階?そっちね。…………OK行く準備が出来た。」
「アポとってないの!?」
簪がそう言って来たまあ、年中無休でやっているからなぁ。いつ行っても良いんだけど。
「年中無休だし。しかも今行くところアクが強いから。」
「貴方が言うか貴方が。」
キャラなんて濃くないよ畜生。まあ
「ああ、言うね。」
「…………ちょっと不安になってきた。」
そうか…………。
「まあ、俺の用事が終わるまで待っていればいい。食事所に、ちょっとしたゲーセンに色々あるし退屈はしないはずだ。」
何もかもをごっちゃにしたような施設だからな。
「そう・・・。」
「おう、安全は保障する。」
つーかできる。付いたな。
俺たちは、電車を降りてタクシーに乗り目的地に着いた。
「あ?…………なにこれ。」
「雑居ビル。」
それ以外には・・・豆腐か・・・。相澤康一の楽しい豆腐建築!!・・・いや、頂上が円形になっているんだよなぁ、ほかに何に見える?
「はぁ…………分かっていっているんだからたちが悪い。」
全く当たり前だろうが「さっさと入るぞ。」
まあ、テリトリー外のところに入るから当たり前なんだが。よくもまあ付いて来るもんだ。
「ちょっと、待って!」
「あと十秒で閉まるボタン連打しちゃうぞ~。」
「うがー!!」
…………そんなにダッシュしなくてもいいのに、まあ、ここはそんなの気にしない人が多いけどね。俺は5階のボタンを押した。
簪SIDE
「ホストクラブって…………!!」
どういうことじゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁッ!!
え?なにこれ?本当になにこれ?ありのまま今起こったことを話すとエレベーターに乗ったらホストクラブだった。以上!!あれ?本当になにこれ?
「ああ、まあ、ナンパ男の巣窟だけどここのオーナーさんが俺の知り合いなんだ。」
とりあえず補足説明してくれた…………けど。それで不安が晴れるわけではない!!そんな私の心情をよそに、彼は近くにいた絵に描いたようなホストに話しかけていた。はぁ、これ以上何かをやらかさないでくれれば…………。
「あの、すみません。
「あぁ!?鈴也さんに何のようだ!?お前は!」
敵意むき出しにしておりますけどぉ!?と言うよりどこの龍○如くですか!?
「…………あ、あの・・・」
「ん?」
話しかけた私に康一に向けていた敵意を完全に消して、私と康一の間を視線を行ったりきたりしている。そこに追い討ちをかけるように康一が。
「はぁ、ホイ。」
「鈴也さんの名刺…………申し訳ございませんでした!」
その知り合いと思われる鈴也さんの名刺を差し出したのだろう。一瞬で信用を得て、その恐らく源氏名であろうその名前をところどころ会話に散りばめながら鈴也の所在に連れて行ってくれた。少し引っかかるけど・・・どこかで聞いたような名前なような気がする。
「あ、俺はここら辺でおいとまさせてもらいます。」
恐らく恐れ多いような威厳を持った人格者なのだろう。逃げるようにして扉の前から去って行った。・・・そんな人間って言ったら私の親父のような・・・。いやいや、あのような人種は一人だけで十分だと思う…………いや、改善されていたとしてもダメ、むしろ酷くなる・・・。
「・・・お~い少しは覇気のある顔をしろ、とりあえず、本当に結構なモンだから俺が保障する。」
……………信じる・・・いや、信じようこの人が言っているのだもの。
「それと、お前。まだ俺以外には人見知りしているんだな。」
・・・その言葉の効果は。
「このッ!。」
「しつれいしまーす!。」
私が恐らく耳を真っ赤にしながら手を振り上げた拳を康一が全力全開に無視して開けた扉。そこにはとりあえずイケメンと言えるような二十代前半のような清涼感が全開の年齢の人間が居た。例えば、ゴスロリに隈取を施したりしない人だろう。
だけどそれ以前に、この心を抉ってくる、この悪魔にどうにかして正義の鉄槌を下さねばならないと思いつつ、場の空気と視線にいたたまれなくなり振り上げた拳をゆっくりと下げた。
「いらっしゃい。久しぶりだね、いきなり電話来たから驚いちゃったよ。」
「すみませんもう少し余裕があったら菓子折りでも持ってくるのですが・・・。」
…………へ?
「いいよいいよ気にしないで。」
「気持ち的にそういうわけにも行かないものでして…………。」
そのいきなり開けた扉の先に異世界が広がっていた。…………まあ、恐らく鈴也さんとやらはその見た目どおりに誠実な人間であるのだろうが・・・問題は
「まあそれはそうとして、突然で悪いんだけど…………。」
「はい、あまり溜まっては居ませんが。」
「ありがとう、それじゃはいこれ。」
と、言って彼は一つの分厚い封筒を差し出した。それと同時に鈴也という男も同じような封筒を差し出し……………なぜか剣呑な空気が混じる。
たとえるなら、決闘前の騎士のような。周りだけが固唾を飲み、緊張に飲まれそうな。というより私が固唾を飲み込んでいる…………それ以前になぜ、この人たちは封筒を取らないの?
と疑問に思った瞬間、両雄が動いた。
「…………あの、普通に取ればいいと思うのですが。」
「「?」」
普通に取った。私のモノローグが物凄くバカに見えるほどに、普通に取ったのだ。お互いがお互いの差し出したものを普通に。
「…………貴方が普通に行動したの初めて見たような気がするのは気のせい?」
「失礼な、ちゃんと普通に行動しているときもある。」
「まあまあ、ちゃんと行動している時もあるって例えば…………。こうやって、女の子を守ろうとして安全そうな場所に連れて行く所とかね?」
私はその言葉を聴いて、康一のほうを向いた。その顔はゴ○ブリを素足で踏み潰したような顔をしていて、とてもではないがそうとは思えなかった。
「まあ、俺もホストの端くれだし女の子に悪いようにはしないよ。隣にいる彼もね。」
恐らくフォローしたつもりなのだろう、鈴也さんが私にウィンクをして、立ち上がって近づき康一の首に腕を回した。なぜだか、そこだけを見ていると、仲のいい親子に見えなくもない。
「はぁ、それじゃ。俺はまだ来ていないようだし仕事、手伝って来ますよ。」
「んん?いたいけな女の子を一人にしていいのかな?」
さすがホスト、普通の人間が聞いたらブラックコーヒーを求めそうなセリフを堂々と言い放つ。私は赤面しないだけで精一杯だ。
「いえ、貴方だからこそ任せられるんですよ。この
……………え?いや?いやいやいやいや!?え?いやちょっと待って!!。
「…………あのお子さんは今何歳なんですか?」
「ん?確か康一君と同い年だよ?」
目算20代で私とはまだ15歳康一もそれと同じと仮定して……………。分からない…………。
「…………鈴也さんは、これで40代だからな?」
見かねて、ヤレヤレと言ったようにぶっきらぼうにそう告げた。
「どうもーオッサンでーすwww。」
態度をワザと砕けて笑いかけてくれた。…………はぁ・・・若く見えるのにこんなデメリットがあるとは。
「それじゃあ、俺はそろそろ行動を開始するから、鈴也さん後よろしく!」
え?あれ?いつの間に扉から出て行ったの?一人?ここに?いつの間にか康一が姿を消していた。
「ああ、それじゃ自己紹介がまだだったね。俺は朱雀鈴也です、以後よろしく。」
「…………わ、私は・・・更識簪です。」
一応自己紹介はしておこう・・・けどやっぱりまだ他人と話すのは苦手だ。
「それじゃ、ここに居ても退屈だ。このビルを案内しよう。」
そんな一言で私は鈴也さんの案内でこのビルを案内されることとなった。