保健室 入室生活 一日目
◆ ◆ ◆
「まあ、わかっては居たが、一夏とデュノアだけか。」
俺はお見舞いに来ている一夏とシャルロットデュノアを首だけで見やりながら、そう言った。完全に周りからは無評価だな。まあ、それが便利で一番いいんですけれども。
「しょうがないだろ、日ごろの行いだ。」
「あの、康一はなにやっているの?」
「「何にもやっていない。」」
「あ、そういうこと。」
人並みをかなりの間続けていると、人に認識されなくなって来るんだよ。ミス○ィレクションを使えるまでにあるからな?
「あぁ辛い。口動かしているだけで疲れる。」
「本当に大丈夫か?」
「大丈夫じゃねえよ、記憶が飛んだと思ったらいきなりここだぞ?大丈夫通り越してびびるわ。」
なんか、二人とも居心地が悪いとでも言うように目をあからさまに逸らした。お~いそれじゃなんかあったと自分でいっているようなものだろうが。まあ、分かっているからいいんだが・・・。
「あ、それよりデュノア。なんか大会があったらしいが…………事の顛末はどうなったんだ?」
「ああ…………。」
デュノアが言葉を濁した。
「そうだね…………アクシデントがあって中止になったよ。」
「おお。一夏やっぱりこの日襲撃!!だったじゃねえか。」
まあ、正確には違うけどな。あの記憶が本当ならだが・・・。
「あ、ああ。そうだな…………」
同じく一夏が何かに気を使っているように言葉を濁す。その先は…………。保健室のドアの向こうか?・・・誰かを招く予定でもあるのか。しかしそれ以上に気になる事があるんだが…………こいつら、と言うよりシャルロットデュノアのほうが一夏に対してのパーソナルスペースが狭まっている。
因みにこのパーソナルスペースは人との距離をあらわし、親しくなるにつれてその距離が狭くなっていく。
つまり……………一夏に惚れた?
「おい、康一どうしたんだ?冷や汗が止め処なく出ているんだが…………。」
「
「ん?何語?…………どうした?シャルルそんなに顔を赤くして?」
ビンゴカヨォォォオォォォォォォォォォォオォォォッ!?
おれは、体の痛みを無視してコッソリと布団の中で握りこぶしを作った。悔しいとかそういうことではない、このことがばれたら一夏があの最強の親父さんに殺される!!。
「おい、デュノアの娘っこ!お前の親父には絶対にばらすなよ!!いいな!?」
「う、うん…………え?」
「どうした?」
マジでどうしよう…………。一夏は面白いからいいのに・・・。
「んで、康一。お前さっきはなんて言ったんだ?」
「お前にだけは教えることはできねぇ。」
全てが水の泡になる…………いや一夏の人生が途轍もなく水の泡になるだけだから俺には何のデメリットもないからいいか。
「そ、それはそうと・・・どうするの?」
「ああ、そうだった。康一、お前に合わせたい奴が居るんだ。」
合わせたい奴か、何が目的で?
「誰だ?」
「まあ、見れば分かるのかな?」
とデュノアが言った。まあ、お前らが大会に関することだったら知らないとしか言えないんだがな。そして、デュノアが入ってきていいよ。と一声を掛けた。
「…………。」
そこには、銀髪の眼帯少女が居た。…………まあ、見たことはあるが、知らないとしか言えないな。
「えっと・・・だれ?見たことない女子だけど。」
その言葉を言った瞬間女子二人からものすごい…………たとえるなら、服の中にカエルを入れられながらも、親の仇敵を睨み付ける様なそんな、何とも言えない表情を俺に向けていた。
「女子って・・・まさか、全員の女子の名前を覚えているって言うのかよ。」
「おうよ、AからDまでランク付けして。その内AからDまで顔と名前は覚えたぜ。」
あ、女性二人の表情がカエルを見る目に変わった。それはそうと。
「康一、それランク付けする必要なくね?」
「まあな、本当に全てってわけじゃないけど。それでお前、誰だっけ?」
「ひでぇ。」
「冗談だ。そんで、そちらのお嬢さんは俺に何のようだ?」
「わ、私はラウラ・ボーデヴィッヒ少佐です。」
そういった。いや、コミュ症?まあ、俺も似た…………いや、ほかの人に迷惑がかかるから話していないだけだから!いいぜ、俺はコミュ症ではないことを…………身をもって知らせてやるぜ!!
「ああ、よろしくなボーデヴィッヒさん。」
完璧だ、完璧な対応だ嫌味にならないような笑顔と声色、全てがかんぺk………………え?
「あっラウラ!」
なんか涙を溜めながら走り去っていったんだけど。つうか俺がなき泣きたい・・・。もう女子の表情が親の敵を見る目になっている。
「俺なんかした!?」
と言うより俺のもう一つの人格!!俺の叫びを無視するかのごとくデュノアあとを追っていった。そうして必然的に俺と一夏だけになった。
「はぁ…………俺が言うことじゃないけど…………鈍感め。」
「本当にお前が言うことじゃねえ!?」
一夏にだけは言われたくなかった…………いや、ほぼ全域の女子に人気一部熱狂しているし。………本当に写真には儲けさせてもらってますよゲスガオ俺の顔も売れるんだったら幾らでも撮るけど、人に不快感を与えない程度の顔だし商品価値は皆無だな。
「康一・・・お前一瞬で興味の対象が変わらなかったか?」
「んなこたぁない。そんで・・・あいつはなんなんだ?」
とりあえず、聞いておかなければいけない。そうしないと言動に矛盾が生じるからな、口調に矛盾が生じているのはご愛嬌だ。
「…………俺たちの仲間だよ。」
「仲間…………ねぇ。」
俺の記憶が失われている(となっている)期間にクラスか何かに加入した転校生と言ったところか。一部知っているが全てを見た訳じゃないからな、想像で補うしかない。だがその想像で補う部分にノイズが走った。
「なあ、俺の携帯電話知らないか?」
「ん?ああ、ほら。」
と言って携帯を手渡された。まあ、これだと向こうで警戒されると言うデメリットがあるんだが…………まあ、いいだろう。俺は、一夏に静かにするよう唇に人差し指を当て、数回のコールが鳴りそして電話先が応対した。
「私だ。大尉殿はいるか?…………あ、ごめんごめん俺だよ康一。」
「うんうん、ごめんね冗談が過ぎた。そんで隊にラウラってやつはいるか?」
「へぇ、ああ分かったありがとう…………会合?ああ、ちゃんと全員出席できる。そう、それじゃ。」
「良かった・・・一夏ありがとう」
「誰と話していたんだ?」
「うん?母さん」
「ウソ付くな!母さんに大尉ってなんだよ!?」
「実は俺の知り合いに軍属のような奴が居るんだけどそいつに話を聞いてきただけだ。ほかに心当たりがあるわけじゃないしな。」
まあ、気に入らないと言うわけじゃないからどうでもいいんだが…………。
「それに…………女と爆弾は丁重に扱えとばっちゃが言ってた。」
「ずいぶんとハードボイルドなおばあちゃんだな。」
「それでも、女に優しくしておいて損ってことはないからな。」
そう、言ったとき。一夏は疲れたように溜息をついて。
「最近、お前が分からなくて疲れるよ。」
とそういった。
「すまんな。」
「気にするな。それじゃ、俺はこの辺で。」
「ああ、じゃあな。」
◆ ◆ ◆
こうして、入室生活一日目は終了し二日めに突入する。