IS 化け狐と呼ばれた男 リメイク   作:屑太郎

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お見舞い。2

 

 

保健室入室生活 二日目

 

 ◆ ◆ ◆

 

「なんだ?お前らまで来たのか?。」

 

と、いきなりだが俺は横にあるいすに腰掛けている金髪の少女とツインテールと言う人類最高の発明を遺憾なく発揮している少女が…………つまりセシリア・オルコットと凰 鈴音がそこに居た。

 

「何よ、来ちゃいけないわけ?」

 

「全然そんなことはないが、むしろ超嬉しいわー。」

 

「そんな棒読みで言われても全然嬉しくないわ!」

 

「こんなすごい美少女にお見舞いに来てくれるなんてー」

 

殴られた・・・。それにしても、何でこんなところまで?

「まあ、だけどお前らは何でこんなところまで?正直顔も見たくないくらいに嫌っているはずだったけど?」

 

これは、前に一夏の周りをあざ笑うがの如くニヤニヤしていたら、ばれたのだ。ものすごい剣幕で起こられてそのころから行動を自粛していたのだが、まあ、目の前にラブコメの波動を垂れ流しているような人間が居たらワクワクするよね。

 

「はぁ…………あんた、本当に覚えていないの?」

 

「悲しいことにな。」

 

と答えるしかない。全く俺が気絶したときはいつもこうだ。いや今回は違ったか。

 

「そんで、お前ら本当に何しに、ハッ!………一思いに・・・やりやがれッ・・・!!。」

 

「殺さないから大丈夫よ。」

「相澤さん・・・貴方すごい思考回路していますわね・・・。」

 

オルコット嬢はいきなりなんだ?冗談なのに・・・。

 

「まあ、オルコット嬢よ冗談だから気にしないでくれ。それと…………早く何しに来たのか言ってくれないか?」

 

はよ!はよ!

 

「ああ、今日はあの…………この場合日本語でどういえば?」

「ううん?借りを作ったって言えば言いと思うわ。」

 

はぁ!?借り…………ねぇ?何をしたんだか。

 

「そんで、まあ、助けてもらったからそのお礼に「殴りに来たと。」そうそう、こうやって握り拳を作って…………ネッ!!「ちょ!?けが人だって!!」何よ…………」

 

あぶねぇ・・・辛うじて理性はあってよかったな・・・。いや、獣じゃないわけですけどね。つうか寸止めでありがとう!

 

「あの・・・鈴さん?一応けが人なのですから。」

「大丈夫よ、ゴキブリに相応の知能を付け足したような奴なんだから。」

「酷くね?」

 

確かに、それなりに酷いことはしてきたけど・・・。軽い奴だよ?

 

「あ、それじゃあ、凰、俺の過失で返済。」

「へ?」

凰が訳が分からないと言うふうに顔と声色を歪ませた。

 

「オルコット嬢は…………意図的にプライドを傷つけて悪かったな。ほい返済。」

「はい?」

同じく訳が分からないという風に顔を歪ませ、俺は続けて言葉を重ねる。

 

「はいこれで、借りとか貸しとか考えなくていいよ。」

 

と言うより、こいつ等に貸しも借りも作りたくないわ。

 

「あんたねぇ………。」

 

おっと、まだ文句が付きそうだ。

 

「大体、俺は借りを作るような人間じゃない。俺が何をやっていたのかは知らないが、絶対に褒められるようなことはしてねえはずだ、だから、そんなことは思わなくていい。………………まあ、結局は俺が天邪鬼なだけなんですけどね。グッフゥ!ボディはまずい………。」

 

殴られた・・・それでも、好感度は下げただろ・・・。腹いてぇ。

 

「ふざけるんじゃないわよ。」

 

「借りは作っておいて損はないですわよ、私のような清廉潔白な人物であればなおさらのことですわ。」

 

「オルコット嬢よ清廉潔白とは心が清くて私欲がなく、後ろ暗いことのまったくないさまのことだぞ?」

 

「清廉の部分は当てはまらないわね。」

「日本語を勉強してきますわ…………。」

 

余談だが、このあと漢字検定一級を取得したと言う話だ。

そうして、和解したような感じになたように見せかけていた、のはそうでもいいとして、この二人に情報源になってもらおうかね。

 

「なぁ、クラスでの事件とかねえの?」

 

「男子が女子だったわ。」

 

「ああ、デュノアの娘っこが性別をばらしたのか。」

 

「知ってましたの?」

 

オルコット嬢が不思議そうに俺を見た。

「まあ、見抜けなかったのは先入観があったのも原因の一つだろうが、わからなくはなかったな。」

 

ナイチチだろうと、男性と女性との性別を認識することは可能だ。

 

「どうしてかしら?なぜかアンタを殴らなければならないような気がしてきたわ。」

「気のせいだろう。」

 

ナイチチという言葉に反応したか…………。それでは、話の続きだが。男性と女性の違いは胸と性器などが顕著な例だが、それらを全て隠したところで、女性の骨盤は男性のそれより大きい、骨盤を削るとあかんことになるので削れないのだ。大体骨は削れない、つうか推奨できない。手間も何もかもかかる。

 

「男性は、匂いで異性を判別しているらしい…………まあ、平たく言えば勘だな。」

 

骨盤で分かったわとか言えないし前から知っていたとかご法度だ。

 

「勘って・・・。」

「ここの人間は、最初からIS一本道って言う奴も多いからな、男かどうかなんて調べられる訳はないだろうな。」

「確かに、私を含めかなりの人たちが騙されてましたもの。」

 

あれほど見事な男装だったらな、まあ、中性的な顔を持っているからそれも原因の一つかもしれない。

 

「そうだな、そのほかには?」

「ないわね。」

 

そうか…………、そういえば一昨日辺りからすごいラブコメの波動を感じた。ってか最近一夏達見れてないなぁ。・・・恋ねぇ。

 

「はぁ。凰、オルコット…………恥を忍んで頼みがあるんだが・・・。」

 

「なによ、気にせず言ってみなさい。」

「そうですわ、一応。この学園の生徒なのですから、助けるのはやぶさかにはないですわ。」

 

と、二人とも口を揃えてそういってくれた。まあ、さっきの借りの件もあれで解決したとは思ってないんだろう。結構、義理堅い性格をしているからな。

 

「それじゃあ…………女の子に泣いて逃げられた、さてどうしたら良い?」

 

「なにやったのよ。」

「女性を泣かせるなど、紳士のやることではごさいませんわ。」

 

いきなり人を敵対するような目で睨み付けてきた。やむにやまれぬ事情・・・と言うより俺にはあんまり覚えがない。確かにあのような不思議な現象を感じたが・・・。

 

「頼む。正直、あんまり波風を立てたくない。」

 

「…………相談に乗ってあげてもいいけど、情報が少な過ぎるわ。」

 

「そう・・・ですわね、状況を教えてもらいませんと。」

 

まあ、確かになぁ…………だけど、名前を出したら大変なことにn「相手はラウラ・ボーデヴィッヒだ。」

 

「「ハイィィィ!?」」

 

あ、ハモッた。

「…………あの状況から、よく顔を合わせようと思ったわねぇ。」

「にわかには信じられませんが。」

 

背筋を震わせながら、二人ともがそれぞれの感想を言った。・・・俺なにやってんのマジで。そうして、二人は少し考える。

 

「はぁ、まだラウラのことはよく分かってないけど…………真っ直ぐないい子よ。」

 

「はい、悪い意味で純粋でしたわね。」

 

「なるほど、ひねくれ周り過ぎていろんなものが真っ直ぐになったって訳か。つまり・・・お前らの視点で絶対的な悪のような存在になった、そして何かの拍子に。お前らの視点で善のような存在になった。ってことか?」

 

俺は推測を言った、これは情報の断片を繋ぎ合わせて作った仮説だ。

 

「ええ、そうよでも…………きっと、何かの拍子に、って言うのはあんたの存在のことよ。」

 

そこに予想だにしなかった回答が紛れ込んだ。

 

「・・・わたくしも。そう思いますわ。」

 

そして、それを裏付けるような発言も。俺が、人を変えた・・・か。はぁビジネスな関係だったら何にも悩まずに済むのに、何でこいつら・・・いや、この世界は。

 

「あ、康一。」

「…………なんだ?」

「たぶん、ラウラは借りをアンタに作ったと思っている。」

 

頭を悩ませているところにまた頭痛の種が舞い降りてきた。俺は・・・何も言えなかった。

 

「今度は、さっきみたいに誤魔化すんじゃないわよ。…………そんな態度じゃ敵しか作らないわ。」

「そうですわね、まずは黙って聞いてあげるのも一つの手だと思いましてよ。」

 

俺は…………。そのあとにも何かを言っていたような気がするが、それどころではなかった、凰とオルコットの二人が退室するまで俺は黙っていたままだった。

 

言葉が反芻される。幾ら考えても解ける事のないその問いに、頭を悩ませる。幾ら繰り返し何回考えたって俺にはその問題は解けない、いや・・・解く訳にはいかない、そんな3年前と同じ問いは今ここで再燃した。

 

「この俺は…………敵しか作らない、俺は…………。」

 

司書さんの言葉と凰の言葉が重なる。

 

 

     「三年前と何にも変わっていない。」

 

 

その事実が俺の胸を突き刺す、その痛みに耐え切れず俺は逃げるように眠った。

 

 ◆ ◆ ◆

 

こうして入室生活の二日目が終わり

 

三日目に突入する

 


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