IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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最近寒いでござる。因みに連投です。


お見舞い。3

三日目に突入する

 

 ◆ ◆ ◆

 

俺は、目が覚めた。特に理由はないが目が覚めたとしか言いようがない状態だ。そして、日の位置と学園内の環境音から大体の時刻を計算した。大体午前11時位だろう。点滴も終わっているようで、空の点滴が俺の腕に繋がれているのを確認し強引に外した、栄養剤の類だと思うので勝手にとっても大丈夫だろうと判断し俺は全く別のことを考えることにした。

 

丸二日寝てれば大体の筋肉痛は取れるんだな…………。気絶するぐらい痛かったのに。まあしょうがない。確か最初にこれをやったのはいつだっけ?確か4歳ぐらいだっけ?いや、あの時は暇さえあれば寝ていたからな、記憶が飛び飛びになるのは珍しくなかった。ああ、思い出すのめんどくさいなぁ。

 

「…………寝よう」

 

俺は寝た。それは…………非常に分かりにくいが突如去来してくる黒歴史への逃避のようなものだ。

 

そうだな…羊がzzzzzzzzzzzzzzzz………

 

 

 

 

 

 

 

俺は目が覚めたそれは、何者かの気配がしたからだ。朝の目覚めのようにすっきりとしたものではなく、かなりの不快感を催しながら俺を揺さぶった。それでも、誰でも対応できるように俺は波風を立てないようにゆっくりと目を開ける事にした。

 

「…………ボーデヴィッヒか?」

「はい。」

 

銀髪のストレートに夕日の光をブレンドさせたようなそんな美少女が、そんな今一番会いたくない美少女が俺の隣に座っていた。

 

「なんでまた俺に合おうと思ったんだ?」

 

俺は、なぜか敵意をぶつけていた。それもあるがなぜ普通は見ないし逃げる、目を合わせただけで逃げる。まあ、それは言い過ぎだが普通の人間は逃げ出した人間相手に昨日の今日で顔を合わせる訳がない、それ理由を知りたいのもあった。ッて言うか俺が逃げたい。

 

「それは…………貴方が私の恩人だからです。」

 

何をやった俺のもう一つの人格よ…………。

 

「恩人か…………前にも言ったとおり俺は何にも覚えていないぞ?」

「それでも、貴方でした。」

 

二重人格つまり解離性同一性障害に俺は準じるものに罹っていると見られているのだろう。それは…………俺は。ボーデヴィッヒの手をまるで縋るように握った。

 

「すまない、そういうのやめてくれないか?ちょっとよく分からない。」

 

確かに俺のもう一つの人格のことは認知しているが、それでも…………なんと言うのだろうか俺の中で大きなパラドックスが渦巻いていような、そんな気持ち悪い心理状況になっている。

 

「同じ事を言うが、たぶん、俺と君の思っている俺は違う。」

「だからですよ、同じ人を二度好きになれるのはいいことだと思います。」

 

そういう考え方があったのか・・・はぁ。一葉といいボーデヴィッヒといい俺が気絶するとなんもいいことが…………ああ、もう!!

 

「好きか・・・先にフラグ立てる(好きになる)のは一夏の方だと思っていたのになぁ。」

 

あ、赤面した可愛いな。やっぱり照れる女の子っていいよね・・・いいよね!!全くこれだから一夏の周りは面白い。いまここで、自分のことより他人のことが上回った。

 

「あらあら、ませておりますのぉ。ほっほっほっほっ。」

「あんまり・・・か、からかわないでください…………」

 

やっぱり面白い。

 

「それで、どんなところが好きになったわけ?」

「強い・・・いや、私が持っていない強さを…………言葉にするなら慈愛でしょうか、言葉にするのは難しいですけど、強さを持っているところです。」

 

憧れに似たようなものだろうか・・・だが面白ければどうでもいい!!やっぱりこういう感情は見ているに限る、どんな芸術品よりも美しい!!

 

「そうか・・・。」

「何でにやけているのです?」

「なんでもない。」

 

おっと、それは問題がある。俺はすぐに顔を真顔に戻して

 

「あ、そうだボーデヴィッヒ…………。」

 

携帯を取って貰おうとして止め、俺は少し痛む体を無理やり起こして恐らく隣の小さな机にあるであろう携帯電話を探した。・・・なぜに悲しそうな顔を・・・。クソッ。

 

「ラウラ」

「はい!」

 

俺はためしに名前を呼んでみたところ、ものすごい笑顔で返事された。このとき・・・おれは、もう一人の一葉みたいだなと、そう思っていた…………本当に。

 

「なんで…………この世界は優し過ぎるんだろうな。」

 

希望なんて・・・あるだけ届かない。俺にとっていきなり付けられた電灯位にしか意味がない。希望が希望があるからこそ絶望が大きくなる、勝者が居るからこそ敗者が居るのと同じように、ここに来て本当に、俺の周りに大切な・・・そう、大切な人が出来過ぎた。こんなに…………こんなに辛いことはない。何かを得るということは何かを渡さなければならない、所詮等価交換と言う奴が俺に襲い掛かってくる。俺に何を求めるって言うんだ、こんな俺に、こんな無価値な俺に……………。

 

ふと、俺の携帯を持った小さな手が視界に入ってきた。

 

「これですか?」

「ああ、ありがとう。」

 

俺は差し出された携帯電話を受け取った。しばらくそれを見つめて、ラウラに向き直った。

 

「そんで・・・・・・お前は何しに来たんだ?」

「…………いえ、目的は果たしました。」

 

妙に爽快感あふれる顔でそういった。・・・何を言っている?

 

「私がここにきたのは、また名前で呼んでもらうことです。」

「…………っふ。フフフフッ。」

 

「笑わないでください・・・。」

 

くだらない理由に思わず笑いが漏れた。

 

「それでは、これで帰ります。」

「ああ、分かった。」

 

俺は、手を振って見送った。

 

「一件落着・・・と言ったところか…………。」

 

と言いつつ俺は思う一件も落着していないと・・・進展も何も。

 

 

「はぁ・・・本当になんなんだよ。」

 

 

外の景色を見つめてこの一件をそう結論付けた。

 


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